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第三話 『策謀のプールサイド』

2012-05-30

 その日は待ちに待ったプール開きの日だった。
 むせるような暑い日が続く中、ようやく冷たいプールで授業を受けられるとあって、生徒たちはみんなこの日を待ち望んでいた。特に、男子女子戦争の真っ只中にある五年二組の生徒たちは。
 なぜなら、水泳の授業中は、男女共に非常に無防備な姿となるからだ。どちらも水着一枚。普段なら、裸にして恥ずかしい写真を撮影するためには上着やシャツ、ズボンにスカート、靴下に下着類と、大量の衣服を脱がさなければならない。だが水泳中ならばそれは水着一枚を脱がすだけで事足りる。脱がされる危険も増すが、脱がすチャンスもそれだけ多くなる……ハイリスクハイリターンのボーナスタイムというわけだ。男子女子戦争においてこれは戦略上重要な意味を持つだろう。だからこそ、男子も女子も、この日が来るのを首を長くして待ち望んでいた。
 しかしプールの時間にも欠点はあった。
 それは言うまでもなく、担任の教師の存在である。いくら水着を脱がせばすぐに素っ裸に出来る状況とはいえ、教師の目の前でそんな大胆な行動を取れば大騒ぎになってしまう。何とかして教師をプールサイドから遠ざけなければならない。そこがプールの時間の、唯一にして最大の難所であった。




「おい、大丈夫か白鷺? 痛むのか?」
 声を上げたのは、五年二組の担任教師・鮫島郡丈である。やや下腹の膨らんできた中年男性教師。唐変木なのか、それとも単に教育への情熱が無いだけなのか、自分のクラスで起こっている男子女子戦争には全く気付いていなかった。
 その鮫島が駆け寄ったのは、女子軍リーダーの白鷺姫乃。足首を押さえ、プールサイドに蹲っている。
「すみません先生……。ちょっと足がつったみたいで……」
「無理をしちゃいかん。保健室に行こう。先生が連れて行ってやる」
「いえあの、一人でも大丈夫です」
 困惑する姫乃をよそに、鮫島はクラス全員に号令をかけた。
「よーし、今から自習! 各自自由行動でいいぞ! 先生は白鷺を保健室に連れて行く!」
 自由にプール遊びできるとあって、男子からも女子からも歓声が上がる。鮫島は姫乃の肩を担ぎ、ゆっくりと歩き出した。
「お前は俺の大事な生徒なんだ。もしもの事があったら大変だからな。責任を持って保健室まで連れて行くぞ」
「は、はい……。ありがとうございます、鮫島先生」
 姫乃は笑顔を浮かべつつ、その裏側に困惑の色を滲ませていた。事実、鮫島は海パン一枚の格好のまま、姫乃と身体を密着させている。いくら足をつったと言っても、高学年の女子生徒にここまで肌を寄せる必要があるだろうか? やや不自然な動きであろう。しかしその行動が善意によって生じている以上、姫乃もむげにはできなかった。ちらりと桃香の方に視線を送り、そのまま二人でプールから出て行く。
「――上手く行ったわね、桃香」
 その様子を、宇崎みどりと羽生桃香は満足気に見送っていた。
「鮫島のヤロー、もろニヤケてたじゃん。やっぱ姫乃に気があるんだ」
「ヘンタイ教師キモ過ぎ。あんな優等生キャラのどこがいいんだか。ま、おかげで簡単にプールから追っ払えたけどね」
 そう、これは桃香の仕掛けた策略だった。
 元々、鮫島にロリコンの気を見抜いていた桃香は、特に彼のお気に入りである姫乃を囮にして、鮫島をプールから離れさせる事にしたのだ。恐らく鮫島は授業が終わるギリギリまで、何かと理由をつけて姫乃の傍に居続けるに違いない。少なくとも男子を罠にはめて恥辱の写真を撮るくらいの時間はできた。これでプールの時間の最大の難所はクリアというわけだ。
「もし保健の先生がいなかったらさ、姫乃イキナリ襲われちゃうんじゃない?」
「あはは、それマジありえるかも。いいじゃん? 好きにさせとけば。別にそうなってもあたしら困らないし」
 姫乃は女子軍勝利のため、この囮役を引き受けた。鮫島に仮病がばれるわけにはいかないので、もしベッドに押し倒されても足が痛む演技は続けるしかない。あの中年教師にそこまでの甲斐性はないと思うが、そうなったらそうなったで、桃香としては実に愉快な展開でもあった。
 さて、と気を取り直し、桃香は根墨忠一に目配せを送る。忠一は、男子軍の生存メンバーでありながら、実は桃香の奴隷となったスパイなのだ。鮫島がいなくなった時点で作戦を開始するよう事前に命令してある。
 今回の作戦は彼の働き如何にかかっていた。
 まず桃香がトイレに行く振りをして、男子更衣室に侵入する。男子軍生存メンバーの衣服を隠し、水着から着替えられないようにして羞恥写真を撮影するための下準備だ。もちろんこの動きは男子たちにすぐ感付かれるだろう。そして忠一が男子軍生存メンバーの一人を伴って、男子更衣室に押し入る。
 男子更衣室は男子たちのフィールド。二対一で押さえ込めば、いくら羽生桃香といえども手も足も出ず、簡単に羞恥写真の餌食になるはずだ……。
 こうやって男子の一人を唆し、逆に忠一と桃香の二人がかりで男子を返り討ちにする作戦だった。最初から男子の衣服など隠すつもりは無いのである。
「でもさ桃香、もし馬鹿ネズミが裏切ったらヤバくない? 逆にこっちがはめられる危険も……」
「それは心配ないわ。馬鹿ネズミはあたしの完全な下僕だし、万が一に備えて応援も呼んであるから。それより、そっちは任せたわよ」
「オッケー。耶美と二人で何とかするわ」
 今回ターゲットにする男子は、一人だけと決めていた。実質的に生存している男子軍のメンバーは、犬飼虹輝、鷲尾清司、郷里礼門の三人。第一候補は鷲尾清司だ。
 彼は明石士郎の盟友であり、明石派の犬飼虹輝のバックでもある。彼が戦死すれば、名前だけのリーダーである虹輝は後ろ盾を失い、礼門が男子軍を牛耳ろうと動き出すだろう。そうなれば男子軍は分裂だ。たとえ忠一がスパイだとバレたとしても、烏合の衆となった生き残り二人を始末するのは容易い。
 桃香が男子更衣室で清司を始末する間、邪魔が入らないように男子たちを監視するのが、宇崎みどりと甲守耶美の使命である。男子たちはまさか忠一が敵のスパイだとは気付いていないだろうから、男子更衣室で辱めを受けているのは桃香だと思い込んでいるはず。勝算は十分にあった。
「さて……じゃあそろそろ行動開始といきますか」




 同じ頃、礼門はプール際のフェンスに背を預けながら、じっと桃香の行動を監視していた。彼女はトイレに行く振りをして、見つからないようにそっと、男子更衣室の中に身を滑り込ませていく。流れるような身のこなし。うっかりしていたら気付かなかったかもしれない。まったく、大した女だ。
「郷里さん!」
 そして計ったようなタイミングで、忠一が隣まで駆け寄ってきた。
「見ましたか郷里さん! 桃香です! 羽生桃香が男子更衣室に入っていきましたよ!」
「ああ。俺も見ていた」
「え? さ、さすがですね郷里さん! 鋭い観察力!」
「あいつめ。俺たちの服を隠して、授業が終わった後に恥ずかしい写真を撮るつもりなんだろう。ちょうどいい。飛んで火に入るナンとやら……男子更衣室に入った事を後悔させてやる」
 礼門が呟くと、忠一はまるでシナリオが用意されているかのように、スラスラと話を進めていった。
「それは名案です郷里さん! でもわざわざ郷里さん自身が出向く事はありませんよ! 万が一にも罠かもしれませんし……あっしが鷲尾あたりをせっついて、二人で片付けに行ってきます!」
 まったく、下手くそな演技だな。礼門は心の中でそう毒づいた。こんな調子じゃ、清司を騙して男子更衣室まで出向かせるのは難しいかもしれない。説得には自分も参加した方がいいだろう。自分と虹輝がプールに残って監視役をするから、忠一と清司の二人で行ってほしいと提案すれば……士郎を倒した桃香に復讐する絶好のチャンスを、奴がみすみす見逃すとも思えなかった。
「そうだな。今回はお前に任せる」
「は? はい……ありがとうございます?」
 あまりにも話がトントン拍子で進んで面食らっているようだ。忠一がきょとんとしている。まったく……今までこんな馬鹿に騙されてきたのかと思うと腹が立ってくる。なぜ今まで気付かなかったんだ。忠一が女子軍のスパイだった、と。
 実のところ、礼門は昨日の放課後に桃香から教えられて、初めてその事実を知ったのだ。完全に騙されていた。
 桃香は下僕の忠一を利用し、今日のプールの時間、罠にかかった振りをして逆に清司を陥れるのだという。
 なぜそんな事を敵である自分に教えるのか。
 彼女にはもう一つ、この作戦において、張り巡らせた策謀があった。そのために礼門と共闘を申し込んできたのだ。礼門にとっても、邪魔な清司を戦死させられるのは悪い話じゃなかった。だからこうして桃香の作戦に協力しているのだ。
「……行くぞ。俺からも鷲尾に話をつけてやる」
 まったく、大した女だ。礼門は心の中でそう呟いた。




 清司は内心、どこか引っかかるところがあった。
 話し合いの末、虹輝と礼門がプールに残り、自分と忠一が桃香を倒すべく男子更衣室に乗り込む事になったのだが……。どうして授業中に男子更衣室に忍び込むという、危険な役をわざわざ桃香自身が行っているのか。そこが最後まで気になっていた。
 鮫島をプールから引き離した姫乃の演技は、明らかに仮病だろう。姫乃派のリーダーがそんな大役を引き受けた以上、桃香派のリーダーも相応に危険な役をこなさなければならない。そう考えれば確かに違和感は無かった。しかしそれにしても……。
「へへ、行きますよ鷲尾さん?」
 加えて、忠一のやけに積極的な態度も気になる。こいつは礼門の腰巾着。いつも礼門の陰に隠れ、決して危険な役回りは引き受けないタイプのはずだ。それが今日に限ってこの好戦的な行動。どうにも居心地が悪かった。
「よし、いちにのさんで飛び込むぞ」
 とはいえ、いま男子更衣室の中にいるのは、あの憎っくき羽生桃香だ。虹輝を人質にとるという卑劣な手段で士郎を辱めた宿敵。奴を倒せるなら、多少の危険は厭わない。それが清司の決意でもあった。
「……そこまでだ羽生!」
 タイミングを合わせ、清司と忠一は更衣室に飛び込んでいく。ドアを閉めると同時に声を荒らげた。
 しかし、彼女の反応は意外なものだった。
 驚くでもなく、焦るでもなく……静かにこちらを振り返り、にこりと微笑んだのである。
「あら、やっと来たのね。待ちくたびれちゃったわ」
「な……?」
 瞬間、激しい衝撃が清司の背後を襲う。後ろから強烈なタックルを受け、たまらず彼は更衣室の床の上に突っ伏してしまった。
「根墨……お前!」
 ぶつかってきたのは紛れも無く、根墨忠一だった。起き上がる隙を与えず、忠一は馬乗りになって清司の手首をねじり上げる。
「よくやったわ馬鹿ネズミ。褒めてあげる」
「は、はい! ありがとうございます、桃香様ぁ!」
 紺色のスクール水着のまま、腕を組んで勝ち誇ったように見下ろしてくる桃香。そんな彼女に恍惚の視線を返す忠一。それだけで清司は、事の次第を全て理解する事が出来た。罠に落ちたのは桃香じゃない。自分の方だったのだ。
「まさか生存メンバーの中に女子軍のスパイがいたとはな……」
「そういう事。さすがに呑み込みが早いわね」
 桃香は自分の携帯を開きながら、くすくす笑みを漏らした。男子更衣室に忍び込む前に、女子更衣室から自分の携帯を持ち出してきたのだろう。このままでは戦死させられてしまう。相手は忠一と桃香の二人だけ。どうにか振り払って男子更衣室から脱出しさえすれば、勝機はまだあるはずだ。
「フフフ、あたしたち二人だけならまだ勝ち目はある……とか思ってるんでしょ?」
 携帯のカメラを起動する桃香。
「でもざーんねん。こっちにはもう一人、応援がいるのよね。いくらスポーツ万能の鷲尾くんでも、三人がかりじゃ手も足も出ないと思うなぁ」
「応援……だと?」
 訝る清司の足首を、何者かがガッチリと押さえ込む。忠一は手首をねじり上げているから、足首までつかむのは不可能のはずだ。いったい何者だ?
「……へっへー、やぁっと出番が来たわね。授業中ずーっと隠れてるの、結構大変だったんだよ」
 足首を掴むその人物の声に、清司は聞き覚えがあった。幼さの残るあどけない口調。この声は……。
「まさか、暮井か?」
「ピンポーン。お久しぶりだね、鷲尾くん?」
 暮井祢々子。数日前に男子軍が一致協力して戦死させた女子だ。トイレでパンツ一枚にストリップさせて縛り上げ、飲ませた下剤で強制脱糞ショーをさせた事はまだ記憶に新しい。次の日からずっと、今日も含めて学校を休んでいたはずだが……。
「だいぶ体調が良くなったからさ、二時間目から授業に出ようと思って」
「それで? 一時間目の体育の授業はサボって、男子更衣室の中に忍び込んでいたってわけか」
 準備運動やシャワーの最中は、教師も生徒も注意が疎かになる。姿勢を低くして忍び込めば、案外誰にも気付かれないものだ。自由時間になってから男子更衣室に入ったのは桃香だけだったため、清司は完全に油断していた。まさかそこまで綿密に計画を立てていたとは……。
「ヘヘヘ、もし姫乃ちゃんが失敗して先生をプールから引き離せなかったら、あたし男子更衣室に忍び込んでた、ただのヘンタイさんになっちゃうところだったよ。作戦が上手く行って良かったぁ」
 忠一が清司の背中から降り、両腕を一度バンザイの格好にしてから、再び手首を拘束していった。振り解くせっかくのチャンスも、祢々子が両足を押さえつけていてはどうする事もできない。両手両足をガッチリ押さ込んだ後、二人は息を合わせて清司の身体を反転させた。身体の前面が更衣室の天井を向き、清司はようやく祢々子と顔を合わせることになる。ここにいる他の三人と違い、祢々子はキュロットスカートにブラウスという、普段着の格好のままだった。
「そんなハイリスクを背負ってまで作戦に参加するなんてな……お前にそこまで根性があるなんて意外だったぜ」
「まぁね。お見舞いに来た桃香ちゃんに言われたの。家で泣いてたって、撮られた恥ずかしい写真は返ってこない。自分を辱めた男子に復讐する事でしか、立ち直る方法は無いんだって、ね」
「チ、余計な入れ知恵しやがって……」
 そもそも祢々子は戦死した女子なのだから、本来は戦争に参加する事はできないはずだった。あの屈辱の脱糞写真をばら撒くぞと言われれば、祢々子は生存メンバーの男子には逆らえない。もちろん、インターネット経由で写真を流出させると、いくら顔を隠しても児童ポルノうんぬんで面倒な事になるかもしれない。男子女子戦争の内情を秘密にするためにも、できれば写真は公にはしたくないのが男子側の本音だ。それでも、プリントした写真を街で撒き散らすだけでも、女の子にとっては耐え難い恥辱に違いなかった。脅し文句としては十分だろう。
「……でも、はっきり言ってもうそんな戦争協定は無意味よね。前回も士郎が祢々子のストリップ現場に居合わせてたそうだし。この男子更衣室って密室の中で、鷲尾くんの味方は一人もいない。祢々子がいくら出しゃばっても、それを止められる男子はどこにもいないってわけ」
 それは清司も理解していた。戦死した女子に脅しを掛けられるのは、他にも味方の男子がいる時だけだ。この場で清司が恥ずかしい写真を撮られてしまえば、もう清司は女子には逆らえなくなる。立場は祢々子と同じ。後から祢々子の写真を流出させても、五年二組全体の立場が危うくなるだけで、大した意味は持ち得なかった。
 絶望的な状況を清司が理解するのと同時に、祢々子はキュロットから自分の携帯を取り出し、カメラを起動していった。
「はーい、それじゃあ鷲尾くんの恥ずかしいおちんちん写真の撮影会、始めまーす! 笑って笑って!」
 薄暗い更衣室の中を、まばゆいフラッシュが幾閃も照らし出していく。祢々子と桃香、二人がかりで徹底的に清司を辱めるつもりだ。
「水着一枚だから脱がすの楽だね! すぐにすっぽんぽんにしてあげる!」
「祢々子ったら、そうがっつかないの。まずは鷲尾くん愛用のブリーフと一緒に記念撮影しないと」
 言いながら、桃香は清司の腹の上に白い布きれを放り投げた。それは今朝、清司が穿いてきた下着である。更衣室の棚を漁って、清司の水泳袋の中から引っ張り出してきたのだろう。
「羽生、てめぇ!」
「ふふん。そんな可愛らしいブリーフ穿いてるくせに、偉そうな口きかないの」
「へぇー、これが鷲尾くんのパンツかぁ」
 祢々子は両足で挟み込むように清司の足首を押さえつけ、自由になった両手で彼のブリーフをつまみあげた。本人の目の前で大きく広げ、しげしげと観察する。
「クールでカッコイイ鷲尾くんも、やっぱりパンツはまだまだ子供なんだね」
「ク……。お前だって子供みたいなパンツだったじゃねーか。なに得意気な顔してるんだ、ウンコ漏らしたくせに」
「あはは、この状況でもそんな強気な態度取れるなんて、さっすが鷲尾くん。でも全然説得力無いなぁ」
 数日前、女の子としての最大の辱めを晒した祢々子は、逆に開き直って清司に復讐しようとしていた。清司に同じかそれ以上の恥辱を与えない限り、自分の心の傷は癒えない。そう桃香に信じ込まされた結果である。
 彼女は清司のブリーフを裏返し、その汚れ具合を確認し始めた。おちんちんを取り出すための、穴の開いた部分には、はっきりと黄色い染みが見える。また肛門が当たる部分にも、微かな茶色い染みが見て取れた。朝一番に排便をした残滓だろう。急いでいたためにしっかりと拭き取れていなかったのかもしれない。
「そりゃあ、あたし鷲尾くんの目の前でウンチ漏らしちゃったけどさ。鷲尾くんだってパンツにウンチ汚れつけてるじゃない。きったなーい」
「どれどれ? やだホント! 白いから目立つわねぇ。恥ずかしくないのかしら?」
 祢々子は裏返したブリーフを清司の腹の上に置き、汚れがはっきり映るようにして、彼の顔ごとしっかりとカメラで撮影していった。顔を背けようとしても、桃香の命令で忠一が頭を押さえつけるからどうにもならない。
「さぁ前座はおしまい! いよいよおちんちんご開帳の時間ですよー」
 祢々子が壊れたようにケラケラと笑った。もはや彼女は男子を辱める事のみに執念を燃やす、執拗な復讐鬼と化していた。
「スポーツ万能で女子にも人気が高い鷲尾くんの一番恥ずかしいところを今から見ちゃいますからねー。さすがに毛はもう生えてるだろうけど、問題は大きさと包茎具合だよね」
「そうそう。五年生にもなって剥けてないとかありえないし。いくらイケメンでもおちんちんが小っちゃかったら台無しだもんね。あんまりガッカリさせないでよ?」
「ねぇ今どんな気分? 素っ裸にしてウンチ漏らすところまで見た女子に、反対に素っ裸にされる気分ってどう? 悔しい? 恥ずかしい? ふふ、泣いちゃっていいんだよ鷲尾くん? 情けない泣き顔とか、射精する瞬間のイキ顔とか、全部撮影してあげるから」
 祢々子と桃香に何を言われても、もはや清司は口を開こうとはしなかった。この状況を今から引っくり返すのは不可能。大声で助けを呼ぼうとしても、手の空いている桃香がすぐに口を塞ぐのは明白だった。
 勝ち目が無い以上、もう諦めて裸の写真を撮られるしかなかった。口を開いても女子を喜ばせるだけだ。無反応でいた方が向こうも飽きてくるだろう。
 そんなせめてもの抵抗だったのだが……。復讐に心を支配された祢々子が、その程度で仕打ちの手を緩めるはずも無かった。
「そのクールな表情がいつ崩れるのか、見ものだね。カッコイイ清司くんもすぐに涙と鼻水流して、祢々子にごめんなさいって許しを請うようになるんだから」
 無視を決め込む清司をよそに、祢々子が一度携帯を床に置き、彼の海水パンツに手をかける。
「桃香ちゃん、一番いいシーンだから、バッチリ動画で記録しておいてね!」
「もっちろん。明るさも十分。しっかりおちんちん撮影してあげるわ」
「それじゃあいよいよ大公開! これがクールでカッコイイ、女子に一番人気の鷲尾清司くんの、見られて恥ずかしい大事なおちんちんでーす!」
 祢々子は清司の腰の後ろ側に手を回し、目一杯ゴムを広げてから、掬い上げるように海水パンツを引き下ろした。
 そして全てが彼女の目の前に曝け出される。
 一瞬の沈黙の後、祢々子と桃香が同時に吹き出した。
「ぷっ。何このおちんちん? ちっちゃーい!」
「ていうか毛、生えてないじゃん! 嘘でしょ五年生にもなって!」
 二人の言う通り、清司の性器はかなり小さめのサイズだった。士郎もかなり小さい方だったが、それと同じくらいか、多少はマシという程度だ。それより問題なのは無毛の方だろう。背の低い忠一がツルツルのおちんちんなのはまぁイメージ通りだから構わないが、スポーツ万能で女子の憧れだった長身の清司が、まさかまだ陰毛を生やしていなかったとは……女子としてはかなりショッキングな光景であった。
「これはスクープね! サッカー部のエースでもある鷲尾くんが、まさかのツルツル子供ちんちんだったなんて!」
「あーあ、幻滅。六年生の女子にも人気あったのになぁ。こんな短小毛なし、その上包茎おちんちんなんて、ガッカリだわ」
 短小で毛も生えていない時点で予想される通り、清司のおちんちんは完全な包茎だった。先端までしっかりと皮に覆われ、亀頭の形もよく分からない有様である。五年生にしてはかなり発育の遅い性器と言わざるを得ない。
「あー、見て見て桃香ちゃん! 鷲尾くん、泣きそうになってるよ!」
「だ、誰が! 泣いてなんか……」
「ふふ、そりゃまぁ、こんなみっともない子供ちんちんをクラスメイトの女子に見られちゃったらねぇ。まぁ水泳の授業中だったから、冷えて縮んだって事にしておいてあげる」
「へぇ、おちんちんって大きくなるだけじゃなくて、小っちゃくなることもあるんだ?」
 感心したように呟きながら、祢々子は自分の腰を浮かせて清司の足首の拘束を緩める。彼の抵抗など何の意味も成さず、紺色の水着は両足からあっさりと抜き取られていった。更衣室の宙を舞い、べちゃりと水音を立てて床の上に落下していく。
「そうよ。でもハンデ入れてもこれは小さすぎよね。ふふ、あたしの弟のおちんちんよりちっちゃいんじゃない? 弟、来年一年生だけどさ」
 桃香は楽しくて仕方が無い様子で、抵抗できない清司のちんちんを撮影していった。顔を含めた全身画像にアップ、指で弾いたときの揺れ具合まで克明に記録していく。もちろん祢々子も自分の携帯で別アングルから徹底的に撮影だ。清司はされるがまま、じっと屈辱に耐えるしかなかった。
 次に祢々子は、清司の足首をそれぞれ掴み、大きく足を広げていった。その上足全体を忠一の方へと折り曲げていく。いわゆるちんぐり返しの姿勢にするつもりなのだ。抵抗が無意味と悟った清司は、屈辱に顔を歪めながらもその姿勢を渋々受け入れていく。
「あは、見えた見えた! 鷲尾くんのお尻の穴! あ、ちゃんと皺の隙間にウンチのカスが付いてるよ」
「やだ、汚ったないわね。いくら消毒槽に浸かってるって言っても、お尻の汚れくらい拭き取ってからプールに入ってよ」
「こうすると顔とおちんちんとお尻の穴が一枚の写真に納まるんだね。はい、チーズ!」
 忠一に足首をつかまれ、清司の大開脚写真が成すすべもなくカメラに収められていく。清司の完全な敗北だった。
「ねぇ、あんたさ、士郎の仇をとろうとか思ってここに乗り込んできたんでしょ? あんたと士郎って仲いいもんね」
「へー、男同士で愛し合ってるってやつ?」
「祢々子、変なマンガの読みすぎ。まぁ、仇討とうと思って逆に返り討ちに遭ってりゃ世話無いわね」
 桃香は濡れた素足で清司の包茎おちんちんを踏みつけた。柔らかい足の裏で刺激され、小さいなりにおちんちんが硬度を増していく。
「あらあら、親友の仇に弄ばれてるっていうのに、おちんちんが硬くなってきちゃったわよ? もしかして自分も士郎と同じ目に遭いたかった? へぇー、鷲尾くんって変態マゾだったんだぁ」
「かっこわるーい。いくら偉そうにしてても、おちんちん踏みつけられて硬くするなんて、サイテーだね」
「も、もういいだろ……」
 さすがの清司もこれ以上は限界だった。射精の瞬間まで撮影されてしまったら、堪えきれずに泣いてしまうかも知れない。プライドを捨てて、清司は祢々子と桃香に懇願した。
「写真は十分撮ったじゃないか。そろそろ放してくれ。先生も戻ってくるかもしれない」
「それ、脅しのつもり? 先生が帰ってきたら声ですぐに分かるって」
「ていうかこの程度で解放されるとでも思ってるの? ちゃーんと射精の瞬間まで撮影してあげるから」
 やはり最後の最後まで辱める気なのか……。清司は唇をかみ締めた。士郎だって射精させられたんだ。耐えるしかない。
 すると何を思ったのか、桃香が撮影を中断して忠一とポジションを変更し始めた。彼女が清司の手首を持ち、上半身を押さえ込んで身動き取れないようにする。忠一は足首を掴んだまま、祢々子のポジションに移動し、折り曲げていた清司の両足も元に戻した。ちんぐり返しの格好からバンザイで仰向けになっている格好に戻ったわけだ。
 射精させる為なら姿勢を変える必要は無いはずだが……どういうつもりだろう? さらに二人は清司の身体を引っくり返し、うつぶせにしてしまう。
「何を……始める気だ?」
「言ったでしょ? 射精するところを撮影するって。とはいえ、普通にイかせるだけじゃつまんないし。せっかく男子がもう一人いるんだからさ……」
「そうそう。見せてもらおうと思って。さっきの、男同士で愛し合うってやつ」
「な……っ?」
忠一が清司の両足を左右に開き、自分の腰を割り込ませてくる。いつの間にか忠一も海パンを脱いで素っ裸になっていた。青白い短小包茎ちんちんが、かろうじて天を向いて硬くなっている。
「馬鹿! 何やってんだ根墨! 正気か?」
「あっしだって本当は嫌ですよ、男同士なんて。けど桃香様の命令には絶対服従ですからね。言われた通り、鷲尾の肛門にこいつをねじ込んでやります」
「やめろ! やめ……うぐぐっ」
 必死になって振り解こうとする清司の身体を、桃香と忠一が二人がかりで押さえ込んだ。祢々子が口を塞いで悲鳴をくぐもらせる。
「もーう、あれだけ恥ずかしい写真撮られたんだから、今さらお尻に入れられるくらいで大騒ぎしないの」
「そうよ男らしくないわね。多分初めてだろうけど、馬鹿ネズミの小指みたいなおちんちん入れられたくらいじゃ裂けたりしないから」
 二人の女子がニヤニヤ見下しながらなだめるが、清司は必死に抵抗を続けていた。水着を脱がされた時やちんぐり返しにされた時でさえ、ここまで抗った事はない。あまりの必死な様子に、祢々子も桃香も呆気にとられてしまった。
「やけに抵抗するわね。そんなに嫌なのかしら、お尻犯されるのって」
「ひょっとしてアレじゃない? 本当に明石くんの事、好きなんだったりして。だから初めては明石くんに捧げたかったのよ」
「あっはは、ウケルー? 何それ? 乙女チック過ぎ!」
 しかし目尻に涙を浮かべて懸命に身をよじる様子からして、祢々子の推論もあながち間違ってはいないようだった。少なくとも、肛門挿入に強い嫌悪感を持っていることは確かだ。
 忠一が背後から清司の腰を掴み、膝立ちの自分の腰と高さを合わせていく。かすかにウンチ汚れのついた、ピンク色の肛門に、忠一の指が無造作にねじ込まれた。唾で滑りを良くしているが、それでもキツキツだ。清司は泣きながら挿入を拒んでいた。
「そんなに嫌なんだぁ。ちょっと可哀想になってきたかな。……ねぇおちんちん入れられるの、嫌? 絶対に入れられたくない?」
 祢々子が耳元で尋ねると、清司は必死になって首を上下に振った。
「じゃあさ、祢々子に泣いて謝るんだったら許してあげてもいいよ? どうする?」
 ゆっくりと手を離し、清司の口を解放する。どうせ助ける気なんて最初から無いだろう……そう頭では分かっていても、清司は懇願するしかなかった。忠一に犯されるなんて惨め過ぎる。それだけは避けたかった。
「……ご、ごめんなさい」
「へぇ、そんなに処女守りたいんだぁ」
「誰に謝ってるのか、それじゃ分からないんだけど」
「祢々子……。祢々子、さま。この間は……罠にかけて恥ずかしい目にあわせて申し訳ありませんでした……」
「そうだよぉ。すっごく恥ずかしかったんだから」
「許して下さい……お願いします……」
「一度は勝った女の子相手に、泣きながら謝るなんてミジメだねー。いい気味!」
 思う存分、復讐を果たした祢々子は、最後の仕上げを忠一に命じた。
「――鷲尾くんにも、同じくらい恥ずかしい目に遭ってもらうよ。馬鹿ネズミさん、お願い!」
 瞬間、忠一は清司の肛門から指を引き抜き、代わりに自分の粗末なおちんちんをねじ込んでいった。
「あああっ? がぁぁっ!」
 思わず身悶える清司。
「すっごい悲鳴ねぇ。イケメンも落ちるところまで落ちちゃったって感じ」
「クラス以外の女子に見せられないのが残念だねぇ。せっかく記念すべきロストバージンの瞬間、しっかり記録してあげたのに」
 いくら短小包茎のおちんちんとはいえ、忠一の乱暴な抽送を受ければ、清司の無垢な肛門はひとたまりも無い。しっかりとお尻を掴まれ、何度も腰を打ち付けられていく。清司は涙と鼻水をたらしながら、みっともないアヘ顔を女子たちの前に晒すしかなかった。
「鷲尾くんに憧れてる女の子も、この写真見たら一気に冷めちゃうだろうなぁ」
「男子ってミジメね。ちょっとおちんちんやお尻の穴をいじめられただけですぐこのザマなんだから」
 清司は床に這い蹲りながら、腰だけを高々と上げて陵辱を受ける姿勢だった。そのため、忠一の腰の動きに合わせて彼のおちんちんも勢いよく前後に揺れ動いている。その滑稽な有様が、女子たちにとっては格好の見世物でもあった。
 朝に排便を済ませていたために、より挿入がスムースになっているのも皮肉な話だ。
「いいよ鷲尾くん最高! 士郎のチン振りダンスより面白いわ」
「この動画傑作になりそう。あたし毎日これ見てから学校に来ようっかな」
 だが実のところ、アナルセックスは清司だけでなく、忠一も初体験なのだ。つまり忠一は桃香の命令で、清司の肛門で童貞を捨てた事になる。当然、その未知の刺激にいつまでも耐えられるはずが無かった。
「も、桃香さまぁ……そろそろ……。出ちゃいそうですぅ」
 何度も清司に腰を打ちつけながら、忠一が情けない悲鳴を上げる。
「もう? ったく、相変わらず早漏ね馬鹿ネズミ! あんたのおちんちんってホント長所が一つも無いんだから!」
「す、すみません桃香さまぁ……。短小包茎の早漏でごめんなさいぃぃ……」
「さっさと姿勢を入れ替えて。予定通りの体位で鷲尾くんをイカせるのよ!」
 桃香が立ち上がり、清司の両手の拘束を解く。お尻の穴に肉棒を突っ込まれていては、いくら手が自由になったからといって逃げられるものではない。忠一に抱きつかれて、そのままごろんと床を半回転し、天井を向く姿勢になってしまった。仰向けの忠一の上に、肛門を貫かれた清司が同じく仰向けになっている格好だ。忠一が背後から両膝を抱え、清司をM字開脚の姿勢にしてしまう。
「よし、いいわよ。これでおちんちん咥え込んでるお尻の穴も、その上の可愛らしいおちんちんも、鷲尾くんの顔ごとバッチリ撮影できるわ。後はトコロテンが見られれば最高なんだけど」
 桃香は容赦なく清司の痴態を次々とカメラに収めていった。
「なぁにトコロテンって?」
「挿入された刺激で射精しちゃう事よ。実際はやっぱりおちんちんにも刺激を与えないと、なかなか精液は出てこないらしいけどね。それが撮影できたら完全勝利なんだけどなぁ。ほら馬鹿ネズミ! ラストスパートよ!」
「は、はいぃぃ!」
 命令通りに、忠一は激しく腰を突き上げる。そのたびに清司の子供ちんちんが上下に飛び跳ね、プルプルと可愛らしく揺れ動いていった。
 と同時に、皮に覆われた先端から白い液体が滲み出してくる。
「あ? これひょっとして精液なんじゃない? トコロテンってそんなに勢いよく射精しないらしいし……うわーマジ感動ね! ホントに肛門掘られて精液漏らしちゃってるんだ!」
 大はしゃぎで桃香はシャッターを押し続けた。
「普段あれだけクールでカッコイイ鷲尾くんが、ここまで恥を晒してくれるなんて、祢々子びっくりしちゃった! 感動の名シーンだね!」
 動画で撮影する祢々子も勝利の快感に酔っている。
 一方、壊れるほどに肛門を酷使され、強制的に射精まで導かれた清司は、もはや正常な理性を保てなくなっていた。涙と鼻水、それに涎まで垂れ流して悶えている。すっぽんぽんでM字開脚。恥ずかしい全てを女子に晒し、隠すことも出来ずに全てを撮影されてしまっていた。男の子としての完全敗北である。
「桃香さまぁ……イク、イキますぅ!」
 そしてまず忠一が限界を迎えた。
 ホモでもないのに、ただ桃香に命令されたというだけで、クラスメイトの男子の肛門で童貞を捨て、さらにその腸内に射精までしてしまう。それでも忠一は満足だった。ご主人様である桃香の命令を忠実に実行できたのだから。
 包茎おちんちんゆえに、亀頭を覆う皮が天然のコンドームとなっていたが、さすがに射精すれば先端から精液が迸った。その熱気を伴った白濁液が清司の腸内を染め上げていく。
「あ……ああ……。ひぐっ」
 温度に反応したのだろうか。続いて、清司のおちんちんからも精液が迸っていった。子供みたいな包茎おちんちんでも、トコロテンだけでなく一丁前に射精もできるようだ。包皮から流れ出た精液が清司の腹に次々と零れ落ちていく。
 祢々子と桃香はその一部始終を克明にカメラで記録していった。忠一のおちんちんが抜け落ちて、ぽっかり明いた肛門から精液が流れ出すところまで徹底的に撮影する。これでようやく、祢々子の復讐が完全に成し遂げられた事になるのだ。
 清司の下から忠一が抜け出し、桃香が撮影に飽きた後も、祢々子は執拗に降参ポーズの清司を記録に残し続けた。
「無様な格好だね、鷲尾くん。女の子に恥ずかしい思いをさせるから、そういう目に遭うんだよ……って、もう聞こえてないか」
 彼は白目を剥いて失神していた。アナルセックスにトコロテン、腸内射精と初めてづくしで、さすがに刺激が強すぎたようだ。足をカエルのように広げ、下半身は精液まみれ。涙と鼻水と涎でグチョグチョの顔には、祢々子を周到に罠に嵌めた時の面影など微塵も残っていない。祢々子は満足気にその醜態を見下ろし、運動靴で彼のおちんちんを踏みつけていった。
「よくも祢々子を裸にして、ウンチ漏らす所まで撮影したわね! いい気味だわ! この! この!」
 乱暴に子供ちんちんを踏みにじり、靴底に精液を塗りつける。そして今度はその小さな運動靴で清司の顔を踏みつけていった。クールでスポーツ万能、イケメンで女子の人気も高い清司の顔が、精液塗れの運動靴に押し潰され、惨めに歪んでいく。
 そんな顔まで執念深くカメラで撮影する祢々子は、桃香でさえ気圧されるほど鬼気迫る怨念を感じさせた。




 同じ頃、更衣室の外のプールでも、男子と女子の戦いが始まろうとしていた。ここにいる生存メンバーは、男子軍と女子軍それぞれ二名ずつ。郷里礼門と犬飼虹輝。それに宇崎みどりと甲守耶美の四人だ。
 他のクラスメイトたちが自由時間ではしゃぐ中、四人は一定の距離を保ちながら、戦争の最中と思われる男子更衣室に近づかないように、互いを牽制し合うように監視していた。虹輝は忠一がスパイだとは夢にも思っていない。だから桃香が敗北している男子更衣室に邪魔が入らないように、女子二人を監視しなければならないと考えていた。
 その均衡を突如破ったのは、礼門だ。
 唐突にプールサイドを移動し、反対側のフェンスにもたれかかっていたみどりに近づいていく。
「よう。お前は泳がないのか?」
 思いがけない大胆な行動に、虹輝も慌てて距離を詰めていった。
「……そんな気分じゃないの」
「そう言わずに、一緒に泳ごうぜ? プールの中で俺が色々と教えてやるよ」
「近づかないで。あんたなんかに……」
 次の瞬間。
 何を思ったのか、いきなり礼門がみどりに掴みかかった。片手でスクール水着の肩紐を握り、もう片方の手で腰の辺りの生地を手繰り寄せて、そのまま彼女の身体を軽々と持ち上げてしまう。みどりは女子の中ではかなりの長身だったが、男子の中で一番体格のいい礼門の前では、それでも所詮非力な女の子に過ぎなかった。
「おいお前らどけぇ! 怪我しても知らねぇぞ!」
 礼門の怒鳴り声に、近くにいたプールの中のクラスメイトたちが散り散りに退散していく。そして礼門は容赦なく、その空いた水面にみどりの身体を放り投げてしまった。
「きゃあぁぁっ?」
 悲鳴と共にみどりの身体がプールに沈み、水飛沫が高々と飛び上がる。数秒後、彼女が水面から顔を出し、キッと礼門を睨み上げた。
「何するのよ! この馬鹿ゴリラ!」
「言っただろ? プールの中で俺が色々教えてやるってな」
「バッカじゃないの、まさかここで戦争を仕掛けるつもり? 周りにこんなにいっぱい男子も女子もいるっていうのに?」
 もちろん五年二組のメンバーである以上、ここにいるみんなも男子女子戦争には参加している。プールに残っている生存メンバーが四人である事も承知の上だ。
 しかし今までの場合、敵の恥ずかしい写真を撮る時はたいてい空き教室とかトイレとか校舎裏とか、目立たない場所で罠を仕掛けるのが普通だった。もし他の生徒や先生に見られたら取り返しがつかない。戦死した連中も、目の前で自軍のメンバーがピンチになっていれば、思わず助けに入ってしまうかもしれなかった。
 撮影した恥ずかしい写真は、相手を屈服させる最大の武器でもあるが、クラスの外に秘密を漏らしてしまう最大の弱点でもある。自爆覚悟で邪魔をしてくる戦死メンバーを、確実に黙らせる事ができるとは限らないのだ。
「だがここはプールだろ? この授業が終わるまでの間は、他のクラスの邪魔なんて入らない。校舎からじゃ、プールは遠くてほとんど見えないからな」
「だ、だいたい……。あんたカメラなんて持ってないじゃない。男子更衣室まで取りに戻る気? そうはさせないわよ!」
 どうもおかしい。自信満々の礼門の態度に、みどりは徐々に脅威を感じ始めていた。まさか……こんな屋外で? 他のクラスメイトの見ている目の前で? 水着を脱がして裸の写真を撮るなんて……。正気の沙汰じゃない。
「――おい犬飼。お前がカメラマン役だ。ヘマするんじゃねぇぞ?」
 礼門は水泳キャップを脱ぐと、頭上に隠していたデジタルカメラを手に持った。プールサイドで呆然としている虹輝に手渡す。最新型の防水機能付きカメラだ。さすが医者の息子……小遣いには困っていないらしい。
「さ、最初からそのつもりで……? ちょ、ちょっと耶美! どこに行ったの? ボケッとしてないで助けてよ!」
 この場で礼門に逆らえる女子は、恥ずかしい写真を撮られていない生存メンバーの二人だけだ。つまり、みどりと耶美。しかしみどりがプールの中からいくら叫んでも、耶美が応える事はなかった。
「おや? 残念だな。甲守はトイレにでも行っちまったらしいぜ?」
「そ……んな……」
「観念するこった。もうお前の味方はここには一人もいやしない。甲守も白鷺も暮井も……それに、羽生もな!」
 礼門がジャンプし、勢いよくプールに飛び込んでいく。みどりは必死の形相で逃げようとするが、水中では動きは鈍かった。たちまち筋肉質の礼門に羽交い絞めにされてしまう。背後から回されたゴツゴツした手が、みどりのふくよかな胸を水着の上から乱暴に揉みしだいていった。
「へへ、さっすがクラス一の巨乳だな。ずっと狙ってたんだぜ、お前をこうやって嬲り者にする瞬間を!」
「や、やだ! やめ……みんな! 見てないで助けてっ!」
 クラスメイトたちはプールの中や外から遠巻きに見つめている。だが誰一人として、男子はもちろん女子でさえ、みどりを助けようと近づいてくる者はいなかった。
 もちろん彼女らは戦死した女子だから、恥ずかしい写真を男子軍に握られている。邪魔など出来るはずもない。だがそれ以上に、みどりの痴態を見てみたいという思いもあったのだ。いつもは撮影された画像や動画を見るだけ。他人の痴態を生で見る機会はそうなかった。
 戦死した女子たちの胸中は複雑だ。女子軍には当然ながら勝ってもらいたい。けれども、自分たちが素っ裸にされてさんざん辱めを受けたのに、みどりたち生存メンバーは男子にパンツすら見られていない。それは女子たちの心の奥底に、ほんの僅かな妬みや恨みの感情を植えつけていた。たまたまであるが、生存メンバーの女子がクラスの中でもかなりルックスのいい美少女ばかりだったのもその怨念に拍車をかけたのだろう。
「……集団心理ってのはおっそろしいよなぁ? 人数が多ければ多いほど、一人当たりの責任は軽くなるってわけだ。お前を見殺しにした事が後で羽生や白鷺にバレても、『みんなが助けなかったから私も助けなかった』って言い訳ができる」
「そんな事って……」
「お前は自分が思っているほど、クラスの女子から好かれて無かったってわけさ。ザコの女子からだけじゃなく――羽生や白鷺からも、な」
「ど、どういう意味よっ?」
 意味深な笑みを浮かべる礼門だったが、それ以上多くは語らなかった。背後を振り返り、プールサイドでオロオロしている虹輝に怒鳴りつける。
「おい犬飼! 馬鹿かお前、そんなとこに突っ立ってないで、さっさとプールに入れ!」
「ええ? プールに?」
「水中からこいつの身体を隅々まで撮影してやるんだよ。早くしろ!」
 虹輝はキョロキョロと周囲を見回した後、おずおずと水面に身体を沈め始めた。遠慮がちに礼門の傍まで歩いてくる。
「あの……明石くんの姿が見えないんだけど」
「はぁ? 知るかよ、戦死した野郎が何しようと勝手だろうが」
「でも、甲守さんと同じタイミングで、二人だけプールからいなくなったっておかしくない?」
 まさか士郎が何らかの方法で耶美を身動きできなくしているのだろうか。しかし士郎は戦死しているのだから、生存メンバーの耶美が後れを取るとは考えにくかった。戦死したメンバーが男子女子戦争に参加するのは、本来ルール違反だ。むしろ耶美が士郎を連れてプールから離れたと考えた方が自然だった。しかしそれでは耶美がみどりを見捨てた事になってしまうのだが……?
 腑に落ちない様子の虹輝に対し、礼門は左腕を伸ばして彼の頭に手のひらを乗せた。
「犬飼。お前な……」
 ザブン! と、そのまま力ずくで虹輝を水面の下に押さえ込む。突然の事に不意をつかれて、虹輝は塩素臭のする水を大量に飲み込んでしまった。水中で泡を吹き、手足をばたつかせる。礼門が手を離すとようやく水面に顔を上げる事ができた。
「ぶはっ? はぁ、はぁ、はぁ……。ご、郷里くん……? いきなり何を……」
「うるせぇ! てめぇは余計な事をゴチャゴチャ考えずに、俺の命令を聞いてりゃいいんだよ! さっさとカメラを起動しやがれ!」
 本来なら男子軍のリーダーは虹輝のはずなのだが、しょせん彼は形だけのニューリーダーだ。士郎や清司といった後ろ盾がなければ、とても虹輝一人で礼門を従わせる事などできなかった。完全に立場が逆転している。虹輝はむせ返りながら、デジタルカメラのスイッチを入れて、言われるままにみどりの方へとレンズを向けていった。
「こ、これでいいの……?」
「最初からそうすりゃいいんだよ。……へへ、待たせたな宇崎。いよいよお前の、ファーストヌード撮影会の開始だぜ」
 みどりの顔が恐怖で強張る。無意識のうちに悲鳴を上げようとするが……。彼女の口は礼門の大きな手で塞がれ、プールの外に漏れる事はなかった。


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