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第一話『罠に堕ちた男子』

2011-08-21

 僕のクラスでは男子と女子が戦争をしている。

 戦争と言ってももちろん本物の殺し合いなんかじゃない。性的なイタズラの応酬だ。けれどもそれはイタズラと呼ぶにはあまりに度が過ぎていて、やっぱり『戦争』と呼ぶ他ない光景だった。
 事の発端は、今となってはもうよく分からない。そもそも僕は転校生なので、その辺の事情には疎いんだ。確実なのは、暗黙の了解で決められたルールに基づく戦争である事。
 そのルールはこうだ。

 一つ、攻撃方法は性的なイタズラに限定し、肉体的な暴力は避ける。これは、殴られた痣などが残ると、教師や保護者といった大人が介入してくる危険があるからだ。
 二つ、イタズラの証拠として携帯のカメラで画像を撮影する。ただしその流通はクラス内に限定し、外には漏れないようにする。これも、事が大きくなり過ぎるのを防ぐため。もしこの戦争の事が大人にバレたら、僕達クラス全員が連帯責任で手酷い罰を受けることになるだろう。その為の自衛策だった。
 三つ、戦争の終結は、先に全滅した方を負けとする。恥ずかしい写真を撮られてしまった時点で、もうその子は敵軍には逆らえない。画像の流出がクラス内に限定されているとはいえ、弱みを握られた事には変わりないからだ。そして男子軍、女子軍、いずれかが全滅……つまり全員恥ずかしい写真を撮られた時点で、その軍は敗北となる。相手の軍に屈服すると言っていい。

 いかにして自軍の犠牲を最小限に抑え、かつ敵軍の恥ずかしい写真を集めていくか。それがこの『男子女子戦争』の全てだった。




 犬飼虹輝が転校してきた時、既に五年二組の男子女子戦争は佳境を迎えていた。男子軍で『生存』なのは四人。女子軍は五人。他のクラスメイト達は、いずれも敵軍の手によって恥ずかしい写真を撮られ、『戦死』している。果たしてどっちが先に全滅するか。生存の九人はもちろん、戦死したクラスメイト達も固唾を呑んで見守っていた。
 恥ずかしい写真を撮られていても、最終的に自軍が勝てばクラス内で復権はできる。逆に自軍が敗北すれば、それは即ち、六年生に進級するまで敵軍の奴隷として辱められる事を意味している。
 そんな緊張状態のさなか、男子児童である犬飼虹輝は転校してきたのだ。
 この五年二組に。

「……というわけで、俺たち男子軍はお前を仲間に引き入れようって思ってるわけさ。そうすりゃ五対五でイーブンになるだろ?」
 当然、最初に接触してきたのは男子軍の方だった。男子軍の司令官である、明石士郎が声をかけ、矢継ぎ早に『男子女子戦争』の内幕を解説していく。もちろん虹輝は最初、冗談だと思って笑っていた。多感なこの時期、男子と女子でケンカする事はよくある話だ。けれどそれがクラスを二分する総力戦に……しかもその内容が、性的イタズラの応酬だなんて、悪い冗談としか考えられない。
 だが明石が自分の携帯を開き、画像フォルダの中を見せた途端、虹輝の表情が一変した。
 そこには確かに女子児童の裸の写真がいくつも保存されていたからだ。
 膨らみかけの平たい胸。
 丸くすべすべしたお尻。
 陰毛が生え始めたスリット。
 そんなあられもないヌードの身体に連なる顔は全て、今この教室にいる女子児童の顔と完全に一致している。しかも写真に記録されているのは一人じゃなかった。クラスの女子十六人のうち、十一人もの裸が納められているのだ。
 胸の大きさの違い、陰毛の生え具合の違い、乳首の色と形の違いまで、克明に撮影され、保存されていた。中にはストリップさせられている女子や、放尿姿まで撮影されている女子もいる。卒倒するほどに生々しい、無修正の恥ずかしい写真の山だった。
「俺たちの男子軍に入りゃ、これ全部コピーさせてやるよ。これから毎日、同じ教室で勉強する女子の裸がいつでも見れるんだぜ? いや裸だけじゃない。割れ目の中もケツの穴も、隅々までアップで見放題だ。ま、生存中の五人だけはまだコレクションに入ってないけどな」
 言いながら、明石は携帯を閉じてポケットにしまった。虹輝が名残惜しそうに視線を送る。
「迷う事はないだろ? 男子軍にいれば、俺たちがお前をガードしてやる。もし男子軍に入らず、中立の立場でいようなんて考えてるなら……やめとけ。この男子女子戦争が始まった時、真っ先に戦死したのはそういう平和主義者たちだったからな」
「せ……」
「うん?」
 そこで初めて、虹輝が口を開いた。あまりの興奮に喉はカラカラで、舌が口の裏側に張り付いてしまっている。
「戦死したら……どうなるの?」
 明石の携帯に記録されている女子たちは、全て男子軍によって戦死させられた女子だ。という事は、立場を逆転させれば自ずと質問の答えは見えてきた。女子軍によって戦死させられた男子はどうなるのか?
「決まってんだろ。女子たちの目の前で素っ裸にさせられて、チンポからケツの穴までアップで撮影される。後はもう女子には逆らえねぇ。奴隷扱いさ」
 暗黙の了解で、戦死した児童は戦争には参加できないらしい。生存の児童は、女子が五人。男子は明石を含めて四人。虹輝が参加すれば五人になるはずだった。
「女子に素っ裸にされるなんて御免だろ? どうせ戦争に参加するんなら、オイシイ思いをしようぜ? 戦死した女子十一人の素っ裸の画像を手に入れて、残り五人もコレクションに加えてやるのさ。それが一番賢い選択だ」
「う……ん……」
 だが虹輝の返事は鈍かった。
 確かに明石の言う事が本当なら、迷う必要はない。けれども、明石の言葉を本当に信じていいのだろうか? 男子女子戦争なんてあまりにも話が突飛過ぎる。いま確実に分かっている事は、明石の携帯にクラスメイトの女子の恥ずかしい写真が記録されている事。これだけだ。もし明石が相当なワルで、女子児童が一方的な被害者だったとしたら? 虹輝は知らず知らずのうちに悪事に加担させられる事になってしまう。
 このクラスの事を、虹輝はまだ何も知らない。判断するには材料が足りなさ過ぎた。とりあえず女子からも話を聞いた方が良いだろう。
「ちょっと考えさせて」
 虹輝がそう答えると、明石は難しい顔をした。
「今こうしている間にも女子軍の連中はお前を狙ってる。ゆっくりしてる時間はないぜ? 放課後までには決めてくれ」
「分かった」
「それから、絶対に一人で校内をうろつくなよ。必ず男子……できれば生存中の奴らと一緒に行動しろ。いま名前を教えるから」
 明石は男子軍の生存メンバーである、自分以外の三人の男子の名前を虹輝に告げていった。それから、注意すべき敵……女子軍の生存メンバーの名前も五人、しっかりと覚え込ませた。
 女子軍サブリーダーの名前は、羽生桃香。
 そして司令官の名前は――白鷺姫乃、である。




 机の中に入っていた手紙には、白鷺姫乃と名前があった。
 五年二組の学級委員長。そして明石の話によれば、女子軍の司令官でもある女子児童だ。このクラスの男子にとっては宿敵と言ってもいい。
 一時間目の授業中、その手紙を発見した虹輝は、わけも分からず動揺してしまった。一体いつの間に手紙なんて入れたんだろう。姫乃は学級委員長だから、虹輝のために机と椅子を用意したのも彼女かもしれない。まさか転校初日にラブレターでもないだろうし、一体どういうつもりなのか……。
 虹輝は期待半分、恐さ半分で封筒をあけ、便箋を広げていく。


『虹輝くんへ。

 突然のお手紙ごめんなさい。今このクラスは明石くんに支配されていて、男子は逆らえないの。だから助けを求めるにはこういう方法しかありませんでした。

 きっと明石くんは一番に君に話しかけて、あることない事を吹き込むと思います。でも信用しては駄目。彼の本当の目的は、あなたを悪い仲間に引き込むことなの。もしかすると、彼が女子のみんなに酷いことをしている写真を見せられるかもしれません。あいつの目的は、クラスの女子全員を奴隷にする事だから。

 みんなの恥ずかしい写真を握られているために、私達は先生や大人に助けを求められないんです。虹輝くんには、明石くんたちの仲間になるフリをして、証拠の画像を消去する手伝いをして欲しいの。

 私達を助けられるのは虹輝くんしかいません。お願い、私を信じてくれるなら、昼休み時間に音楽室まで来て下さい。もちろん、明石くんたちには見つからないように一人で。私達はずっと、虹輝くんみたいな転校生が来る事を待っていたんです。どうか、話だけでも聞いて下さい。

白鷺姫乃』


 これはどう解釈すべきか。
 虹輝は完全に混乱状態だ。明石の話を信用するなら、これは女子軍の罠という事になる。でももし姫乃の言っている事の方が正しかったらどうか? 明石の話を鵜呑みにして音楽室に行かない事で、結果として彼の悪事に加担する事になってしまう。取り返しがつかない過ちだ。
「とりあえず……話だけでも聞いてみるか」
 虹輝は一人呟いた。まさかいきなり襲い掛かってくるなんて事はないだろう。話を聞くだけ聞いて、どっちを信じるか判断すればいい。相手は女子一人なんだし、どうにでもなる。
 そう。
 この時の虹輝はまだまだ平和ボケしていたのだ。
 男子女子戦争の過酷さを全く自覚していなかった。女子の言葉を信用して単独行動する……それこそが、取り返しのつかない過ちだとも知らずに。




 昼休み、トイレに行くフリをしてさりげなく教室を抜け出した虹輝は、不慣れな校舎に戸惑いつつも音楽室へと足を運んだ。結構児童数の多い学校だから、廊下に出れば簡単に人ごみに紛れる事ができた。明石やその仲間達に声をかけられる事もなく、虹輝は音楽室の扉をそっと開けていく。
 一人の少女が、背を向けて窓の外を見ていた。
 白鷺姫乃だ。
 扉の音に気づき、こちらを振り向く。初めて教室で見た時から思っていたが、驚くほど綺麗な女の子だった。
 セミロングの髪に清楚なブラウス。糊の利いたプリーツスカート。知的でたおやかで、それでいて明るく快活な美少女。五年二組の女子のリーダー格に祭り上げられるのも当然かもしれない。
「来てくれたんだ、虹輝くん」
 透き通る声が虹輝の鼓膜をくすぐった。
「う、うん」
「良かった。明石くんの話を信じ込んで、来てくれないのかと思ってた」
 ゆっくりと虹輝の方に歩み寄ってくる。その仕草。表情。歩き方に至るまで、惚れ惚れするほどに完璧な美少女だ。
「まぁ……僕もこのクラスの事はまだ良く分かってないからさ。姫乃さんと二人で会って、話を聞くだけならどうって事ないし」
「二人で?」
 姫乃が小首を傾げる。
「誰が二人で会うって言った?」
「え? だって……」
「手紙には、虹輝くんに一人で来てって書いたけど、私も一人で来るなんて一言も書いてなかったはずよ」
 虹輝はもう一度文面を思い出してみた。確かに姫乃の言う通りだ。差出人が彼女だから、てっきり彼女一人が待っているとばかり思い込んでいたけれど……。
「それって……どういう……」
 背中に冷たい汗が流れる。本能的に感じる危険信号。この空気……何かとんでもない事態が起ころうとしているようだ。
 まさか……。まさか?
「あはは、本当に一人で来たんだ。転校生が意外とお馬鹿さんで助かったわ」
 後方から響く声。
 振り返ると、髪の長い少女が愉快そうに口元を抑えていた。この子は確か……そうだ、羽生桃香だ。まだ転校初日だから顔と名前がすぐには一致しないけど、派手な印象の女子だったから強く記憶に残っている。姫乃に負けないくらいの美少女だった。目つきの鋭い表情が、彼女の気の強さを必要以上にアピールしている。
 姿を見せたのは姫乃と桃香だけじゃない。音楽室には他にも三人の女子の姿があった。みんな物陰に隠れて様子を伺っていたんだ。
「男子軍の連中じゃ、こうは簡単に釣れないよね」
「あいつら、生意気なくせして警戒心だけは強いし」
「姫乃、そろそろ男子軍も私達の動きに気づくはず。転校生の拘束を」
 男子軍……。
 拘束……。
 そうか、そうだったのか。やっぱり明石の言っていた事は正しかったんだ。男子軍と女子軍が激しく対立する男子女子戦争。それがこのクラスの真の姿だった。
 虹輝はまんまと女子軍の罠に嵌ってしまったわけだ。
「悪く思わないでね、虹輝くん」
 狼狽する虹輝の腕を取り、姫乃がおもちゃの手錠で後ろ手に縛り上げる。こんなものまで用意しているなんて……。
「へぇ、こうして近くで見ると、なかなか可愛い顔してんじゃないの。どう? 作戦変更して、今すぐ剥いちゃおうっか?」
 桃香が悪戯っぽい笑みを向けてくる。ポケットから携帯を取り出し、画像フォルダを開いていった。何やらデジャビュを感じる光景だ。案の定、ディスプレイに表示される画像データは、全てクラスメイトの男子児童の恥ずかしい写真ばかりだった。
 丸裸にされ、皮の被ったおちんちんを丸出しにさせられている画像。その青白い性器のアップ。さらには四つんばいにされたお尻の穴。どれもこれも、産毛が見えるほどに接写させられていた。その数十四人。生存している男子軍の四人を加えれば、虹輝を除いた五年二組の男子児童の総数、十八人とピタリ一致している。
 男子軍が女子の恥ずかしい画像を保存しているように、女子軍もまた男子の恥辱写真を撮影していたんだ。
「転校生のおちんちんはどんな形してるのかなぁ? 包茎? それとも剥けてる? ああん、早くこのコレクションに加えたいわ!」
「駄目よ。虹輝くんは明石くんを倒すための貴重な捕虜だもの」
 おちんちんとか包茎とか、恥ずかしい言葉を平然と口走る桃香にも驚かされるが、それ以上に仰天すべきは姫乃の言葉だった。
 捕虜……だって?
 明石を倒すための?
 女子軍は今ここで、男子軍リーダーである明石士郎を倒そうとしているのだ。倒す、の意味は即ち、恥ずかしい写真を撮って『戦死』に追い込む事だろう。この五年二組では、男子と女子が常に性的イタズラを仕掛ける事を企み、権謀術数を駆使して互いを牽制し合っている。
 これが男子女子戦争の現実、か……。
 けれども今日転校してきたばかりの虹輝を人質にして、果たして明石を誘い出せるのだろうか。彼にしてみれば虹輝は、自分の忠告を聞かなかった馬鹿な転校生だ。男子軍のリーダーともあろう人が、虹輝を助けるためだけに、むざむざ女子軍の罠に飛び込むなんて考えにくかった。虹輝は最初クラスの人数に入っていなかったイレギュラー。見捨てたって大勢に影響はない。そう思うはずだろう。
 疑念を抱く虹輝をよそに、姫乃は自分の携帯で明石に電話をかけ始めた。
「明石くん率いる男子軍によって、五年二組の女子はさんざん恥ずかしい思いをさせられてきたわ。その恨みを今日こそ晴らすのよ」
「男子軍を一気に瓦解に追い込むチャンスね。でも彼、来るかしら?」
「必ず来るわ。今まで男子軍が明石くんを中心にまとまってこれたのは、身体を張って仲間を助けようとする、彼の義理人情に厚い性格のお陰だもの。転校生だからといって、男子を一人見捨てたとあれば……明石くんのカリスマは地に堕ちてしまう。それだけは彼も避けたいはず」




 姫乃の読み通り、明石は電話での呼び出しに素直に応じてきた。
 転校生を助けたければ一人で音楽室まで来る事。そうすれば転校生は無傷で返す。ただし少しでも変な動きを見せたら、即刻転校生を裸にして羞恥撮影会を始める……。
 その要求に応じ、本当に一人で音楽室にやって来たのだ。
「まだ右も左も分からない転校生を、嘘の手紙で騙して捕虜にするとはな……。てめーら随分卑怯じゃねーか」
 明石が苦々しげに言い捨てる。音楽室に入った途端、ドアは内側から鍵をかけられ、三人の女子が明石の周囲を取り囲んだ。羽生桃香とその取り巻き二人といったところか。拘束した虹輝の見張りは、姫乃ともう一人の女子が受け持っている。
「知略に優れていると言って欲しいわね。手紙に嘘は書いてないわよ。肝心な事をぼかして、誤解するような書き方はしたかもしれないけど」
「……チッ、相変わらず口の減らない女だぜ」
「そっちこそ、あの手この手で罠を張って、クラスの女子十一人に恥ずかしい思いをさせてきたじゃない。率先して男子を率いてきた明石くんに言われたくないわ」
 威勢はいいが、明石の置かれている状況は圧倒的に不利だった。この音楽室はちょっとした密室。その中に味方は一人もいない。敵の女子軍は五人もいて、駄目押しとばかりに捕虜まで用意しているのだ。普通に考えて勝ち目は全くなかった。
 不思議なのは、明石がそこまでして虹輝を助けようとしている事だ。どうして自分を犠牲にしてまで虹輝を守るのか。いくらカリスマを保つためとはいえ、戦死させられたら元も子もないだろう。そもそもこんな事態になったのは虹輝の軽率な行動が原因だったはずだ。それなのに、明石は責めるそぶりすら見せようとしなかった。
「さて、と。士郎? 何をされるかは覚悟してきたんでしょうね」
 桃香が挑発的な表情で明石の顔を覗き込む。
「当たり前だ」
「ふふん、そうよねぇ。今までさんざん、クラスの女子に恥ずかしい思いさせてきたあんたなんだから。立場が逆転すればどうなるかくらい、想像つくはずよね」
 虹輝の脳裏に、明石の携帯に保存されていた大量の画像がよぎった。戦死した女子の羞恥写真。そして彼の言った、女子軍の手によって戦死させられた男子の運命……『女子たちの目の前で素っ裸にさせられて、チンポからケツの穴までアップで撮影される』という言葉がリフレインする。
 今まさに、明石は自分が言った通り、ここにいる女子たちの目の前で生き恥さらしを強制されようとしていた。
「んじゃ、服脱いで素っ裸になって」
 桃香が勝ち誇ったように命令する。
 唇をかみ締める明石。
「あれぇ? ずいぶん反抗的ね。あたしの言う事が聞けないってわけ? まぁ、それならそれで転校生くんに脱いでもらうだけだけど?」
 頭では分かっていても、いざ行動となると二の足を踏むのは当然だろう。しかし顎で虹輝の方を指し示す桃香の前に、とうとう明石も観念したようだ。覚悟を決め、Tシャツを捲り上げて脱ぎ捨てる。歓声を上げる女子たち。それを無視して、明石は手にしたシャツを音楽室の床に投げ捨てた。
「……約束は守れよ」
「もちろん。女に二言はないわ」
 とはいえ、歓声を上げて喜んでいるのは、桃香とその取り巻きコンビだけだった。姫乃ともう一人の女子は、油断なく虹輝を見張りながら、冷めた視線で明石のストリップを眺めている。
「ここまでこちらの言いなりになるという事は――、やはり男子軍内部の亀裂は相当深刻、という事かしら」
「らしいわね。耶美の情報通りだわ」
 姫乃と話をしている女子は、確か甲守耶美という名前だったはずだ。常に無表情、無感動な話し方で、黒髪のおかっぱ頭に黒いシンプルなワンピースを身に着けている。
 どうも女子軍は姫乃をリーダーとしながらも、二つの派閥に分かれているらしかった。姫乃と耶美の二人と、桃香とその取り巻きコンビの三人。男子軍との戦争中とはいえ、なかなか一枚岩というわけにはいかないらしい。
「私達が言えた事じゃないけど、男子軍は残り四人だっていうのに、よく仲間割れなんかしている余裕があるわね」
「だからこそ、こうやって身体を張って転校生を守っているんじゃないかしら」
 姫乃と耶美の会話を聞きながら、虹輝は何とか脱出の機会がないか様子を伺っていた。しかし二人には全く隙がない。会話に気をとられているようでいて、その実しっかりと虹輝の仕草を監視しているのだ。虚を突いて逃げ出すなんてまず不可能だった。
 そうこうしている間に、明石が半ズボンに指をかける。ファスナーを下ろしてゆっくりと足から引き抜いていった。露わになる真っ白なブリーフ。
「ふっふーん、可愛らしいパンツね。男子軍のリーダー様は、五年生にもなってまだそんな下着なの?」
「うるせぇ、俺の勝手だろ」
「あらあら、パンツ一丁にされても生意気なところは変わらないのね」
 明石はもう、靴下と上履きを除けば、ブリーフしか穿いていない恥ずかしい格好だった。確かに偉そうな口を叩ける姿ではない。
「ねーねー、桃香ちゃーん。早くパンツも脱がせちゃおうよ。祢々子もう我慢できなーい」
 自分の携帯を振り回して愉快そうにケラケラ笑うのは、桃香の取り巻きコンビの一人、暮井祢々子。五年生にしては随分幼い外見の女子だった。低学年……それこそ一年生や二年生に間違えられてもおかしくない。ショートカットにジャンパースカートが外見のあどけなさにさらに拍車をかける。
 ただし幼いのは外見だけだ。中身は、他の女子と同じく男子軍を辱める事に情熱を注ぐ、冷酷で残忍で破廉恥な女の子だった。
「焦らなくても昼休みはまだまだ残ってるわよ。じっくりいたぶりながら恥ずかしい思いをさせなきゃ、面白くないじゃん?」
 取り巻きコンビのもう一方が、相棒でもある祢々子を制する。宇崎みどり。こちらは対照的に、背が高くプロポーションもいい女子だ。たぶん胸の大きさはクラスいち。ウエストも引き締まり、大きなお尻がピッチリしたカプリパンツに包まれていた。
「そういう事。まずはパンツ一丁の情けない姿を撮影しておかなくっちゃね」
 桃香は携帯のカメラレンズを向け、ブリーフ一枚の明石の姿を克明に記録し始めた。祢々子とみどりもそれに続く。三人は明石の周囲を歩きながら、直立不動の彼の身体をあらゆる方向から撮影していった。
「ちょっと士郎、棒立ちじゃ面白くないじゃん。両手挙げて頭の後ろで組んでよ」
 命令され、渋々それに従う士郎。無毛の脇の下が露わになり、カメラのシャッター音が音楽室に響いていく。それはまさに両手を挙げて降伏する、服従のポーズでもあった。
 少し離れた場所から様子を眺める姫乃と耶美、それに虹輝を置いてけぼりにして、桃香たちのテンションは徐々に……しかし確実に上がっていった。
「よーし、じゃあパンツ一丁は思う存分撮影したし、いよいよ最後の一枚を脱いでもらおうかな」
「ねぇねぇ、おちんちん剥けてると思う?」
「どうだろーね? 今まで裸にした男子は全員包茎だったし、男子軍リーダー様もやっぱり皮被りなんじゃない? 毛が生えてるかどうかだって怪しいよ」
 桃香たち三人が好き勝手に予想していく。
「んじゃ、放課後のアイス賭けてトトカルチョといきますか? あたしは毛なし・包茎・短小に一票」
「祢々子はねぇ、毛あり・包茎・短小かな?」
「私は毛あり・包茎・ちょい大きめに賭けるわ」
「あはは、三人とも包茎ってとこは同じじゃん。まぁどうせ包茎なんだろうけど」
 さんざん笑いものにした上で、桃香は満を持して命令を下した。男子にとって、思春期の男の子にとって、死刑にも等しい屈辱の命令。即ち、クラスメイトの女子の目の前でのパンツ下ろし。おちんちんの露出であった。
 さすがの明石もこれには躊躇してしまう。頭の後ろで組んだ手がなかなか動かない。頭では分かっていても身体がついてこないのだ。
「……ねぇ姫乃。転校生がどんなパンツ穿いてるのか見てみようか? ちょっとズボン、脱がせてくれる?」
「よせよ! そいつには手を出さない約束だろ!」
「だったら早く脱ぎなさいよ。ウジウジためらったりして、男らしくないわね」
「クッ」
 明石は悔しそうに唇を噛み締めるが、今の状況では手も足も出なかった。ここは女子の言いなりになるしかない。観念して目を閉じると、両手を腰に回し、ゆっくりとブリーフのゴムに指をかけた。
「やっと覚悟を決めたみたいね。さぁ、世紀の一瞬よ」
「あれだけ偉そうにしてた明石くんのおちんちん、しっかり撮ってあげるからね」
「あんまり私達をがっかりさせないでよ」
 女子たちの煽りを無視して少しずつパンツを脱いでいく。徐々に白い布切れが腰を滑り、おへその下の肌が露わになっていった。そして股間の膨らみがゴムに引っかかる。とうとう最後の瞬間がやってきたのだ。明石のプライドが……男としての最大のプライドが、踏みにじられる瞬間が。
 意を決した明石がブリーフを引き下ろす。
 引っかかっていた性器が、ポロンとパンツの向こうから顔を出した。
「きゃー、やったぁ! ついにおちんちんが見えたわよ!」
 真っ先に歓声を上げる桃香。
「あはは、何そのおちんちん! ちっちゃーい! 今まで見た男子の中でも一番ちっちゃいんじゃない?」
 嬉しそうにシャッターを押し続ける祢々子。
「なーんだガッカリ。もうちょっと大きいと思ってたのに、そこだけ幼稚園児なみじゃない。毛だけはちょっと生えてるのが逆に滑稽ね」
 呆れつつもムービーでその様子を記録していくみどり。
 三人の女子……しかも今まで男子女子戦争で戦い続けてきた、敵である女子の目の前で、ついに明石のおちんちんが丸出しにされてしまった。この女子三人は戦死していない。まだ男子に裸を見られた事のない、生存中の女子なのだ。それなのに一方的に男子だけがオールヌードになって嘲笑われるとは。明石の男のプライドはもうズタズタだった。
 一方で、虹輝たち三人の様子は落ち着いたものだった。同じ男子である虹輝が興奮していないのは当然としても、耶美は相変わらず無表情で感情を露わにしていないし、姫乃に至ってはむしろ照れて視線を外している有様なのだ。男子の裸を前にした反応でも、桃香派と姫乃派の違いは顕著だった。
「ねぇどう? 女子に見られて恥ずかしい? 恥ずかしいよね?」
 桃香がこれ以上ないほどの笑顔で明石に問いかける。彼が俯くと、わざわざその顔を覗き込んで、執拗に質問を繰り返した。
「これだけちっちゃいくせに一丁前に毛なんか生やし始めちゃって……ホント、男子の裸って惨めよねぇ。恥ずかしいわよねぇ?」
「……別に」
「あら? 恥ずかしくないっていうの?」
「お前らなんかに見られたって、へっちゃらって事だよ」
 せめて口先だけでもと強がりを言う明石。だがその声は震えていた。素っ裸に剥かれ、普段の威勢がすっかり無くなったのを見て取って、さらに桃香たちが追い討ちをかけていく。賭けが祢々子の勝ちになってしまった事もあり、いつも以上に男子を辱めて溜飲を下げるつもりなのだろう。
「裸が恥ずかしくないんなら、私の言うポーズもとってくれるわよね? 足を蟹股に開いてくれるかしら?」
「何で、俺がそんな事……」
「裸にされるだけで済むと思ってるの? あんたが今まで辱めてきた女子たちと同じ目に遭わせてやるのよ。ほら、もっと足を開いて腰を落として! 手は頭の後ろで組む!」
「覚えてろよ桃香……。いや、桃香だけじゃねぇ。ここにいる五人の女子全員、キッチリ仕返ししてやるからな」
「戦死したらもう男子女子戦争には参加できないんだけど? まぁその強がりがいつまで続くか、楽しみだわ」
 虹輝という捕虜がいる以上、明石に選択権はない。肩幅ほどに足を開き、膝を曲げて腰を落とす事で、相撲の四股のような体制になる。そして両手は言われた通り頭の後ろに回して組んだ。大きく開かれた両足の間で、小さなおちんちんと玉袋がプラプラと揺れていた。
「あっははは! サイコー! 何その格好! 無様すぎ! ケッサクだわ!」
「よくそんな間抜けな姿勢、女子の前で出来るよね。男の子としてもう終わってるんじゃない?」
「他のクラスの女子で明石の事、好きって言ってる子、結構多いのよ。その子達もこんな姿見たら幻滅だろうね」
 桃香たち三人は明石を取り囲み、腹を抱えながら笑い転げた。ありとあらゆる方向から明石の惨めなオールヌードを撮影していく。
「……まぁでも安心してよ。戦争協定通り、この画像はクラスの中でしか回さないから」
 平然とそう言いつつ、桃香は撮影したばかりの明石の恥ずかしい画像をメールに添付し、他の女子に送信する準備を始めた。今この場で桃香たちの携帯を取り上げれば、少なくとも記録の中では明石の痴態は無かった事になる。
 だが一度でも他の女子に送信されてしまったらもうお終いだ。瞬く間に画像はコピーされ、女子から女子の間を飛び交い、あっという間にクラスの女子全員に共有されてしまう。今まで同じ教室で毎日勉強していた女子に……これからも毎日顔を合わせる女子に、みっともなくおちんちんを丸出しにして、蟹股の体勢までとっている最悪の恥辱写真を見られてしまうのだ。
「さ、送信準備完了! 士郎のカッコ悪い短小包茎おちんちん、クラスの女子全員に見てもらおうね!」
 桃香はこれ見よがしに携帯の画面を明石の鼻先に突きつけた。後は送信ボタンを押せば、彼の惨めなすっぽんぽん写真がクラス中に公開されてしまうわけだ。明石が抵抗できない事を幸いに、桃香はネチネチとさらにいたぶっていく。
「でも私も鬼じゃないから、送信は許してあげてもいいわよ。ここにいる女子五人だけの秘密にしておいてあげる。ただし、素っ裸で土下座して『許して下さい桃香様』って言えたらの話だけど」
 最初から許すつもりなど毛頭ない。桃香はただ明石を徹底的に辱めたいだけなのだ。その意図を見抜き、突きつけられた携帯の画面めがけ、明石がペッと唾を吐き捨てる。
「ふざけんな。誰が言うかそんな事。死んでも言わねぇ」
 その反抗的な態度に、青褪めたのはむしろ、祢々子とみどりの二人だった。思わず桃香の顔色を伺ってしまう。桃香は表情を変えず、ポケットからティッシュを取り出して、携帯の画面を綺麗に拭っていった。
「――ふーん。幼馴染みのよしみでちょっとは情け、かけてあげようと思ってたんだけど。そっちがその気なら、こっちももう手加減はしないわ。祢々子、みどり。士郎を仰向けにして。予定通りに実行よ」
 メールの送信ボタンを押し、淡々と命令を下す。明石の恥ずかしい写真は、呆気なくクラスの女子の下へ送信されてしまった。同時に彼は音楽室の床に押し倒される。
「何だよお前ら! 触んなよ!」
 最初から打ち合わせしてあったんだろう。祢々子とみどりは両脇から明石の足を掴み、思いっきり頭の方へ折り曲げていく。仰向けのまま腰が浮き上がり、恥ずかしい性器が丸見えになり……さらに性器よりももっと見られて恥ずかしい肛門までもが、天井に向けて露出されてしまった。いわゆる『ちんぐり返し』の体勢だ。
 足を押さえながら、祢々子とみどりが携帯で執拗に肛門のアップ写真を撮影していく。一方の桃香はロングショットで、彼の顔をしっかり入れつつ、惨めな体勢がよく分かるように全身を写真に収めていった。こうして明石はおちんちんだけでなく、お尻の穴の形や色素の沈着具合、皺一本一本に至るまで、全てを女子の前で暴かれてしまった。玉袋も、蟻の門渡りの様子も、余す事なく晒される。
 これだけでも明石にとっては耐え難い苦痛なのだが、彼にとっての本当の苦痛は……実はこれからなのだ。
「あんたの誕生日はもう終わったんだっけ? これ、あたしからのプレゼント。遠慮しないで受け取ってね」
 桃香が取り出したのは、一ダース入りの鉛筆セットだった。箱を開け、削っていない鉛筆を十二本、全て取り出す。その内の一本を口に含んでよく湿らせた。
「な、なんだよ……何するつもりだ?」
「あら? ひょっとして恐いの? ふふ、かーわいい」
 当然だろう。天を向いて剥き出しになっている肛門を狙って、桃香が濡れた鉛筆を近づけてきたのだから。恐がらない方がどうかしている。
「お前、まさかそれを……」
「言ったでしょ? 遠慮しないで受け取って、ってね」
 明石の肛門に勢いよく鉛筆が挿入されていった。悲鳴と共に性器が勢いよく跳ね上がる。
「あはは、入った入った! おっもしろーい、おちんちんがピクンって波打ったよ?」
「いいムービーが撮れたわ。こんな恥ずかしいザマを晒した男子、今までいなかったものね」
「さぁ、どんどん入るわよ。覚悟はいい?」
「ちょ、ちょっと……待っ……」
 桃香は容赦なく二本目の鉛筆をねじ込んでいった。一本一本は細くても、二本、三本と数が増えていけば、その苦痛は計り知れない。もし一ダース全て使い切るつもりなら……十二本もの鉛筆が、明石の小さな肛門にねじ込まれる事になるのだ。
「はい三本目も入ったわね。次、四本目いくわよーっ」
 愉快痛快といった様子で次々と鉛筆を突き立てていく桃香。それは肛門という花瓶に生けられた、花弁のない花のようでもあった。さすがの明石も目尻に涙を浮かべてしまう。
「ねぇ、見て見て! 明石ったら泣いちゃってるよ!」
「はは、ダサすぎ。この程度で泣いちゃうなんて、情けないわね」
「強がっててもしょせん男子なんてこんなものよ。ほら、五本目入りましたー。次は六本目。これでやっと半分だから、覚悟してね。まだまだ鉛筆は残ってるわ」
 裸を見られる恥ずかしさだけならまだ耐える事もできるが、そこに肉体的苦痛が伴うとなると、五年生の児童には負荷が強すぎる。七本目、八本目と鉛筆をねじ込まれ、明石の肛門は完全に伸びきってしまっていた。このままでは下手をすると裂傷だ。どんな腕白な男の子であっても、もう忍耐の限界だった。とても平常心を保てない。
 心をへし折られ、とうとう明石が屈服の言葉を口にする。
「……さい」
「え? なぁに? 聞こえなーい」
 十本目の鉛筆をねじ込みながら、桃香が勝ち誇ったように明石の泣き顔を見下ろした。
「ゆ……るして……下さい」
「誰に許しを乞うてるのかなぁ? ちゃーんと言ってくれないと」
「も……もか……様」
「ほらほら、もう一度。皆にも聞こえるように大声で!」
 十一本目の鉛筆が肛門に突き刺さる。もはやねじ込まれた鉛筆は放射状に広がり、それ自体が一輪の花のように肛門から咲いていた。
「ゆ、許して下さい! 桃香様ぁ!」
 前立腺を刺激され、明石の性器はカチコチに勃起している。肛門に咲いた鉛筆の花と、お腹の方へ伸びる皮被りのおちんちんを見下ろしながら、桃香は満足気に頷いた。ついにこの生意気な男子軍リーダーを屈服させてやったのだ。
「よしよし、いい子ね。死んでも言わねぇとか息巻いてたけど……やっと素直になってくれて嬉しいわ。どう? 少しは自分の情けなさを思い知ったかしら?」
「は……はい……」
「男のくせに女子に逆らって申し訳ありませんでした、って言いなさい」
「お、男のくせに……女子に逆らって……。もう、しわけ、ありません……でした」
「これからは二度と女子には逆らいません」
「これから……は、二度と女子に……逆らいません」
「女子の奴隷になって一生奉公します」
「女子の奴隷になって……一生……奉公、します」
「あはは、本当に言いなりね。もう男子のプライドなんて全然残ってないんだ? ていうか人間としても終わってるわ」
 泣きながら屈従のセリフを復唱させられる明石。祢々子とみどりは、そんな無様な姿をムービーで克明に記録していった。
「これだけ恥ずかしい姿を晒したら、もう二度と女子には逆らえないでしょうね。いいわ、このくらいで許してあげる」
 桃香は最後に残った鉛筆一本を、悪戯っぽく口に含んだ。彼女の言葉に、明石はホッと安心して気を緩める。
 だが次の瞬間。
「……ていうのは嘘。この程度で許すわけないじゃん」
 十二本目の鉛筆が勢いよく明石の肛門に突き立てられていった。
「あぎゃっ? がぁっ?」
「ほらほら、もっと恥ずかしくてもっと惨めな姿を晒しなさいよ! 身も心もボロボロになるまでいたぶってやるわ!」
 肛門に突き刺さった十二本もの鉛筆。桃香はさらにその鉛筆を、上履きの底で勢いよく踏みつけていった。限界まで開いた肛門がズブズブと鉛筆を呑み込んでいく。
「や……め……あがぁ……」
 明石の意識が弾け飛ぶ。硬直した包茎ペニスから勢いよく精液が噴射し、彼のお腹や胸を汚していった。一方的な暴力で曝け出す、惨めな射精。身も心も、明石が完全に女子たちに敗北した瞬間だ。
「もうイッちゃったの? 口ほどにもないわね」
 桃香は上履きで明石の腹を踏みつけ、靴底に精液を擦り付けた。そのまま彼の顔に近づけていく。
「ほら、呆けてないであたしの上履き、綺麗にしてよ。あんたの汚い精液で汚れちゃったじゃない」
「は……はい……」
 もはや明石はただの人形だった。威勢のいい男子軍リーダーの面影はすでに微塵もなく、女子に屈服して言いなりに動く、ただの惨めな肉人形と成り果てている。泣きながらペチャペチャと、犬のように舌で靴底を舐める姿は、哀れと言う他なかった。
 もちろんその醜態は携帯によって克明に記録されているのだ。今後明石がどう立ち直ろうと、この恥辱の姿は永遠に映像として残されるであろう。
「あー、スカッとした。やっぱり男子いじめって最高ね! 偉そうにしてた士郎のこんな惨めな姿が見れるなんて。これだから男子いじめは止められないわ」
 最後に桃香は上履きで明石の顔を踏みつけ、愉快そうに笑いながらぐりぐりと踏みにじっていった。明石はちんちんも肛門も丸出しにしたまま、抵抗すらできずに、ただその屈辱に耐え忍ぶだけだ。祢々子とみどりも楽しそうに後に続く。顔や肛門やおちんちんを、クラスメイトの女子たちに上履きで踏みつけられながら、明石は醜態を晒し続けた。
 こうして、男子軍リーダーは宿敵の女子たちの前に完全屈服したのである。




 明石を散々いたぶり尽くした後、桃香たち三人は満足気に音楽室を後にしていった。姫乃と耶美も、虹輝の手錠を外して部屋を出て行く。
「明石くんの事、お願いね。先生に怪しまれるから、五時間目には遅れないで」
 笑いながら立ち去っていった桃香たちと違い、姫乃は最後まで冷静沈着だった。むしろ男子の事を気遣ってくれるほどだ。
 そして音楽室に虹輝と明石だけが残される。お願いね……と言われても、何をどうすればいいのか。とりあえず、無残にも肛門に突きたてられた鉛筆を引き抜かなければならない。ぐったりしたまま動かない明石に近づき、虹輝は肛門の鉛筆を一気に引き抜いた。
「う……がぁ!」
 その衝撃で明石の性器がまた跳ね上がる。
「ご、ごめん! 痛かった?」
「も……ちょっと、ゆっくりして……くれよ」
 ぱっくり開いた肛門が静かにその口を閉じていく。男子のお尻の穴とはいえ、他人のこんな所を間近で観察するのは初めてだ。思わず虹輝はその様子に見入ってしまった。お尻の穴ってこうやって開いて、排泄した後また元に戻っていくのか……。
 折り曲げられた身体を戻すと、ようやく明石は自力で起き上がって、音楽室の床の上に胡坐をかいた。
「くそっ……。桃香のヤロー、好き勝手やりやがって」
 時間が経って落ち着きを取り戻したんだろう。明石はいつもの強気な調子を取り戻していた。
「ごめん明石くん……僕のせいでこんな事になって」
「僕のせい? ハッ、別に俺はお前のためにこんな目に遭ったわけじゃねぇよ」
「え、でも?」
 明石の警告を無視して軽率な行動をとったために、虹輝は女子軍の捕虜になってしまった。だから明石は彼を助けるために、自分を犠牲にして恥ずかしい思いをさせられた……。そう虹輝は思っていたのだが。明石はそれをあっさりと否定する。
「いま男子軍は内部分裂しつつあるんだよ。俺は騙し騙し、今まで男子軍を率いてきたけど、そろそろ限界だったんだ。誰か別の、新しいリーダーが必要だったのさ。瓦解しつつある男子軍を統率できる、今までの人間関係のしがらみを持たない、全く新しいカリスマのリーダーが。そう思ってたところに転校生……お前がやってきた」
 戦死した明石はもう、男子女子戦争に直接関わる事はできない。影からアドバイスするくらいなら可能だろうが、女子に弱みを握られた人間が、男子軍の司令官の座に居座るわけにはいかないのだ。
「けど関係ねぇさ。だって男子軍の新しいリーダーはもう決まってるんだからな」
「ま、待ってよ? それってもしかして……」
「虹輝。お前が男子軍の新リーダーだ。お前は俺の話を鵜呑みにしようとせず、女子にも会ってクラスの実情を知ろうとした。そういう論理的判断ができる人間が、リーダーには必要なんだ。五年二組の事を何も知らないからこそ、真っ白な状態で皆をまとめる事ができる」
 虹輝が明石の警告を聞かなかったのに、それを責めなかった理由がやっとわかった。他人の言いなりに動くのではなく、自分で考えて自分で行動しようとする。虹輝のそういう所に新リーダーとしての資質を見出したからこそ……明石は自分を犠牲にしてまで虹輝を守ったのだ。
 全ては女子軍に勝つ為に。
 男子女子戦争に勝利する為に。
「言っておくが、俺がお前をかばって戦死した事は、今日中にクラス全員に知れ渡るだろう。それなのに俺の頼みを断ったりしたら、お前、クラスの男子全員から顰蹙買って総スカンだぜ? 女子軍に投降して自分から奴隷になるっていうんなら話は別だが……転校早々クラスで孤立したくはないだろ?」
 つまり新リーダーを引き受ける以外、虹輝に選択の余地はないという事だ。これは最初から仕組まれていた罠だったと言えよう。女子軍が虹輝を罠にかけたように、実は明石もまた虹輝に罠を仕組んでいた。
 明石のバックアップを受けながら、男子軍の司令官となって女子軍と戦うしかない。それが虹輝に残された唯一の選択肢なのだ。
「女子軍の生存者は五人。さっきの五人だ。あいつらを全員素っ裸にして、俺がされたみたいに徹底的に辱めてやればいいのさ。それで男子女子戦争は終わる。このクラスに平和を取り戻すためにも、あの五人に生き恥を晒させなきゃいけないんだ」
 白鷺姫乃。
 羽生桃香。
 宇崎みどり。
 暮井祢々子。
 甲守耶美。
 この五人に恥辱と羞恥を与え、屈服させて男子軍を勝利に導く。虹輝の戦いは今まさに始まろうとしていた。……本人の自由意思の、全く及ばないところで。


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