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第二十一話 『天使の少女』

2015-06-30

 白鷺姫乃が今からストリップショーを行い、すっぽんぽんの丸裸になる。
 その事実を前にして、しかし素直に喜んでいる男子はほとんどいなかった。もちろん、姫乃の裸は見たいし、可哀想だから許してあげようなどと思っているわけでもない。単純な話だ。本当にあの白鷺姫乃が、大人しく服を脱ぐのだろうか……誰もが疑念の目で警戒しているからに他ならなかった。
 そう。
 あの白鷺姫乃が、このまま何の策もなく裸になるはずが無い。きっと思いもよらない知略で奇跡の大逆転を果たし、結局男子軍が返り討ちになるのだろう。騙されてなるものか。期待するだけ期待して、落胆させられるのはごめんだ。切り株を取り囲む男子の誰もがそう思っていた。逆に女子の多くは、その劇的な逆転のシナリオに一縷の望みを託し、祈るように事態の推移を見守っている。
 礼門もまた、警戒心を解いていない男子の一人だった。姫乃の行動に何か怪しい点はないか? 周囲に不審な動きをしている女子はいないか? 常に目を光らせて万が一の展開に備えていた。
 そんな状況だから、姫乃に対して「早く脱げよ」などと野次を飛ばす者は一人もいなかった。ジワジワと気温が上昇していく初夏の御昼前。涼しげな林の中であっても、自然と汗が浮かび上がってくる。静寂に支配された周囲に響くのは、僅かにセミの鳴き声だけだった。
 ――やがて、姫乃が歩を進め、切り株の上に足をかけた。
 高さは六十センチあるか無いか。テーブルとしては低めだが、お立ち台としては十分な高さである。スニーカーを載せて重心を傾け、両手を切り株のふちにかけて、よじ登るように上に立った。キュロットスカートから覗く健康的な太腿が眩しい。
 普段の姫乃は、丈が長めのスカートを着用している事が多く、キュロットスカートは珍しかった。あの太腿が見られただけでも、男子にとってはこの上ない眼福だったのだ。もし本当に姫乃がストリップを行うのなら、太腿どころか、これからもっと凄い場所まで見る事ができる。礼門は、そして他の男子たちは、それが現実の事とはなかなか実感できなかった。
 切り株の上に姫乃が素立ちする。
 改めて見ても、惚れ惚れするような美しい少女であった。
 端正な顔立ちに長い睫毛。輝く黒髪は腰まで伸び、すらりと伸びた手足はこの年齢特有のボディラインを形成している。大人の女性に比べれば身体の丸みは少ないが、かといって少年のような硬いシルエットというわけでもない。手足の短い幼児体型から、大人の女性へと変質していく、長い人生の中でもほんの一時期にしか見られない……思春期ならではの身体つきであった。
 着ている服は、白の丸襟ブラウスに、薄いピンクのキュロットスカート。後はソックスと靴と、僅かにウェストポーチを身に着けているだけだった。ロングヘアを整えるためのヘアピンは、ストリップの対象にはカウントしなくていいだろう。普段通りの髪型で、首から下が素っ裸の方が、より淫靡さが際立って興奮するというものだ。
「……始めます」
 姫乃が小さく呟く。
 その表情には明らかに羞恥の色が浮かんでいた。耶美のように平静を装っているわけではない。桃香のように虚勢を張っているわけでもない。ごくごく自然に、恥ずかしさを感じ、かつそれを受け入れている。ストリップを行う事が自分の義務であり、使命であると理解しているように感じられた。それが演技なのか本心なのかは不明だが……。
 まず彼女が手にかけたのはウェストポーチだ。ベルトの留め具を外し、腰から抜き取っていく。膝を折って切り株の上でしゃがむと、足元の地面にそれを静かに落としていった。乱暴に放り投げたりしないのはいかにも姫乃らしい。
 次に脱ぐのはソックスと靴だろう、と礼門は思った。いかに白鷺姫乃といえども、所詮は五年生の幼い少女。いきなり下着を晒すのは覚悟がいる。ウェストポーチの次は靴、靴の次はソックス……そうやって時間を稼いで心を落ち着けようとするはずだ。もし逆転の秘策があるのなら尚の事、いきなりブラウスやキュロットスカートを脱ぐわけにはいかなかった。
 だが、彼の予想はいきなり裏切られる事になる。
 再び直立の姿勢になった姫乃は、腰に手を廻し、キュロットのファスナーに手をかけたのだ。金具がゆっくりと引き下ろされていく。ジィィィ……という無機質な音が、林の中に小さく響いた。
 切り株の周囲の男子たちは、一斉に色めき立った。まさかソックスや靴を差し置いて、いきなりキュロットスカートに手をかけるとは。姫乃が着用しているキュロットは、ショートパンツに近いデザインの、活動的な物だ。よほど近くで覗き込まない限り、裾から下着を確認する事はできず、パンチラを視姦する事は不可能に近かった。
 しかし脱いでしまえばその鉄壁の防御も砂上の楼閣と化す。
 いよいよ白鷺姫乃がクラスの男子たちに、その下着を晒す瞬間が来たのだ。次はソックスや靴だと予想していた礼門や男子たちは、完全に不意を突かれた格好となっていた。跳ね上がる鼓動を必死に抑え、待ちに待った瞬間を見逃すまいと、ただひたすら無言で彼女の手の動きに集中している。先程まで姫乃に抱いていた警戒心など、いとも容易く吹き飛ばされていた。野次を言う余裕さえない。男子たちがこうなる事を見越して、あえてソックスや靴を後回しにしたのだろうか……? だとしたら実に恐ろしい少女である。
 もはや礼門たちにとって、姫乃が企んでいるかもしれない逆転劇のシナリオなど、どうでも良くなっていた。たとえ返り討ちにされても一向に構わない。手の平を返すようだが、今この瞬間、パンチラだけでも拝めるのであればそれで十分満足だと思えるからだ。
 姫乃がスカートのホックを外す。ウェストを締めつけていた生地にゆとりが生まれた。後は指先から力を抜けば――、キュロットは重力に引っ張られて足元に落ち、姫乃のショーツが太陽の光に照らし出される事になる。
 女子は入浴の時に姫乃の下着姿くらい見ているだろう。一部の男子も、和平会談の時に目撃しているらしい。けれども礼門や大多数の雑魚男子たちが、姫乃の下着を見るのはこれが初めての経験だった。下着の趣味はどんなものなのか? 色や柄は? そしてショーツの下に果たして陰毛は生えているのか?
 陰毛はさておき、少なくとも最初の二つの疑問は、もうあと数秒後に知る事ができる。姫乃が何かとんでもない謀略を仕掛けてこない限り、その事実は決して揺らぐ事はなかった。
 もうすぐだ……。
 もうすぐ、白鷺姫乃のショーツを見る事ができる!
 礼門がゴクリと唾を呑み込んだ。ここまで期待させておいて、やっぱり逆転の末にお預けを喰らってしまうのではないか? そんな不安も脳裏を過ぎったが、世紀の瞬間を見逃すリスクを背負ってまで、周囲に警戒の視線を巡らせるような真似はできなかった。あの白鷺姫乃の無敵のガードがようやく突き崩される。最初の一瞬を見逃したら、それこそ一生後悔しなくてはなるまい。忠一がカメラで記録しているとはいえ、やはりそこは生で、自分の両目で、しっかりと網膜に焼き付けたいと思っていた。
 そしてついに。
 姫乃の指先が弛緩し、キュロットスカートが支えを失った。無情にも重力はスカートの生地を引っ張り、これを足元へと落下させていく。
 ぱさり、という乾いた音と共に、キュロットは姫乃の下半身を滑り落ちていった。露わになる真っ白い太腿の付け根。腰を覆うブラウスの裾。そしてその両者に挟まれ、僅かに顔を覗かせる逆三角形の白い布。
 白鷺姫乃が、クラス全員と担任教師の前で、カメラに記録されながら、下着を晒した瞬間だった。純白のコットン布地が愛らしい。
 これが……これが白鷺姫乃のショーツか……。
 礼門は言葉も無かった。ほんの僅か……ブラウスの裾と太腿の付け根との間にできた、ごくごく限られたスペースから顔を覗かせているだけの小さな布地に、よもやこれほど興奮しようとは。
 周囲のクラスメイトたちは、全員腰を下ろしてストリップショーを鑑賞している。切り株の上に立つ姫乃とは視線の高低差が激しく、まさに神秘のデルタゾーンを見上げる格好になっていた。彼女の背面に位置している連中には、ヒップラインの一部が丸見えになっているのだろう。姫乃にはその場で一回転してもらいたかったが、礼門の口からそれを強要する命令の言葉は飛び出さなかった。そんな事より早くストリップの続きを見たい。一分一秒が惜しかった。心臓が口から飛び出さんばかりに脈打っている。ビデオで耶美のストリップを見た時も、桃香を自分の手で脱がした時も、これほど興奮はしていなかった。やはり白鷺姫乃は特別なのだ。彼女は他の少女たちとは格が違う。
 落下したキュロットから片方ずつ足を引き抜いた姫乃は、ウェストポーチと同じく、それを手に取って静かに足元へ落としていった。しゃがみ込んだ時にショーツがよじれる。もう礼門たちは一瞬たりとも姫乃のショーツから目を離せなくなってしまっていた。身体の動きに合わせて形を変えていく木綿の生地。その皺。陰影。全てを記憶に刻み込まなければ気が済まないのだ。
 かくして、白鷺姫乃は下半身パンツ一枚という姿になった。
 だがまだオールヌードには程遠い。上半身はブラウスにしっかりと保護され、白い布地はその薄さにもかかわらず、姫乃の身体を完全に防御していた。さすがにブラジャーはしていると思うが、全く透けていないため、色も形も一切判別できない。姫乃の上半身は未だ秘密のヴェールに覆われているのだ。
 まぁその城壁もすぐに崩落するだろう。
 キュロットスカートを脱いだ姫乃は、ソックスと靴はそのままに、今度は胸元に手を宛がった。初夏の陽気にも負けず、姫乃は律儀に襟元の第一ボタンまで留めている。その真珠色のボタンに、彼女のたおやかな指が添えられていった。
 次はブラウスを脱ぐのだ。
 という事はつまり、白鷺姫乃のブラジャーが露わになる事を意味していた。白鷺姫乃が完全な下着姿を公開する。その状態でも、身体を隠されている比率は、未だビキニの水着と変わらない。しかしクラスメイトたちが今まで見てきた中で、最も無防備な姫乃の姿は、水泳の授業の水着姿止まりであった。ワンピースのスクール水着。それが男子たちの見る事が出来た、姫乃の一番露わな姿だったのだ。
 その限界線がいよいよ突破される。白鷺姫乃のお腹、お臍。今まで決して見る事ができなかった場所がとうとう白日の下に晒されるのだ。
 第一ボタンが外される。
 姫乃の指には明らかな震えが見られた。当然だろう。ストリッパーやAV女優、ヌーディストでもない限り、人前での脱衣が平気な人間などそういるはずもない。姫乃にしては珍しく半開きとなっている唇からは、浅い呼吸がせわしなく何度も出入りしていた。
 第二ボタンが外される。
 まだ下着は見えない。だが、身なりを常に整えている姫乃が、ここまで胸元を開ける事は今まで決して無かった。次の第三ボタンが勝負だ。それを外してしまえば、さすがにブラチラは避けられない。
 姫乃の背面に位置している連中には、彼女がボタンを外している様子は全く見えないだろう。けれども彼らが文句を言う事は無かった。余計な野次を飛ばしてストリップの流れを中断したくないようだ。正面からの映像は後でビデオを見て確認できる。むしろ映像に記録されていない背中側……震える太腿やヒップラインの方が、記憶に刻み込んでおくべき貴重な個所なのかもしれない。
 そしていよいよ、第三ボタンが外される。
 真珠色のボタンがボタンホールを抜け、ブラウスの圧迫がまた一つ解放された。同時にそれは、姫乃の上半身を守る無敵の城壁が、また一つ完全崩壊に向けて崩れ去った事を意味している。
 ブラウスの生地が左右に分かれ、中央から覗く姫乃の素肌がいっそう露わになる。透き通るような美しい肌だ。普段紫外線を浴びないその場所は、色白の姫乃の肌の中でも一層白さが際立つ場所の一つであった。
 白いブラウス。白い肌。その中に、もう一つ別の白さが顔を覗かせる。
 ブラジャーの白だ。
 姫乃が胸に付けている下着が、ようやく姿を見せたのである。胸の谷間……という程谷間にはなっていないが、ともかくその部分には小さなリボンが添えられていた。よく見ると細かい星の絵が、総柄として生地全体を覆っている。いかにも五年生の少女が好みそうな、ちょっと子供っぽいデザインの下着。大人びた言動の姫乃が身に着けるには少し幼い印象だ。しかしそのギャップがまた興奮を掻きたてる。あれほど知略に優れ、聡明で高潔な白鷺姫乃が、ごくごく普通の子供じみた下着を好んで使っているなんて……実に興味深いではないか。
 第四ボタンが外される。
 お腹の中心部が露わになった。ここは横隔膜という、呼吸運動に欠かせない重要な筋肉のある場所だ。緊張と興奮で呼吸の乱れた姫乃のお腹は、激しい収縮を何度も繰り返していた。彼女の羞恥と狼狽が、筋肉の動きからも手に取るように分かる。
 最後の第五ボタンが外された。
 ブラウスはもはや完全に左右に分断され、生まれたクレヴァスから姫乃の素肌が露出していた。首から胸元、お臍、太腿を経てソックスの上端まで、肌色がほぼ一直線に繋がっている。ただしブラとショーツの二か所においてのみ、無粋な白布が肌色を途切れさせてしまっているが……。それでもこれほど多くの面積の肌を、姫乃が男子たちの前で露出した事は、今までただの一度も無かった。
 ショーツもさっきまでとは段違いに開陳されている。股間部分の逆三角形しか見えていなかった先程とは異なり、今はクロッチ部分から上端までが露わになっていた。小さな飾りリボンをしっかりと確認する事ができる。
 初めて露わになったお臍も、うっとりするほど美しい。
 出臍だったり、臍胡麻で汚れたりしていたら、それはそれで愉快だったのだが、そこはさすが白鷺姫乃だ。美少女は臍まで綺麗だった。きちんと手入れされているのか、汚れなども見受けられず、慎ましやかな窪みが見られるのみである。
 一瞬そこで、姫乃の動きが止まった。
 次に彼女がすべき行動は、はだけたブラウスを脱ぎ去る事。だがそれによって一気に肌の露出は増える事になる。今はまだ、面積だけで考えればスクール水着と同じかそれ以上の布地は身に着けていた。しかしここでブラウスを脱いでしまえば――。
 ソックスと靴を除けば、身に着けている物は僅かにブラとショーツだけという有様になってしまう。姫乃の性格からして、ビキニの水着など着た事はあるまい。正真正銘、白鷺姫乃が生まれて初めて、赤の他人の異性の前で、経験した事が無いほど肌を露出する一瞬なのだ。さしもの姫乃であっても緊張は免れない。
 彼女の動きが止まっても、誰も催促をしたりはしなかった。姫乃が途中で逃げ出したり駄々をこねたりする少女でない事は、クラスのみんなが知っている。程なくストリップは再開されるだろう。野暮な催促などせず、逡巡する少女の心の迷いをじっくりと鑑賞するのが最良の判断というものだ。頭上にまで上りつつある夏の太陽は、姫乃の身体のみならず、揺れ動く心の中まで照らし出そうとしていた。
 もし姫乃が自分のストリップショーを囮にして、男子の目を引き付け、その間に何か逆転の策を実行しているのだとしたら……その企みは完全に成功するに違いない。それ程までに、男子たちは姫乃の姿に釘付けであった。瞬き一つする間も惜しみ、彼女の羞恥に悶える姿をじっと見つめ続けている。
 滅多に見られない、姫乃のこんな姿を鑑賞できるのであれば、良い所で逆転されて男子軍が敗北しても構わなかった。それが礼門を始めとする、ほとんどの男子が抱いている正直な感情なのだ。
 やがて、姫乃の両手がおもむろに持ち上げられ、ブラウスの襟元をそれぞれ左右から握り締めた。白鷺姫乃が完全な下着姿を披露する瞬間だ。全員が固唾を吞んで見守った。
 ゆっくり、ゆっくりと、ブラウスが左右に広がっていく。ブラに覆われた胸のサイズはまだ控えめで、カップにワイヤーが入っていない事も一目瞭然だった。ショーツは飾り気のない純白のデザイン。ピンクのリボンだけが唯一のポイントというシンプルなものだ。どちらも木綿のあどけない生地であった。
 ブラウスが肩から外れ、ブラ紐が露わになる。それだけでも男子にとってはドキッとさせられる一瞬なのだ。撫肩の華奢なシルエットは、礼門をもってしても思わず「守ってあげたい」などと思わせるような、儚げな魅力に満ち満ちていた。
 姫乃が着ていた半袖のブラウスは、袖口が広く、特に腕には引っかからない。肩が露わになってしまえば後は一瞬だった。ブラウスは音もなく落下し、そのまま姫乃の背後の足元で、アーチ状のオブジェへと姿を変えてしまう。
 そして現れたのは――。
 白鷺姫乃の、完全なる下着姿である。
 足元を除けば、身に着けている物はブラジャーとショーツだけという、あまりにも破廉恥な姿。彼女がこんな無防備な姿を晒す事が、今までの人生で果たして何回あったというのだろうか? プールの着替えだってラップタオルでガードしながら水着を着るはずだ。自然教室の入浴時を除けば、後はせいぜい身体測定の時くらいか。少なくとも、不特定多数のクラスの男子の前で見せるのは、これが初めてと言って良いに違いない。
 姫乃は果敢にも手で身体を隠す事も無く、あられもない下着姿を全て露わにしていた。両腕は身体の横で所在なさげに垂れ、その表情には懸命に羞恥に耐える心の乱れが隠しようもなく映し出されている。恥ずかしさのために耳まで真っ赤に染まった姫乃の顔だけでも、男子たちの興奮を掻きたてるには十分過ぎた。
 実際、男子たちは皆、前屈みになって下半身の窮屈さから逃れようとしていた。ズボンの中では幼いおちんちんが天を向いてそそり立ち、パンツさえ突き破らんとする勢いで硬度を増している。何人かの男子は、姫乃の下着姿を見ただけでもう我慢できず、情けなくもズボンを穿いたまま射精してしまっているくらいだ。
 ほんの数回、服の上から股間を刺激するだけで、あっという間に果ててしまう。別に彼らが特別早漏というわけではなかった。むしろ当然なのだ。男子の宿敵たる女子軍のリーダーであり、かつ誰からも好かれるクラスのアイドル……高嶺の花だった白鷺姫乃がついに下着姿を公開してしまったのだから。それを目の前で鑑賞して、精液を漏らさぬ者などいるだろうか。礼門ですら、壮絶な精神力で射精を抑え込んでいるのが実情だった。ちょっとでも油断したらたちまちトランクスの中を真っ白に染めてしまうだろう。情けないがそれが現実だった。白鷺姫乃の下着姿にはそれほどの破壊力が秘められているのだ。
 首筋から鎖骨、丸い肩へと続くライン。それなりにくびれたウェストに、やはりそれなりに丸みを帯び始めた腰つき。絶妙のカーブを描く太腿から膝、脛、足首へと流れていくたおやかな脚。
 そんな無防備な身体を覆う、ブラジャーとショーツは、ささやかな最終防衛ラインだ。ソックスや靴などは身体を守る鎧には成りえない。白鷺姫乃が全てを晒すまで、あと二枚。この二枚を脱ぎ捨てた時、全ては終わるのだ。
 そしてその瞬間がやって来るのは、そう遠い未来の話ではなかった。姫乃が何も策略を巡らせていなかったとするなら、彼女が生まれたままの姿になるまでには、あと数分もあれば十分だろう。ブラジャーを脱ぎ、ショーツを脱ぐ。乳首を晒し、陰毛を晒す。
 白鷺姫乃の完全降伏まで、あと数分。
 そう思うと、礼門のペニスはさらに硬度を増すのであった。




 ……駄目だ、もう見ていられない。
 虹輝はそう思った。
 姫乃を助けたいと思いながらも、彼女自身にそれを拒まれた虹輝は、切り株を取り囲む群集の中からストリップショーを鑑賞していた。さすがに正面に陣取るのは憚られたので、姫乃の背後側……それもかなり後ろの方に座っている。白鷺姫乃を倒した最大の功労者にしては随分謙虚な場所取りと言えよう。
 ブラウスを脱ぎ捨てた瞬間、露わになった姫乃の背中とヒップラインを見て、確かに虹輝の興奮は最高潮に達していた。ロングヘアの隙間から僅かに覗くブラの肩紐。丸みを帯びたお尻を包む、木綿のショーツの皺。太腿はもちろん、膝の裏やふくらはぎですら、虹輝は愛おしいと思った。
 もっと見たい。
 続きを見たい。
 半ズボンの中で自己主張するおちんちんはそう叫んでいる。一方で、自分の好きな女の子が、自分のせいで苛烈な辱めに苦しんでいる姿を見続ける事は、苦痛でもあった。表情は窺い知れなくても、肩の震えや肌に浮かぶ汗によって、姫乃が相当な羞恥に耐えている事は明白である。自分が脱衣カードゲームで姫乃を打ち負かしてしまったがために、こんな状況に陥っているのだと思うと、虹輝の胸は罪悪感で一杯になるのだ。
 せめて、自分だけは見ないでおこう。
 姫乃が辱めを受ける姿を直接鑑賞するのはよそう。
 虹輝はそう考えて、ゆっくりと立ち上がった。くるりと踵を返す。その決意が何の解決にもなっていない事は百も承知だ。自分が見なくても、クラス全員と担任の教師が、姫乃の素っ裸を見てやろうと目を皿にして待ち受けている。忠一の構えるビデオカメラが、一部始終の全てを冷徹に記録している。だが姫乃自身がストリップの放棄を拒絶したのだから、虹輝に彼女を助ける術はなかった。自己満足でしかないが、せめて自分一人くらいは、姫乃の醜態を見ないであげよう。それが彼の出来る、精一杯の思いやりだった。
 ……思いやりだと、思っていた。
 視線を落として、虹輝は群集の円陣の外へと歩き出していく。スポーツレクが終わるまでの間、林の中を散歩でもして時間を潰そうか。授業中とはいえ自然教室だ。鮫島もそれほどうるさくは言わないだろう。ぼんやりとそんな事を考えていた――、矢先。
 突然人影が虹輝の前に立ち塞がった。
「?」
 顔を上げる虹輝。
「君は……」
 瞬間。
 言い終わる事さえ待たずに。
 強烈な痛みが彼の頬を打ち抜いた。
 皮膚の弾ける音が林の中に響き渡る。姫乃のストリップに集中していたクラスメイトたちは、何事かと一斉に視線を向けてきた。
 何事かと思ったのは虹輝も同じだ。目も眩むような衝撃で顔の向きが変わってしまっている。目の前の人物が、平手で思いっきり虹輝の頬を打ち据えたのだと理解したのは……その人物が、甲守耶美だと気付いた後だった。
「こ、甲守……さん?」
 彼女の表情はいつも通りのクールな無表情。だがその瞳の奥に怒りの炎が渦巻いている事は、鈍感な虹輝ですらすぐに気付く事が出来た。彼女は虹輝の胸倉を掴み上げ、唇と唇が触れるかのような距離まで顔を近づけて、憎しみの籠った呪詛の言葉を吐き出していく。
「いい加減にして。あなたは自分の意志で姫乃を倒したのよ。それなのに途中で逃げ出すつもり?」
「に、逃げるって……。僕はただ……」
「姫乃を打ち負かしたのは、他の誰に命令されたわけでもない。あなたが、あなたの意志で決めた事でしょう。姫乃を助けたかったのなら、クラス全員を敵に回してでも、わざと負ける方法だってあった。でもあなたはそれをしなかった。男子との友情を優先して、姫乃を辱める事を選んだ。その結果がこれよ」
 胸倉を掴んだ耶美は、そのまま引きずるようにして、虹輝を姫乃の正面側へと連行していった。力任せに地面に投げ飛ばす。慌てて飛びのいた男子たちの間に、虹輝が情けなく転がってうつ伏せになった。
 それでも耶美の暴行は収まらない。虹輝の髪の毛を鷲掴みにして、顔を持ち上げる。ちょうど、切り株の上に立つ姫乃を見上げるような形で。
「ほら、よーく見なさい。あなたのせいで姫乃は今こんな目に遭っているのよ。あなたが脱衣カードゲームで姫乃を打ち負かしてやろうと思ったから。あなたが姫乃を素っ裸にしてやろうと思ったから。あなたが姫乃を滅茶苦茶にしてやろうと思ったから。……こうなったのは、何もかもあなたのせいだと自覚しなさい!」
 理不尽な言い分であった。
 いや、確かに耶美の言っている事も正しい。虹輝は間違いなく自分の意志で姫乃と戦い、そして勝った。その点では責められても仕方あるまい。しかしそこに至るまでの過程には、虹輝の意志はそれほど介在していなかった。男子軍のリーダーに祭り上げられた事も、男子軍最後の生き残りになった事も、脱衣カードゲームの対戦相手に指名された事も、全て虹輝の与り知らぬところで進んでいった話だ。それに虹輝自身、最後には姫乃を助けたいとも思ったのだ。その救いの手を振り払ったのは、他ならぬ姫乃本人だったではないか。これでは助けようにも助けられない。
 それに、単なる八つ当たりにしては耶美の行動は不自然だった。虹輝を糾弾するためだけにこんな事をやっているのか? 姫乃が虹輝に好意を持っている事を、耶美が知らないはずもない。その好意自体が、男子女子戦争を進める上での戦略に過ぎないのかもしれないが……たとえそうだとしても、自分を打ち負かした男子に正面を陣取られては、姫乃も辛いだろう。まして彼女の好意が本物だとしたら。
 耶美はその程度の配慮もできない少女ではないし、怒りに我を忘れて姫乃を傷つけるような真似もするはずが無い。ではなぜ彼女はこんな事をしているのか? わざわざ虹輝を正面まで引きずり出して、殊更に姫乃と対峙させるなんて。いつも姫乃の事を第一に考える耶美らしからぬ行動と言えた。
「どうして……甲守さんがこんな事をするの? こんな事したって、姫乃さんが傷つくだけじゃ……」
「へぇ、またそうやって話をすり替えて逃げるつもり?」
「そんな……」
 髪の毛を掴んでいる手に力を籠め、耶美は虹輝の顔を自分の方へと向けさせた。憎悪と軽蔑の籠った視線を容赦なくぶつけてくる。
「いいわ。教えてあげる。お手々繋いで仲良しこよしだけが友情じゃないのよ。私は姫乃の事を信じている。姫乃が考えている事、しようとしている事、その信念と決意を信じている。だから私は姫乃のためにこんな事をしているのよ。……あなたみたいな人間には分からないでしょうけどね!」
 耶美が何を言っているのか、虹輝には理解できなかった。だが少なくとも、これが感情に任せた行動などではなく、深い思惑に基づいた行動だという事だけは間違いなさそうだ。ストリップショーに身を投じている事自体が、姫乃の計略に則った行動だというのだろうか? 一体何のために? この期に及んで何か逆転の秘策でもあるというのか?
「……耶美」
 囁くような声で、姫乃がそう咎める。虹輝を目の前に連れてきた事を非難している……わけではない。それ以上余計な事を言ってはいけないと、牽制しているかのような口調だった。その一言で意志が通じ合うのだろう。耶美は髪の毛から手を離し、無言のまま虹輝の視界から消えていった。野次馬のどこかに紛れて、また事の推移を見守るつもりらしい。
 自由になった虹輝は、膝を立てて体勢を整えた。
 そんな彼の目の前に、ぱさりと白い布が舞い落ちる。姫乃がさっきまで身にまとっていたブラウスだ。足元に脱ぎ捨てたそれを、姫乃が拾い上げて切り株の下に落としたようだ。思わず顔を上げてしまった虹輝の視線が、下を向いていた姫乃の視線と真正面から絡み合う。
「あ……」
 ブラとショーツのみでしか身体を隠していない、下着姿の姫乃と目が合ってしまうなんて。何とも気まずい。虹輝はすぐに目を背けようとした。背けようとしたのだが……しかし背けられなかった。まるで金縛りにあったかのように、視線を外す事もできず、ただじっと彼女の瞳を見つめ続けてしまっていた。
 その瞳の奥に宿っている光は。
 決して、絶望に染まった暗い光ではなかった。
 むしろ生き生きとした強い意志の光を放っている。
 姫乃は……自暴自棄になってストリップを演じているわけではないのだ。何かの目的のために、自分の意志で辱めに耐えている。それが逆転の秘策のためなのか、誰かを守るためなのか、それとももっと大きな信念のためなのか――。虹輝には知る由もなかったが。
 姫乃も耶美も、女子軍敗北という状況に追い込まれてなお、冷静沈着に行動しているのだ。自分がなすべき事を見失う事無く、自らの信念に基づいて果敢に行動している。その精神力と行動力には頭を垂れる他なかった。
「虹輝くん。さっきも言ったはずよ。私は敗者としての責務を果たす。それを黙って見過ごすのが、あなたのやらなければならない事なの。勝者は勝者らしく……特等席で続きを見届けてちょうだい」
「姫乃さん……」
 殊勝にもそう言い放つ姫乃であったが、しかしその表情には羞恥に耐える屈辱がありありと窺えた。冷静に自分の意志で行動する事は、羞恥を感じない事とは決してイコールではない。姫乃は間違いなくストリップを恥ずかしいと思っている。逃げ出したいと思っている。嫌で嫌で仕方がないと思っていながら、なおそれを意志の力で抑え込み、甘んじて辱めを受け入れているのだ。本来五年生の少女が取れるような行動ではなかった。
 或いは、何か逆転の秘策があって、その希望が羞恥心を抑え込む原動力になっている可能性もあるだろう。
 だが虹輝はその線は薄いと感じていた。演技でこの表情を出せるとはとても思えない。仮に秘策があるのだとしても、少なくとも姫乃は二枚の下着を脱ぐ決意までは固めている。根拠は何も無かったが、多少なりとも白鷺姫乃がどういう人間か理解している虹輝には……そう思えて、ならなったのだ。




 奇しくも、礼門もまた、虹輝と同じ事を考えていた。
 彼が陣取っているのは姫乃の正面。つまり虹輝のすぐそばである。ほとんど隣同士と言っても差し支えなかった。虹輝と耶美が起こした騒動によってストリップが一時中断し、礼門には少しだけ冷静さを取り戻す余裕が生まれていた。
 周囲の状況を今一度確認し、不穏な動きをしている女子がいない事を確認する。この場から姿を消して別行動を取っているクラスメイトは一人もいなかった。姫乃の協力者と言えば真っ先に思い当たるのが養護教諭の美月だが……彼女が鮫島に何らかの弱みを握られている事は周知の事実である。姫乃を助ける事はできないだろう。
 男子の中に姫乃を助けようとする者はいるか? 思索を巡らせてみるが、思い当たる顔は浮かんでこなかった。かろうじているとすれば虹輝だったのだが、見ての通り今の彼は元の情けない風見鶏人間に戻ってしまっている。脱衣カードゲームで姫乃と互角の勝負を繰り広げた、あのスーパーモードの面影はどこにも残っていない。
 礼門は、お世辞にも知略に優れているとは言い難い頭脳の持ち主である。それでも彼は精一杯シミュレーションを繰り返し、姫乃がこの状況から奇跡の大逆転勝利を導き出せるような秘策が無いか、徹底的に考えてみた。ああでもない、こうでもない……。荒唐無稽とも思える策略まで引っ張り出してみたが、やはりどこをどう考えても、姫乃が下着を脱がずに済む展開は思いつかなかった。もはや状況は完全に詰んでいるのだ。姫乃には盤面をひっくり返すだけの力はもう残っていない。まして対局を放棄して逃げる事も許されない。
 そこから導き出される結論は。
 簡単な事だ。
 白鷺姫乃は、今から間違いなく下着を脱ぐ。
 そして全てを晒す。
 そう結論付ける他なかった。彼女にはもう、逆転の秘策など何もないのだ。警戒して身構えていた自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。姫乃は今から確実にすっぽんぽんになる。礼門はそれを高みの見物と洒落込み、馬鹿にして嘲笑ってやればいいのだ。男子軍の勝利は、既に揺るぎないものになっていた。礼門は、そして五年二組の男子たちは、白鷺姫乃に勝ったのだ。彼女を素っ裸にひん剥き、その全てを鑑賞する権利を得たのだ。
 しかし――。
「亢龍悔いあり、か……」
 その確信を得た礼門の心に広がったのは、勝利の快感だけでも無上の興奮だけでもなかった。一言では言い表せない複雑な思い。あえて表現するなら……それは『後悔』だろうか。
 礼門は今まで、姫乃を倒し、彼女を辱める事だけに全精力を注いできた。みどりも耶美も桃香も、所詮はメインディッシュの前座に過ぎない。彼の本当のターゲットは、最初から白鷺姫乃ただ一人であった。だから今の状況は彼にとって、まさに思い描いていた通りの、理想的な展開なのは間違いない。自分の策略で姫乃を打ち負かせなかったのは残念だが、それでも勝ちは勝ちだ。姫乃に勝ち、彼女を生まれたままの姿にして、凌辱の限りを尽くす。その野望が今まさに達成されようとしている。この状況に喜びを感じずして、何に喜びを感じるというのか。
 だが一方で、礼門の心には一抹の寂しさも広がっていた。つい最近、国語の時間に習ったことわざの通りだ。――『亢龍悔いあり』。
 天に上る龍は、上り切ってしまえば後はもう下るしかない。天から下る龍……亢龍が悔いを抱くように、栄華を極め切った者はそこから必ず衰退し、後悔するという意味だった。或いは、満月や桜の花でも同じ事が言えるかもしれない。満月は満ちる直前が一番美しい。満ちてしまえば後はもう欠けていくだけなのだから。桜も満開の時より、八分咲きの方が趣があった。満開になれば、その先は散っていくだけの運命である。
 白鷺姫乃もまたしかり、だ。
 確かに礼門は、彼女を裸にして辱める事を目標にしていた。けれども、一度裸にしてしまえば、後はもう凌辱の餌食にするだけ。それを楽しみにしていたはずなのに、いざその現実が目の前に迫ってくると、礼門の心にはむしろ「姫乃に逆転してほしい」という思いさえ広がり始めていた。
 礼門が姫乃打倒に執念を燃やしていたのは、彼女がありとあらゆる罠を打ち破り、ことごとく敵の策略を乗り越えてきたからだ。それ程までに強く、気高く、美しい存在だからこそ、穢し尽す価値がある。ちょっと脅したくらいですぐに屈服するような、か弱い少女になど興味は無かった。賢く、逞しく、無敵の存在だからこそ、白鷺姫乃は凌辱する価値があるのだ。
 それは逆に言えば、姫乃が負ける事によって、姫乃自身の価値が減退してしまう事を意味していた。強い少女だからこそ魅力を感じているのに、負けてしまったら強い少女には成りえない。しかし負けてくれなければいつまで経っても凌辱する事はできない。白鷺姫乃を倒すという事は、実は根本的な矛盾を抱えた行動だったのだ。
 大人しくストリップショーを実演し、こうして下着姿を晒すまでに堕ちぶれた白鷺姫乃の姿を見て、確かに礼門は無上の興奮と征服欲、そして勝利の快感も得ていた。けれども同時にもう一人の自分が心の中で叫ぶのだ。
 どうした白鷺姫乃。お前はこの程度で負けるような弱い女じゃないはずだ。いつものようにさっさと逆転して見せろよ。俺が想像もつかないような秘策で、鮮やかに形勢を逆転して、俺に地団駄を踏ませるんだろう? お前が俺なんかに負けるはずが無い。負けていいはずが無いんだ。お前はもっともっと強いはず。その無敵のお前を倒す事が、俺の生き甲斐なんだから……。
 しかしながら、現実は残酷であった。
 虹輝と耶美の騒動が収まると、姫乃はストリップショーを再開していく。彼女は躊躇いながらも、ゆっくりと両腕を背中に回し始めた。とうとうブラジャーを脱ぐつもりらしい。大人しく肌を晒していくその醜態からは、かつての無敵の少女の面影はどこにも感じられなかった。
 しばらく、姫乃が自分のブラジャー相手に悪戦苦闘を繰り広げる。まだブラを付け慣れていないようだ。自然教室だからと見栄を張って、スポーツブラからジュニアブラに切り替えてきたのだろうか? いや、姫乃はそんな単純な人間ではない。ただの偶然だ。それでも脱ぎ慣れていない事は間違いないようだった。
 誰もが固唾を呑んで姫乃の動きを見守っている。背後側の連中には、ブラのホックを外そうと必死になっている姫乃の指先の動きが、ロングヘア越しにハッキリと見えているはずだった。忠一は正面側から撮影しているから、彼女の手の動きが記録に残せなかったのは少し残念である。だが背に腹は代えられない。手の動きよりももっと重要なのは、ブラが脱ぎ捨てられた後、その下から露わになる秘密の部分なのだから。
 即ちそれは――、白鷺姫乃のおっぱい。乳首。そして乳輪だ。
 パチン、というボタンの弾けるような音が響いた。
 ほんの小さな音なのに、それは林の中に木霊するかの如く、クラスメイトたちの耳にしっかりと届いている。この音から推測するに、どうやら姫乃の身に着けているブラジャーは、金属ホックではなくスナップボタンで固定するタイプのようだった。ブラを使い始めたばかりの少女たちが着脱しやすいように配慮された、ジュニアブラならではの仕様である。同時にそれは、ジュニアブラ初心者だと自分から告白する事も意味していた。
 スナップボタンを外すと、姫乃はすぐさま両腕を胸の前で交差して、ブラが落下するのをガードした。背中はもうすっかり露わになってしまっているだろう。肩紐もまた圧力を失って大きく緩んでいる。丸い肩を滑り落ち、姫乃の二の腕の辺りで絡みついていた。
 もはや今の姫乃のブラジャーには乳房を保護する能力はない。それは単に胸の前に宛がわれただけの、ただの布きれである。彼女が手の力を抜けばたちまち足元へと落下するはずだ。そして白鷺姫乃のおっぱいが、裸の胸が、晒し者になるのだ。
 用意は整った。
 いよいよ、白鷺姫乃のおっぱいが開陳される時が来た。
 下着姿の時点で、既に姫乃の出で立ちは、年頃の少女が人前で見せるような格好ではなくなっている。しかしブラとショーツを身に着けている限り、身体を隠している面積は、実質的にはビキニの水着と同じであった。つまり下着姿はまだ、かろうじて他人に見せる事が許される格好だとも言えるのだ。それに対し、ブラジャーの下の秘密の部分は……決して不特定多数には見せられない、禁断の聖域だと言えるだろう。パンツ一枚の格好が許されるのはせいぜい低学年まで。ブラを使っている高学年の少女ともなれば、家族や恋人以外の人間に裸の胸を見せるなど有り得ない行動だった。身体測定の時間でも滅多にブラを取る事は無いはずだ。
 まして今から乳房を晒すのはあの白鷺姫乃である。
 女子軍のリーダーにして男子軍の宿敵。同時に男子たちの憧れの的でもあり、誰にでも優しく愛らしい、みんなから好かれる天使のような少女。強く賢く逞しい、聡明で思慮深い大人びた五年生。
 そんな姫乃が、あろう事か野外において、パンツ一丁というみっともない姿をクラスメイトたちの前で公開してしまう。彼女が今まで築き上げてきたクラスでの地位、名誉、人気……それらの全てが、一瞬にして崩れ去ってしまうのだ。
 ブラ越しに両手で胸を覆ったまま、姫乃の身体は硬直してしまった。今までは躊躇いながらも粛々とストリップを続けていた姫乃であったが、さすがの彼女も、ブラジャーの脱衣となると緊張せざるを得ないらしい。当然だ。本来であれば決してつまびらかにしてはならない乙女の秘密を、普段机を並べて一緒に勉強している友人たちに鑑賞させてしまうのだから。しかもその一部始終はビデオカメラで撮影され、かつあの憎むべき担任教師までもが悠々と事の全てを見届けている。これほどの屈辱は無いはずだ。
 セミの鳴き声が再び耳に貼り付いてくる。
 汗ばむ陽気の中、しかし姫乃に脱衣を催促する者は一人としていなかった。みんな本心では早く姫乃のおっぱいを見てみたいと思っているはずだ。「早く脱げ」などと野次を飛ばすのは容易い。特に礼門は、スポーツレクの時間だけ姫乃に自由に命令する権利を与えられていた。大人しく彼女の逡巡を待つ義理もないのだ。
 しかし礼門は口を開かなかった。そんな余裕が無かったというのも事実だが、あえて催促しなかったのもまた事実である。もし礼門が脱衣の命令をすれば、彼女はそれを合図に覚悟を決め、ブラジャーを脱ぎ去るだろう。それでは面白味に欠けるのだ。誰かの指図によって脱ぐのではなく、あくまで姫乃の自由意思で、彼女の決めたタイミングで、脱衣させる事に意味があった。姫乃が敗北を認め、観念して自ら開陳するからこそ、そのおっぱいに意義があるのだ。他の男子たちがそこまで考えを巡らせているのかどうかは不明だ。しかし結果として、無粋な野次でせっかくのチャンスが台無しにされる事は無かった。姫乃自身に、自らの敗北を認めさせるチャンス。彼女が自らブラを脱ぎ去った時こそ、白鷺姫乃が本当の意味で男子たちに屈服した瞬間になるのだ。
 そしてついにその時が訪れる。
「……ああ」
 ほんの小さな囁き声が、唇の端から漏れた。
 刹那――。
 姫乃はゆっくりと、自らの両腕を下ろしていった。支えを失ったブラジャーは、膨らみかけの乳房に引っかかるはずもない。純白の下着があっという間に滑り落ちていく。肩紐も何の抵抗もなく両腕をすり抜け、ストンと爪先の上に落下していった。
 だらりと両腕を垂らした姫乃。
 露わになったその胸には……桜色の、慎ましやかな乳首が二輪、儚げに咲いていた。
 あれが……。
 あれが白鷺姫乃のおっぱいか……。
 膨らみかけの乳房はお世辞にも大きいとは言えず、そのカーブもまだまだなだらかな曲線でしかなかった。それでも耶美のようにほとんど膨らんでいないわけではない。触れれば吸い付くような柔らかさは感じられる、理想的な膨らみかけのおっぱいであった。
 乳首もまだまだ未発達で、乳輪も小さめ。桃香の大き目の乳輪とは全く異なっている。完全な子供乳首だ。とはいえ興奮と緊張のためか、一丁前にその先端は硬く尖っていて、女性としての機能を発揮しつつあるのは間違いなかった。
 ついに……ついに白鷺姫乃のおっぱいを見てやったぞ。
 ざまぁみろ。
 さんざん手こずらせやがって。
 礼門は心の中でそう毒づいたが、勝利の言葉が口から飛び出す事は無かった。あまりの興奮に喉も口もカラカラに渇き、とても野次を飛ばす余裕が無かったのだ。それどころかトランクスの中のペニスは痛いほどに膨張し、一刻も早く白濁液をぶちまけて楽になりたいとウズウズしている。
 まだだ……。まだこんな所で果てるわけにはいかない。まだ姫乃はパンツ一丁になっただけなのだ。最後の一枚がしっかりと残っている。その下を見る前に射精してしまうなど、彼のプライドが許さなかった。
 周囲の男子たちの中には、辛抱たまらず前屈みになって、情けないうめき声を上げている者が何人もいた。何せ目の前にはあの白鷺姫乃がパンツ一丁で立っているのだ。これほどのオカズも他にあるまい。どれほど遅漏であったとしても、ズボンの上からちょっとでも刺激を与えれば、たちまちパンツの中に精液を漏らしてしまうのは無理からぬ事だった。
 穴が開くほどに見つめていた姫乃のおっぱいから目を逸らし、礼門は興奮を鎮めようと視線を巡らせる。だがこれは逆効果だったようだ。周囲の状況を視界に入れる事で、逆にその異様なシチュエーションを改めて認識してしまい、なお興奮を掻きたてられてしまったのだ。
 太陽の光が降り注ぐ白昼の林の中。
 担任教師とカメラが見つめる中。
 顔見知りのクラスメイト全員が周囲に人垣を作る中。
 天使のように美しい五年生の少女が、パンツ一丁にソックスと靴というあられもない姿で、自らの身体を隠す事も無く立っている。
 これは現実の事なのだろうか?
 いや間違いなく現実だ。
 あの白鷺姫乃が、とうとうここまでの醜態を晒すほどに屈服したのだ。
 あの白鷺姫乃が男子に負けたのだ。
 あの白鷺姫乃が敗北を認めたのだ。
 女子たちの中には、耐えきれずにすすり泣く者が続出していた。もしかしたら何か逆転の秘策で、一気に形勢をひっくり返してくれるのではないか……姫乃を信頼していたからこそ、そう期待を抱く女子は少なくなかった。けれども当の姫乃が自らパンツ一丁の情けない姿を晒した事で、その期待は粉々に打ち砕かれてしまったのだ。男子に命じられるまま、無様にショーツ一枚の姿にまで堕ちた今の姫乃を見て、誰が逆転の期待を抱くだろうか。しょせん白鷺姫乃も他の雑魚女子と同じだった。男子に負けてしまえば何の抵抗もできず、大人しく屈服するしかない、ただのか弱い女の子なのだ。このまま男子に蹂躙されて、最後は泣きながら敗北宣言をするのだろう。姫乃も結局はその程度の少女だったという事だ。
 それは姫乃の表情を見ても明らかだった。
 恥ずかしさをこらえながらも、果敢にストリップを続けてきた姫乃だったが、さすがにブラジャーを脱ぎ去ってしまえば平静を保つ事もできなかった。彼女はたまらず目を閉じ、口を真一文字に結んでひたすら羞恥に耐えている。歪んだ眉が心の悲鳴を果敢に代弁していた。みっともない身体の震えは隠しようもなく、全身から噴き出した汗は肌を艶めかしく艶立たせて、男子たちの興奮を一層掻き立てている。
 ――あの白鷺姫乃がこんな表情を見せるなんて、な。
 礼門が内心ほくそ笑む。
 こんな恥ずかしい姿を晒してしまえば、もう二度と男子には逆らえないだろう。たとえ奇跡の大逆転で危機を脱しても、この有様をカメラに記録されている以上、以前のような余裕ある態度はとれまい。もはや白鷺姫乃の戦死は決定的だった。彼女は男子の奴隷へと成り下がったのだ。
 よく見ると、胸の周囲にブラの跡が残っているのがまたエロティックであった。アダルトビデオやヌードグラビアのストリップでは、女優の身体に下着の跡が見受けられる事は決して有り得ない。なぜなら、AV女優は撮影直前まで全裸にバスローブ姿などで待機しており、用意された衣装に袖を通した直後に撮影が始まるからだ。同様に、ヌードデッサン会のモデルも当日は……可能であれば前日の夜から、下着を着けずに過ごすよう指導される事が多かった。下着の跡が残っていると、美術的な美しさに欠けてしまうためだろう。
 だからブラジャーの跡が皮膚に残っている今の姫乃のヌードは、アートとしてはマイナスであった。一方で、エロスとしてはプラスに作用している。オールヌードではなくパンツ一枚だけ残っていたり、ソックスや靴を脱がずにいたりした方が、興奮を催すのと同じだ。身体に残った下着の跡は、直前まで普通に下着を身に着けていた証拠であり、脱ぐつもりなど本人には全く無かった証拠でもあった。それは商業的に作り上げられた虚構のストリップではなく、正真正銘、男子に強要されて嫌々脱いでいる本物のストリップだという証拠に他ならない。
 さて。
 残るはあと一枚だ。
 礼門は呼吸を整える暇もなく、ギラついた視線を姫乃のショーツへと向けた。実際にはまだソックスと靴が残っているが、白鷺姫乃はこの期に及んで時間稼ぎをするような無粋な少女ではあるまい。次に脱ぐのは、あの純白のショーツ。それ以外には無いだろう。
 これを脱げば全てが終わる。少女の身体を守る、最終最後の砦。絶対防衛線。辛うじて残っている女の子としてのプライドの象徴。それが見るも無残に崩壊していくのだ。直立の姿勢では性器の中身までは観察できないが、それでも姫乃の全てを暴き出してやったという達成感は十分に味わえるはずだった。
 何より陰毛がもう生えているのかどうか、その確認ができるだけでも大きい。この年頃の男女に取って、陰毛の有無や生え具合は非常にデリケートな話題なのだ。性器を見られるのと同じか、場合によってはそれ以上の羞恥心を感じる。同性相手でさえそうなのだから、まして異性に……しかも顔見知りのクラスメイトたちに見られるとなれば、どれほどの辱めとなるか想像さえつかなかった。
 いよいよ、白鷺姫乃が完全降伏する瞬間が近づいてきた。
 クラス全員の目の前で自らショーツを脱いだ時、女子軍リーダーとしての、そして男子の憧れとしての、白鷺姫乃の名声は完全に地に落ちるのだ。
 静まり返った林の中に、相変わらず耳障りなセミの鳴き声だけが木霊している。切り株の上でパンツ一丁になった姫乃は、身体を隠す事もできない直立の姿勢のまま、微動だにせず立ち尽くしていた。そんな有様を見物しながら、観客たちは姫乃屈服の瞬間を、今か今かと目を皿にして待ち続けている。いちいち催促などしなくても、彼女は自分から行動するだろう。課せられた義務や使命はしっかりと受け止め、逃げずに果敢にこれを果たそうとする……それが白鷺姫乃という人間だと、分かっているからだ。さっきも言った通り、余計な野次は彼女の助け舟になりかねない。
 けれども、五分経ち、十分経っても、姫乃は動こうとしなかった。いや正確に時間を計っている者は誰もいない。実際にはほんの一、二分ほどだったのかもしれない。だが少なくとも、姫乃の様子が今までと明らかに異なると、ギャラリーたちが気付く程度には時間が経っていた。
 なぜ姫乃は動こうとしないのか?
 時間を稼いでも、パンツ一枚のみっともない姿を晒し続けるだけだ。引き延ばし工作程度で事態が好転しない事くらい、分からない少女ではないだろう。それともまさかここに至ってなお、逆転の秘策が用意してあって、そのためにあえて引っ張っているのか……?
 いや、違う。
 今の姫乃は脱がないのではない。脱げない、のだ。羞恥心のあまり、指をショーツにかける事ができない。それ程までに恥ずかしさを感じているのだ。
 その事実に気付いた時、礼門は勝ち誇った笑みを口元に湛えた。
 そうか、さすがの白鷺姫乃もパンツを脱ぐ決意はできなかったか。そりゃそうだ。五年生の少女が自らクラスメイトの目の前で素っ裸になるなんて、まともな精神の持ち主なら絶対できっこない行動だからな。脱げないのが当たり前。むしろパンツ一丁になるまでよく脱いだと褒めてやるべきだろうが……フン、まぁ所詮こいつもただの女の子だったってわけだ。
 礼門はそう鼻で嗤った。
 姫乃に脱ぐ意思がある場合、脱衣の催促は助け舟にしかならない。だが脱ぐ事ができないとあれば事情は変わってくる。脱衣の催促をする事で、姫乃自身に「脱ごうとしても脱げない」心の弱さを自覚させる事ができるのだ。そして男子の命令に従って脱衣する屈辱を味わわせる事も可能だった。超人的な意志の力で今まで羞恥心を抑え、辛うじてストリップを続けてきた姫乃に、結局はお前もその辺の雑魚女子と変わらないんだと現実を突きつけてやろう。
「――白鷺」
 礼門の声に、彼女はビクンと肩を震わせた。怯えている。白鷺姫乃ともあろう者が、礼門に命令される事を予期して、恐怖を感じている。
 爽快だった。
 今まで、どれだけ力を尽くしても決して敵わなかった少女が。ことごとく自分に煮え湯を飲ませてきた無敵の少女が。凌辱してやろうと策を弄しても鮮やかにそれを乗り越えてきた最強の少女が。礼門の命令の前に抵抗もできず屈し、服従している。これほどの征服欲が他にあろうか。
「パンツ一丁でいつまで突っ立ってるんだ? さっさと……脱げよ」
 姫乃が全てを晒す最後の瞬間。その引導を自分自身の手で渡してやれるなんて、最高の爽快感だった。
 逆に姫乃にとってはこの上ない屈辱だろう。自分の意志でショーツを脱げば、女の子としての尊厳だけは辛うじて保てたかもしれないのに。己の心の弱さからストリップを完遂できず、憎むべき男子に命令され、最後の一枚を脱ぐよう指図されてしまった。生まれて初めて、白鷺姫乃が郷里礼門に敗北した瞬間だった。
「……はい」
 負けを認めた姫乃は、屈服の言葉と共に、とうとうショーツに指をかけた。まだ目は閉じたままだ。自分がすっぽんぽんになる一部始終を見届けるクラスメイトと担任教師の反応を、とても直視する事ができない。それこそまさに姫乃がストリップの羞恥に耐えきれず、男子に許しを乞うている姿そのものだった。
 ワンポイントのリボンが付いた純白の布が、少しずつ少しずつずり下がっていく。時間をかけて脱げば脱ぐほど羞恥心は増すものだ。味気なく一気に脱ぎ去ってしまった方がどれほど楽だろう。
 しかしながら姫乃の指の動きは緩慢だった。頭ではさっさと脱いだ方がいいと分かっていても、心がそれについて行かない。人前で全てを晒す事は、それ程までに少女の心を震え上がらせ、萎縮させてしまうものなのだ。白鷺姫乃であってもそれは同じだった。頭脳は大人並みの知性と教養を兼ね備えていても、心はあくまで五年生のあどけない少女そのもの。恥辱の限りを尽くされれば、いかに白鷺姫乃といえども一たまりも無かった。
 位置を下げたショーツは、姫乃の引き締まったウェストを完全に露出させていく。緊張と興奮、それに恐らく恐怖も相まって、彼女の呼吸は粗く、腹部もせわしなく収縮を繰り返していた。
 そろそろだろう。
 そろそろ見えるはずだ。
 姫乃に陰毛が生えているなら、いい加減、縮れ毛の先端が顔を覗かせてもいい頃合いだった。礼門の眼がさらに血走る。それともまさか姫乃はまだ生えていないのか? あの聡明な白鷺姫乃の陰部が無毛の子供じみたパイパンなら、これほど痛快な事実も他にあるまい。逆に手入れもしていないような剛毛でもそれはそれで面白いだろう。どちらにしても、陰毛に関する恥ずかしい秘密を、クラス全員に公開させられるというシチュエーションが重要なのだ。全てはあと数秒で判明する。白鷺姫乃に陰毛が生えているのか否か? 生えているのだとしたらその毛の量はどれほどか? 手入れはしているのか?
 想像を巡らせていると、とうとうショーツの上端から、黒い陰毛の先端が顔を覗かせ始めた。自然な細い毛先が何十本も、密生して生え揃っている。白鷺姫乃にはもう既に陰毛が生えているのだ。
 ついにやった。
 これが白鷺姫乃の陰毛……なのだ。
 和平会談の時、桃香は姫乃のショーツを脱がす寸前まで追い詰めたのだという。あともうちょっとという所で逆転負けを喫し、見る事は叶わなかった白鷺姫乃の陰毛。その全貌が、ついに白日の下に晒された。男子も、女子も、クラスメイトたちは皆固唾を呑んで秘密の若草に……そのあどけない茂みに視線を集中させていく。
 そう、姫乃の陰毛は、決して剛毛というわけではなかった。耶美やみどりに比べるといかにも量は少ない。生えている範囲もデルタ地帯の中央下寄りの、ごくごく狭い範囲だった。桃香のように広範囲に渡って短い陰毛が生い茂っているような、そんなカッコ悪い生え方ではなかった。
 ただし遠目から見ても生えている事が一目で分かるくらいの毛量はある。ツルツルの祢々子とは明らかに異なる、思春期独特の股間。理想的な陰毛生えかけの股間だった。
 膨らみかけの乳房と同じだ。子供でも大人でもない、成長期のほんの一瞬――女性の一生の中でもたった数年、或いは数か月の間しか見る事ができない、儚げなバランスの上に成り立ったヌードである。放っておけばあっという間に成長し、失われてしまうその刹那の輝きを、こうして鑑賞する事ができた礼門たち五年二組のメンバーは幸せ者だろう。しかも忠一の構えるカメラでその全裸は隈なく撮影され、高画質で記録に残されているのだ。録画データをコピーできれば、この先一生、白鷺姫乃の思春期のオールヌードをいつでも見返す事ができる。映像の中の姫乃は五年生の少女のまま。永遠に歳は取らないのだから。
 裏を返せば、それは姫乃の恥が永遠に保存され、晒し者にされ続ける事を意味していた。成長期のアンバランスで未成熟な、恥ずかしい自分のヌード。それがクラスメイトたちのギラついた欲望の視線を一生浴び続ける。考えただけでもおぞましいだろう。だがそれは妄想の話でも仮定の話でもない。いま現実に起こっている、現在進行形の話なのだ。
 正確に言えば姫乃はまだ完全なオールヌードにはなっていない。ソックスと靴もそうだが、ショーツも辛うじて股間の最深部……少女の割れ目を覆っていた。露出しているのは生えかけの陰毛だけだ。背後に陣取っている連中には陰毛の生え具合が分からない反面、お尻の谷間の上半分を好きなだけ鑑賞する事が出来ているだろう。
 白鷺姫乃が全てを見せるまで、あと数分。
 いやあと数秒か。
 鉄壁のガードを誇っていた無敵の少女の、破滅の瞬間だ。
「……脱ぎ、ます」
 姫乃がか細い声で囁いた。また礼門に脱衣の命令をされてはかなわないと思ったのか。それとも自分自身を鼓舞する狙いがあったのか。図らずも自ら最終最後の脱衣宣言を行ってから、姫乃はさらにショーツをずり下げていった。
 コットンの白布の向こうから、最後の秘境が顔を覗かせる。
 思春期の少女ならば、家族相手でもおいそれとは見せないであろう、究極絶対の聖域。生殖を司る神秘の器官にして、胎内で育て上げた我が子を産み落とす女性の象徴そのもの。本来であれば、一生添い遂げると心に決めた相手にしか見せる事のない、女の子の最も大切な場所であった。
 即ち、少女の割れ目。
 生えかけの陰毛ではそのスリットを覆い隠す事は叶わず、恥ずかしいクレヴァスは無情にもクラスメイト全員の視線に晒される事となった。背後側の連中は、その割れ目に繋がっているお尻の谷間が丸見えになっているはずだ。
 白昼の野外において。
 太陽の光を浴びながら。
 級友と教師の目の前で。
 自ら全ての衣服を脱ぎ捨てて。
 白鷺姫乃は、ついに身体の秘密を全て公開してしまった。性器の中身や肛門はまだ見せていないが、そんな事は些末な問題に過ぎない。肝心なのは、女子軍リーダーであり、男子の宿敵かつ憧れの的であった白鷺姫乃が、自ら敗北を認めたという事だ。全てを晒し、男子に絶対服従したという事だ。生まれたままの姿になって許しを乞うているという事だ。ここまで姫乃を堕としてやれば、その先の凌辱などもう容易い。いくらでも好き勝手に蹂躙できるだろう。
 勝った。
 ついに男子は、礼門は、白鷺姫乃に勝ったのだ。
 彼女のオールヌードを暴き、撮影し、弱みを握って戦死させる事に成功したのだ。
 これで名実ともに、姫乃は五年二組の男子たちの奴隷になった。素っ裸の映像を握られた相手に抵抗などできまい。男子たちもまた同様に恥ずかしい写真を撮られているが、虹輝がまだ脱がされていないために、男子軍全体としては優位に立っていた。このアドバンテージこそが姫乃を辱め、屈服させる最大の武器になっているのだ。
「白鷺。突っ立ってないで、早くパンツを脱いじまえよ」
 礼門が勝ち誇った口調で命令する。
「……はい」
「俺の事は『礼門様』と呼んでもらおうか。自分の立場ってもんを自覚してもらわねぇとなぁ」
「わかり……ました。礼門様」
 何人かの男子たちがまた前屈みになってうめき声を上げる。姫乃の陰毛を見て、割れ目を見て、そして成す術もなく礼門に屈服する姿を見て、情けなくもパンツの中に射精していった。礼門のペニスも爆発寸前だ。早く白濁液をぶちまけて楽になりたいと、ガチガチに硬度を増して震えている。
 まだだ……まだこんな所で漏らすわけにはいかない。せめて姫乃に咥えさせて、口の中にでも射精しないと格好がつかなかった。みどりや耶美、桃香といった一級の美少女たちを次々と喰い物にしてきた自分が、姫乃の生まれたままの姿を見ただけで精液を漏らしてしまうなど、他の男子たちに示しがつかないだろう。
「へへへ……。脱いだらこっちに投げてよこせ」
 姫乃が極力直立の姿勢のまま、ショーツを足首から抜き取っていく。あまりお尻を後方に突き出したくないらしい。
 礼門は右手を突き出して手のひらを上に向けた。彼の意図は明白だ。一つは、下着の汚れを暴いて姫乃に恥をかかせてやる事。そしてもう一つは――。羞恥から逃れるために未だに目を閉じている彼女の瞼を、無理矢理引っ張り上げる事だ。狙った位置にショーツを放り投げるには、どうしたって目を開けざるを得ないのだから。
 唇を噛んで、姫乃がゆっくりと目を開けていく。初夏の陽光に目が慣れた後、その視界に飛び込んできたものは一体何だろうか。見下したような視線を向ける礼門の顔か? 粗い呼吸で興奮を隠そうともしない男子たちの様子か? それとも失望と軽蔑の眼差しの女子たちか? 冷徹に全てを記録する忠一のカメラのレンズ、好色そうな笑みを湛える鮫島、いたたまれない表情の虹輝……。
 全てだろう。
 全てが、姫乃の視界に飛び込んでいるはずだ。そして改めて認識しているに違いない。自分が、真っ昼間の野外で、クラス全員の前で素っ裸になったのだという……取り返しのつかない状況を。
 気丈にも姫乃はその想像を絶する辱めを、辛うじて受け入れていた。手にしたショーツを、震えながらも礼門の方へと放り投げていく。普通の少女ならば卒倒したっておかしくない状況なのに、よくも理性を保っていられるものだ。礼門も素直に感服せざるを得なかった。
 彼は受け取った姫乃のショーツを広げてみた。予想通り、その下着には汗の匂いと体温の温もりは感じられたが、クロッチの汚れはほとんど見受けられない。当然だ。白鷺姫乃ともあろう者が、最終決戦の脱衣カードゲームに臨むにあたって、『念のため新品の下着に穿き替えておく』という保険をかけないはずが無かった。下着の汚れを暴かれても恥をかかないように、スポーツレクが始まる直前に、予備の下着に着替えておいたのだろう。
 まぁいい。姫乃の下着の汚れを暴く方法は他にもある。
 それより今は彼女の生まれたままの姿を楽しむのが先決だ。
「よし。その場で一回転してもらおうか。後ろの連中にも、お前のみっともないすっぽんぽんをじっくり見せてやらないとな。靴は履いたままでいいぞ」
「はい、礼門様……」
 姫乃は粛々と、憎むべき男子の命令に従っていた。切り株の上でゆっくりと身体の向きを変え、まさに正真正銘、クラス全員にオールヌードを晒していく。切り株はそれほど高さもなく、お立ち台としてはかなりの広さだったが、その上で動くとなるとやはり目を閉じる事はできない。万が一にも足を踏み外したら大変だ。姫乃は自然と、目を開けてクラスメイトたちの顔を見ながら一周する事になってしまった。
 一方礼門の視界には、今まで見えなかった姫乃のお尻が飛び込んでくる。そこは大人の女性のようなボリュームにはまだまだ程遠かった。それでも十分少女らしい丸みを帯びた臀部である。あの谷間の奥には、姫乃の性器と肛門が隠されているのだ。そして彼女が承諾するか否かに関わらず、礼門は自分の意志だけで、自由にそこを鑑賞する事ができる。スポーツレクの間だけ、姫乃は自分に絶対服従しなければならないのだから。残り時間もまだ一時間近くあった。今この瞬間に天変地異でも起きない限り、性器の中や肛門まで晒し者にされる運命から、姫乃が逃れる術は無いのだ。
 想像したらさらにペニスがいきり立ってしまった。
 危ない危ない。
 漏らしてしまわないように細心の注意を払わなければ……。
 自分の分身の興奮を鎮めようと、礼門が軽く手で剛直をなだめた、その瞬間。
「うぁっ?」
 凄まじい電撃が彼の脳天を貫いた。いや、別にスタンガンで攻撃されたわけではない。ショックはそれに匹敵する勢いだったが……ついに我慢しきれなくなった肉棒が、トランクスの中で勢いよく精液を吐き出していったのだ。一度射精が始まれば、止める術などあるはずもない。情けない事に礼門は前屈みになり、他の男子たちと同じようにうめき声と共にズボンの中を汚していった。快感が全身を突き抜けていく。
 恐ろしいまでの衝撃だ。
 これほどの絶頂を味わった事は今まで無かった
 まさかこの俺が、ヌードを見ただけで射精に追い込まれるなんて……。
「――次は」
 頭上から声が響く。
 見上げると、そこには一回転し終えた姫乃が素立ちして、礼門を冷然と見下ろしていた。
「次は、何をしたらいいのかしら」
 声こそ震えているが、その口調は、いつもの姫乃とそれほど変わっていない。生まれたままの姿にひん剥かれてなお、礼門の命令に服従するという、自分の義務を果敢に果たそうとしているのだ。凄まじい意志の力で羞恥に打ち勝とうとしている。最後の一枚を脱ぐ辱めには勝てなかった姫乃であったが、いざ脱いでしまえば開き直って肝が据わるという事か。やはり一筋縄ではいかない少女だった。
 逆に、下着の中に射精してしまう醜態を、よりによって姫乃本人に見られてしまった礼門は哀れであった。姫乃のヌードのあまりの美しさに、自制が効かず精液を漏らしてしまったのだ。まだ姫乃の性器を暴いてもいなければ、彼女の身体に触れたわけでもない。にも関わらずフィニッシュに至ってしまったのは屈辱だった。これではどっちが辱めを受けているのか分からなくなってくる。
 むしろ自分の方が生き恥をかかされているのではないか?
 一瞬、礼門はそんな錯覚さえ覚えていた。
 彼が見上げる姫乃の姿は、頭上の太陽の光を浴びて、神々しいまでに輝いている。足元を除けば一糸纏わぬオールヌードだというのに、気丈にも身体を隠そうともせず、堂々と礼門に対峙する姿勢には、畏れさえ抱かせる威厳があった。その威光はまるで――。
 そう、まるで……。
 まるで、天使のようではないか。
 天使の少女なのだ、いま自分の目の前に立っている少女は。
 刹那、礼門の脳裏に鮫島の言葉がリフレインしていった。「お前たちは白鷺姫乃がどれほどの存在なのか、まるで分かっちゃいない」というあの言葉。自然教室が始まる前、桃香と作戦会議をしていた時の発言だ。「白鷺を食いたければ好きなだけ食うがいい。お前たち程度では白鷺を穢す事は出来んだろうがな」とも言っていた。
 鮫島には分かっていたという事か?
 姫乃が持つこの、神々しい天使の如きオーラの存在が。
 礼門程度では、姫乃を脱がしたところで彼女には勝てないのだという事実が。
 ――いや、馬鹿馬鹿しい。
 そんな事があってたまるか。
 女なんて所詮みんな同じだ。素っ裸にひん剥いて凌辱の限りを尽くせば、すぐに命乞いして服従するようになる。何が天使の少女だ。白鷺姫乃だって所詮は、その辺の雑魚女子と同じに決まっている。
 そうだ。
 俺は白鷺姫乃に勝つ事ができる。完全勝利できる。今からそれを、クラスメイト全員の目の前で証明してやるのだ。
 礼門は下らない杞憂を即座に頭から追い払った。
 だが彼は気付いていない。自分自身に言い聞かせるような今の思考こそ、姫乃に気圧されている何よりの証拠だという事に。天使の少女を前にして、自分がすっかり萎縮している事に。そして白鷺姫乃を屈服させる事が、どれほど困難で実現不可能な偉業なのかという事に。




 さらにもう一つ。
 礼門がまだ気付いていない事が一つだけあった。
 彼の背後、そのずっと後方……ギャラリーの円陣の外側から、立ったまま悠然と事態を俯瞰している、鮫島の存在だ。彼は作戦会議の時こうも言っていた。
 ――「白鷺姫乃に本当の地獄を見せてやる」、と。
 姫乃が天使の少女なら、鮫島は悪魔の男であろう。その悪魔が、どれほど恐ろしい姦計をもって姫乃を陥れようと牙を光らせているのか。礼門は……そして恐らく当の姫乃も、まだ全く気付いていなかった。
 
 
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