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第十六話 『深夜の散歩』

2015-01-16

 虹輝の手元には、数枚の書類があった。
 これは姫乃から渡された封筒に入っていたものだ。一枚は、脱衣カードゲームのルールに関するもの。ざっと目を通しただけで詳しくは把握していないが、トランプを使った簡単な勝負を繰り返し、負けた方がその都度服を脱いでいくという内容だった。
 これはつまり、ストレート勝ちに近い勝ち方でもしない限り、勝った方もまた恥ずかしいストリップ紛いの行動を要求される事を意味している。よりによって姫乃が自分から、こんな破廉恥なゲームを持ちかけてくるなんて……。
 姫乃は男子たちが桃香凌辱に夢中になっている隙をついて、虹輝にこのゲームによる決闘を申し込んできた。虹輝が返答する前に、大声で宣言する事で既成事実を作り上げてしまう。姫乃らしからぬ卑劣なやり口だった。そこには虹輝を打ち負かしてやろうという強い意志が感じられる。
 もちろん虹輝だって、仲良く引き分けにしましょうなんて理屈が通るとは毛頭思っていなかった。姫乃とは雌雄を決しなければならない。それは紛れもない事実だろう。
 しかし最終決戦だからと言って、完膚なきまでに相手を叩きのめす必要はないはずだ。現実の戦争でも、敗北が即ち、最後の本土決戦を意味しているわけではなかった。戦局を見極めて何かしらの講和条約締結にこぎつければ、それに越した事は無いのだ。戦争とは本来、外交の一手段に過ぎない。
 だから虹輝は、姫乃との最終決戦の前に、ある程度終戦の条件を決めておこうと思っていた。後になればなるほど、戦死したクラスメイトに加えられる羞恥刑は過激さを増している。このまま制御不能になって暴走する前に、超えてはいけないラインを決めて、その枠の中で決着を付けるつもりだった。
 けれども、そんなぼんやりとした虹輝のプランは、綿密に計算された姫乃の謀略の前にあえなく霧消してしまう。
 封筒にはゲームのルールの他に、四枚の紙が入っていた。男子軍が女子軍に負けた事を宣言する旨の文章が書かれたものと、逆に女子軍が負けを認める文章が書かれたもの。それらのコピーが一枚ずつの、合計四枚。末尾には男子軍リーダーと女子軍リーダーが署名する欄も設けられている。
 ――これは『降伏文書』だ。
 虹輝と姫乃の決闘で、虹輝が負ければ前者を、姫乃が負ければ後者を使うのだろう。二枚それぞれ、虹輝と姫乃が署名し、お互い一枚ずつ所持し合う。男子女子戦争が終結した事を文書でもって明確に宣言するためだった。
 そして文書の内容はこうだ。
『我々男子軍は、女子軍との戦争に敗北し、無条件降伏する事をここに宣言する』――。
 女子軍が負けた場合のバージョンでは、この文章の『男子軍』と『女子軍』が入れ替わったものになっている。つまり姫乃は、虹輝との決闘の結果によって、男子女子戦争に完全決着を付けるつもりなのだ。しかもそれは虹輝が思い描いていたような、相手に温情をかけるような生温い決着ではなく、無条件降伏……完膚なきまでに相手を叩きのめす決着方法だった。
 無条件での降伏なのだから、相手には絶対服従しなければならない。男子が負ければ、男子は全員女子の奴隷にされてしまうし、女子が負ければその逆。女子は一人残らず男子の奴隷となるだろう。
 なぜ姫乃がこんな血も涙もない降伏文書を用意したのか、虹輝には全く理解できなかった。確かに過激化の一途をたどる男子女子戦争において、五年二組のみんなが望む戦争の結末は、間違いなくこれである。自分たちの軍が勝ち、相手を奴隷にして支配する。誰一人としてそれに疑問を抱いてはいないようだ。
 だからと言って、姫乃までもがそれに追従するなんて。
 姫乃が望んでいた、男子女子戦争の結末は、こんなものだったのか?
 男子軍を倒して、女子の奴隷に貶めて、それで満足なのか?
 虹輝の心には深い失望が広がっていた。姫乃はもっと、物事を深く考える聡明な少女だと思っていたのに。
 それとも、この降伏文書の裏に、姫乃の真意が隠されているとでも言うのだろうか?
「……お、郷里の奴も終わったみたいだな」
 不意に、虹輝の隣にいた清司が呟いた。士郎が合の手を入れる。
「行くのか?」
「ああ。俺も羽生の奴には世話になったからな。挨拶くらいはしておかないと、失礼に当たるだろ?」
 冗談めかして肩をすくめた。
「士郎は……」
「俺も後から行く」
「そうか。じゃあ、犬飼はどうする?」
「え? ぼ、僕?」
「そろそろ羽生の奴にお礼参りに行こうかと思うんだけどな。良かったらどうだ? 一緒にやらないか?」
 一瞬、何を言っているのか分からなかったが、どうやら桃香に対して仕返しをしに行くという話らしかった。ここ最近、あまり清司が積極的に女子を脱がしにかかる所は見ていなかったから意外だが……考えてみれば、彼も桃香の策略に負けて大恥を掻かされた男子の一人だ。彼女に復讐したいと考えるのは当然だった。
「僕は……いい」
「ハハ、そりゃそうか。お前は貴重な生存メンバーなんだし、早く部屋に戻って明日の決闘に備えた方がいい。帰る時は必ず他の男子と一緒に行動しろよ? 女子に闇討ちされて戦死しましたじゃ、洒落にもならないぜ?」
「うん……」
 力なく返事して、虹輝は出口の方へ歩き始める。
「虹輝」
 その背中に、士郎が声をかけた。
「明日の決闘、楽しみにしてるぜ。何度も言うようだが……白鷺は、心に迷いを持ったまま倒せるような相手じゃない。勝ちたいんなら、全力で戦え」
「分かってる……よ」
 虹輝は、振り向く事も無く、そのまま立ち去っていった。
 分かっている……分かっているのだ。
 明日、虹輝は姫乃と脱衣カードゲームで決闘する。そしてどちらかが勝ち、どちらかが負ける。負けた方は丸裸の写真を撮られ、そしてもっと凄まじい辱めを受ける。そうして、男子女子戦争は終結するのである。
 果たして、負けるのは虹輝だろうか。
 それとも姫乃だろうか。
 今はまだ、誰一人としてその結末を知る者はいなかった。




 桃香を取り囲んだ雑魚男子たちは、しかしいざとなると決心がつかないのか、じっと彼女を見下ろすだけで手を出そうとはしなかった。
 実際にセックスを行うというのは緊張するし、尿と精液に塗れた桃香の身体が不潔にも感じられる。三番手とはいえ、自分から名乗りを上げるのは嫌だという意識もあるのだろう。礼門は処女膜を破った後には興味ないらしく、早々に自分の部屋に戻ってしまっていた。忠一は、今も律儀にカメラで桃香の惨状を記録し続けている。
 そう、今の桃香のこの有様……。雑魚男子たちにとっては、手出しする前にこの光景をニヤニヤと眺める事もまた、中々楽しいイベントであった。彼らは手を出せないと言うより、まずはじっくりとこの酸鼻極まる恥晒しな姿を、網膜に焼き付けたかったのだ。
 桃香は顔を覆って泣いている。ガニ股に開いた股間からは二人分の精液が流れ出し、皮膚に貼り付いた精液は乾燥して異臭を放っていた。髪の毛まで濡らした忠一のおしっこの匂いはここまで漂ってくる程だ。
 男子に恐れられたあの羽生桃香が、ここまでの醜態を晒した事に、雑魚男子たちは一様に感慨に耽っていた。かつて卑劣な罠で自分たちを陥れ、ズボンもパンツも容赦なく脱がし、見下した視線でおちんちん写真を何枚も撮影した悪魔……。戦火をクラス全土に広げ、仲間の女子すら平気で捨て駒にした魔女……。そんな羽生桃香が、素っ裸にひん剥かれ、いいように凌辱され、男子に完全服従した敗北の姿を見世物にされているのだ。雑魚男子たちはみんな、無上の充足感と共に、各自の携帯であられもない桃香の姿を記録していった。
「何だお前ら、撮影だけで満足してるのか?」
 そこにやって来たのは清司だ。ニヤニヤ笑いながら、桃香のガニ股の正面に陣取った。しゃがみ込んで、ぱっくり開いたままの性器を覗き込む。
「ヘッ、随分派手にやられたもんだな。確かにここまでガバガバのドロドロにされちゃ、突っ込む気にもならないか」
 プール開きの日に男子更衣室で自分を罠に嵌めた悪女の末路に、清司は満足げに微笑んだ。
「ヤルつもりはあるけどさ、何か臭いそうで……」
「なら俺が三番手でいいよな。遠慮なくやらせてもらうぜ?」
「いいけど……清司お前、その、女には興味ないんじゃなかったか?」
 クラスメイトたちは清司が同性愛者である事は薄々気づいていた。あまり面と向かってそれを指摘するのはちょっと憚っていたのだが、積極的に桃香を辱めようとする今の態度に、違和感を禁じ得なかったらしい。清司はさらりと言葉を返した。
「ああ、確かにな。だから三番手なのさ。根墨の奴も郷里の奴も、前の穴にしか興味なかったみたいだが……おい羽生! いつまでも寝てないで、さっさと四つん這いになれよ!」
 清司の命令に、桃香は素直に従った。顔を覆っていた手をどけ、痛めつけられた身体に鞭打ってうつ伏せになる。ゆっくりとお尻を上げていくと、股間から白濁液がドロリとこぼれ、糸を引いて新聞紙の上に垂れ落ちていった。男子が一人、「汚ね……」と呟く。
 形のいい桃香のお尻は、今や尿と精液に塗れ、水気を含んで破れた新聞紙の屑が纏わりついていた。仰向けのまま二度も犯された間に、床に密着していた皮膚が赤く色づいている。確かにあまり触りたいとは思えない、汚れたお尻だ。
「フン、ビラビラのついた変な穴に突っ込むなんて俺は御免だが、後ろの穴なら女でも男と大して形は変わらないからな。ケツなら我慢して使ってやるよ。ありがたいと思え馬鹿桃香」
 清司がビシビシとお尻を叩く。丸みを帯びたヒップの筋肉が、波打ってその柔らかさをアピールした。
「そ、そんな……お尻、なんて……」
「尻の穴に突っ込まれるのは嫌か? その嫌な事を、根墨に命令して俺にさせたのはお前自身だろうが。人の嫌がる事をしておいて、自分がそれをされるのは嫌だなんて、そんな理屈が通じるものか」
 言いながら、清司は桃香のお尻を躊躇なく左右から掴んだ。目一杯左右に開き、尻たぶに隠されていた秘密の谷間……肛門の皺を電灯の光の下に炙り出していく。溢れ出した精液や愛液で汚れているものの、入浴直後という事もあって、便汚れなどは見られない。茶色い色素が沈着した、綺麗な肛門だった。
「みんな、じっくり撮影してやれよ。これが桃香様がウンコするための穴だぜ?」
「いやぁ……そんなとこ……汚い……」
「精液と小便まみれの汚い女が何言ってやがる。ここから定期的に、鼻の曲がるような臭いのウンコひり出してるくせに」
 女の裸に興味ないだけあって、清司の女体に対する扱いは乱雑だった。人差し指を立てるなり、肛門に宛てがい、力ずくでズブズブねじ込んでいく。
「いた、痛いぃ!」
「そりゃ痛いだろう。準備もなしに肛門にねじ込まれたら痛いに決まっている。お前はそれを俺に対してやったんだよ。俺がどれだけの苦痛を味わったのか、自分の身体で思い知れ」
「許して……もう……。お願いします……」
「うるさい。誰が許すか。女子のくせに口答えするな馬鹿桃香」
 情け容赦なく人差し指を捏ね回す清司。肛門の内側で暴れ回る指に、桃香は大声でしゃくり上げながら、ひたすら苦痛に耐え忍んだ。体内から膣を圧迫される事で、その都度精液が割れ目より噴き出していく。腕の力はとっくに萎え、上半身を突っ伏したまま、顔を新聞紙に押し付けていた。お尻だけを高々と掲げる屈辱のポーズだ。
「おい馬鹿桃香。お前、便秘気味だろ? 指がウンコに引っかかるぜ?」
「言わないで……お願い……」
 清司が人差し指を引き抜くと、ねっとりとした腸液に混じって、茶色い便塊が微かに纏わりついていた。いくら入浴直後でも、肛門の内側まではさすがに洗っていない。かき回されればこうなる事は止むを得ないのだ。
「うわ、ウンコ付いてる!」
「汚ったねぇ、最悪……」
「女のくせに恥ずかしくねぇのかよ」
「ここまで匂ってくるよ……」
 雑魚男子たちが口々に嘲る。それは桃香を辱めるという目的もあったが、本心から引いている男子の正直な声も少なくなかった。どんなに可愛くて綺麗な女の子でも、やっぱり肛門から汚くて臭いウンチをひり出しているんだという……当たり前の現実がそこにはあった。
「ほら、自分で自分のウンコの臭い、嗅いでみろ」
 清司は非情にもその人差し指を、突っ伏している桃香の鼻先に突きつけていった。この姿勢では顔を背ける事もままならない。泣いて許しを乞うても、聞き入れる彼ではなかった。立ち込める悪臭に桃香が眉をひそめる。
「こんな臭いウンコ、腹の中に溜め込んでるくせに、よくも今まで偉そうに男子に逆らってたもんだな」
「ご、ごめんなさい……。臭いウンコ溜め込んでるくせに、偉そうな態度で男子に逆らって、ごめんなさい……。謝ります……」
 さらに清司はその指を、桃香の鼻の穴に押し付けた。さすがに穴の中にねじ込もうとはしなかったが、便汚れはべっとりと鼻の周りに付着してしまっている。桃香が泣いて謝ろうと、手心を加えるつもりは毛頭ないのだ。女子を恋愛対象と見ていない清司には、女の涙など何の効果も発揮しなかった。
「舐めて綺麗にしろ、馬鹿桃香」
 鼻から離した人差し指を、今度は唇に押し付けていく。まだキスすらした事のない、桃香の桜色の唇が、異臭を放つ茶色い汚れで踏みにじられた。
「はい……。清司様……」
 もはや屈従するしかない。そう思ったのか、桃香は諦めて唇を開き、ウンチ汚れのついた指をしゃぶり始めた。泣きながら舌を絡めて汚れを清めていく。最高に惨めな光景だった。もちろんこの恥晒しな姿は、忠一のカメラで今も克明に記録されているのだ。今夜だけで、いったい桃香はどれほどの恥を見せるのだろう。二度と男子に逆らえないほどの醜態を晒す事だけは間違いなかった。
「よし、じゃあそろそろお前の汚いケツの穴に入れてやるよ。嬉しいか?」
 清司がズボンとパンツを下ろす。かつて散々桃香に馬鹿にされた、毛も生えていない短小包茎おちんちんが姿を見せた。完全に勃起しているが皮は被ったままで、大きさも人差し指くらいしかない。
「お前が笑いものにした可愛らしいおちんちんだぜ? 良かったな、裂ける心配が無くて」
「はい……。嬉しいです清司様」
 アナルバージン喪失の瞬間だというのに、今の桃香にはもう、憎い男子相手に媚びへつらう事しかできなかった。泣きながら相手の機嫌を窺っている。
 そしてとうとう、清司の性器の先端が、桃香の肛門へと宛てがわれていった。そのまま腰を進めると、ニュルリとペニスが吸い込まれていく。指と同じくらいのサイズだから、指でほぐした穴にはスムースに入っていったようだ。
「これで後ろの処女も喪失だな。甲守だってここはまだ許してないのに、さすが桃香様。経験人数三人、アナルセックスの経験もありとはね。クラスの女子で一番進んでるじゃないか?」
「あうぅぅ……」
「ここにいる男子全員の相手をすれば、その歳で経験人数二桁だぜ? 中学生の彼氏がいるなんて嘘つかなくても、これで正真正銘、憧れのヤリマンビッチに昇格だ。おめでとう、桃香様?」
 清司は鼻で嗤いながら腰を前後にグラインドさせていく。いくら後ろの穴とはいえ、彼にしてみれば女子とのセックスなど苦痛でしかなかった。ただ桃香を辱めるために犯しているだけだ。ゆっくり感触を味わうつもりもない。まさしくオナホールのように、早々に終わらせるべく、ペニスをしごく道具として雑に腰を動かしていた。
「っと、そろそろ出そうだ。いくぜ、馬鹿桃香」
 それに何より、以前祢々子に馬鹿にされた通り、清司は早漏気味である。こういう時にはむしろ都合がいい。激しく腰を前後させると、清司は桃香の腸内で、その精液を思いっきり発射してやった。
「やぁ……出て……る……」
「ケツなら妊娠の心配はないだろ? 俺の優しさに感謝する事だ」
「くぅ……。ありがとう……ございます、清司様……」
 自分をレイプした相手に謝辞を述べる。堕ちる所まで堕ちた少女の、あまりにも惨たらしい光景であった。清司がペニスを引き抜くと、肛門から白濁液が零れ落ちていく。それは前の穴から垂れている粘液と混じり合い、濡れそぼった新聞紙の上に糸を引いて滴っていった。
 これでとうとう、桃香は前の処女に続いて後ろの処女まで失ってしまったわけだ。もう二度と、清純だった頃の身体に戻る事はできない。
「お、俺もう我慢できねぇ! やってやるぞ!」
 雑魚男子の一人が雄たけびを上げる。清司と入れ替わり、自分のおちんちんを桃香の肛門に突きつけた。
「こ、こいつのせいで俺はパンツまで脱がされて……ふざけんなこの馬鹿桃香!」
 そのまま強引にねじ込んでいく。清司よりは遥かに大きなサイズの包茎おちんちんが、情け容赦なく桃香の肛門を拡張していった。
「あぎぃぃ……っ!」
「へへ……。悲鳴上げやがった。あの桃香が……俺にブチ込まれて情けねぇ悲鳴出してやがる。最高だぜ!」
 もはや雑魚男子たちの勢いは止まらない。他人の精液を股間から垂らしていようが、忠一のおしっこまみれだろうが、そんな事はどうでも良かった。とにかく恨み重なるこの高慢ちきな美少女に、男の力を思い知らせてやらなければ気が済まないのだ。
 他の男子が仰向けになり、その上に跨るように桃香に命令する。肛門を刺し貫かれている彼女は、もう背後の男子のされるがままだった。膝立ちの状態でフラフラと進み、仰向けの男子の身体を跨いで、ゆっくり腰を下ろす。肛門を犯されたまま、前の性器もペニスで蹂躙されていった。いくら子供サイズの包茎おちんちんと言っても、同時に二穴を塞がれては一たまりもない。
「やめ……キツ……いぃぃ!」
「あっはは、羽生の奴、泣きながら悶えてやんの。ざまぁみろ! 僕たちのチンチンを散々馬鹿にした罰だ!」
「ほら、俺のは口で咥えろよ。ウンコで汚れた口でも我慢して使ってやるんだから、男子って優しいだろ?」
 三人目の男子が……いや、通算では六人目か。ともかく、剥けかかった自分のペニスを桃香にしゃぶらせた。一応、初めてのフェラチオという事になるだろうか。もはやそんな事など気にならないほど、桃香の身体は穢され尽くしていたけれども。
「バーカ、女のくせにいい気になってるからそういう目に遭うんだよ。身の程わきまえろってんだ。思い知ったかこの馬鹿女!」
 そして……それを見た他の雑魚男子たちがさらに暴走し、桃香の身体に群がっていく。開いている両手をそれぞれ使ってしごかせるのはもちろん、漫画か何かで見たのか、髪の毛をペニスに巻いたり、足の裏に擦り付けて射精する者さえいた。
 性器や肛門、口に入れていた男子が果てれば、すぐさま別の男子が取って代わる。もちろん一度射精したからと言ってすぐに賢者になるほど、思春期の男子の性欲は小さくない。惨めな桃香の泣き顔を見ればすぐに回復していった。性器が終われば口。口が終われば肛門。肛門が終わればまた性器。果てしないローテーションである。
 桃香がブラを脱がされた時に「一度パイズリやってみたかった」と言っていた男子は、当然彼女を仰向けにしてそれに挑戦していた。漫画のように上手くはできないし、さほど気持ちのいいものでもなかったが、桃香の大き目のおっぱいを好き勝手に蹂躙して征服する快感は最高らしい。真似して次々と男子が馬乗りになり、桃香の顔面めがけて連続で白濁液をぶっかけていった。
 桃香はもう抵抗どころか反応すら見せなくなっている。男子たちも自分の性欲を解消するのに夢中で、そんな事は一切気にしていなかった。
 彼らにとっての桃香とは何か? 復讐の相手などと思っていたのは最初だけだ。今の男子たちにとって彼女は、セックス奴隷の雌犬などではないし、ましてや自分たちと対等な人間の女の子でもない。相手の反応など気にする必要が無い、ただの性欲解消のための便器。穴の開いた肉の物体に過ぎなかった。とにかく射精してスッキリできればそれで良いのだ。
 精神的に辱めようとしていた礼門の方が、まだ桃香の事を人間扱いしていたと言えよう。今の桃香はもう完全な、使い捨ての中古品の肉便器に過ぎない。
「おーおー。みんな元気だねぇ。よくあんなクソ女相手に二回も三回もやる気になるよ、まったく」
 既に身なりを整えている清司は、目の色を変えて桃香の肉体に群がる雑魚男子たちを、冷めた目で見つめていた。




 祢々子が宿直室に戻ってきた時、桃香の輪姦ショーはフィナーレを迎えようとしていた。ドアを開けた途端、鼻に突き刺さってくる凄まじい臭気には辟易したが、折角のエンターテイメントを見逃したのは残念だ。後で忠一から録画データをコピーしてもらわなくては。
 室内にはもうほとんど女子は残っていない。姫乃と、耶美と、みどりくらいなものか。男子も、精子を出し尽くした者から順次部屋に戻っているようだ。最初の頃の満員電車状態に比べると、驚くほど閑散としていた。
 祢々子が姫乃に頼まれて宿直室を出た時、ちょうど桃香は礼門にレイプされた直後くらいだった。あれから半時間ほど経っているだろうか。今や桃香の姿は、同一人物とは思えないほど変わり果てていた。
 仰向けになってガニ股を晒しているのは同じだが、前の穴からも後ろの穴からも精液を垂れ流し、口はもちろん鼻の穴からも白濁液が漏れ出している。艶やかだった長い髪は見る影もなく乱れ、精液まみれになって異臭を放っていた。おっぱいを初めとして、全身のあらゆる所が精液で汚し尽くされている。確か精液は時間が経つと透明になるはずだが、あれだけ全身を白く染められているとなると、きっと短時間に大人数で輪姦されたのだろう。録画データを見るのが今から楽しみだ。
「姫乃ちゃーん、お使い行ってきたよーっ」
 酸鼻きわまる惨状にミスマッチした、明るく朗らかな声で、祢々子は姫乃の下へと歩み寄っていった。
「ご苦労様。どうだったかしら?」
「桃香ちゃんの旅行鞄、調べたけど……もうスタンガンは無かったよ。やっぱり持ち込んできたのは三個だけだったみたい」
「そう、ありがとう。一応念のために調べておかないとね」
 姫乃は四つ目のスタンガンが存在する可能性もゼロではないと判断し、祢々子に頼んで調査してもらっていたのだ。現存するスタンガンは、間違いなく姫乃が持っている一個。それだけだった。
「ねぇねぇ、それよりさ、見てよコレ! 桃香ちゃんったら、自然教室にこんなの持ってきてたんだよーっ」
 そう言って祢々子が掲げてみせたのは、犬の首輪。アダルトショップなどで売られている、人間用の赤い首輪だった。引っ張るためのリードまでわざわざ付いている。
「笑っちゃうよねぇ、自然教室にこんなの持ってくる五年生とか、普通いないって」
「どうせ私を打ち負かした後で、これを付けて散歩でもさせるつもりだったんでしょ」
「折角だしコレ、桃香ちゃんに使ってもらおうっか?」
「いいわよ。どうせあのドロドロに汚れた身体も洗わなくちゃいけないから。この時間だと入浴棟も閉まっているだろうし……トイレまでは桃香に自分で歩いて行ってもらわないと」
 その桃香の輪姦ショーも、そろそろ終幕だ。
 ほとんどの男子は二回、三回と射精してすっかり落ち着きを取り戻している。虹輝以外の男子は全員桃香を犯したのではないだろうか。彼女は姫乃を倒して男子の筆おろしをさせてやると息巻いていたが……結局のところ、童貞少年たちの相手をしたのは他ならぬ自分自身であった。
「よーし、これで全員終わったか?」
 場を取り仕切っている清司が周囲に確認する。憎っくき桃香に復讐を果たし、童貞を卒業して思う存分性欲を解消した男子たちは、みんなこの上ない充足感に満たされていた。
「もう犯ってない奴はいないみたいだな。それじゃあ後片付けを……」
「悪ぃ、俺まだなんだわ」
 桃香輪姦ショーをお開きにしようとした清司の言葉を、一人の男子が遮った。その声の主はは誰あろう、彼の親友でもある明石士郎――その人である。
「なんだ士郎、お前まだだったのか。遠慮しなくても良かったのに」
「いや、いいんだ。別に桃香とやりたいわけじゃなかったし。ただこんな事もあろうかと、コイツを自然教室に持ってきてたんだよ。折角だから使わせてくれ」
「コイツ……って」
 半ズボンのポケットから士郎が取り出した物。それは四角い紙箱に入った、一ダースの鉛筆の束だった。
「ハハ、お前も人が悪いな」
「まぁね。あんまり根に持つタイプじゃないつもりだったんだが……桃香にやられたこれだけは忘れられなくてな。いつか仕返ししてやろうと思ってたんだ」
 士郎は虹輝が転校してきた当日、彼を人質に取られる事で、桃香に敗北した。ストリップを強要され、チン振りダンスまでさせられた挙句、肛門に一ダースもの鉛筆をねじ込まれて屈服させられたのである。その復讐を今からしようというわけだ。
「あーあー、酷いもんだな」
 精液溜まりに身を浸しているような桃香の有様を見て、士郎が鼻で嗤う。星空観察の時に告白した幼馴染みの言葉とは思えない冷淡さだった。近くにいた男子にも手伝ってもらって、士郎は桃香の両足を持ち上げ、身体を二つ折りにしてまんぐり返しの格好にさせる。お腹を圧迫されると、性器と肛門からザーメンが噴き出した。
「おーい桃香、生きてるか? お前の誕生日はまだだけど、これは俺からのプレゼントだ。遠慮せずに受け取ってくれ」
 鉛筆セットの箱を開け、十二本全て取り出す。その内の一本を口に含んでよく湿らせた。
「し、士郎……」
 かろうじて桃香が反応を返す。だがその声は弱々しかった。天を向いて剥き出しになっている肛門を狙って、士郎が濡れた鉛筆を近づけてきても、抵抗も反抗も見せようとしない。既に男子たちの玩具になった肛門は、今や真っ赤に腫れ上がってめくれ上がり、僅かに腸内を覗かせているのだ。今さら鉛筆一本くらい、どうという事も無かった。
「ホントにガバガバになっちまったな。こりゃ五本くらいは一気に入るか」
 桃香の肛門がするりと鉛筆を呑み込んでいく。
「せっかくの仕返しもやりがいが無いな? 水臭いぜ、最初に言ってくれればいくらでも譲ってやったのに」
「いいさ、むしろ気兼ねなく俺もブチ込める」
 次に士郎は五本、鉛筆を掴み、容赦なくこれもねじ込んでいった。それは肛門という花瓶に生けられた、花弁のない花のようでもある。士郎がこれをされた時は、たまらず目尻に涙を浮かべてしまったものだが……使い古された桃香の肛門は未だ余裕があった。七本目、八本目と鉛筆を追加され、ようやく肛門が拡張され始める。
「よう桃香。いくらガバガバのお前のケツでも、そろそろ苦しくなってきたんじゃないか? 謝れば許してやってもいいぜ?」
 九本目の鉛筆を差し込みながら、士郎がニヤニヤと降伏を迫った。自分が敗北した時のシチュエーションを、立場を変えて再現しようという魂胆だ。もっとも、あの時直前まで意地を張っていた彼の場合と異なり、もはや今の桃香には逆らう気力も一切残っていなかったが。さすがに桃香の肛門も限界だ。彼女は最後の力を振り絞って哀願の声を紡いだ。
「……さい」
「え? 何だよ? 聞こえねぇな?」
 十本目の鉛筆をねじ込みながら、士郎が勝ち誇ったように桃香の泣き顔を見下ろした。
「ゆ……るして……下さい」
「誰に許しを乞うてるんだ? ちゃーんと言ってくれないと」
「し……ろう……様」
「ほらほら、もう一度。皆にも聞こえるように大声で!」
 十一本目の鉛筆が肛門に突き刺さる。もはやねじ込まれた鉛筆は放射状に広がり、それ自体が一輪の花のように肛門から咲いていた。
「ゆ、許して下さい! 士郎様ぁ!」
肛門に咲いた鉛筆の花と、精液を止めどもなく垂れ流す割れ目を見下ろしながら、士郎は満足気に頷いた。ついに自分の手で、この生意気な幼馴染みを屈服させてやったのだ。
「よしよし、いい子だな。やっと素直になってくれて嬉しいぜ。どうだ? 少しは自分の情けなさを思い知ったか?」
「は……はい……」
「女のくせに男子に逆らって申し訳ありませんでした、って言えよ」
「お、女のくせに……男子に逆らって……。もう、しわけ、ありません……でした」
「これからは二度と男子には逆らいません」
「これから……は、二度と男子に……逆らいません」
「男子の奴隷になって一生奉公します」
「男子の奴隷になって……一生……奉公、します」
「あはは、本当に言いなりかよ。もう女子のプライドなんて全然残ってないんだ? ていうか人間としても終わってるな」
 泣きながら屈従のセリフを復唱させられる桃香。忠一は、そんな無様な姿をカメラで克明に記録していった。かつての士郎を責め立てて敗北させた桃香が、そっくりそのまま、同じように責め立てられて敗北を味わう。因果応報と呼ぶにはあまりにも惨めな光景であった。
 祢々子もあの時、撮影係として同席していたから分かる。次に士郎が何をしようとしているのか。次に桃香が何をされてしまうのか。
「これだけ恥ずかしい姿を晒したら、もう二度と男子には逆らえないだろうな。いいぜ、このくらいで許してやるよ」
 士郎は最後に残った鉛筆一本を、悪戯っぽく口に含んだ。彼の言葉に、桃香はホッと安心して気を緩める。
 だが次の瞬間。
「……ていうのは嘘。この程度で許すわけないだろ」
 十二本目の鉛筆が勢いよく桃香の肛門に突き立てられていった。
「あぎゃっ? がぁっ?」
「ほらほら、もっと恥ずかしくてもっと惨めな姿を晒せよ! 身も心もボロボロになるまでいたぶってやるぜ!」
 肛門に突き刺さった十二本もの鉛筆。士郎はさらにその鉛筆を、靴底で勢いよく踏みつけていった。限界まで開いた肛門がズブズブと鉛筆を呑み込んでいく。
「や……め……あがぁ……」
 桃香の意識が弾け飛ぶ。刹那、尿道口から黄色い液体が迸り、彼女のお腹や胸を汚していった。一方的な暴力で曝け出す、惨めな失禁。身も心も、桃香が完全に男子たちに敗北した瞬間だ。居残っていた雑魚男子たちが一斉に囃し立てる。
「うわ、こいつ小便ちびってやんの!」
「汚ったねぇ、自分の口の中にも入ってるじゃん」
「これってアレに見えなくね? 風呂場にあった、ライオンの口からお湯が出る奴」
「ははは、ホントだ。口から小便出してるみたい」
 半開きの桃香の口の中に、勢いを増した彼女自身のおしっこが命中して流れ込んでいく。確かに首を傾けてみると、一瞬ではあるが、口から尿道口へとおしっこが飛び出しているようにも見えた。やがて勢いを失った黄色い軌跡は、顎から胸、お腹へと垂れ落ち、桃香の身体を万遍なく穢していく。
「へへ……ちょうどいいや。俺トイレに行きたかったんだよね。ここでやっちまおうっと」
 雑魚男子の一人がズボンのファスナーを下ろし、包茎おちんちんを露わにする。そのまま桃香の顔めがけて躊躇いもなく放尿を始めた。
「最高だな! これぞまさしく肉便器だぜ!」
 他の雑魚男子たちも次々と後に続いた。肛門に十二本もの鉛筆を突き刺したまま、まんぐり返しの恰好で動けない桃香を取り囲み、それぞれ一斉におしっこをかけ始める。ある者はおっぱいに。ある者は性器に。またある者は肛門の鉛筆に。
 ただでさえ悪臭漂う汚れた身体にされていた桃香は、さらに駄目押しとばかりに、全身を男子のおしっこで染め上げられていった。もちろん口の中にも容赦なく注ぎ込まれる。むせ返った拍子に男子のおしっこを少し呑んでしまったようだ。
「ちょっと男子! やめなよね!」
 見かねた祢々子が注意する。
「誰が後片付けすると思ってるの? おしっこかけるんだったら、トイレに連れていってからかけなよ!」
「おいおい、小便かけるのはいいのかよ?」
「うん。だって汚い思いするのは桃香ちゃんで、祢々子じゃないもん」
「うわっ、ひでぇ……。女の友情なんてこんなもんだな」
 笑いながらも、男子たちは放尿を止めようとはしなかった。最後の一滴までしっかりと桃香にひっかける。新聞紙はボロボロになってもう用をなさず、ビニールシートの上に溜まった汚いおしっこの海で、桃香は哀れにもその裸体を横たえていた。まんぐり返しの格好からは逃れたものの、未だ肛門には鉛筆が突き刺さったまま。呆然自失となり、目の焦点も合わなくなっている始末だ。
「ありゃりゃ……最後に土足で顔を踏みつける予定だったんだけどな。まぁいいか。しっかりと桃香に復讐はできたわけだし」
 士郎は放尿には参加していなかった。しかし雑魚男子たちの暴走を止める気配は全く無い。普段通りの飄々としたポーカーフェイスで、おしっこまみれにされた幼馴染みのなれの果てを、ただじっと静観するだけだった。




 時計の針は、午後十一時半を指し示そうとしていた。
 偽りの和平会談が始まったのが午後十時過ぎ。それからたった九十分の間に、目も覆わんばかりの壮絶な凌辱行為が次々と行われていた。姫乃と桃香の激しい対決。勝敗が決してからは、桃香が裸にされ、男子のおしっこを呑まされ、レイプまでされている。さらにクラスの男子のほぼ全員ともセックスを強要されていた。仕上げには肛門に鉛筆を突っ込まれて、全身おしっこまみれにまでされたのだ。
 和平会談が始まった時、ここまでの醜態を晒す事を、桃香は予想し得たであろうか? もはや宿直室の中にはほとんど人影は無かった。特に男子は全員部屋に戻っている。
 おしっこ溜まりの中で横たわる哀れな桃香。それを取り囲むのは、姫乃と耶美とみどり……そして祢々子。僅かにこの五人だけが室内に残っていた。
「うわー、汚ったなーい。こんなの片づけるの? 祢々子ヤダよー? 触りたくなーい」
「しょうがないでしょ、エッチな漫画とかじゃないんだから。誰かが綺麗にしないとずっとこのまま。場面が変わって『次の日……』ってわけにはいかないのよ」
 みどりに窘められても、祢々子は頬を膨らませるだけだ。新聞紙はまだ余っているから、あれでおしっこを吸い取って、ビニールシートごと捨ててしまえばいい。とはいえ入浴も済ませた後でそんな汚い作業はしたくないというのが、女子の偽らざる本音だった。
「ゴミは鮫島先生が処分してくれるって話だったわよね?」
「そろそろ来ると思うわ。十二時の見回り時間までに私たちも部屋に戻らないと」
 耶美と姫乃が言葉を交わす。ちょうどその時、宿直室のドアが開き、噂の鮫島が顔を覗かせた。
「おっ、決着が着いたみたいだな。やっぱり白鷺の方が勝ったか。そりゃあ何よりだ」
 窓を開けていても相変わらず立ち込めている、おしっこと精液のむせ返るような臭いに、しかし鮫島は顔色一つ変えない。ずかずかと土足で室内に入ってきた。
「ま、羽生程度の小娘じゃ、白鷺に勝てるわけがないよなぁ。よく頑張ったが、しょせんこの程度の女だったってわけだ」
 おしっこ溜まりの中で白目を剥いている桃香を、見下したような視線で嘲笑する。仮にも自分の教え子がこんな酷い目に遭っているというのに、気に留めようとさえしなかった。大した教育者だ。
「羽生とお前とじゃ、人間のレベルが違うからな。そうだろ、白鷺?」
「止めて下さい。あなたにそんな事を言われる筋合いはありません。桃香は強かったです。一歩間違えれば私が負けていました。彼女を侮辱する事は、私が許しません」
 珍しく感情的な口調で姫乃が反論する。担任の教師相手にも一歩も引かないその強い口ぶりに、鮫島は肩をすくめて大人しく引き下がるしかなかった。
 姫乃と桃香はライバル同士であるが、互いに宿敵と認め合うほど、敬意も持っていた。そういう事なのだろう。確かに桃香も、解剖授業の際に「姫乃は一度決めた事は最後までやり通す。自分の意思で、自分の意見を貫き通す強さがあるの。あたしはあの子のそういう所、嫌いじゃないわ」と言っていた。それが桃香の本音なのだ。
「ともかく……白鷺が生き残ったという事は、明日のスポーツレクリエーションの時間は、お前と犬飼との決闘が行われるという事だな」
「はい。お願いしていた通り、場所のセッティングはお任せします」
「いいとも。どうせスポーツレクの時間は、今日のカヤック体験が雨天順延した場合に備えた予備日程だ。行事はクラス単位だし……何とでもごまかしは効く。教頭先生には俺から話を付けておこう」
 姫乃は既に、鮫島に対しても決闘の件をあらかじめ打ち合わせしてあった。自分が桃香に勝った場合、翌日のスポーツレクの時間に虹輝との決闘をセッティングしてほしい、と。和平会談に臨む前に、ここまで周到に根回ししておいたとは……さすが白鷺姫乃。虹輝とは大違いだ。
「ふふん……。楽しみにしているぞ、白鷺。なんせ決闘の方法は脱衣カードゲームだもんなぁ。もちろん先生も立ち会わせてもらう。教え子たちの晴れ姿、しっかりと目に焼き付けておかないと、罰が当たるというものだ」
「どうぞ好きにして下さい」
「勝つのは白鷺か、それとも犬飼か……。勝ったとしても、何枚かは服を脱ぐ事になるのかな? いやいや、期待せずにはいられんなぁ」
 好色そうな笑みを隠そうともしない鮫島。教師とは思えない彼の不遜な態度を、姫乃は軽蔑を込めた視線でじっと見上げていた。
 代わりに口を挟んだのは耶美だ。
「鮫島先生。そんな事より、早くここを片づけないと……見回りが来たらどうするつもりですか?」
 彼女にしてみれば鮫島は、解剖授業の時に散々自分を辱めた憎むべき相手だった。下着の汚れから性器の中まで見られた相手でもある。しかし彼女は臆することなく平然とこの外道教師に接していた。
 耶美は、桃香が横たわるおしっこ溜まりの中に足を踏み入れ、悪臭を放つ髪の毛を、眉ひとつ動かさずに鷲掴みにして持ち上げていく。確かに彼女の言う通り、ぐずぐずして男子女子戦争の秘密が漏れたら一大事である。
「ほら、いつまで寝てるのよ。起きなさい桃香」
「い……た……。な、何……?」
 軽く意識が飛んでいた桃香が、重そうに瞼を持ち上げた。その視界に、下卑な視線で自分をジロジロと視姦する、鮫島の姿が映る。
「さ……めじま……先生……」
「お目覚めかね、お姫様? ずいぶん素敵な格好になったもんだ。これで生意気な羽生も、少しはおしとやかになってくれるかな?」
「う……」
 軽蔑すべき悪徳教師に、見るも無残に穢され尽したオールヌードを見られてしまった。姫乃打倒に関しては、鮫島とも対等の関係で接していたつもりの桃香にとって、これはクラスメイトに見られるのと同じくらいの屈辱だ。
 耶美がさらに力を込めて髪を引っ張ると、自然に桃香も立ち上がらざるを得ない。身体を起こし、背を伸ばして膝立ちになった。彼女の最大のコンプレックス……中途半端にカッコ悪く生えた陰毛が露わになると、目ざとく鮫島がこれをあげつらう。
「おやおや、桃香様の陰毛は随分面白い生え方をしてらっしゃる。他の女子でもそんな生え方をしている奴はいないんじゃないか? まさか羽生の陰毛がこんな滑稽な生え方だったとはねぇ」
 ついに担任教師にまで身体の秘密を知られてしまった。心をへし折られた今の桃香には、悪態一つつく気力もなく、ただ恥辱に耐えてさめざめと涙を流す事しかできない。
 しかも彼女が味わう屈辱はこれだけではないのだ。
 祢々子から犬の首輪を渡された姫乃が、真正面からゆっくりと、彼女に近づいてきたのである。
「な……にするの……?」
「最初に言ったでしょう? 私が負けた時に、あなたが私にしようと考えていた事……その全てよ」
「そうそう。桃香ちゃんの首にそれを付けてぇ、深夜の散歩に出かけるの!」
 祢々子の言葉に、桃香の表情はたちまち絶望に染まっていった。当然だ。宿敵でもあるライバルの少女の前に跪き、首輪を嵌められ、廊下を歩かされるなど……正気の沙汰ではない。屈辱という意味では男子の輪姦以上かもしれなった。もちろんそれは姫乃の言葉通り、桃香が姫乃を打ち負かした時にしようと考えていた事……なのだが。
 男子の筆おろしも、深夜の散歩も、全て姫乃ではなく自分がする羽目になっていた。どうしてこんな事になったのか……。桃香は絶え間なく襲い来る恥辱の連続に、すっかり抵抗する気力を奪われてしまっていた。
「じっとしてなさい」
 まるで飼い犬に命令するような姫乃の言葉。耶美が髪を全てたくし上げたので、白いうなじがすっかり露わになっている。尿や精液で汚れていなければ、さぞ色っぽい首筋だったのだろう。姫乃はそこに赤い革ベルトを巻き付け、金具で留めてしっかりと固定していった。リードの先は祢々子が握っている。
「良く似合ってるわよ」
 慰めとも嘲りとも思える姫乃の言葉に、再び桃香の目尻に涙がこぼれた。耶美が髪の毛から手を離すと、支えを失い自然に突っ伏してしまう。負け犬になる事がこれほどの屈辱だとは思わなかった。哀れと言う他ない。
 彼女の眼前には姫乃の靴があった。もはやそれが当然の行動であるかの如く、桃香は顔を寄せ、姫乃の靴に舌を這わせていく。どうせ舐めろと命令されるに違いない。主人の靴を舐めるのは奴隷の証だろう。桃香は身も心も姫乃に屈服していた。
「――やめて。靴が汚れるわ」
 だが姫乃は桃香に対し、そんな隷属の行動すら許さなかった。犬としての行動さえ認めないという事か? お前は犬以下の便器に過ぎないのだと?
 あるいは、もしかすると桃香を気遣っての事かもしれない。ライバルとはいえクラスメイトに靴を舐めさせるなど、優しい姫乃にとっては心苦しいだけなのだ。だからと言って桃香が救われる事など何も無かったが。
 ともかく、姫乃は靴を舐める桃香の眼前から、自分の足を引いて距離を取った。改めて鮫島に顔を向ける。
「宿直室の片づけは私と耶美と、後は……みどりで済ませます。鮫島先生は桃香をトイレまで見つからないように誘導して下さい」
「ほう。リードを引くのは暮井というわけか」
「はいはーい。祢々子、桃香ちゃんをしっかり散歩させまーす!」
「白鷺が引いた方が面白そうなんだがなぁ」
「私にそんな趣味はありません」
 一度打ち負かした相手に、必要以上の辱めを加えるのは本意でないという事か。とはいえ男子たちの苛烈な報復を見過ごしたのだから、決して温情ある態度とは言えなかった。むしろ馬鹿にしながら嬉々としてリードを引っ張ってもらった方が、桃香はまだプライドを保つことができただろう。しょせん姫乃も、負けた相手をいたぶって喜ぶレベルの低い女子だった……と心の中で悪態をつきながら、耐え忍ぶだけで済んだのだから。
 姫乃が積極的に桃香虐めに加わらなかった事は、逆に桃香に耐えがたい屈辱を与えていた。桃香など、虐める価値もない存在なのだと言われているようだ。桃香を気遣っての事なら、尚の事悔しい。姫乃はライバルの少女にも気配りができる、天使みたいな女の子。それに引き換え自分の惨めな有様と言ったら……。敵である自分に情けをかけられる事は、桃香のような気の強い少女にとって、最大級の侮辱なのである。
「さ、お散歩の時間ですよー、桃香ちゃーん」
 にこにこ笑いながら祢々子がリードを引く。首を持っていかれて、桃香は四つん這いのまま歩き出さざるを得なかった。お尻にはまだ十二本の鉛筆が突き刺さっている。
「ま、待って……せめて鉛筆を……」
「鉛筆? なぁにそれ?」
 知っていながらとぼけた返事をする祢々子。今まで桃香の影に隠れてよく分からなかったが、彼女も相当な悪女であった。鮫島が勝ち誇ったような笑みで背後に回る。
「これは凄い。尻の穴に鉛筆一ダースを突っ込んでいる五年生なんて、そうそういないぞ? よっぽどガバガバになるまで使い込まれたんだろうなぁ」
 担任の悪徳教師の前でこんな痴態を晒すのは筆舌に尽くしがたい屈辱だった。だからこそ、恥を忍んで頭を下げなければならない。かつては自分の腰巾着だった少女相手に。
「お願いします……祢々子……。祢々子様……。お尻の、鉛筆を抜いて下さい。苦しいんです……」
「あっはは、祢々子様だって。別にそんな呼び方しなくていいのに。なぁに? ウンチの穴の鉛筆を抜いてほしいのかなぁ?」
「はい……」
「えへへ、でもこれ抜いたらさ、その拍子にウンチ漏らしちゃうかもよ? それでもいいの? 姫乃ちゃんや鮫島先生に、ウンチするとこ見てほしいんだ?」
 ハッと顔を上げる。桃香が見上げると、自分をじっと見下ろす、五つの顔が視界に飛び込んできた。好色そうな鮫島。ニコニコ顔の祢々子。無表情の耶美。心苦しそうなみどり。そして、大して興味なさそうな視線の姫乃。反応はそれぞれだが、瞳はしっかりと桃香の身体を射抜いている。
「――や、やっぱり、いいです……」
 力なく桃香が呟く。もし鉛筆を抜いてもらった途端、便秘気味だった便塊がひり出されでもしたら……。もう桃香は生きていけない。既に人生最大の汚点となる恥をいくつも晒した桃香であったが、肛門からウンチをひり出す姿を見世物にされるくらいなら、死んだ方がマシだ。そう思うくらいの気概はまだ残っていた。
「え? どうしてぇ? 鉛筆抜いてほしかったんじゃないの?」
「祢々子、そのくらいで止めてあげなよ」
 見かねたみどりが口を挟むが、その制止さえ、今の桃香にとっては侮辱である。もう一人の腰巾着にお情けをかけてもらったのだ。プール開きの時にあれだけ酷い事をしたというのに。桃香は破れかぶれに大声で叫んだ。
「みんなにウンチするところを見られたくないんです! だからお願いします! 肛門に鉛筆を刺したまま散歩に連れていって下さい!」
 背後から鮫島の押し殺した笑い声が聞こえてきた。さすがに他の女子たちが嘲笑を浴びせる事は無かったが、祢々子だけはニヤニヤと笑みを崩していない。
「そっかぁ、分かったよ。じゃあお散歩に行こうね、桃香ちゃん」
「はい……」
 こうして、桃香は深夜の散歩に出発した。
 素っ裸で股間から精液を垂れ流し、全身おしっこまみれ。肛門には十二本の鉛筆を突き刺し、犬の首輪を付けられ、担任教師とクラスの女子に連れられての散歩だ。もしこんな姿を見られたら、もう桃香は学校には行けなくなるだろう。五年二組の連中ならまだしも、一組の生徒や他の教師、施設の職員などに見つかったら……。
 鮫島がドアを開け、桃香は四つん這いで前に進む。薄暗い廊下に出ると、初夏だというのに身体が激しく震え上がった。




 宿泊棟は二階建てになっている。上空から見ると、アルファベットのLの字の形をした建物だ。宿直室はその一番端の一階の部屋であり、エントランスから最も近い場所にある。トイレはちょうど建物の真ん中……L字の折れ曲がった場所の近くに位置していた。一階と二階を繋ぐ階段のすぐ隣でもある。
 五年生はこの宿泊棟に全て泊まっており、一階が男子、二階が女子の部屋になっている。鮫島は真っ直ぐ階段の方へと歩き始めた。
「ほ……本気……なの? 無理よ……。こんな格好で散歩、なんて……」
 まだ一歩も進まないうちに、桃香は泣き言を漏らした。
「ほら、ぐずぐずしないの。誰か廊下に出てきても知らないよ?」
 祢々子は構わずリードを引っ張るが、桃香は足がすくんで全く動けない。当然なのだ。さっきも言った通り、一階は男子の部屋。しかもこの宿泊棟に五年生が全員泊まっているのだから。つまり二組だけでなく一組の男子もこの階の部屋で寝ている事になる。いつ部屋のドアが開いて一組の男子が顔を見せるか……気が気でなかった。
 既に二組の男子に対しては、想像を絶する生き恥を晒した桃香だったが、一組の男子はそんな事情を全く知らない。四年生の時に同じクラスだった男子もいっぱいいるし、桃香に気がある素振りを見せる男子や、喧嘩ばかりしていた仲の悪い男子も一人や二人ではなかった。そんな連中にこんな有様を見られたら……。何もかもお終いではないか。
「おーい、何やってるんだ。置いていくぞ?」
 鮫島が振り返って、小声で呼びかけてくる。
「心配しなくていいよ。トイレは各部屋にもあるから、廊下に出てくる男子なんていないって」
「でも……」
「もーう、しつけの悪い犬だなぁ」
 口を尖らせた祢々子は、桃香の背後に回るなり、肛門に突き刺さった鉛筆の束を足で蹴飛ばした。
「はぐぁっ?」
「しーっ。声が大きいって」
「だ、だって……」
「男子に見られたくないんでしょ? だったらさっさと歩く!」
 もはや桃香は祢々子の言いなりだった。こんな背の低くて、幼児体型の子供っぽい女子に手も足も出ないなんて……。かつての取り巻きにいいようにあしらわれる屈辱に、桃香は再び涙をこぼしていった。
 だが祢々子の言う事も一面では正しい。もう十一時四十分過ぎ。消灯時刻の十時はとっくに過ぎていた。部屋の中にトイレもあるのだから、誰かが急に気分が悪くなった……なんて事態でも発生しない限り、廊下を出歩く必要は全く無いのだ。
 首輪のリードを引っ張られ、桃香はカーペットの敷き詰められた廊下を無言で這っていく。級友たちがみんな土足で歩いているこの床を、自分は素っ裸で四つん這いになって進まなくてはならなかった。なぜここまで惨めな思いを強要されるのか。自業自得という言葉だけで済まされるには、過酷すぎる仕打ちだった。
 それに男子が出歩いていないという保証は、決して百パーセントのものではない。仲のいい男子同士で部屋を行き来したり、ラブコメ漫画のように女子の部屋にこっそり遊びに行ったりしているかもしれない。鮫島が同行しているのはそんな不測の事態に備えての事だろうが……。危険な綱渡りには違いなかった。
 不意に、その鮫島が足を止める。
「先生?」
「静かに。声が聞こえるぞ」
 鮫島は人間のクズを形にしたような男であるが、しかし教師である事に違いは無い。そして見つかって困るのは彼も一緒なのだ。姫乃を我が物にするまでは、男子女子戦争の秘密を守る事に協力は惜しまないだろう。今は彼を信頼するしかなかった。
 耳を澄ますと、確かに男子数人の話声が聞こえてきた。ヒソヒソ声だ。しかし遠ざかるわけでも近づいてくるわけでもない。つまり、廊下の一点から移動せず、何やら話し込んでいるようだった。教師が見回りに来るかもしれないのに、わざわざ廊下で雑談などするはずもない。ここはホテルではないから、廊下に自動販売機コーナーなんて気の利いた場所も設けられていなかった。
「角を曲がった先みたいだな。ゆっくり進もう」
 より一層慎重に、足音を立てないように歩き始める。鮫島も祢々子も緊張しているようだが、桃香の狼狽はその比ではなかった。何でよりによってこんな時に……。しかも部屋割りからすると、あの辺りはもう一組の男子の部屋のはずだ。見つかったら桃香の人生は破滅する。鼓動は痛いほどに胸を打ち鳴らし、冷汗が全身から噴き出して、乾き始めた尿や精液に混じって肌を濡らしていった。
 やがて廊下の角、その一メートルほど手前まで辿り着く。ここを曲がってさらに三メートルほど進めば階段があるはずだった。その隣がトイレである。後もうちょっとと言う所でこんなトラブルに巻き込まれるなんて、運が無いにも程があるだろう。
 ここで少し待て……というジェスチャーを残し、鮫島は一人だけ先に廊下の角を曲がっていった。建物のL字の先。四つん這いになっている桃香や背の低い祢々子からは見えないが、鮫島なら廊下の窓越しに向こうの様子が分かるはずだった。それなのに慎重な態度を崩していない。向こうの様子が掴めないのか?
 数秒後、やや大きめの鮫島の声が廊下に木霊した。
「ん? 何だお前ら、こんな所で何してる?」
 さも今彼らの存在に気付いたと言わんばかりの口調である。少々わざとらしいが、勘ぐられる事は無いだろう。
「あ、鮫島先生」
「いやー、枕投げして遊んでたらさ、斑鳩先生に見つかっちゃって」
「酷いんだよ、有無を言わさず廊下で正座だぜ?」
「そのくせ本人どっか行っちゃうし」
 ――なるほど、そういう事か。事情を察し、桃香は胸を撫で下ろした。自然教室や修学旅行ではよくある話だった。消灯時間後も騒いでいたところを見回りの教師に見つかり、叱られて廊下で正座させられる。十一時の見回りの担当が美月のはずだから、特に不自然な点は見られなかった。床に座っているなら、廊下の窓越しに彼らの姿が見えなかったのも無理はない。
「ハッハ、斑鳩先生はああ見えてキツい所があるからなぁ。今時廊下で正座なんて、こんな事したら後で学校にモンペが怒鳴り込んでくるぞ」
「モンペ?」
「いや、気にするな。お前たちみたいな元気な生徒の親の事だよ」
 鮫島は楽しそうに話しているが、桃香にとってはどうでもいい事だった。早くその一組の男子たちを部屋に戻してほしい。そうでないといつまでも彼女はここから動けないのだ。もし桃香の後方……長い廊下の、どこかの部屋のドアが開いて誰かが出てきたりしたら。この暗さではよく見えないかもしれないが、彼女のすぐ隣にも部屋のドアはあるのだ。話声を聞きつけた一組の男子が、様子を窺おうとそっとドアを開ける可能性はゼロではなかった。
「よし、じゃあ今から十数えるからな。お前らも目を瞑って同じように数えろ。そうしたら部屋に戻っていいぞ」
「マジ? やったぁ、さっすが鮫島先生!」
「でも斑鳩先生が何て言うか……」
「俺から話を付けておくから心配するな。何たって俺は斑鳩先生の弱みを握っている男だからな。斑鳩先生は俺には逆らえないのさ」
「はっはは、バッカでー。先生、エロ漫画の読み過ぎじゃないの?」
 軽口を叩きつつも、一組の男子たちは渡りに船とばかりにその提案に飛びついた。彼らにとっては、鮫島も普通の良心的な教師に見えるのだろう。よもや彼が二組きっての美少女・白鷺姫乃に異常なまでに執着し、彼女を手に入れるためならば平気で教え子を凌辱に晒し、またその危機を見過ごすような外道教師であるとは夢にも思わない。方々の興信所を駆使し、本当に美月の弱みを握っているなど想像さえできないはずだ。羨ましいほどにおめでたい連中だった。
「よーしいくぞ。いーち、にーい……」
 鮫島と一組の男子たちが、小声でテンカウントの合唱を始める。
 良かった。あと一分もしないうちに、彼らは自分の部屋に戻っていくだろう。それからゆっくりと、桃香は廊下の角を曲がって階段の前を通過し、トイレに入ればいい。どうやら見つからずに済みそうだ。
 ところが。
 何を勘違いしたのか、突然祢々子がリードを強く引っ張り始めた。いったい何を考えているんだ?
「ほら、桃香ちゃん。早く早く。今の内に通っちゃわないと!」
「ちょ、祢々子、待って……!」
 どうやら目を瞑って数を数えている間に、一組の男子の前を通過してしまおうと考えたらしい。確かに三メートルほど進んで階段に身を隠せば見つからずには済みそうだが……。
 冗談じゃない。
 失敗したらどうするつもりなのか。
 カウントしている間も他の部屋のドアが開く可能性はあるから、進めるだけ進んでおくのも間違った判断ではない。だがこれはあまりにリスクが高過ぎだ。失敗して生き恥を晒すのは桃香だというのに。
「さーん、しーい……」
 だが祢々子の力は意外なほど強かった。不自由な四つん這いの姿勢で、しかも輪姦で体力の削られた桃香に抗う力は無い。口で説得しようにも、その声を男子に聞かれたらお終いだ。数を数えていても、周りの音は聞こえているだろう。
 観念して桃香は歩を進めた。
 破れかぶれだ。もし見つかったらその時は……鮫島と祢々子に協力してもらって、一組の男子も脱がしてやればいい。口止めの見返りとして、桃香は彼らとセックスさせられるかもしれないが……。どうでも良かった。既に桃香は、虹輝と士郎以外のクラスの男子全員に犯されたのだ。経験人数が十六人から、もう三、四人増えるだけである。それが何だというのか。セックスくらいいくらでもしてやろう。
「ごーお、ろーく……」
 ――いや。
 そんなはずはない。
 そんな事があっていいはずがない。
 桃香は自分で自分の思考を否定した。そうだ。何十人に犯されようが、何百人に犯されようが、好きでもない相手とセックスするのに慣れるなんて事はない。女の子の身体は道具なんかじゃないんだ。桃香がクラスメイトに悪事を働いてきたのは事実だが、だからと言って犯されても文句は言えないなんて理屈は通るはずが無かった。まして一組の男子なんかに身体を許すなんて、そんなの絶対に嫌だ。
「しーち、はーち……」
 桃香は死に物狂いで手足を動かした。リードを引っ張る祢々子を追い抜くほどの勢いである。鮫島がテンカウントしながら目を丸くしていた。そうだろう。まさかこんなタイミングで出てくるとは思ってもいなかったはずだ。
「きゅーう、」
 そして最後のカウント。
「……じゅう!」
 同時に目を開ける一組の男子たち。
「あれ?」
 一番端に正座していた男子が首を傾げる。
「どうした?」
「いや……さっき廊下に誰かいたような気がしたんだけど。視界の端に肌色の影が映ったって言うか」
「よせよ、こんな真夜中に怪談話なんて。それより何かイカ臭くね?」
「ちょ……。お前か? こんなとこでオナってんじゃねーよ!」
「俺じゃねーよお前だろ!」
 馬鹿な男子が馬鹿な話で盛り上がっている。肌色の人影がいたのもイカ臭いのも、事実だから仕方がないのだが。
 桃香と祢々子は、間一髪で階段に飛び込み、一組の男子たちからその姿を隠す事に成功した。音を立てないように必死に息をつき、動悸を抑え込んでいく。あと一秒遅かったらアウトだったかもしれない。全身から力が抜け落ちていった。
 刹那。
 ぬるりとした奇妙な感触に気付き、桃香は自分の股間に手を宛てがった。驚いた事に、そこはしどしどに濡れている。冷汗は全身から出ているが、もちろん汗ではないだろう。これは……愛液、なのか?
 世の中には露出狂などと言って、裸を見られるスリルに興奮する変態がいるそうだが……まさかこれがその感覚だとでもいうのか? 好きでもない男子に裸を見られそうになって、興奮して性器を濡らすなんて。
 ふと視線に気付くと、隣の祢々子がニヤニヤと桃香の指先を眺めていた。露出のスリルに興奮したかのような、愛液の纏わりついた指先を。桃香の頬が真っ赤に染まる。祢々子の前で恥を晒した挙句、こんな醜態まで知られてしまうなんて。これではもう一生祢々子に頭が上がらないかもしれない。露出狂の変態なんてレッテルを貼られてしまったら、桃香と祢々子の立場の差は決定的となってしまう。
「大丈夫、内緒にしておいてあげるよ」
 勝ち誇ったような祢々子の囁き声。悔しかった。桃香は自分が露出狂だなんて全く思っていない。興奮していなくても愛液が分泌される事は珍しくないのだ。だが反論したところで、愛液を滴らせる性器がすっぽんぽんの丸出しでは、何の説得力もないだろう。一組の男子たちに見られそうになってアソコを濡らしたのは事実であり、祢々子だけが知る、桃香の弱みをガッチリと握られた事もまた事実であった。
「桃香ちゃんって、Sッ気があるみたいだけど、本当はMなんじゃないかなぁ。祢々子的には絶対マゾだと思うよ」
 勝手な事を言って祢々子が笑う。彼女に桃香の何が分かるというのか。自分は普通の女の子だ。見られて興奮したり、虐められて悦ぶような、そんな変態なんかじゃ断じてない。
 だがここで祢々子の機嫌を損ねて見捨てられたりしたらどうしよう……と思うと、桃香は彼女に逆らえない今の自分の立場を嫌という程思い知らされるのだった。トイレはすぐ隣だが、まだ何かトラブルが起きないとは言い切れない。無事に身を清め、服を着て部屋に戻るまでは気を緩めるわけにはいかなかった。
 ……そう言えば、脱がされた桃香の服はどこに行ったのだろう? Tシャツにショートパンツはもちろん、ブラジャーやショーツ、ソックスや靴に至るまで、宿直室の中から消えていたのだ。男子が悪戯で盗んだにしては徹底的過ぎる。誰かがトイレまで運んでくれている……のか? でもいったい誰が?
「あ、男子が部屋に戻っていったよ。じゃあそろそろ行こうか。露出狂の桃香ちゃん? 祢々子がちゃーんとトイレまで、見られないように送り届けてあげるからね。ああ、露出狂の桃香ちゃんは見られた方が嬉しいのかなぁ」
 ともかく、今は無事にトイレに辿り着く事が最優先だ。そのためには祢々子に媚びへつらわなければならない。たとえ露出狂呼ばわりされたとしても。変態扱いされたとしても。祢々子に頭を下げて服従するしかない。
「あり……がとう……ございます」
 観念して、負けを認める桃香であった。
 
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