FC2ブログ

第二十五話 『裁かれる少女たち』

2019-04-07

「被告人二号、宇崎みどり! 出廷せよ」
 礼門の声が響いた。
 刑務官の雑魚男子たちが、被告人席へと彼女を引き立てていく。抵抗が無駄である事は、祢々子の姿を見て散々学習させられたため、みどりは素直にこれに従っていた。暴れたところで苦しみが増すだけである。裁判の順番が最後なら、まだ抵抗する事で時間切れを狙う作戦も使えたかもしれないが……。
 しかし無抵抗とはいえ、彼女はいま一糸纏わぬオールヌードである。そして祢々子のように幼児体形ではない。だから普通に歩くだけでも、顔から火を噴きそうな羞恥に苦しめられる事となった。
「うわっ、すげぇ、見ろよ宇崎の奴! おっぱい揺れまくってるぜ!」
 雑魚男子の一人が囃し立てる。彼に言われるまでもなく、たわわな両乳房が歩くたびにリズミカルに飛び跳ねる様は、忠一のカメラを通してクラスメイト全員の注目を浴びていた。せめて両腕が自由に使えたら、もう少し揺れを抑える事もできただろう。みどりは腰の後ろで手首を拘束するおもちゃの手錠を、心底憎んだ。
「さっすがクラスいちの巨乳だよな。暮井とは大違いだ」
「乳首も立ってるよね、あれ。AV女優と同じじゃない?」
「マン毛も濃いぜぇ。モジャモジャだ」
 両腕が使えないという事は、身体の動きに沿ってなびく股間のジャングルも隠せないという事になる。そして被告人席に立てば、彼ら傍聴人の男子たちには大きなお尻も見られる羽目になるわけだ。
「知ってる? ああいうの安産型って言うんだって」
「ちくしょー、思いっきり撫で回してぇな」
「胸も尻も大人並みだよね。あ、あとマン毛の濃さもか」
 まだ裁判が始まってもいないのに、既にみどりは男子たちの晒し物になって散々屈辱を味わわされていた。裁判と言っても、どうせ有罪にさせられるのだ。その後で果たしてどんな辱めを受けるのか……みどりは暗澹たる気持ちであった。
「それではこれより、被告人二号・宇崎みどりの軍事裁判を開廷する。まず起訴状の朗読を……」
「裁判長!」
 礼門の声を遮り、清司が手を挙げた。
「何かね?」
「争点証拠整理手続の実施を提案いたします」
 傍聴人のクラスメイトたちがどよめき出す。聞きなれない言葉に戸惑っているのだろう。だがこのやり取りはあらかじめ打ち合わせしてあったらしく、礼門も士郎も、清司の提案に面食らった様子は一切感じられなかった。
「被告人二号は、被告人一号・暮井祢々子と同じく、羽生桃香と共謀し、彼女の指示のもと戦争に加担していました。よって裁判の争点は被告人一号と同一と考えられます。即ち、彼女が主体的に自分の意思で男子を攻撃したのか、それとも従属的に命令に従っただけなのか……。ここに争点を絞る事で、裁判の進行を大幅に効率化し、審理時間の短縮も図る事ができると考えます」
 争点証拠整理手続とは、日本の裁判で採用されている制度の一つだ。裁判の早期の段階で、事件の争点および証拠の整理を図る事を目的としている。具体的には、事件の難易度によって『準備的口頭弁論』『弁論準備手続』『書面による準備手続』などがある。
「弁護人。そちらの意見は?」
 男子女子戦争では、裁判ごっこの効率的な手続き短縮を意味すると考えれば良かった。限られた時間の中で五人の女子を裁かなければならないのだ。優先すべき事を取り違えてはいけない。
 被告人一号の時は、「これは私刑ではなくれっきとした裁判なのだ」というアピールのために細かな手続きも一つ一つ踏んでいった。しかし二度も同じ事を繰り返す必要もない。雑魚女子たちはともかく、雑魚男子たちもそんな事は望んでいないだろう。優先すべきは裁判の公平さではなく、どれだけ彼女らを辱められるか、なのだ。
「同意します」
 当然、士郎もこの提案を受け入れる。こうしてみどりの裁判は、起訴状朗読も罪状認否も冒頭陳述もすっ飛ばして、いきなり証拠調べから始まる事となった。しかもその証拠というのは、みどりが主体的か従属的かを判断するための証拠……なのだ。姫乃や桃香ほどではないが、祢々子よりは頭の回る彼女には、それが何を意味するのか薄々分かっていた。
「では検察官。証拠調べを始めたまえ」
「はい」
 まずは検察官の清司が被告人席に歩み寄る。
「裁判長。被告人二号が主体的に戦争に参加したのか、それとも従属的に加担したに過ぎないのかは、彼女の精神的成熟に左右されるものと考えます」
 みどりが目を閉じる。やはりそう来たか……とでも言いたげだ。
「つまり、精神的に大人であるか、子供であるか。ひいては、肉体的に大人であるか子供であるか。これをハッキリさせる証拠を検証すれば、おのずと裁判の結果も見えてくる事でしょう」
 もっともらしい事を言っているが、何の事は無い。今からみどりの身体の発育具合を調べると言っているようなものだった。祢々子の裁判で、清司も士郎も『肉体的成長を推し量る事が、ひいては精神的成長を推し量る事にもなる』という理屈を用いている。そこから考えれば当然の結論であろう。この裁判の真の目的は、被告人の女子を散々に辱め、屈服させることにあるのだから。
「ご覧ください、裁判長。被告人二号の肉体的成長を」
 清司の声を合図に、忠一がカメラのレンズを不躾に近づけてきた。身体を隠そうにも腕は使えない。カメラから逃げようにも左右に刑務官が控えている。身をよじる事さえできず、みどりは置物のように身体を硬直させて、じっと忠一の接写に耐え忍んでいた。
「見ての通り、被告人二号の乳房は大人顔負けのボリュームであります」
 レンズがまず両乳房を映し出す。
「乳首も発達し、興奮の為か固く尖っております」
 左右の乳輪がこれでもかと接写されていった。そこからゆっくりと下に移動し、少しズームアウトしながら引き締まったウエストラインを炙り出していく。綺麗に手入れされたヘソもはっきりと見て取れた。
「腰のくびれも明瞭で、女性特有のシルエットは既に完成していると言っても過言ではないでしょう」
 さらにカメラは容赦なく下へ下へと移動していく。最後の獲物として、黒い縮れ毛をファインダーに収めようというのだろう。邪魔になる被告人席の机は、一時的に雑魚男子たちが動かしてスペースを空けていた。忠一の撮影を邪魔する物はもう何も残されていないのだ。みどりは太腿を密着させて恥辱に備えた。
「そして極めつけはこの陰毛です。デルタ地帯を覆う若草の茂みは、大人のそれと比較しても何ら遜色はありません。これほど肉体が成長しきっている被告人が、精神的に幼く、男子軍への攻撃を従属的に行っていたと考えられるでしょうか? 否、これこそまさに、被告人二号が大人並みの精神を持ち得ている何よりの証拠なのです」
 スクリーンとモニターに映し出される、黒々としたジャングル。確かにこの映像だけを見て、これが五年生の女子の股間です……と言われてもピンと来ないだろう。AV女優の無修正写真の一枚です、の方が遥かにリアリティがある。
「被告人二号は自らの意思で、自らの責任で、男子軍に攻撃を加え、女子軍を守るべく行動したのです。ならば、当然敗戦の責任も負うべきでありましょう」
 ……以上で質問を終わります、と締めくくり、清司が自分の席へと戻っていった。入れ替わりに今度は士郎が弁護人として質問に立つ。
 とはいえ、みどりのヌードを根拠にして彼女の精神的な幼さをアピールするのは、かなり難しそうだった。どこをどう見ても、出るところは出ているし、引っ込むところは引っ込んでいる。祢々子と同学年とはとても思えなかった。士郎もほとほと困っているようだ。どう攻めたらいいのかと、戸惑いがそのまま表情に表れている。
 それでも一縷の望みをかけ、士郎がみどりに問いかけた。
「被告人二号、ちょっと確認したい事があるので、足を開いて机に突っ伏してもらえますか?」
「はぁ? なんで、そんな……」
「異議あり! 弁護人の質問は本件とは無関係です!」
 困惑するみどりの声を掻き消すように、清司の声が響き渡った。礼門が木槌を振る。
「異議を認める。弁護人、質問の意図を説明せよ」
 裁判長たる礼門であっても、あからさまに裁判の流れを無視する事は出来ないようだった。
 みどりの足を開かせて、その股間が丸見えになるようにうつ伏せにさせるというのは実に興味深い。しかし理由もなくそんな事を認めるわけにはいかない。だから無下に質問を変えさせるのではなく、意図を聞いて認めるかどうか判断しようと考えたわけだ。裁判ごっこは裁判ごっこなりに、筋を通さなくてはならない。そこが重要だった。
「裁判長。被告人二号は確かに股間に陰毛を茂らせていますが、恐らく恥丘部分のみの発毛と思われます。大人のように、性器や肛門の周辺にまで毛は生えていない。もしそうだとするならば、これは被告人の肉体的発育が大人と同じではないという証拠であり、ひいては精神的発育の未成熟の証拠となり得るものと考えられます。先程の質問はこの意図に則ったものであります」
 無茶苦茶な理屈だったが、論理的に一貫していればそれで良かった。理屈と軟膏はどこにでも付くとはよく言ったものだ。
「……よろしい。弁護人は質問を続けるように」
 そして礼門もその無茶苦茶な理屈に乗っかった。かなり強引だが、とりあえず裁判を続行できると判断したらしい。
 同時にそれは、足を開いて机に突っ伏す姿勢をみどりに強いる行為に、公式な許可を与えた事を意味する。もう誰も守ってはくれない。拒否すれば裁判長の心証が悪くなって自分に不利になるだけ。どのみち被告人の女子に抵抗する術など残されていないのだ……。観念したみどりは、言われるままに足を肩幅まで開き、被告人席の机に身を預けていった。
 士郎と忠一が背後に回り込み、全てを露わにした彼女の股間をまじまじと覗き込む。読み通り、みどりの性器周辺にはまだほとんど陰毛が生えておらず、肛門の周りもわずかに産毛が見られる程度だった。これなら十分未成熟さを強調できる。
「ご覧下さい。性器の周りも肛門の周りも、全く発毛していません。被告人二号は決して、大人と同じ肉体を持っているわけではないのです。つまり、精神的にも大人と同じではないと……」
 流暢に持論を展開していた士郎の言葉が淀みを見せる。同時に、モニターに映し出されたみどりの性器を見て、傍聴人たちがざわつき始めた。
「……ないと……、い……う?」
 男子も、女子も、スクリーンやモニターに映った『それ』に気付き、騒ぎはどんどん大きくなっていった。ある者は不思議そうに指さし、ある者は好色そうな笑みを浮かべ、またある者は顔を真っ赤にして手で覆っている。
 みどりの性器はただの割れ目ではなく、ピンクのビラビラがはみ出した、中を開かなくても十分エロティックなクレヴァスであった。戦死した時、彼女はプールの中で脱がされている。性器を露出した姿は水中の映像でしか残っていないのだ。アソコを丸出しにするのは実質的に初めてと言って良かった。
 ついにみどりの性器が、明るい太陽と蛍光灯の光の下で剥き出しにされた……確かにそれだけでもクラスメイト達は興奮して大騒ぎするだろう。だが今の騒ぎ方はそれとは全く異なっていた。もっと異質の何か。映るはずのないものが映っている。だからこそ彼らは不思議に思い、正体に気付いた者は笑みを浮かべ、みどりの心中を慮った者は視界を覆ったのである。
 ――紐だ。
 みどりの性器、そのクレヴァスの中心から、白い紐が一本、長く垂れ下がっていた。歩いてきた時や直立姿勢の時は、きつく太腿を閉じ合わせていたために誰も気づかなかったようだ。
「くそ、マジかぁ……」
 思わず士郎が舌打ちする。
 まさかよりによってみどりが『そんな状態』だったとは。あまりのタイミングの悪さに士郎は苦笑するしかなかった。
「あー、えー、つまり陰毛が前の方だけにしか生えていないため、被告人二号の身体は成熟しきっておらず、精神的な未熟さにも繋がっているのです。……以上で質問を終わります。被告人二号は元の姿勢に戻るように」
 出鼻をくじかれた士郎は、それ以上突っ込んで傷口を広げるよりはマシと、あっさり質問を打ち切ってボールを検察側へと返していった。逆に清司はこれ幸いとばかりに、嬉々として次の質問に立つ。
 みどりが『そんな状態』なのだとしたら、もはやこの裁判、勝ったも同然であろう。
「裁判長、証拠物2-1を申請します」
 清司は早々に証拠物……みどりの旅行鞄を雑魚男子たちに運ばせた。白地にエメラルドグリーン。ポップな色遣いのボストンバッグだ。早速ファスナーを開けると、好き勝手に中身を掻き回し、お目当てのビニール袋を引っ張り出していく。
 言うまでもなく、使用済みの下着が入った汚れもの袋だ。これが証拠物2-1である。
「証拠物2-1を採用する」
 礼門の言葉を待つまでもなく、清司は中を開けてブラジャーとショーツを三つずつ、被告人席に並べていった。勝手に自分の旅行鞄を漁られ、使用済み下着を晒し物にされても、みどりはじっと耐え忍んだ。どうせ文句を言ったところで無視されるに決まっている。もはや全てを諦め、裁判が終わるのを待つしかないのだ。
 だから当然、着た順番に下着を並び替えろ……と予想通りの命令をされても、彼女は唯々諾々とこれに従った。口頭で指定して清司に並べさせる。
 初日に着ていたのが、ホワイトレースに縁取られた黄色い花柄のブラジャーと、グリーンチェックのショーツ。
 二日目に着ていたのは、ネズミの有名海外キャラクターが大きく描かれたブラジャーに、やや地味なベージュ色のショーツ。
 そしてさっき没収された三日目の下着が、アルファベットが大胆にあしらわれたブラジャーと、ドクロマークがデザインされた黒とピンクのツートンカラーのショーツだった。
「おや? ショーツが一枚余りましたね?」
 清司が白々しく尋ねる。
 そう不思議な事に、三日分の下着を並べてもなお、被告人席には一枚ショーツが余ってしまっていた。しかもこの一枚だけさらに追加でビニール袋に入れられている。清司が中身を取り出すと、水で洗った後に手で絞ったのか、ショーツ全体がうっすらと湿っていた。
 広げてみると、二日目に着ていたブラジャーと同じ、愛らしいネズミのキャラクターが見て取れた。これは上下セットのランジェリーなのだろう。このショーツもまた、二日目に着用したと考えるのが自然だ。
 つまりブラは三枚しか無かったのに、ショーツは三枚ではなく四枚、汚れもの袋に入っていた事になる。自然教室では川遊びで濡れたり、慣れない環境で粗相をしたりして、新しい下着が必要になる事態は珍しくなかった。念のため予備の下着を持ってくる事は『自然教室のしおり』でも推奨されている。
 問題は、なぜみどりが下着を穿き替えたか、という事だ。
「被告人二号に質問します。ショーツが一枚余っていますが、何日目に着用した物ですか? そしてどうして同じ日に二回もショーツを交換したのですか?」
 意地悪く訊いてくる清司に、みどりは恨みがましい視線を向ける。しかし彼も意地悪をしたいがために質問しているわけではなかった。裁判とは一つ一つの事実を正確に積み重ねていって、最後に真実を明らかにしていく作業なのだ。言わなくても分かるでしょ、は通用しない。どんなに分かり切った事でも、きちんと法廷で証言しなければ証拠として採用されなかった。
 もちろん、みどりに恥辱を与える意味も当然あるのだが。
「それは二日目に使ったショーツです……」
「ふむ。では穿き替えた理由は?」
 手の中で湿ったショーツを転がしながら、清司がなおも問い詰める。いい加減、覚悟を決めろという事か。みどりが懸命に声を絞り出す。
「……理です」
「聞こえないな。被告人はもっと大きな声で答えるように」
 横槍を入れたのは清司ではなく礼門だ。横柄な態度で木槌を振り回している。一体どこまで辱めれば気が済むのか……。もういい。どうにでもなれと、みどりは腹の底から大声を出してやった。
「生理です! 生理が急に始まって汚れたから、穿き替えたんです!」
 言うまでもない事だ。
 ショーツを穿き替える理由は、汚れてしまったからに他ならない。普通に考えれば、お漏らしでもしない限り、高学年の少女がショーツを汚す理由など、生理以外にはありえなかった。
「ほう、生理? そう言えば確かにこのショーツ、クロッチの所に経血のような染みが残っていますね」
 ショーツを裏返し、白々しく清司が汚れ具合を確認する。忠一のカメラもここぞとばかりにレンズを近づけてきた。手洗いしたのだろうが、クロッチに付いた黄色い染みと経血の跡は隠しようがなかった。いつもなら洗濯機で難なく洗えるはずの汚れ。しかし二泊三日の自然教室の最中ではそうもいかない。軽く手洗いして、後はビニール袋に入れておくしか後始末できないのだ。
 使用済みの下着を暴かれ、着用した順番も告白させられた事で、みどりは自然教室の間、いつ生理になったのかという恥ずかしい情報さえ男子に知られてしまった。今が自然教室でさえなければ、経血で汚れたパンツを見られる屈辱だって味わわずに済んだものを……。
 一方の男子たちも、未知のショーツ汚れの前にざわついていた。生理で汚れたパンツなど、女きょうだいがいない限りまず目にする事は無い。経血付きパンツという、想像以上の汚パンツを目の当たりにして、大きなショックを受ける男子も少なくなかったのだ。
「初潮を迎えたのはいつですか?」
「四年生の……秋くらい」
「初めは生理周期も安定しないと聞きますが、初潮はかなり前ですね。生理が始まりそうという予想はしていなかったのですか?」
「自然教室が終わってからだと思ってたから……そしたら予想以上に早くて」
「なるほど。しかしサニタリーショーツは一応持ってきていたし、念のため生理用品も準備しておいたという事ですね」
 二日目に穿いたベージュの地味なショーツは、生理用のショーツであった。そもそも生理のメカニズムすらよく知らない男子たちにとって、サニタリーショーツ自体、何の目的に使うのかさえ分からない、未知の物体なのである。ただ何となく、女の子の大切な秘密を一つ暴いてやった……そんな不思議な優越感だけは、本能的に察知していた。
「自分の生理周期を正確に把握し、不測の事態に備えて準備もしておく。そして経血でショーツを汚しても冷静に対処してつつがなく自然教室の日程をこなしていく。素晴らしいですね。まさに自分で考え行動する、大人の女性のあるべき姿です」
 みどりはもう大人だから、自分の意思で自発的に男子女子戦争に参加したのだ……その持論に誘導すべく、清司は淡々と論理を展開していった。さらに駄目押しとして、旅行鞄の中から小さな紙の箱を引っ張り出してくる。
「証拠物2-2および2-3を申請します」
 清司が手にしていた箱は二つ。一つは、祢々子も持っていた生理用ナプキン。そしてもう一つは、生理用のタンポンだった。みどりの性器から伸びていた白い紐……その正体である。生理に疎い男子にはあの紐が何なのかは分からなかっただろうし、逆に女子たちはすぐに気づいてとても正視できなかった。
 みどりはタンポン派らしかった。
「被告人二号に質問します。あなたは今、タンポンを使用中ですね?」
「……はい」
「ではなぜナプキンまで鞄に入れておいたのですか?」
「タンポンが……痛くて使えなかったら困るし。一応念のためっていうか……」
「念には念を入れて、という事ですね。しかしタンポンを使用するのは怖くなかったのですか?」
「怖い……って?」
「おや、ピンとこない? 膣内に異物を挿入するんです。男性経験の無い女性なら多少なりとも抵抗を感じると思うのですが?」
「異議あり!」
 言葉のあやを見逃さず、士郎が割って入ってきた。
「タンポンの使用と性交経験の有無は無関係です!」
「無関係という事は無いでしょう? 挿入経験の無い女性ならば、普通はナプキンを選ぶと思いますが?」
「それは検察官による根拠のない決め付けです!」
 法廷で激しく対立する士郎と清司。どのみち女子を有罪にする事は確定事項であり、二人とも結局は被告人を辱めるという共通の目的で行動しているに過ぎない。だが両者ともお互いのロジックを一歩も譲るつもりは無いらしかった。この軍事裁判は、形の上だけであっても、ある程度の裁判の体裁は整えなければならない。それが戦後の女子統治政策において非常に重要な意味を持つからだ。みどりも何となく士郎たちの意図は察していた。だからといって、素直に辱めを受け入れる気にはならなかったが……。
 カンカン、と礼門が木槌を鳴らした。
 彼も裁判の形を取り繕う重要な役者の一人だ。
「静粛に。――弁護人の異議を認める。検察官は質問を変えるように」
 裁判長にたしなめられ、清司が矛を収める。
「分かりました。では、証拠物2-4を申請します」
 彼の合図でスクリーンとモニターに、ある画像が映し出された。
 プールの写真だ。
「これは被告人二号が戦死した際の画像です。複数枚ありますので、順に映写していきます」
 スクリーンに次々と画像が映し出されていく。プール開きの日、みどりが戦死し、礼門にレイプされた時の写真である。撮影したのは他ならぬ、虹輝本人であった。
 水着越しに胸を揉みしだかれている画像。
 スクール水着の肩紐をずらされ、乳房を露わにしている画像。
 股間の生地を引っ張られ、陰毛がはみ出している画像。
 さらには生地を横にずらされ、性器までも露わにされた画像。
 下半身を映したものは、水中に潜って下から撮影したものだった。もちろん、群がった男子たちに水着を完全に脱がされ、素っ裸にされた画像も残っている。
 その後は当然、M字開脚で左右から性器を割り広げられている画像……そして礼門のペニスがそこにあてがわれている画像が続いた。連続して見ていくことで、あの時の光景が、まるで映像に残っているかのように鮮明に脳内に再生されていく。
「あ……。ああ……」
 それは当のみどり本人も例外ではなかった。否応なしに画像を見せられる彼女の顔色が、見る見る蒼白になっていく。当然だろう。二度と思い出したくない心の傷を抉られ、塩を塗り込まれているのだから。ガタガタと震え出し、目の焦点が合わなくなっていった。
「異議あり!」
 士郎が手を挙げて助け舟を出すが、もはや手遅れだったようだ。みどりの花弁に礼門のペニスが捻じ込まれた瞬間……その破瓜の画像が映し出された時、彼女は耳をつんざくような悲鳴で泣き叫んだ。
「いや! いや! いやぁぁぁぁっっ!」
 防音設備の整っている視聴覚ルームでなかったら、何事かと職員が飛んできたかもしれない。それほどの大音量だった。
「やめてッ! やめてよぉ! わぁぁぁぁっ!」
 いわゆるフラッシュバックという現象だ。強い心的外傷を受けた記憶が、何かの拍子に……この場合は拍子も何も、写真そのものを見せられた事が原因だが、それによって突然記憶が蘇る事を言う。こうなる事が分かっていてわざと写真をスライド上映するのだから悪辣なものだった。
 時間が経つことで辛うじて塞ぎつつあった心の傷を、再びズタズタにしていたぶり尽くす。悪魔のような所業に、雑魚女子たちは戦慄し、雑魚男子たちは歓喜した。敗北を受け入れて諦観している女子を虐めても面白味はない。こうやって泣き叫び、苦しみのたうち回る姿を笑いものにするから興奮するのだ。
 大粒の涙を流し、髪を振り乱して苦しむ少女の惨状を、勝利者たちは満足げに見物していた。身体を左右に振る度に、豊かな乳房が揺れ動いている事にも彼女は気付いていない。
「被告人二号がどのような理由でタンポンを使用しているのかは不明ですが、少なくともこの画像にある通り、彼女は性交経験があり、膣内にペニスを受け入れた事もあります。処女の女子と比較すれば、そのような経験に伴う精神的成熟があった事は明白でしょう。間違いなく、被告人二号は自分で考え行動する能力があり、男子女子戦争にも自発的に参加したと推定できます」
 もはや清司の声も届いていないようだった。みどりはその場でくずおれ、被告人席の机に突っ伏して大泣きしている。
 スクリーンには、仰向けに浮かび上がったみどりのオールヌードが無情にも映し出されていた。蟹股に開いた足の付け根には、陰毛に覆われた性器がぱっくりと口を開け、そこから流れ出す精液までもが写真に記録されている。二度と取り消す事の出来ない過去の汚点。それを冷徹に証明する鮮明な画像。
 破瓜の血と白濁液がプールの中を漂う有様は――。
 実に、淫靡であった。




「では弁護側の反対尋問を行います」
 みどりが落ち着くのを待って、今度は士郎が質問に立った。もはや茫然自失となった彼女に今さら何を訊こうというのか。どうせ有罪に決まっているのに……。諦めに似た虚無感が部屋全体を支配しつつあった。
 士郎は改めて、被告人席の机の上に、タンポンとナプキンの箱を並べた。
「被告人二号に質問します。あなたはこの自然教室に、タンポンとナプキンの二つを持参しています。タンポンが痛くて使えなかったら困ると言っていましたが、どうしてナプキンではなくタンポンを使用したのですか?」
「どう……して……?」
「最初からナプキンを使っていれば、痛くて使えないかも……などという心配をする必要は無かったのではないですか?」
「それは……ナプキンだと……水着を、着られないから……」
 みどりの答えになるほどと頷く士郎。
 生理というのは本人の意思に関係なく、性器から経血が漏れ出す現象の事だ。とはいえ止めどなく血が流れ続けるわけではないので、入浴などは問題なくこなす事ができる。公衆浴場ではさすがにお湯を汚してしまう危険もあるため、自然教室では生理中の生徒は別途シャワーなどを使うよう指導されていた。みどりも恐らく二日目の入浴は湯船に入らなかっただろう。
 だから当然、生理中は水着でプールや海、川遊びなどはできない事になる。学校の授業でも生理でプールを見学する女子は多い。ただしそれはナプキンを使っている場合であり、同じ生理でもタンポンを使えば、水着で川遊びも全く問題なかった。
「ナプキンは体外に漏れた経血を素早く吸収する生理用品なのに対し、タンポンはそれ自体を体内に挿入し、経血が漏れ出す事を防ぐ生理用品です。そのため、タンポンを使えば水着で泳ぐ事も何ら問題は無いのです」
 士郎も別に生理用品に詳しいわけではない。昨晩は桃香が膣内の精液対策としてショーツにナプキンを貼り付けている様を間近で見て、目を丸くしていたくらいだ。あくまで一般的な知識で語っているに過ぎなかった。
「被告人二号に質問します。あなたは普段、タンポンを使っていますか? それともナプキンですか?」
 士郎の質問に、みどりは一瞬言い淀んだ。女の子に対して、タンポン派かナプキン派か聞くなんて、普通有り得ない。有り得ないが……士郎の意図を何となく察した彼女は、戸惑いつつも正直に答えていった。
「――ナプキンを使っています」
「ほう。ではタンポンの使い方はいつ、誰に教わったのですか?」
「自然教室が始まる何か月か前に……お母さんに」
「なるほど。つまりあなたは自分の生理周期から、自然教室の最中に生理が始まる危険もあると考え、タンポンの使い方も学んでいた。ナプキンでは水着を着られませんからね」
 自然教室の内容は、しおりであらかじめ知らされているし、毎年似たようなプログラムだから事前に情報を得る事は難しくない。みどりは自然教室のイベントで水着を着たかったから、わざわざタンポンの使い方も練習していたのだ。逆に言えば、水着を着るイベントを生理で休みたくなかったとも解釈できよう。
「教えて下さい。なぜそこまで水着を着るイベントに参加したかったのですか?」
 今回の自然教室で、水着を着るイベントといえば、二日目の海洋研修。カヌーやフロート、カヤックの体験学習であった。みどりがポツリポツリと答える。
「だって……楽しみにしてたから。カヌーとかカヤックとか、乗った事ないし。それにクラスのみんなと川遊びだって滅多にできない機会だし」
 それだけではない。みどりは姫乃と協力して、この時スタンガン争奪戦にも参加していた。桃香と対峙する姫乃を守るため、水中ゴーグルとシュノーケルで川の中に潜み、スタンガンの攻撃で動けなくなった彼女を救出する大活躍を見せたのだ。もしナプキンを使っていて海洋研修を見学していたら、姫乃を助ける事もできず、男子女子戦争の歴史も変わっていたかもしれなかった。
 あの時颯爽と活躍していたみどりが、膣内にタンポンを入れていたと考えると、それはそれでちょっとインモラルな気持ちになってしまうのだが。
 ともあれ、みどりがタンポンを練習していたおかげで、彼女は姫乃派の女子軍として立派に活躍する事ができた。そしてそれ以前に、一人の五年生の女の子として、純粋に自然教室のイベントを楽しみにしていたのだ。
「確かに膣内に異物を挿入するタンポンを使える事は、彼女の精神的成熟を意味するかもしれません。しかしそれは母親の指導があっての事。そして何より、被告人二号は友達と海洋研修する事を楽しみにしていた、一人の少女なのです。生理になったから面倒だし見学でいいや……そんな世間擦れした投げやりな大人とは違うのです。学校のイベントをワクワクした気持ちで待ち望む、純真な心を持った少女。そんな彼女が、どうして主体的に男子を辱める戦争に加担するというのでしょうか?」
 淀みない演説をすらすらと説く士郎は、ゆっくりと傍聴席を見回した。それから裁判長の礼門へと向き直る。
「被告人二号はあどけない童心を持った少女に過ぎません。男子女子戦争に参加したのも、あくまで友人に誘われての事。従属的な行動だったのは明らかです。弁護人は、被告人二号に対し大きな情状酌量の余地があると考えます」
 大人並みのプロポーションを誇るみどりを前に、よくもまぁここまで上手い弁護を考えたものである。確かに彼女は子供だ……などと思わず言ってしまいそうになる。士郎は一礼し、反対尋問を終えた。
 そして論告求刑や最終弁論を経て、判決の時がやって来る。
 確かに士郎はよくやった。
 裁判ごっこの弁護としては上出来だろう。
 だが、これは裁判ごっこであって裁判ではない。
 その目的は、女子を辱める事である。
 礼門が木槌を打ち鳴らした。
「それでは判決を言い渡す」
 結果は、最初から決まっている事なのだ。
「――被告人二号、宇崎みどりを有罪とする!」
 分かり切っていた事だが、予想通りの展開に雑魚女子たちから溜息が漏れていく。雑魚男子たちはしてやったりといった顔だ。
「被告人二号も一号と同じく、羽生桃香の命令によって行動していた事実は間違いない。また精神的にも成熟しきっていると断定するには疑問が残る。だがその肉体的発達から考えれば、相応の自立性を認めるには十分であり、戦争責任を回避する理由には当たらないと考えるものである。……よって被告人二号を、C級戦犯に指定する!」
 祢々子と同じくC級戦犯。少しは情状酌量が認められたという事だろうか? いや、恐らくこれは後に控える少女たちを見越して、より重い刑罰を温存しておいた……それだけの事なのだろう。
 事実、時間がもったいないのか、みどりに対する刑罰はあっさりしたものだった。
「これよりC級戦犯・宇崎みどりに対し、最初の刑罰を下す」
 木槌を振り、嬉々として命令を下しす礼門。
「C級戦犯・宇崎みどりを、タンポンの刑に処す!」
 メス犬の刑に比べれば分かりやすい。要するに、タンポンの交換をこの場で行え、という刑罰であった。時間的にもそろそろ交換が必要だったし、強いられる行動自体はどうという事は無い。自然教室の期間中も、トイレの中で行っている事だった。
 ……そう、どうという事は無い。
 トイレの中で行うのであれば、だが。
 被告人席の机が片付けられ、みどりの手錠が外される。それからポケットティッシュとタンポンの箱が渡された。本当にいまこの場で、クラスメイト全員の見守る中で、みどりはタンポンの交換をしなければならないのだ。涙も枯れ果てた彼女だったが、しかし徐々にその現実を受け入れ始めると、羞恥と恐怖で足が震え出してきた。
 元より、みどりに拒否権は無い。
 C級戦犯にされた以上、男子の命令には逆らえないのだ。
 まず彼女はタンポンの箱を傍らの机に置き、ポケットティッシュを二枚ほど引き抜いた。それを右手で持ったまま、足を肩幅に開き、膝を落として中腰の姿勢になる。気持ち、腰を前に突き出すといい。人によって差異はあれど、みどりにとってはこの姿勢が一番楽だった。
「なぁ……タンポンの刑って何するんだ?」
「俺に聞かれても……」
「馬鹿、お前ら知らねぇのかよ。女って生理の時に綿みたいなの、マンコの中に入れてるんだぜ?」
 男子のヒソヒソ声が聞こえてくる。まさかクラスの男子の見ている前で、こんな不格好な姿勢をして、しかも一糸纏わぬ素っ裸で、タンポンの交換を披露する事になろうとは。みどりは唇を噛みつつ、ティッシュを持った右手で股間から垂れる紐を掴んだ。
 息を吐きながらリラックスして、斜め前に引っ張り出していく。
「うわっ、何か出てきた!」
「あの紐ってアレを引っ張り出すために出てたのか……」
「汚ったね、血が付いてるぜ!」
 容赦のない中傷がみどりの胸を抉る。一方の女子たちも、ほとんどがナプキン派なのか、初めて見るタンポン交換ショーに目を見開いていた。祢々子のような初潮前の子も同様だ。さすがに男子のように不躾な感想を口にしたりはしなかったが。
 取り出した吸収体をそのままティッシュに包むと、みどりはそれを机の上に置き、入れ替わりにタンポンの箱を手に取った。中からタンポンを一つ取り出し、紐の強度などを確認する。
 さすがの礼門も、みどりが膣内から取り出したタンポンを手に取ったりはしなかった。興味はあるだろうが、生理とは縁のない男子にとって、やはり血の汚れは性欲とは結び付きにくいのだ。よほどの変質者でもない限り、使用済み生理用品で興奮する事はなかった。
 カメラを構えた忠一が、床に這いつくばるような姿勢で迫ってくる。左手で陰唇を左右に開き、右手に持ったタンポンを挿入しようとするみどりの恥ずかしい姿を、全身からアップに至るまで、完璧なカメラワークで記録していった。
「ん……」
 わずかな異物感に眉をひそませつつ、彼女はプラスチックのアプリケーターを膣内に押し込んでいく。タンポンは二段構造になっており、その一段目までをほぼ完全に体内に入れてしまうのだ。
 そこまでいけば後は簡単だ。右手はタンポンを押さえたまま、左手でタンポンの二段目をさらに押し込んでいく。これが吸収体を、一段目の筒のさらに奥へと押し出すレバーになる。
 最後まで押し込んだら、吸収体はアプリケーターの中から膣内に移動しているはず。後は右手で摘まんでいるアプリケーターを引き抜けばいい。すると吸収体だけが膣内に残り、筒状のアプリケーターから吸収体の紐も通り抜け、性器から垂れる引き抜き用の紐になる……という寸法だった。経血に悩まされ続けた女性たちを救うべく、先人たちが考え抜いて創り上げた、叡智の結晶とも言うべき発明だろう。
 タンポン派の女性しか知り得ない秘密の情景を目の当たりにして、男子はもちろん、女子さえも呆然と言葉を失っていた。クラスメイトたちの心中を駆け巡っているのは、性的な興奮というよりは、見た事もない新種の生物を発見したような驚きと戸惑いである。
 確かに女子の恥ずかしい秘密を暴いてやったという感慨はある。しかしタンポンの挿入ショーは、男子にとってあまりにも未知の領域過ぎた。男子が女子の裸に興味があるのは、自分の裸を見て女子の裸はどうなっているのだろうかと想像するからだ。性器の形も、下着の色や汚れも、自分と比べる事で興味を持ち、それが性的な好奇心へと繋がっていく。
 男子には存在しない『おっぱい』にしたって、乳首だけは備わっているから、そこから興味は繋がっているのだ。
 しかし男子は生理を体験しない。
 だから生理や経血、タンポンやナプキンといった、女子にとってあまりにも特有過ぎるものに関しては、男子は性的好奇心を抱きにくいと言えるだろう。
 これは礼門にとっても誤算だった。もう少し面白いショーになると思ってタンポンの刑を言い渡したのに、結果としては淡々とタンポンを交換しただけになってしまった。みどり本人に恥辱を味わわせる事はできても、自分たち男子が興奮できなければ面白味は半減というものだ。
 交換が終わると、みどりは再び後ろ手に手錠をかけられ、刑務官たちに連れられて行く。チッ、と短く舌打ちして、礼門は木槌を打ち鳴らした。気を取り直して次の裁判に移る。
「被告人三号の裁判を開始する。被告人三号、甲守耶美! 出廷せよ」




 耶美の裁判は、最初から意外な展開を見せる事になった。
 クールな彼女なら、とっくに諦観して素直に裁判に応じ、恥辱にも耐え抜くだろう。見苦しい抵抗などするはずもない。男子も女子も、誰もがそう思っていた。
 ところが。
 彼女は被告人席に引き出されるや否や、突然礼門に対して発言を始めたのだ。
「裁判長、お願いがあります」
 予想外の行動に一同が面食らう。
「……私は裁判を放棄します。A級戦犯に指定して頂いて構いません。男子の奴隷になってどんな命令にも従います」
「なん……だと?」
「裁判長の権限で、どうか裁判を打ち切って下さい。私には、裁判で何も争う意思はありません。お願いします」
 後ろ手に繋がれたまま、何と礼門に対して深々と頭まで下げた。あれほど嫌っていた礼門に、まして自分の処女を踏みにじった憎むべき男に、ここまで屈服の態度を見せるとは。一体どういう風の吹き回しなのだろう。
 彼女にしてみれは礼門は、自分だけでなく姫乃の仇でもあるはずなのだが。
 ……姫乃?
 耶美の真意を考えあぐねていた礼門は、そこで何かに気付いたようだった。ニヤリと口元を歪ませ、木槌を甲高く打ち鳴らした。
「被告人は許可なく発言しないように。裁判は予定通り進行する」
「裁判長! 私はA級戦犯でいいんです! お願いします! 裁判を打ち切って下さい!」
 刑務官たちが止めるのを振り切って、耶美は礼門の足元にまで駆け出した。後ろ手の素っ裸のまま、膝をつき、なんと手を使わずに土下座までして見せる。礼門の目の前で、額を床に擦り付けてみっともなく嘆願を繰り返した。
「お願いします! お願いします! 何でも言う事を聞きます! だからどうか、裁判だけは……裁判だけは許して下さい!」
 一体何が耶美をそこまでさせるのだろうか。普段のクールビューティなど微塵も感じさせない醜態に、男子も女子も唖然とこれを傍観していた。
 考えられる事といえば、自分がA級戦犯になって姫乃を守ろうという行動か? しかし姫乃自身もA級戦犯に指定されれば立場は同じ。彼女を守るという点では力不足だ。もう一つの可能性としては、裁判の進行をかき乱して時間稼ぎをして、姫乃の裁判をタイムアップにするつもりかもしれない。だがそれとて、自然教室が終わった後、後日改めて裁判を開けばいいだけの話だ。ここまでの恥を晒してまでする事ではなかった。
「くどいぞ。裁判は予定通り進行する。被告人は許可なく発言しないように」
「裁判長ぉ!」
「お前の裁判を打ち切れば、その分時間が余るから、白鷺の奴の裁判にたっぷり時間をかけられる事になるなぁ。お前はそれでもいいのか?」
「それは……」
「引き立てろ!」
 礼門の命令で、刑務官たちが耶美を左右から抱き起していった。取り乱す彼女をよそに、被告人席に引きずっていく。
 かくして冒頭から波乱の展開があったものの、耶美の裁判は予定通り行われる事となった。彼女もまた、姫乃の命令に従っていただけという理屈で、争点証拠整理手続が採用される。
 さすがに三回目の裁判ともなると、雑魚男子も雑魚女子も段々と分かってくるものだ。この軍事裁判は要するに、裁判ごっこを通して被告人の女子たちを辱めるのが目的だという事に。具体的に言えば、発育途中の身体を隈なく調べ、大人か子供かと無意味な議論を繰り返し、さらには旅行鞄の中を漁って使用済みの下着すら暴き出す。散々いたぶった上で予定通り有罪の判決を下し、止めの刑罰を実行させる。
 祢々子もみどりもその犠牲となった。
 耶美もまた今からその餌食となるのだ。もちろん、後に控える桃香も。そして姫乃も。例外なく辱めを受けなければならない。助かる道などもう、どこにも残されていなかった。
「裁判長、証拠物3-1を申請します」
 清司の尋問から裁判は始まる。
 今回はいきなりスクリーンとモニターに映る映像が証拠物となった。ハッと耶美の顔色が変わる。清司もまた、彼女がどうして最初にあんなに取り乱したのか、気付いていたようだ。
 気付いた上で、意地悪にもわざと証拠物として申請している。あの時の……。
 あの時の、耶美にとって二度と見たくない、屈辱の映像を。
「やめて! お願い! 映さないで! 何でもする……何でもしますからぁ!」
 刑務官たちに取り押さえられながらも、なお泣き叫ぶ耶美。だが誰もその声に応えようとはしなかった。礼門、清司は当然として、弁護人の士郎でさえ、黙殺している。繰り返すが、諦観した少女を裁判にかけても男子たちは楽しくないのだ。被告人の少女が苦しみ、泣き叫び、のたうち回ってこそ、陰湿な復讐が成し遂げられる。
 普段クールな耶美を打ち負かす事など容易い事だった。
 なぜならクラス全員が、担任の鮫島でさえ、耶美の弱点を知っているのだから。
 想い人である白鷺姫乃――。
 それが甲守耶美の、たった一つの……そして最大の弱点である。
『気持ちよさそうね、耶美ちゃん?』
 スピーカーから桃香の声が聞こえてきた。スクリーンやモニターを見ると、はしたなくオナニーに没頭している耶美の破廉恥な姿が映し出されている。目尻に涙を浮かべ、ヨダレを垂らしながら、蟹股で無様に股間を弄んでいた。
『これを使うともっと気持ちよくなると思うわよ。いわゆるオカズってやつね』
 映像の中の桃香は青いスイムバッグを開けた。中から可愛らしい花柄のバスタオルを取り出す。タオルを解くと、中から出てきたのは紺色の女子用スクール水着だ。
 そう、これは解剖授業の時の映像。
 姫乃が礼門の麻酔薬作戦に苦戦していた頃、戦死した耶美がストリップを演じさせられ、さらに強制オナニーショーまでやらされていた時の映像だった。怪しい薬を塗られた耶美は、不覚にも性欲の虜となり、クラスメイトの目の前で最悪の痴態を晒してしまっていた。
『どう? 姫乃の身体に直接密着していたスクール水着。これでオナニーしたらさぞ気持ち良……あらら』
 映像の中の耶美は、『白鷺』という苗字がゼッケンに書かれた使用済みスクール水着をひったくり、恍惚の表情を浮かべる。
「やめて……いや……。見ないで……」
 被告人の耶美が机に突っ伏してすすり泣く。あれほどクールな美少女も、弱点を突かれればこの有様だ。あっけなく取り乱し、泣き始めてしまった。
 そんな未来の自分の姿など知る由もなく、過去の……映像の中の耶美は、湿り気を帯びた水着を抱きしめ、恍惚の表情を浮かべている。
『ああ……姫乃……。姫乃ぉ……』
 それはまさしく、快感を得ることで頭を一杯にした、浅ましい雌豚以外の何物でもなかった。塩素臭のする湿った水着からほのかに香る、姫乃の体臭を嗅ぎ、幸せそうに股間の布地をひっくり返して舌を這わせた。
『姫乃……。好き、好きなのぉ』
 過去の自分の、聞くに堪えないおぞましい愛の告白。
 これこそが耶美が最も恐れていた事だった。
 今までの裁判の流れを見ていれば当然想定できる。裁判が始まってしまえば、この映像がスクリーンに映し出され、姫乃本人の目の前で過去の自分の許しがたい罪を暴かれてしまう、と。
 この映像は既に姫乃も目を通しているだろう。それは分かっている。分かってはいるが、しかしだからといって自分と姫乃の二人の目の前で、この映像を上映される事を許容する理由にはならなかった。自分の醜態を、愛する人を自分自身の手で穢した最低最悪のザマを、愛する人本人に見られるのだ。そしてその生き地獄を、自分自身で見届けなければならないのだ。この地獄を避けられるのなら、礼門に土下座する事も男子の奴隷になる事も、何の苦痛も感じない。耶美にとって、この映像を姫乃に見られる事は、それほどの恐怖であった。
『あれ……白鷺さんの水着よね?』
『ヒメノって……。白鷺の事か?』
『女子のくせに女子がオカズって何だよ。変態じゃん?』
『気持ち悪いわね。何考えてるのよ、いやらしい』
 残酷にも、カメラには周囲のクラスメイト達の囁き声まで記録されていた。もはや耶美は叫び声すら上げられず、突っ伏したまま嗚咽を漏らすだけである。さすがに姫乃の水着を舐め回す醜態を姫乃本人に見られてしまっては、もはや立ち直れまい。
 雑魚男子たちも、雑魚女子たちも、ここまでの仕打ちはさすがにやり過ぎだと思っているようだった。囃し立てる者も、興奮している者も見受けられない。ニヤニヤ笑っているのは礼門くらいなものだ。証拠申請した清司自身も、同性愛者という点では耶美の気持ちは痛いほど分かる。心を鬼にしての行動だ。嘲笑など浮かべるはずもなかった。
 それは被告人の女子たちも同様である。
 みどりは当然として、能天気な祢々子でさえ、裁判で辱められた後という事もあるだろうが、神妙な顔をしていた。あの時の彼女たち二人は、桃香と共謀して耶美を散々にいたぶり尽くしたのだ。戦争が終わった今となっては、罪悪感を感じずにはいられないようだった。
 当の桃香もやはり辛そうだ。映像の中の桃香は、姫乃を倒すため……そして戦争で生き残るために必死になっていた。徹底的に耶美を辱め、自分が最後の一人になる事しか考えていなかった。
 だが姫乃に敗北し、自分自身も男子たちに徹底的に辱められた後では、何と残酷な事をしでかしてしまったのだろう……そんな後悔の念しか湧いてこなくても不思議ではない。自分はなんて愚かだったのだろう。自分はなんて子供だったのだろう。悔やんでも悔やみきれない。過去に戻れるのなら、馬鹿な自分を張り倒したい。今の表情を見る限り、そう思っているのは明白だった。
 そして姫乃は……。
 姫乃は何を考えているのか?
 ただ暗い表情で、唇を固く結んでいるだけだった。少なくとも、耶美に対して軽蔑の念は抱いていない。それは間違いないはずだ。だがしかし、現在の耶美にこんな仕打ちをした、礼門や清司たち男子を憎んでいるわけでもないようだった。まして過去の耶美を苦しめ、元凶の映像を撮影した桃香たちに、改めて怒りを覚えているようにも見えない。
 ただ、目の前で起こっているありのままを受け入れている。甘んじて裁判での辱めを受け入れている。そんな様子にも見受けられた。
 彼女は自分の裁判が始まっても、同じように全てを受け入れるのだろうか? 諦観して淡々と判決を聞き届けるのだろうか?
 いや。
 男子たちがそれを許すはずもない。
 桃香も、姫乃も、耶美と同じように徹底的に辱めるつもりに違いなかった。そのための策も、もしかしたら用意してあるのかもしれない。
 ――もっとも、桃香はまだしも、あの白鷺姫乃を打ち負かして、心から男子に許しを請うまでに堕とす事が本当にできるのか? それは誰にも分からなかった。口先だけの屈服では意味がない。完全に彼女の心をへし折り、自尊心を徹底的に破壊し、二度と立ち直れないほどに叩き潰してこそ、初めて白鷺姫乃に勝ったと言えるのだから。
 男子が勝つのか。
 それとも姫乃が勝つのか。
 ……結果は、神のみぞ知る事だ。




 映像が止まると、清司は軽く咳払いして、証拠物3-1の説明を始めた。
「裁判長、ご覧の通り被告人三号は白鷺姫乃に対して強い好意を抱いています。それはもはや、白鷺姫乃の指示通り従属的に参戦した……というレベルではなく、白鷺姫乃を守るために自ら参戦した、と考えるに値する強さであります」
 それは間違ってはいないだろう。事実、耶美は姫乃を守るためならば自分の純潔も恥も、全てを犠牲にする事さえ厭わなかった。それほどの恋心を抱いているからこそ、自らの唯一の汚点……あの水着舐めオナニーの映像を流される事に耐えられなかったのだ。
「彼女が同性愛者であり、白鷺姫乃に恋愛感情を持っている事は疑いようのない事実です。このようなアブノーマルな感情を抱く事自体、被告人三号の精神的成熟を示すものであり……」
「異議あり!」
 士郎が横槍を入れる。
「同性愛と精神的成熟に因果関係はありません。人が人を愛する事に対し、性別によってこれをノーマルとアブノーマルに分別する事自体、偏見以外の何物でもないと思われます」
 その言葉に、清司自身が「ごもっとも」と言わんばかりに肩をすくめた。同性愛者である彼が……いや彼だからこそ、自分がアブノーマルであるというコンプレックスに悩まされてきた。同性愛が決して恥ずべき感情ではないと知っていながら、しかし自身が同性愛者であるがゆえにこれを恥じ入り、委縮せざるを得なかった。そんな清司の屈折した心情が、思わず言葉に出てしまったのだ。
「異議を認める。検察官は質問を変えるように」
 その思いを汲んだのか、それとも単なる気まぐれか、礼門も異議を認めた。清司は忠一に目配せして、耶美の身体に話題を移す事にした。
「では被告人三号の身体を確認しましょう。見ての通り、胸はほとんど膨らんでおらず、乳房の発達はまだ未成熟であります。しかし乳首は発達しており、同じ貧乳でも被告人一号とは明らかに発育具合が異なっています。オナニーのし過ぎでしょうかね?」
「異議あり! 根拠のない中傷です!」
 再びの異議に、清司はまたしても肩をすくめた。
「では陰毛の生え具合を見てみましょう。これは凄まじいジャングルですねぇ。被告人二号も相当毛深かったですが、それ以上かもしれません。胸が大して膨らんでいないのに、ここまで黒々としたタワシを茂らせているのもなかなか珍しいのではないでしょうか」
 忠一のカメラが接写し、耶美の剛毛を画面いっぱいに映し出していく。その上でレンズを上へ上へと移動させ、お臍と乳首、そして彼女の表情までを切り取っていった。耶美はどうにか平静を取り戻し、普段のクールで精悍な顔つきを見せている。
 だが後ろ手に拘束されているため、一度目から流れた涙は拭いようが無かった。そして形のいい鼻からは無様な鼻水が垂れ流しである。クールビューティな美少女が、涙と鼻水を垂らして顎からだらしなく滴らせている表情は、最高に滑稽で最高に間抜けだった。
「おや、ここには剃った跡がありますね?」
 清司の声に、忠一のカメラが再びジャングルにピントを合わせていく。確かに、デルタゾーンの両端……水着を着た時にはみ出しそうな所だけは、剃刀か何かで剃った跡が確認できた。剛毛だとバレた以上、無駄に取り繕っても恥の上塗りをするだけだが、さすがに水着からハミ毛をするわけにはいかない。自然教室に参加する前に……あるいはプール開きの時から、最低限の処理はしていたのだろう。
「ていうか、スク水でマン毛はみ出すとか、どんだけ毛深いんだよ」
「ゴリラみたいなマン毛生やし放題でクールビューティとか、笑えるんですけど」
 オナニービデオ上映の時はさすがに耶美に同情を感じていた男子たちも、時間が経てばいつもの調子を取り戻していく。耶美の最大のコンプレックスを嘲り、馬鹿にする事で溜飲を下げていた。恐らく、彼女に負けて戦死させられた男子たちだろう。忠一のカメラがズームアウトする。精一杯クールな表情を保とうとする美少女が、涙と鼻水を垂らしながら、貧乳と剛毛を晒す無様極まりない光景がスクリーンいっぱいに映し出されていった。
「被告人三号。陰毛が生え始めた時期はいつですか?」
「そ、んな事まで……」
「黙秘権の行使は認められますが?」
「……答えます。答えれば……いいんでしょう?」
 オナニービデオ上映で心をズタズタにされた今の耶美に、男子に抗う気力はもう残っていなかった。
「四年生の……終わり頃に……」
「ほう。被告人二号と同じ時期ですか。しかし陰毛はあなたの方が濃いようだ」
 桃香が戦死した時、祢々子がうっかり口を滑らせたために、みどりの陰毛が生え始めた時期はクラスの男子全員が知っている公然の事実だった。今も他の被告人たちと並んで立たされている彼女の股間と見比べると、確かに耶美の方が僅かに毛深いようだ。
「机に突っ伏して足を広げて下さい」
 清司の不躾な命令にも、耶美は逆らう事なく従った。もはや彼女は牙をへし折られた負け犬に過ぎない。清司が尻肉を左右に割り広げ、忠一が肛門のアップをファインダーに捉えても、されるがままに屈していた。
「ご覧下さい、このすみれ色の肛門を。周囲に僅かですが発毛が見られます。やはり被告人二号よりも、被告人三号の方が毛深いようです。五年生でケツ毛まで生えている少女など、なかなかお目にかかれないでしょう」
 それはケツ毛と言うにはあまりに頼りない。産毛が微かに硬く太くなったような、そんな繊毛が数本、生えているに過ぎなかった。それでもケツ毛はケツ毛だ。デジタルハイビジョンのカメラで接写されれば、毛が生えている事は否定しようのない厳然たる事実であった。
「ぷっ、ケツ毛だって」
「ホントに女かよアイツ」
「俺、あんなのに負けてチンチン見られちゃったんだなぁ」
「ケツ毛生やしてる女とか、無いわ……」
 遠慮のない雑魚男子たちの笑い声が響く。耶美の肩が小刻みに震えた。忠一が頭の方へ回り込み、彼女の表情を撮影すると、何と耶美は声を押し殺して涙を流しているではないか。さしものクールビューティも、ケツ毛まで見られれば心をへし折られてしまうらしい。
「見ろよ、あいつ泣いてるぜ」
「ざまぁねぇ。所詮は女だな」
「ケツ毛女のくせに、偉そうに男子に逆らいやがって」
「まずはケツ毛の手入れしてから男子に歯向かえって話だよな」
 いや本当は、男子にケツ毛を見られて泣いているのではないのだろう。
 姫乃だ。今この視聴覚ルームにいる、白鷺姫乃にケツ毛を見られたことが耐えられないらしかった。ハミ毛を気にして陰毛を処理した耶美も、まさか自分の肛門から毛が数本生えているとは気付かなかった。その不注意が、愛する人にケツ毛を見られるという取り返しのつかない失態に繋がってしまったのだ。
 声を出さないのがせめてもの抵抗か? しかしオナニービデオ上映の時にあれだけ泣き叫んでおきながら、今さらプライドを保とうとするのは、間抜け以外の何物でもない。そんな事にさえ気づかないほど、今の耶美は身も心もボロボロになっていた。弱点を突かれるだけで、人はこれほど脆く、あっけなく崩れ去ってしまうものなのか……。
 耶美が精神的に大人だと散々主張し、清司が尋問を終える。彼に促され、耶美は元通り姿勢を直していった。
 次いで士郎が反対尋問に入る。
 彼は耶美の黒いスポーツバッグを、証拠物3-2として申請した。正確には、その中に入っている、彼女の汚れもの袋だ。身体検査は目一杯行ったので、今度は持ち物検査で彼女を辱めようという算段である。
 机の上に広げられる、耶美の使用済み下着。いずれも飾り気のない、シンプルなブラとショーツばかりだった。
 初日に着ていたのがグレーのスポーツブラに、黒無地のショーツ。
 二日目が、白のスポーツブラに、白無地のショーツ。
 三日目が、ベージュのスポーツブラに、ベージュの無地のショーツ。
 洒落っ気も何もあったものじゃない。男に媚びるどころか、同性に見られる事さえ意識していないような、普段通りの味気ない下着であった。解剖授業の時はグレーのジュニアブラに、ストライプ柄のグレーのショーツだったから、まだ多少なりとも下着に気を遣っているように見えたのだが……。
 だが本番はここからだ。士郎がショーツを手に取り、一枚ずつ裏返してクロッチの裏側を露わにしていく。
「おや、これはどうした事でしょう」
 戸惑う声を上げる士郎。その口調に演技の色は見えなかった。どうやら、下着の汚れをあげつらって、その無頓着さから精神的に子供だ……という論法にするつもりだったようだ。ところが三枚のショーツのクロッチは、いずれもほとんど汚れていなかった。弁護のロジックが狂い、焦りの表情を隠せないでいる。
 耶美の下着は以前、解剖授業の時に散々オモチャにされていた。クラスメイトの目の前でショーツを脱いだ耶美は、担任の鮫島にその下着を奪われ、クロッチの無残な汚れを暴露され、教室のテレビにドアップで映されるという屈辱を味わった。
 それどころか、脱いだショーツはクラスメイト達に回覧され、汚れ具合を確かめられ、臭いまで嗅がれてしまったのだ。年頃の女の子にとって、これほどの屈辱が他にあるだろうか?
 しかし、今の耶美の下着には、全くと言っていいほど汚れが見当たらなかった。間違えて未使用の下着を出してしまったのではないか……そんな疑念さえ湧いてくる。だが念のために鞄の中を漁っても、下着の入った汚れもの袋は他には無いようだった。
 だとすれば何故、この下着はこれほど汚れていないのか?
「待てよ……。そうか!」
 士郎が何やら閃く。
 鞄の中をかき回すと、お目当ての物を見つけ出し、証拠物3-3として申請した。机の上にその……黄色い巾着袋を置いて見せる。
「裁判長、証拠物3-3の中身をご覧下さい。これは生理用品入れのようです。ナプキンが三枚ほど入れられています。被告人三号、あなたは初潮を迎えていますか?」
 もはや何度目なのかという質問。耶美に対しては初めてだが、被告人は全員この質問に答えなければいけない決まりでもあるのか? うんざりしたように、彼女は即答した。
「いいえ」
「ではこれは万が一に備えてという事ですね。ならばこれは何でしょう?」
 ナプキンに続いて、士郎はさらに別の物も巾着袋から取り出していった。それはナプキンによく似ているが、もっと薄手で、形もシンプルな物だった。
「それは……」
 一瞬言い淀む。しかし抵抗は無意味だ。耶美は素直にその名前を口にした。
「パンティライナー、です」
 またしても聞きなれない単語の登場に、男子たちがざわめきだした。女子でさえ、よく分かっていない者がいるらしく、周囲に言葉の意味を聞いて確認している。確かに、使っていない人間からすれば「パンティライナー? 何それ?」と言いたくなるのも当然だ。現に士郎が全く同じ質問をぶつけてくる。
「パンティライナー? 何ですかそれは?」
 あるいは知っていてわざと尋ねているのか。どっちだろうと、耶美の口からそれを説明しなければならない事に変わりは無かった。
「ナプキンよりも小さくて薄くて、おりもの汚れで下着が汚れるのを防ぐための生理用品です」
「ああ、なるほど。おりものシートとも呼ばれるものですね。被告人三号は以前からパンティライナーを使っていたのですか?」
「いいえ」
「でしょうね。使っていれば解剖授業の時、あんなにクロッチの内側にべっとりと汚れをこびり付かせていなかったでしょうから」
 女性の性器からは、生理の経血以外にも、膣内の粘液や組織片などが排出される『おりもの』という分泌物が発生している。量が少なければ特に対策も必要ないが、乾燥すれば変色し、クロッチの汚れにも繋がる。湿り気を不快に感じる人もいるだろう。そのためこのパンティライナーを下着の内側に取り付け、汚れ対策をしている女性も少なくなかった。簡易版のナプキンと考えればいい。
 生理が始まる前は特におりものの量が増えるため、ナプキンを使うより前にパンティライナーを使い始める少女もかなりいるらしい。しかし解剖授業の時の耶美は直接下着を着用し、パンティライナーを使っていなかった。オシッコの染みやウンチのカスに加えて、おりもの汚れもクロッチにしっかりと付いていたにもかかわらず、だ。
「説明して下さい。なぜあなたは以前使っていなかったパンティライナーを使うようになったのですか? おりものの汚れは以前からありましたよね?」
 タンポンやナプキンに加えて、パンティライナーの存在まで男子に知られてしまった。女子だけが知り得る、女子だけの秘密を、まるで次々と暴露されているかのようだ。
 思春期から始まる、男子には無い特別な生理現象。
 それらは手間のかかる身体のケアに違いなかったが、同時に女子が女子であるという象徴でもあった。男子が知らない事を知っている優越感。自尊心。アイデンティティー。女子だけが共有する、そのかけがえのない秘密が、無造作に暴かれ、晒され、踏みにじられる。耶美だけでなく、視聴覚ルームにいる全ての女子たちが、言い知れない敗北感に打ちひしがれていた。
「……解剖授業の時に下着の汚れを見られて、恥ずかしい思いをしました。だからパンティライナーを使うようになったったんです」
 諦観しきった耶美は、士郎が求めているであろう答えを淡々と述べていく。
「そういえば甲守のパンツ、臭かったよなぁ」
「股のところ、真っ黄色だったよね」
「毛深いわパンツ汚いわ、もう終わってるだろコイツ」
 男子たちのヒソヒソ話も、既に耶美にはあまり届いていないようだった。焦点の合わない目でぼんやりと中空を見上げている。
 確かに、もう終わっている。最初に水着舐めオナニービデオを上映された時点で、耶美はもうとっくに終わっていたのだ。今の彼女は、最も見られなくない醜態を最も愛する人に見られてしまった、ただの抜け殻に過ぎなかった。
「裁判長。お聞きの通り、被告人三号は下着の汚れを馬鹿にされた事に傷つき、二度と同じ失敗を繰り返さないよう、パンティライナーを使っていました。彼女は本当は、繊細で臆病な、一人の女の子に過ぎないのです。そんな彼女がどうして主体的に戦争に参加できたというのでしょうか? 被告人三号はただ、白鷺姫乃への愛情故に参戦し、彼女を守りたいと願っていただけなのです。多くの男子を戦死させたのも、あくまで白鷺姫乃の命令によるもの。彼女の責任ではありません」
 祢々子の裁判では、男子の前で脱糞させられたトラウマから便秘薬を服用している彼女に対し、天真爛漫な少女ではなく大人の女性である……という論理を清司が展開していた。今回は似たような論理でありながら、しかし全く逆のパターンだ。トラウマを持つ耶美の事を大人ではなく、傷つきやすい少女であると結論付けていた。筋さえ通っていれば後はどうにでも話を誘導できる。都合のいい裁判もあったものだ。
「弁護人は、情状酌量による寛大な判決を求めるものであります」
 言い終えて、士郎が弁護人席に戻っていく。
 何度やっても結果は同じ。最初に結論ありきでやっている以上、どれだけ士郎が熱弁を振るった所で、耶美が有罪である事は変えようが無かった。
 耶美が目を閉じる。
 判決の内容など、もはや彼女の興味の範囲外らしい。
 一通り裁判終了までの手続きを経た後、今までと全く同じパターンで礼門が木槌を打ち鳴らす。
「それでは判決を言い渡す。――被告人三号、甲守耶美を有罪とする!」
 もう女子の間に落胆の声すら漏れる事はなかった。当然の判決。いやむしろ安堵感のようなものさえ広がっている。その微妙な空気の変化に、勘のいい者たちは気づき始めていた。最初の頃は被告人たちの無罪を願っていたはずの雑魚女子たちが、徐々に心境を変化させているのだ。
 そう、雑魚女子たちは気が付いたのだろう。これがあくまで裁判の体裁を保っている以上、自分たちは絶対の安全圏にいるという事を。裁判で裁かれるのは被告人だけ。つまり戦争責任を負わされるのは五人の被告人たちのみであり、自分たち雑魚女子は一切の責任を負わずに済む仕組みになっている事を。
 ならば男子に歯向かう必要などどこにもない。裁判の進行を妨害する理由もない。下手に抵抗して自分たちまで戦争責任を負わされたらたまったものではなかった。五人が全員有罪になれば、彼女たちを人身御供にして、自分たちだけは助かる事ができる。
 雑魚女子たちは、被告人たち五人がかつて、女子軍中枢部として自分たちを引っ張ってくれていた事などすっかり忘れているようだった。激しい戦争のさなか自分たちを守り、時には男子の魔の手から救ってくれた事さえも、忘却の彼方へと追いやっている。それこそが士郎たち男子が仕組んだ、この軍事裁判の本当の目的なのだ。
「被告人三号、甲守耶美の盲目的な恋愛感情は確かにその行動に大きな影響を与えている。しかしながら彼女が自発的に参戦し、能動的に作戦を立案・実行した事実は看過しがたい。被害者の強い処罰感情を考えれば、いたずらに情状酌量せず、厳罰をもって罪を償わせる事が相当だと考える次第である」
 この裁判の本当の目的。
 それは女子軍のチームワークを完全に破壊し、二度と男子軍に逆らえないように解体してしまう事にあった。
 雑魚女子たちは、中枢メンバー五人を生贄にすれば自分たちだけは助かると悟っただろう。だから危険を冒してまで中枢メンバーに協力するような真似は、もう二度と行わない。もし反乱が失敗すれば、男子たちが握っている自分たちの恥ずかしい写真がどうなるか……考えただけでも寒気がするというものだ。
「……よって被告人三号を、B級戦犯に指定する!」
 一方の中枢メンバー五人は、いくら知力や統率力に優れていたとしても、たった五人だけでは男子軍に対抗する術は持ちえなかった。その上男子たちは、雑魚女子たちと分断された五人の中で、さらにA級・B級・C級という格差を設けようとしている。中枢メンバー同士の団結力にさえもヒビを入れようというのだ。
「B級戦犯はいついかなる状況においても、男子の命令には絶対服従するものとする。拒否権は一切存在しない。ただし、その命令をA級戦犯に肩代わりさせる事は可能である」
 C級戦犯は男子に逆らえないが、その命令をB級やA級の戦犯に肩代わりさせることはできる。同様にB級戦犯は、男子とC級戦犯の命令には逆らえないが、A級戦犯に全てを押し付けて逃げる事ができる。全ての戦争責任を背負わされるA級戦犯は不満を募らせるが、協力してくれる仲間がいなければ男子軍に反乱を起こす事もままならない……。こうして中枢メンバーの五人もお互い反目し合い、仲違いを起こし、潰し合って男子軍へのレジスタンス能力を消耗させていく。実に完璧な統治計画であった。
 人間の心理の常だ。支配者が安定した支配を続けるには、被支配者が団結しないよう、格差を設けて分断するのが最も確実である。上の階級の者は下の階級を見下して不満を和らげ、下の階級の者は支配者ではなく上の階級の者を憎むようになる。
 これでもう、女子軍が男子軍に歯向かう事は、事実上不可能になったと断言できるだろう。
「これよりB級戦犯・甲守耶美に対し、最初の刑罰を下す」
 木槌の甲高い音が視聴覚ルームに響いた。耶美の意識が現実に引き戻されたのか、わずかに目の焦点が合い始める。
「B級戦犯・甲守耶美を、尻文字の刑に処す!」
 尻……文字?
 だが礼門の口から飛び出した予想外の言葉に、彼女は戸惑いを隠せない。てっきりオナニーショーをやらせるとか、オシッコショーをやらせるとか、そういう性的な命令を下すと思っていたのだが。礼門はエロスよりも、クールな耶美に赤っ恥を掻かせる事を優先したらしかった。彼にしてみれば、耶美は既にモノにした中古品。姫乃のように固執する理由もなく、性的な関心が湧きにくいのかもしれない。
 尻文字とは、腰をくねらせて尻で空中に文字を書く遊びだ。何と書いているのか、チームに分かれてそれぞれ推理し合うゲームなど、低学年の遊びとしてよく用いられている。自分でお尻を大きくゆっくり振る必要があるため、恥ずかしい罰ゲームとしても定番だった。
 しかしまさか五年生にもなって……あの冷静沈着な耶美が尻文字をやらされる事になるとは。しかも後ろ手に拘束されたまま。もちろん一糸纏わぬオールヌードの姿で。
「B級戦犯・甲守耶美は机の上に乗り、尻を傍聴席に向けて『ま・け・ま・し・た』と書け」
 男子たちが机のそばに椅子を運んできて、上に乗るための足場にした。やはり手錠を外すつもりはないという事だ。忠一がカメラを構えてスタンバイする。もはや耶美は全てを諦めて晒し者になるしかなかった。
 その上、さらに礼門は何やら彼女に耳打ちして、尻文字の前に皆に敗北宣言をするよう命令する。どうせ拒否権は無いのだ。従う他ない。拘束されたまま上手くバランスを取り、耶美がゆっくりと椅子の上に、次いで机の上に足を乗せていく。傍聴人席のクラスメイト達を一望すると、大きく息を吐いて、あらかじめ吹き込まれた屈辱のセリフを紡いでいった。
「……B級戦犯・甲守耶美は男子女子戦争で生意気にも男子軍に逆らい、敗北しました。これからお詫びの印に、尻文字で『ま・け・ま・し・た』と書きます。身の程知らずの馬鹿な女子の姿を、どうぞ皆さんで笑ってやって下さい」
 その場でターンし、硬さの残る小ぶりなお尻を級友たちに改めて披露する。足を机の幅いっぱいに広げると、上半身を倒し、お尻を突き出していった。足を広げるのも礼門の命令だ。尻文字が書きやすいか書きにくいかは問題ではない。耶美にどれだけ恥をかかせられるかが重要らしかった。
「いよっ、待ってました! クラスいちの剛毛ちゃーん!」
「すっげータワシだな! 股の間からボーボーなのが丸見えだぜ!」
 お調子者の男子が囃し立てる。
「やだ、ホントにやっちゃうの?」
「あたしだったら絶対無理だなー。その前にちゃんとヘアくらい手入れするし」
 女子たちも小声ではあるが、ヒソヒソと囁き合って耶美を小馬鹿にしていた。これが安全圏にいる者の余裕という事だろう。
 そんなギャラリーの反応など意に介さず、耶美は腰を左から右へとスイングさせていった。それからもう一度左に戻し、また左から右へとスイングする。『ま』の一画目と二画目だ。本人は必死だったが、見ている人間からすれば滑稽な動きでしかない。あまりの情けなさに涙が浮かんできた。
「フン。いいザマだな」
 命令を下した礼門は、傍聴人席へは行かずに、裁判長の席で高みの見物と洒落込んでいる。耶美のお尻ではなく、尻文字を強制される彼女の羞恥の表情を楽しもうという魂胆だ。どこまでも悪辣な男である。
『ま』を書き上げたら、次は『け』。
 男子も女子も、みんな寄ってたかって耶美を嘲笑する中、彼女は早く終わらせようと必死に腰をくねらせていた。
「耶美ちゃーん、お尻フリフリして色っぽいぞーっ」
「やだ、ホントに毛深いのね。モジャモジャじゃない」
「ケツ毛はさすがに近づかないと見えないなぁ」
「頼むからもうちょっと恥じらいってものを持ってくれない? 同じ女として恥ずかしいわ」
 容赦ない中傷に、再び耶美の目から涙が溢れ出す。否、彼女が泣いているのは中傷のせいではない。クラスメイト達に無様な醜態を晒そうと、決して動じない強い精神力を耶美は持っていた。
 やはり姫乃だ。
 姫乃にこんな有様を見られていると感じるからこそ、自然と涙が零れてしまう。クラスの誰よりも……男子よりも女子よりも、担任の鮫島よりも、耶美は白鷺姫乃に痴態を見られる事が辛かった。
『け』を書いたらもう一度『ま』。
 忠一のカメラのレンズが眼前に差し出される。耶美のカッコ悪い泣き顔をスクリーンとモニターに映し出そうというのだ。しかも彼は憎らしい事に、ファインダーの画面を反転させ、ちょうど自撮りモードのような形にしていた。つまりレンズに映る耶美の泣き顔が、カラー液晶画面にそのまま表示され、彼女の鼻先に突き付けられた格好になっている。
 否応なしに見せつけられる、涙と鼻水塗れの自分の泣き顔。そしてそれを白鷺姫乃に見られているという現実。もはや限界だった。
「うう……、もう、いやぁ……」
 必死に我慢していた嗚咽が自然と口から洩れていく。
「見ないでぇ、お願い……見ないでぇ……」
 クールビューティの面影など微塵もなく、耶美は幼子のように声を上げて泣き始めた。大きく開けた口からは涎まで溢れ出し、糸を引いてカメラのレンズに垂れ落ちていく。この地獄から抜け出すためには、とにかく尻文字を完成させるしかない。大きく上から下に尻を動かしてから、右斜め上に腰を跳ね上げ、『し』を書きあげる耶美。
 そして最後の文字……『た』を書く頃には、もう大泣きのあまり過呼吸になり、膝がガクガク笑ってまともにお尻を動かせなくなっていた。そのへっぴり腰がまたクラスメイト達の爆笑を誘う。
 男子女子戦争において、白鷺姫乃の右腕として辣腕を振るい、多くの男子を血祭りに上げてきた冷徹なる美少女――甲守耶美は、こうしてあらん限りの生き恥を晒し、無様に男子の軍門に下った。彼女に負けておちんちんを見られてしまった男子たちは、さぞ胸のすく思いだろう。
 『まけました』と書きあげた耶美は、力尽きてその場で突っ伏してしまった。机の上で後ろ手のまま、膝立ちになって頭を着いた姿勢になる。つまり、お尻を高々と上げて、股間からはみ出した剛毛をこれでもかと級友に見せつけるポーズだった。誰に命令されたわけでもないのに、自然とこんな姿勢になってしまうとは……負け犬に成り下がった者の鑑と言えよう。
「ったく、だらしがねぇ。なんてザマだか……。おい、さっさとコレ、片付けろ。次の裁判に移るぞ」
 心底楽しそうな表情で、礼門が刑務官たちに指示を出す。コレ呼ばわりされた耶美の身体が机から引きずり降ろされ、被告人たちの元へと運ばれていった。腰が抜けたのだろうか? 立つ事さえままならない様子だ。結局、女の子らしいアヒル座りの格好で、耶美は体力が戻るまで裁判を傍聴する事になった。
 その様子を見据える礼門の視線は、既に次の被告人へと向けられている。
 ……羽生桃香。
 残り二人のうち、メインディッシュを最後にするなら、当然次は彼女であった。礼門の視線に気づき、ビクッと彼女が肩を震わせる。
 被告人の女子たちの受難は、まだまだ終わりそうになかった。


スポンサーサイト
[PR]

[PR]

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR