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概要

2037-08-21


電子書籍の販売を始めました。


第二巻、無事登録できました。

さらに第三巻も発売中です。



『男子女子戦争』は、五年二組の男子と女子が、互いに性的イタズラの応酬を繰り返す物語です。男子が女子を辱める事もあれば、女子が男子を辱める事もあります。一度敗北した児童も、そのまま泣き寝入りする事はなく、仲間と協力して復讐する事もあります。

 敵軍の児童全員の恥ずかしい写真を撮影する事で戦争は終結します。現在、まだ生存中(性的イタズラの被害に遭っていない)児童は、男子軍が四人。女子軍が五人。そこに主人公である男子転校生がやってくるのです。

 果たして主人公はどちらの軍につくのか? そして男子女子戦争の行く末は? ……という小説です。更新は不定期。ロリ・ショタ・羞恥などがメインですが、話が進むにつれ、激しい描写も増えていくかもしれません。スカやショタ同士などもあるかもしれません。読みたい小説がなければ自分で書くしかない、という目的のために作られたブログなので、コメント機能はありません。


2014年1月10日追記

申し訳ありません、恥ずかしながら私、ブログ拍手の機能について全く理解しておりませんでした。
ボタンを押すと数字が増えるのかなーくらいの認識で、初期設定のまま放置していたので、コメントを送信できる仕組みになっているとは夢にも思っていなかったのです。
今頃になって、何件かコメントを頂いている事に気付きました。
大変ありがとうございます、励みになります。

ブログのコメント機能を無効にしたのは、更新頻度が不定期で遅く、コメントを頂いても逆に恐縮だなぁと思ったのが理由です。
特にリクエストなどを頂いて、仮にそれが活用できたとしても、その頃には恐ろしく長い時間が経ってるだろうなと思うと何とも……。

しかし折角ですのでブログ拍手のコメント機能はこのまま残す事にしました。
投稿時に『公開する』を選択すると、こちらからも返信できるようです。
コメント付きのブログ拍手が投稿された場合、当方に連絡が来るようにも設定しました。
もちろん、すぐに返信できるとは限りませんし、リクエストなどにも応えられる保証は全く無いです。
まぁ気が向いた時にでもご利用いただければ幸いです。

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テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

目次

2036-10-27

簡単なあらすじ付きの目次です。
登場人物紹介が『前回までのあらすじ』を兼ねていたのですが、ストーリーが進んで分かりにくくなってきたので、別記事で設けました。
タイトルをクリックすると、当該ページにジャンプします。
ショタ、スカ等のやや特殊なエピソードは、タイトル横に注釈があります。
ただしあくまで目安なので、注釈なしのエピソードにもそのような描写が存在する場合があります。


第一話 『罠に堕ちた男子』 (ショタ)
……転校生の犬飼虹輝は、否応なしに五年二組の男子女子戦争に巻き込まれていく。虹輝を助けるため、士郎が女子軍に辱めを受ける。

第二話 『茶色いクマさんパンツ』 (スカ)
 ……報復のため、男子軍は祢々子に罠を仕掛ける。虹輝たちが立案したその作戦は、男子の目の前で大便をお漏らしさせるという凄惨なものだった。

第三話 『策謀のプールサイド』 (ショタ同士)
 ……プールの授業中、清司は桃香を戦死させようと更衣室に突入する。だがそれは男子軍内部で暗躍していたスパイを利用した、桃香の罠だった。

第四話 『牙剥く担任教師』
 ……作戦のために担任教師を陽動していた姫乃に危機が迫る。一方男子軍は、孤立したみどりを戦死させ、さらに過酷な凌辱を加えるのだった。

第五話 『解剖授業(前編)』 (エロ無し)
 ……桃香は担任教師の鮫島を仲間に引き入れ、二面作戦で姫乃派の瓦解を狙う。姫乃は礼門に襲われ、耶美は解剖授業のモデルにさせられようとしていた。

第六話 『解剖授業(中編)』
 ……脅迫に屈した耶美は、クラスメイトの目の前でストリップを強要される。身体の秘密を徹底的に暴かれ、彼女の矜持は粉々に打ち砕かれていく。

第七話 『解剖授業(後編)』
 ……全てを晒した耶美に対し、桃香は尚も執拗な恥辱刑を加える。果たして彼女の真の目的とは何か。一方、虹輝は過激化する戦争に疑問を感じ始めていた。

第八話 『裏切り者は誰だ?』 (ショタ同士)
 ……祢々子を味方につけるべく、士郎と清司は彼女の前で愛し合う姿を見せる。そして桃香の前に現れた耶美は、意外な申し出をするのだった。

第九話 『明かされる開戦の秘密』 (ややスカ)
 ……美月の協力を取り付けるため、姫乃は男子女子戦争の経緯を話して聞かせる。同じ頃、耶美は桃香の飼い犬として数々の屈辱的な行動をとらされていた。

第十話 『最終決戦・自然教室』 (微エロ)
 ……ついに自然教室が始まる。熾烈な切り崩し工作の応酬。桃香は虹輝を誘惑し、礼門は士郎との共闘を申し出た。そして星空観察の時間、士郎が動く――。

第十一話 『スタンガン争奪戦』 (ショタ?)
 ……夜這い作戦を通して展開する騙し合いの応酬、そしてスタンガンの奪い合い。さらに桃香は悪辣な交換条件を突きつけようとする。

第十二話 『愛する人のために』 
 ……スタンガンと耶美の処女という交換条件は、様々な思惑が交錯する中、破綻する。姫乃のために、耶美はその純潔を犠牲にするのだった。

第十三話 『たった一つの誤算』 (微エロ)
 ……桃香の提案で、姫乃と虹輝を交えた和平会談が開かれる。白鷺姫乃暗殺計画は最終段階。桃香はついに宿敵の少女を追い詰めるが――。

第十四話 『魔女狩り』
 ……逆転負けを喫した桃香は、自らの失言で完全敗北に追い込まれる。傲岸に振る舞っていた彼女に対する、級友たちの仕返しが始まった。

第十五話 『犬と便器と』 (ややスカ)
 ……男子のおしっこまで呑まされ、桃香は便器へと成り下がる。そしてついに迎える破瓜の瞬間。その頃姫乃は最終決戦の準備を進めていた。

第十六話 『深夜の散歩』
 ……男子全員から復讐された桃香は、汚れた身体を清めるため、トイレまで四つん這いで散歩させられる事に。屈辱の犬の首輪が嵌められる。

第十七話 『さよなら、桃香』 (ややスカ)
 ……桃香の身体を清めるためにトイレで待っていたのは、士郎だった。二人の間にあった深い軋轢が、ようやく氷解していく。

第十八話 『脱衣カードゲーム』 (エロ無し)
 ……最後の決闘に臨む虹輝と姫乃。だが未だ戦いに迷いを見せる虹輝は、知略を駆使する姫乃の前に成す術もなく翻弄されていく。

第十九話 『激突! 虹輝VS姫乃』 (エロ無し)
 ……覚悟を決めた虹輝は全力で姫乃に戦いを挑む。熾烈な頭脳戦の中、戦局は一進一退を繰り返していた。果たして、勝つのはどちらなのか?

第二十話 『我、無条件降伏セリ』 (エロ無し)
 ……長かった脱衣カードゲームの死闘がついに終わろうとしていた。敗北した姫乃は、女子軍の無条件降伏を宣言する。

第二十一話 『天使の少女』
 …… 敗北のペナルティとして、姫乃はクラス全員の目の前でストリップショーを行う。無敵の少女がついに全てを晒す時が来た。

第二十二話 『失楽園』 (スカ)
 ……性器の中まで晒してなお、気品を失わない姫乃。そんな彼女に止めを刺すべく、鮫島が魔の手を伸ばす。

第二十三話 『散花』
 ……人間としての矜持を徹底的に打ち砕かれた姫乃は、ついにその純潔を奪われる。一方虹輝は謎の少女・まのみと初めて出逢うが――。

第二十四話 『開廷、軍事裁判』 (ややスカ)
 ……女子軍中枢メンバーたちの戦争責任を問う軍事裁判が始まる。それは裁判の形を借りた、男子軍の陰湿な復讐でしかなかった。

第二十五話 『裁かれる少女たち』
 ……一人一人、級友たちの前に引きずり出され、徹底的に辱められる少女たち。泣いて許しを乞うても、男子たちが満足するまで、それは終わらない。

第二十六話 『彼女はA級戦犯』
 ……女子軍を率いてきた桃香、そして姫乃がついに法廷で裁かれる。その辱めは苛烈を極めた。

第二十七話 『終戦記念撮影会』
 ……長かった自然教室の戦いがついに終わった。だがそれは、姫乃の奴隷生活の序章でしかなかったのだ。

第二十八話 『水曜日は全裸水泳』
 ……新生活初日。姫乃は早朝から辱めを受ける。さらにプールの時間には全裸での水泳を強制され、放課後には……。

第二十九話 『初めての売春』
 ……放課後、姫乃は雑魚男子相手に売春を行う事に。たった五百円で春をひさぐ彼女の心境は如何に。

第三十話 『木曜日は強制お漏らし』
 ……授業中にお漏らしを強制される姫乃。その後始末で保健室へと向かった彼女は、尊敬していた美月に恥を晒す。

第三十一話 『初恋はおしっこの味』 (ややスカ)
 ……桃香の扇動で、姫乃は雑魚女子たちから過酷な虐めを受ける。それは助けに来た耶美との強制レズにまで及ぶ事に。

第三十話 『金曜日はオナニー講座』
 ……ミニスカ登校を強制された姫乃は、理科実験でオナニーショーを披露する羽目に。そしてついに鮫島が不穏な動きを見せ始める。

第三十三話 『帰りの会、攻防戦』
 ……白鷺姫乃監禁計画第一号を立案した鮫島は、卑劣な脅迫で教え子たちを服従させる。勇敢にもこれに立ち向かう姫乃であったが……。

第三十四話 『禁じられた言葉』 (スカ)
 ……最新話。









登場人物

2036-08-21

最新話までの時点での、登場人物紹介です。
最新話更新の際、必要に応じて改訂していきます。
よって最新話以前を未読の場合、ネタバレとなる場合があります。


男子軍

《士郎派》
・犬飼虹輝(いぬかい・こうき)……転校生。明石から男子軍リーダーに推薦される。聡明な一面もあるのだが、気が弱く、周囲に流されやすい。最終決戦の脱衣カードゲームに臨み、ついに姫乃を打倒して男子軍を勝利に導く。
・明石士郎(あかし・しろう)……男子軍リーダー。熱血漢な性格。虹輝をかばって戦死してしまう。戦死した桃香を最大限庇おうと考えており、戦争の全責任を負う姫乃の考えに追従している。
・鷲尾清司(わしお・せいじ)……明石の親友。物静かな二枚目男子だが、実は同性愛者で、明石に好意を抱いている。女子軍の罠で戦死。

《礼門派》
・郷里礼門(ごうり・れいもん)……大柄で好戦的なタカ派男子。明石とは仲が良くない。父親は産婦人科医で、様々な道具や薬品を入手できる。本人の弁によれば、レイプの常習犯。
・根墨忠一(ねすみ・ちゅういち)……桃香に惚れて奴隷になった女子軍のスパイ。清司を戦死させた際にその正体を現した。現在は完全に桃香派の奴隷となっている。


女子軍

《姫乃派》
・白鷺姫乃(しらさぎ・ひめの)……冷静沈着で知略に優れる少女。自ら率先して『脱衣カードゲーム』による最終決戦に挑み、敗北する。その後、戦争の全責任を負い、男子の奴隷となった。鮫島の脅迫にも果敢に挑み、三十時間の監禁を受け入れる。
・甲守耶美(こうもり・やみ)……無表情・無感動な女子。実は同性愛者で、姫乃に恋愛感情を持っていたが、その恋心を桃香に見抜かれ戦死する。さらに姫乃失脚の片棒も担がされた。復讐のために桃香の奴隷となるが、後に裏切って姫乃の元に戻る。

《桃香派》
・羽生桃香(はぶ・ももか)……強気で好戦的な性格で、鋭い観察眼と洞察力の持ち主。白鷺姫乃暗殺計画を立案し、あと一歩の所まで追い詰めるも、逆に戦死させられる。その後は姫乃に対しても一目置くようになる。
・宇崎みどり(うざき・みどり)……背が高く、プロポーションのいい女子。桃香の取り巻きの一人。桃香に捨て駒にされ、戦死。その後は姫乃に強い友情を感じるようになる。
・暮井祢々子(くれい・ねねこ)……低学年にしか見えない女子。ボーイズラブ愛好家。戦死した後、桃香を裏切り男子軍の味方につく。天真爛漫かつサディスティックな一面も併せ持つ。


教師

・鮫島郡丈(さめじま・ぐんじょう)……五年二組担任。姫乃だけに異常な欲望を抱いている変質者。姫乃戦死後、ついに行動を起こし、クラス全員の脅迫画像を用いて彼女を三十時間監禁。高貴なる魂の破壊という最終目的に向けて動き出す。
・斑鳩美月(いかるが・みづき)……養護教諭、つまり保健の先生。物怖じしない、サバサバした性格。姫乃から男子女子戦争の秘密を打ち明けられ、鮫島を牽制する役割を引き受ける。しかし鮫島に何らかの弱みを握られ、戦線離脱を余儀なくされる。


???

・村咲まのみ(むらさく・まのみ)……五年一組に所属する少女。美月と深い関係にあるらしく、よく行動を共にしている。男子女子戦争の秘密を知っていて、姫乃の真意までも見抜いているような言動をとる。なお、本作では一切エロシーンを担当しないので注意して頂きたい。

  

テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

『羞恥上映会シチュ』について

2022-12-31

 「今年も残すところ、あと5分となりました!」

 駄文その23です。
いやー、何とか12月中に更新しようと思って、こんなギリギリのタイミングになってしまいました。いま時刻は午後11時55分くらいです。別に年明けに更新でも良かったんですけどね。クリスマスも大晦日もずっと姫乃のウンコの事ばっかり考えていて、この上さらに新年までウンコを思案しながら過ごすのもどうかと思いまして。無事に更新できましたので、これでお正月はゆっくりと、姫乃のアナルバイブの事を考えながら過ごせそうです(結局それかー)。あと久々に登場人物紹介の文章も一部更新しました。


 今回のサブタイトル『禁じられた言葉』は、言うまでもなく初代ウルトラマン(1967年放送)第33話のサブタイトルのオマージュです。というかこのタイトル自体、1952年公開の洋画『禁じられた遊び』のオマージュという気がしますが。
 ちなみに『禁じられた遊び』がどういう映画かというと、第一次世界大戦の欧州を舞台に、戦災孤児の幼女を性奴隷にして飼おうとした少年の企みが、最終的に失敗するお話です(半分ウソ)。つまりタイトルの『禁じられた遊び』というのは、いわゆるインピオの事です(これはガチでウソ)。
 ……閑話休題。
 ウルトラマン第33話の『禁じられた言葉』は、ゲーテのファウストを下敷きにしたストーリーで、登場するメフィラス星人も、悪魔メフィストフェレスをもじったネーミングというのは有名な話です。最近では、2022年公開の『シン・ウルトラマン』に登場した『メフィラス』の方が知名度ありそうですけど。
 メフィラス星人が、サトル少年に「あなた(メフィラス星人)に地球をあげます」と言わせようとするものの、サトル少年は飴を使われようと鞭を使われようと頑として禁じられた言葉を口にせず、最終的にメフィラス星人が負けを認めて退却する……というお話。サトル少年は科学特捜隊のフジ・アキコ隊員の弟ですが、別に地球の支配者でも所有者でも無いので、『地球人の少年の心に挑戦する』というコンセプトはなかなか難解でしょう。そのため本話はストーリーよりビジュアル面の面白さが追求されています。メフィラス星人の手下としてバルタン星人等が登場したり、捕らえられたフジ・アキコ隊員が『巨大フジ隊員』として街で大暴れしたり。特に後者は、視聴者の多くの少年たちに、『巨大少女萌え』という罪深い性癖を植え付けた事で有名です。

 男子女子戦争の『死の三十時間編』は、言うなれば姫乃調教編なわけですが、姫乃が明確に『堕ちた』事が分かる展開にしたいなーと考え、思案の末に『ファウスト』のモチーフを組み込む事にしました。また陵辱エロ小説ですから、最終的に姫乃が堕ちるのは当然の結末なわけで、そこはもう最初に明示してあります。すなわち、『堕ちた』事が確定していて、その上で過去の映像を見ながらどのように堕ちていったのかを確認するという……微妙に寝取られ風味な隠し味も仕込んだ展開になっています。

 とりあえず今回は、調教編初回という事で、調教ものの基本的なシチュを一通り押さえてあります。執筆のために久々に鮫島先生初登場回を読み返しましたが、やっぱ登場した頃の鮫島先生ってアホだわ。なんか普通のロリコン変態ドサンピン教師って感じですね。実際、当初はそういうキャラだったんですが。
 最近の鮫島先生は、私の中では『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクター入ってます。「昔、国勢調査員が来た時、そいつの肝臓をソラマメと一緒に食ってやった。ワインのつまみだ」
 そもそも鮫島と姫乃の関係性自体、レクター博士とクラリス捜査官の関係に影響を受けていると思いますしね。単なる犯罪者とそれを追う捜査官というだけでなく、医師と患者でもあり、師匠と弟子でもあり、男と女でもあり、古い戦友同士でもある。鮫島と姫乃の関係も、『教師と生徒』『陵辱者と被害者』以外にも色々な面を見せていけたらなぁとは考えてます。


 姫乃が鮫島に初めて挿入されるシーンは、私のこだわりで、第四話のシチュエーションを無理やり再現してレイプするという展開にしました。一度はレイプの危機を乗り越えたヒロインが、結局同じ男(ここが重要)にレイプされてしまうというのが良いんですよね。「いろいろ頑張ったけど、結局最後はヤラれちゃったね。抵抗なんて無意味だったよ。プッ」みたいな屈辱感がたまりません。
 1975年公開の洋画『新・青い体験』でもそういう展開がありましたねぇ。この映画は、お堅い女子高生がイケメンと恋に落ちるというお話なのですが、実はそのイケメンは『若い女性をポルノ業界に引きずり込む悪党』だったのです。主人公もその毒牙にかかり、竿役の黒人男性にレイプされそうに。ところが主人公に本気で惚れてしまったイケメンは、仲間を裏切り助けてくれます。で、すったもんだの末にクライマックスで結局主人公は黒人男性にレイプされ、その一部始終を撮影されてしまうのです。
 ベッドですすり泣く主人公に、黒人男性が勝ち誇ったような顔で彼女の衣服を投げつけるシーンが最高でした。最終的には、イケメンがフィルムを取り返してくれて警察に自首。一味は全員逮捕され、主人公の淡い初恋は苦い結果に終わるのでした……というお話だったと思います、たぶん。ちなみに有名な『青い体験』(1973年)や、それと同じキャストで制作された『続・青い体験』(1974年)とは何の関係もありません(邦題が同じというだけ)。

 レイプ後の脱糞ショーでは、自然教室編で泣く泣くオミットした、『姫乃の息み顔』『お尻からぶら下がるウンコ』『トイレットペーパーで肛門を拭く姿』などを描写してあります。ヒロインにウンコさせるエロ作品は珍しくありませんが、どうしても一番派手な『ウンコする瞬間』がメインで、他がおざなりになってしまう傾向が強いですからね。こういう細部にこそ神は宿るのです。肛門の拭き方を暴く事で、個室の中の秘密を暴いてやったという快感も増すというものでしょう。
 同人誌なんかでは、女の子がトイレの個室でおしっこしたりウンチしたり、ナプキン交換したりする様子を淡々と描写する『トイレ漫画』とでも言うべきジャンルが時々見られますが……あれはストーリー性までわざとオミットしてありますからねぇ。個人的にはちょっと違う感じです。

 あと細かい所では、女子ヒロインたちの休日の姿をちょこっと描写できたのが嬉しかったですね。ストーリーの都合、ほとんど学校内が舞台となっていたので。『クラスの女子に休日ばったり出くわすと、三割増しに可愛く見える法則』発動です。
 姫乃が着ていたダサい服は、2011年放送のアニメ『プリティーリズム・オーロラドリーム』でサブ主人公の天宮りずむが最初着ていた服が元ネタ。メイン主人公の春音あいらにコーディネイトしてもらって、以降はポップな可愛らしい私服を着るようになるのですが、あいらと喧嘩するエピソードでは、拒絶の意思を示すためにあえて以前のダサい服を着るという展開がありました。着ている服で心情を表現するという、いかにも『お洒落をテーマにした少女アニメ』らしい発想には唸らされます。終盤で闇堕ちした時も着てましたよねぇ。


 次回はアナルバイブを入れたまま、鮫島先生とお外でラブラブデートという展開の予定です。三十時間もあるので部屋の中だけだとすぐにネタ切れになっちゃいますからね。日の明るいうちに屋外羞恥プレイをしとかないと。更新はいつもどおり5〜6月になると思います。


 さて、今回は『胸キュン刑事』を語ろうか、最近ハマった『ウソツキ! ゴクオーくん』を紹介しようか、とか色々考えていたのですが、そういえばコレ解説しないと駄目じゃんと思い出したので、『羞恥上映会シチュ』について語ってみようと思います。
 羞恥上映会シチュというのは、私が勝手につけた名前で、簡単に言うと『ヒロインの性的な姿を撮影した映像を、そのヒロインの立ち会いのもとで公開上映し、公衆の面前で辱める』というシチュエーションです。私が知る限り、それっぽい名前が見当たらなかったので、とりあえず便宜上、仮のネーミングをしておきました。

 なぜあまりメジャーなシチュじゃないかというと、単純明快。直接的なエロ表現が可能なエロ作品において、そんな回りくどいシチュをわざわざ描く必要がないからですね。ヒロインの陵辱映像を、『別の』ヒロインに見せるならまだしも、本人の立ち会いのもとで公開する必然性が無い。漫画にしろ小説にしろ、映像のヒロインとそれを見ているヒロインがごっちゃになってしまう危険すらあります。
 今回、死の三十時間編でこれを採用したのは、『鮫島先生には一対一で姫乃をじっくりたっぷり籠絡して欲しい』という思いと、『でもその一部始終をクラス全員に見られて晒し者になって欲しい』という矛盾する思いがあったからです。
 だったら籠絡する映像をクラスメイトに公開すればいいじゃん! 姫乃本人にも立ち会ってもらって! ……という事で、今回のような展開になったんですね。
 通常、小説では、映像の中のセリフは二重鉤括弧『』で表記する事が多いのですが、今回は地の文の視点が月曜日の視聴覚室でありながら、描写のほとんどは映像の中の土曜日・日曜日で進行する……という非常に特殊な構成になっているため、あえてどちらのセリフも通常の鉤括弧「」で表記する事にしました。読んでいて混乱しないように書くのは結構大変ですね。時々は視聴覚室でのやり取りも入れないと意味がないですし。


 この『羞恥上映会シチュ』は、エロ作品ではあまり見られませんが、一般の漫画作品などではいくつかの作品で効果的に使われています。私がたまたま知っていただけかもですけど……。直接的なエロ描写ができない一般の漫画作品とは相性がいいのかもしれません。

 例えば料理人漫画の『ザ・シェフ』。
 これはブラック・ジャックの設定を、医師から料理人に置き換えたような漫画です。その終盤のエピソードに、元AV女優のタレントが登場する話がありました。執筆時期(1990年代前半)やキャラクターデザインから考えて、飯島愛さんをモデルにしたのではないかと思われます。
 そのタレントの女性は、プロデューサーからしつこく食事に誘われ、その度にやんわりと断ってきたのですが、みんなが集まるクリスマスパーティーだから……という理由で断りきれず、渋々彼の自宅へ向かいます。するとパーティ会場では大画面で彼女が出演していたAVの上映会(モザイクつき)が開かれており、若い女の子たちが「やだー、(今と比べて)若い!」などと嘲笑していました。件のプロデューサーも、馴れ馴れしく肩に手を置きながら、「ほう、さすがにいい身体だな」と画面を見ながら感想を言うのです。完全に嫌がらせですね。ブチ切れた彼女はプロデューサーの顔にワインをぶちまけ、そのままパーティ会場を飛び出していきました。
 まぁその後は別にエロ展開は無いものの、ヒロインの恥ずかしい映像を本人立ち会いのもとで上映するというエロさがよく描かれたエピソードではないでしょうか。


 もっと凄いのが、安達哲先生の『さくらの唄』でしょう。
 前半は普通の青春活劇といったストーリーなのですが、後半はセックスと暴力が吹き荒れるエロ漫画のような展開になり、実際コミック最終巻は成人指定マークが付いているという凄まじい作品です(作者自ら頼んでマークを付けてもらったとか)。
 主人公の叔父(地上げ屋)が諸悪の根源で、彼が主人公を自分の後継者として支配しようと企んだのがそもそもストーリーが暴走するきっかけでした。主人公が憧れていた女教師を借金漬けにして筆下ろしの相手にしたり、子飼いのヤクザたちの暴力で街を半ば支配したり。そしてついには主人公が学校に通えなくなるように、学園祭で陰謀を巡らせるのです。
 学園祭では、主人公たちが自主制作した映画が上映されるのですが、ヤクザたちがテープがすり替えてしまいます。すり替えたテープは、主人公が女教師とセックスしている様子を撮影したもので、それが全校生徒の前で上映されてしまう事態に。生徒たちの憧れだった女教師の痴態が、本人の目の前で公開上映されるわけですよ。錯乱した女教師はブチ切れ、「魂の解放を!」とか叫びながらステージ上でオナニーしてそのまま気絶してしまいます。さらに主人公がメインヒロイン(同級生の女の子)の名前を出して「あの子ともこんな事ができたらなぁ」みたいな世迷言を言っているシーンまで流される始末。

 また主人公の姉は女教師と元・同級生で、学園祭の事件を知って叔父を刺殺しようとします。が、逆に返り討ちにあってヤクザたちに輪姦されてしまうのです。ショーツを口の中に突っ込まれてレイプされている最中、「あたしの下着、酸っぱい……」とかぼんやり考えていたり、さんざん中出しされた挙げ句、精液を拭う事も許されずに下着を穿かされたりと、もはや完全にエロ漫画の世界です。フラフラと帰路につく間、内腿から精液が垂れてくるシーンとかもあって、下手なエロ漫画よりよっぽどエロかったですね。
 この時の輪姦シーンを収めた写真は、後に主人公の手に渡り、それでオナニーしているところを姉に見られるという展開も確かあったと思います。それでブチ切れた姉に逆レイプされ、しかもメインヒロインの目の前で近親相姦を披露してしまうとか……。

 惜しむらくはこの作品、メインヒロインの女の子が脱がないんですよね。ここまでヤッたんなら、メインヒロインも強姦されるのでは? とちょっと期待していたのですが、途中で『セーラー服を着たメインヒロインが服をビリビリに破られる』イメージシーンが出てきて、「ああ、イメージシーンが出るって事は、この子脱がないんだなぁ」と急に冷めちゃった事を今でも覚えています。
 その思い込みを逆に利用して、メインヒロインが本当に脱がされたら確実に伝説になっていただろうに、ちょっと残念です。調べてみたら、あまりの過激さもあって打ち切りになったらしいので、もしかしたら当初の予定ではメインヒロインもヤラれちゃう展開だったのかもしれません。いや無いか。
 

 ちなみに最近の小学校では、もう視聴覚室って無いらしいですね。一人一人に学習用タブレットが配られ、通信回線で映像を表示できるので、わざわざそんな部屋に移動する必要もないのだとか。
 ただ羞恥シチュとして考えた場合、個々のタブレットに恥辱の映像が流されるのと、教室の巨大スクリーンに大写しにされるのとでは、辱めの度合いが違うと思います。やっぱりちょっと映像が粗くなっても、スクリーンに大写しの方がエロいよねぇ。科学の発展が、必ずしもエロスに結びつかないという意外な例でした。
 そもそもこの小説は現役小学生が読む事は想定していませんから、視聴覚室が出てきてもいいのです。女子のランドセルは赤だろ! という世代向けの小説なので。




第三十四話 『禁じられた言葉』

2022-12-31

 月曜日の五時間目。
 五年二組の生徒たちは全員、視聴覚室に集合していた。白鷺姫乃を除いて、だが。彼女は午前中の授業を全て保健室で過ごし、給食や掃除の時間さえ顔を見せなかった。恐らく保健室で給食を食べたのだろう。鮫島が一食分、給食を運んでいったから間違いない。
 士郎や桃香はクラスメイト達に対し、姫乃の様子について「ちょっと寝不足なだけで普段と変わりなかった」とだけ説明していた。虹輝や耶美が感じた違和感を口で説明しろと言われても難しい。余計な誤解を招くだけだ。
 どうせ五時間目の授業には出ると言っていた。その時、自分たちの目で確認すればいい。気付く者は気付くだろうし、気付かない者はそのまま。懸命な判断であった。
 やがてチャイムが鳴る。
 当の姫乃は、鮫島と共に視聴覚室へとやって来た。彼が扉を開け、室内に入って来ると、その後ろに続いて姿を見せたのだ。
 服装は、白いブラウスと、紺色のプリーツスカート。事情が事情なだけに、ミニスカートには履き替えていなかった。さすがに鮫島も雑魚男子たちも、誰もそれを非難したりはしない。表情は淡々としていて、とても体調不良で午前中を保健室で過ごしたようには見えなかった。寝不足が原因と言われれば、誰だってそれを信じるに違いない。
「鷲尾。号令をかけてくれ」
 鮫島が清司に指示を出す。姫乃はなぜか席に着かず、入口のそばに立ったままだった。言われた通り、清司が号令をかけ、クラスメイト達は鮫島に一礼して着席する。
「さて。今日の五時間目と六時間目は、朝も言った通りビデオ上映を行う。内容は、土曜日と日曜日に俺と姫乃が過ごした三十時間の愛の記録だ。ククク……昨晩、俺が徹夜で編集したんだぞ?」
 授業が始まるや否や、鮫島は早々に教師の仮面を脱ぎ捨てた。下品な笑みを浮かべ、自慢げにUSBメモリをポケットから取り出す。
 ……いや?
 そんな事より、さっき鮫島は、白鷺姫乃の事を『姫乃』と呼ばなかったか?
 今まではずっと『白鷺』と呼んでいたはずだが……?
「悪いが姫乃はそこで立っていてくれ。その位置からではスクリーンが見えにくいが……お前はビデオを見なくても、音だけで何があったか、すぐ思い出せるだろう?」
 やはり聞き間違いではない。鮫島は意図的に呼び方を変えている。今日の朝の会でも『白鷺』と呼んでいたはずなのに、この五時間目が始まった途端、『姫乃』とあえて呼んでいた。
 そして、話しかけられた姫乃の反応は。
「分かりました……。ぐ、群丈……さん」
 戸惑いながらも、そう返事をする。
 視聴覚室の中が瞬時にざわついた。
 群丈……さん? 一瞬、誰の事か分からなかった生徒が大半だろう。『鮫島群丈』。それは、あの悪徳教師のフルネームである。つまり姫乃は、鮫島から下の名前を呼び捨てにされることを受け入れ、かつ自分もまた鮫島を下の名前で呼んでいるのだ。
 しかも驚愕すべきは、その姫乃の表情。
 頬を赤らめ、視線を左右に泳がせながら、彼女は「群丈さん」と言い放った。
 もちろんそれは、嬉々として自分から言っているようには見えない態度だ。だが、強制されて無理矢理言わされている……ようにも、ちょっと見えなかった。一瞬だったので、そこまで姫乃の表情をしっかり観察していた者は誰もいなかった。口元に微かに笑みが浮かんでいたようにも思えたのだが……?
「そういえば姫乃、あのヘアピンはどうしたんだ?」
 続けて鮫島が問う。
 ヘアピン? 何の話だろう?
「あ、はい。ごめんなさい。保健室で横になっている時、ちょっと枕に当たって気になったから外していたんです」
 話の見えないクラスメイトたちをよそに、姫乃はポケットからアクセサリーを一つ取り出した。桜の花びらを象ったヘアピンだ。左側の髪を寄せ、耳の上辺りで留める。
「これでいいですか?」
「うん、よく似合っているぞ。これからは着けるのを忘れないようにな」
 確かにそのアクセサリーはよく似合っていた。清楚な姫乃のイメージにぴったりだ。ぴったりだったが……何故だろう。何かとてつもない不穏な空気が、二人のやり取りからは感じられた。
 今まで着けた事のない桜の花びらのヘアピン。
 その存在を当然のように知っている鮫島。
 さらにその着用を勧められ、粛々と従う姫乃。
 全てに違和感があった。
「では早速上映を始めよう。編集がちょっと粗いのは勘弁してくれ。なんせ三十時間の映像を九十分にまとめなくちゃならなかったんでな」
 生徒たちの困惑を意図的に無視するかのように、鮫島は淡々と授業を進めていく。
 授業時間は四十五分と決められているので、五時間目と六時間目を合計するとちょうど九十分だ。休憩時間を無視しても、上映はギリギリになってしまう。鮫島は黒板を覆い隠すように、天井から大きなスクリーンを下ろし、USBをセットしてプロジェクターを起動させた。入り口付近で立っている姫乃が、指示を受けて電気のスイッチを消す。まるで映画館のように、暗闇の中、教室の前方で巨大なスクリーンが明かりを灯した。
「まずは土曜日、午前十時ごろの映像だな。駅前の時計台に向かっている所だ」
 大画面に映し出される雑踏の風景。カメラが軽く、上下に振動している。スピーカーから流れるのは人々の賑わいの声だ。画面の右下の隅には、土曜日の日付と、『09:50』のデジタル数字が表示されていた。午前九時五十分という事か。
 撮影者が人混みをかき分けるように進んでいくと、奥の方に時計台が見えてきた。格好の待ち合わせ場所とあって、たくさんの人々がたむろしている。土曜日なので猶更だ。その中に見知った顔の、五人の少女の姿があった。桃香と、みどりと、祢々子。そして、姫乃と耶美である。
 休日のお出かけとあって、少女たちは学校にいる時とは違い、かなりお洒落な格好をしていた。撮影者が近づいていくと尚よく分かる。上品なフリルに彩られた服に、可愛らしいポシェット。ソックスや靴まできちんとバランスを考えてコーディネイトされていた。祢々子の頭には大きなリボンが付いているし、みどりは耳に大きめのイヤリング、桃香に至っては薄い色のリップで唇を彩っていた。
「おお、もう全員集合しているのか。早いな」
 スピーカーから鮫島の声が聞こえる。その声に反応し、画面の中の五人が一斉に視線を向けてきた。
「甲守が持っているのは、クッキーか何かかな? 白鷺に渡された手土産だろう?」
「……あなたには関係ありません」
「そいつはご挨拶だな」
 カメラはちょうど少女たちの顔の高さで固定されているようだ。不機嫌そうな耶美の顔が、高画質でハッキリと捉えられていた。桃香たちと違い、彼女には化粧っ気が感じられなかったが、逆にシックでスタイリッシュなパンツスタイルを見事に着こなしている。
「いつの間に……こんな撮影を」
 ポツリと呟いたのは、視聴覚室でスクリーンを見ている方の耶美。まさかこの時のやり取りが映像に残っているなんて……と言いたげな口調だった。そう言われてみるとこの映像、どうやって撮影したのか気になる。ハンディカメラを構えて五年生の少女たちを街中で撮影したら、いくら担任教師といえども立派な不審者だ。しかも彼女らの顔の位置でカメラを固定しているという事は、レンズは鮫島の胸や腹の高さという事になる。服の胸ポケットにスマホでも入れておいたのだろうか?
「何だ、気付いていなかったのか。この時先生が着ていたジャケットに、ボタン型の小型カメラを仕込んでおいたのさ。服の裏から見ると本体が丸出しなんだが……外から見るだけならレンズ部分はただのボタンにしか見えないからな。まぁ無理もない」
 鮫島が自慢げに解説する。今はそんな小型カメラでここまで高画質の映像が撮れるのか。彼は姫乃の監禁記録を序盤からしっかりと映像に残すため、わざわざ高い金を出して小型カメラを購入したに違いない。相変わらず狂気染みた行動力だった。
 そうしている間にも、スクリーンに映し出される映像はどんどん進んでいく。
「じゃあ早速行こうか、白鷺。車はそこのパーキングに停めてある」
「分かりました」
 スクリーンの中の姫乃は、黄緑のパーカーにグレーのカーゴパンツという、割と地味な格好だった。折角のロングヘアもアップでまとめて、ハンチングキャップの中に隠してしまっている。これから三十時間、悪徳教師に監禁されると分かっているのに、無駄なお洒落をしてくるほど能天気ではないという事だ。お泊り会にこんな格好で出向くなんて、姫乃の母親はさぞ不思議に思った事だろう。
 そんなセンスのないコーデをあえて選んでいるにもかかわらず、溢れ出る美少女のオーラを隠しきれていない辺りは、姫乃の姫乃たる所以か。ハンチングの陰に覆われていても、整った顔立ちはノーメイクで十分輝きを放っていた。
「……行ってくるね」
 姫乃は、耶美や桃香たちに小さく微笑んだ。
「気を付けて」
 硬い表情で耶美が答える。一体何に気を付けろというのか。鮫島は剥き出しの悪意で姫乃を凌辱しようと企んでいるのだ。気を付けようにも、気を付けようがない。
 そんな言葉でしか、親友を……愛する人を、見送る事ができない無念さが、耶美や桃香たちの表情からありありと伺う事が出来た。
 と、そこで画面が切り替わる。
 次のシーンでは、もう二人は車に乗り込んでいた。
 今度はダッシュボードに固定した車載カメラの映像だろうか。テレビのバラエティ番組などでもよく見られる、広角レンズで運転席と助手席の両方を捉えた映像が映し出されている。
 画面の右隅の数字は『10:09』。車を発進させてすぐくらいのタイミングと思われた。
「十五分ほどで着くはずだ。音楽でもかけるかね?」
「結構です」
 カメラは助手席側に取り付けられており、ハンチングを被ったままの姫乃の顔をしっかりと映し出している。さっき背負っていた、着替えなどが入ったリュックは、後部座席かトランクに置いたようだ。シートベルトを締めたお臍の辺りで両手を重ね、姫乃はずっと押し黙っていた。
「甲守が上手くやってくれるといいんだがなぁ。羽生たちと一緒にいても気まずいと思うが、きちんと白鷺の代役を務めてもらわんと、計画自体が台無しになってしまう」
 ハンドルを回しながら一人で話し続ける鮫島。姫乃は返事どころか、相槌すら全く打とうとしなかった。重い沈黙が車内を包み込む。……もっとも、彼はその重苦しい雰囲気すら楽しんでいるようだったが。
「迎えに行くタイミングは、羽生がSNSで知らせてくれる事になってるんだ。いやはや、便利な世の中になったものだよ」
 これから三十時間、白鷺姫乃を監禁し、思う存分凌辱できるのだ。待ちに待ったその瞬間を前に、この上なく高揚している今の鮫島にとって、苦痛すらも快楽の一部でしかなかった。
 赤信号で鮫島がブレーキを踏んだ時、不意に姫乃が口を開く。
「……鮫島先生。そろそろ、教えてもらえませんか?」
 視線は前方を向けたまま。決して傍らの悪徳教師と視線を合わせようとはしなかった。
「教える? 何をだ?」
「先生の目的です。私を三十時間も監禁して、何をしようと考えているんですか?」
「そりゃ決まっている。白鷺とセックスするのさ」
「嘘ですね。鮫島先生がその気になれば、今までいくらでもチャンスはあったはずです。監禁なんてする必要もありません。どんなに遅くても、私が男子女子戦争で負けた後なら、いつでも強姦はできたはずでしょう? それなのに先生は男子たちのフォローをするだけで、自分から動こうとはしなかった」
 現に鮫島は男子女子戦争に協力する見返りで得られた、自分の教え子たちの恥ずかしい写真に個人情報を書き込み、クラスのほぼ全員の脅迫画像を作成している。あれがあれば、水曜日の全裸水泳の時から、いつでも生徒たちを脅して黙らせる事ができたはずだ。自分一人が姫乃を独占して凌辱する事も、やろうと思えば簡単だった。
 それなのに、鮫島は不気味な沈黙を続け、男子たちが姫乃を辱めるアシスタントに徹していた。その理由は一体何なのか? そしてなぜ今になって行動を起こしたのか?
「じゃあこうしよう。俺の目的は、白鷺を一生、性奴隷として飼う事だ。そのためにはみっちり三十時間監禁して、しっかりと調教する必要があった。今まで行動しなかったのは、確実に計画を実行できるチャンスを虎視眈々と伺っていた……それだけさ」
「それも嘘です。鮫島先生の行動は、昨日の脅迫を見ても分かる通り、非常に刹那的です。一生私を飼うつもりなら、もっと慎重に、入念に準備をするはずです」
 あの脅迫画像が公になれば、五年二組の生徒たちはもちろん、鮫島自身も破滅する。そんな物で脅迫する事自体、後先を考えていない証拠だった。鮫島にとっては、この三十時間の監禁だけが全てなのだろう。それだけの時間があれば目的は達せられる。後は野となれ山となれと思っているようだった。
「だいたい、私は不老不死じゃないんですよ。私が六十歳や七十歳のお婆さんになっても、性奴隷として飼うつもりなんですか?」
 その頃には鮫島も寿命であの世に旅立っているはずだが。そもそも、性欲の対象として肉体だけを貪るのであれば、どんな美少女だって旬の時期は短い。一生飼うなどナンセンスの極みであった。
 信号が青になる。鮫島はアクセルを踏み込んだ。
「やれやれ……白鷺には敵わんなぁ。分かったよ、正直に白状しよう。俺の本当の目的は……。白鷺姫乃の魂を、壊す事だ。お前の持っている高貴なる魂を、完全に破壊して、打ち砕く事にある」
 急に観念的な話になってきた。
 視聴覚室でスクリーンを見ていた生徒たちの中には、もう飽きてきて隣同士で雑談を始めたり、こっそりスマホを眺め始める者も出てきている。鮫島が姫乃をレイプするような衝撃映像がすぐ見られると思っていたのに、長々と会話のシーンが続いて退屈になったのだろう。
 いや、だがこの映像は鮫島自身が編集したものだ。三十時間に及ぶ監禁調教の記録を、わずか九十分にまとめあげたもの。それなのにどうしてこんな会話のシーンをカットせずに残してあるのか?
 それは、この会話が後々非常に重要な意味を持ってくると……鮫島が判断したからに他ならない。姫乃の裸や恥辱のシーンを削ってでも、ここは残さないと駄目だと考えたのだ。
 スクリーンの中の姫乃が言葉を継ぐ。
「私がその、高貴なる魂とやらを持っているかどうかは知りませんが……」
「持っているさ。それは俺が保証する」
「とにかく。魂を壊すとは、また随分抽象的な目的ですね」
 鮫島が鼻を鳴らした。
「どうかな? よく言うだろう、レイプとは……魂の殺人だと。そういうタイトルの本もあったな。外国の心理学者が書いた、児童虐待に関するノンフィクション」
「アリス・ミラーですね。幼児期に受けた暴力は大人になってもその人の行動に影響を与え、暴力の連鎖を生む……という内容だったと思います。かのアドルフ・ヒトラーもそういう意味では被害者だったと」
 レイプは魂の殺人。それは性暴力の非道さを表現する上で的確な表現であろう。レイプの被害者は、肉体的のみならず精神的にも大きな苦痛を受ける。PTSDに苦しみ、後の人生に大きな影を落とす事も少なくない。
「なら、私の魂はとっくに殺されていますね。男子女子戦争で負けて、クラスメイト全員の前で裸にされて、レイプで処女を喪いました。これ以上、何をしたいんですか?」
「俺は白鷺の魂を壊したいんだよ。殺す程度じゃ飽き足らない。殺すだけなら死体が残るだろう? だが破壊するという事は、その死体すら残さず粉々に完全に、塵一つ残さずに打ち砕くという事だ。それこそが俺の本当の目的なんだよ」
 確かにレイプは許されざる犯罪だし、被害者に大きな禍根を残す。だが気を付けなければならないのは、レイプされたからと言って、被害者の人生がそこで終了するわけではない……という事だ。
 レイプされたら人生終了。もしそうなら、被害者は自ら命を絶たない限り、死ぬまで被害者として、抜け殻の人生を歩まなければならない事になってしまう。それは大きな間違いだ。
 レイプの被害者であっても、その後の人生を謳歌する権利はあるし、恋愛をして結婚をして、子供を産んで家庭を持つ権利もある。それは容易な事ではないかもしれない。心の傷を乗り越えなければならない義務もない。だが一方で、魂の殺人だと安易に断じて、被害者を型に嵌めたイメージで切り捨てる事も、厳に慎まなければならなかった。それはつまり、レイプされたらもう二度と立ち直れないのだと、突き放しているにも等しいのだから。
「意識しているのか無意識なのかは知らんが、白鷺はそれが分かっているんだろう。だから魂の殺人たるレイプの被害を受けてなお、その高貴なる魂を微塵も曇らせる事がない」
「魂の殺人では効果が無いから、魂の破壊をしたいという事ですか?」
「その通り。……考えてもみろ。お前が今から俺みたいな人間のクズに監禁されるのは何故だ? 俺がクラスメイトを脅迫して、白鷺が奴らを庇ったからだ。自分の処女を奪った郷里、ライバルとして熾烈な戦いを演じた羽生、そしてお前を奴隷扱いして散々虐げてきた雑魚男子に雑魚女子……そんな連中を助けるために、お前は今から俺のおもちゃになるんだぞ? 普通の人間なら絶対にそんな自己犠牲はしない。それこそ、お前が高貴なる魂を持っている証拠だ。敢えて言うなら……たかがレイプ如きで、その高貴なる魂には傷一つ付けられんのさ」
 レイプが魂の殺人である事は間違いない。姫乃の心にも大きな傷を残しているだろう。
 だが姫乃はどれだけ恥辱の限りを尽くされても、その強く気高い心までは、未だ見失ってはいなかった。
 クラスメイトの前でストリップしても。
 浣腸で大便させられても。
 好きでもない男子に処女を奪われても。
 全裸水泳させられても強制お漏らしさせられても公開オナニーさせられても。
 雑魚男子相手に売春させられても。
 未だ白鷺姫乃は白鷺姫乃であり、その高貴なる魂は健在であった。
「どんな辱めを加えようとも、白鷺姫乃の魂を汚す事などできない。俺にとっては未だにお前は、初めて会った時と同じなのさ。何の穢れも無い、純潔の少女。ありとあらゆる恥辱に塗れても、白鷺姫乃が白鷺姫乃である事に、何の変わりもないのだから」
「……買い被り過ぎです」
「そんな事は無いぞ。一時的に敗北し、屈服したように見えても、白鷺姫乃という根幹が揺らぐことは無いんだ。それはお前の存在の根源である、その魂が未だ穢れなく存在しているからに他ならない」
「私は郷里くんにレイプされた時、命令されてもいないのに自分から命乞いしました。それは魂が屈した事にはならないんですか?」
 他にも何回か、姫乃が致命的な敗北を喫し、精神的にも肉体的にも白旗を上げた事はある。白鷺姫乃とて、完全無欠の負け知らず……無敵の少女というわけではなかった。
「けれどもその度にお前は毅然と立ち上がってきた。そもそもお前は命乞いをしたんじゃない。自分から命乞いを『してあげた』んだ。そうすれば郷里の馬鹿が喜ぶと分かっていたからな」
 意図的に……或いは自分でも気づかない内に。姫乃はそうやって相手の心理を巧みに操り、負けたように見せながらも、実際は相手を掌の上で転がしていたのだ。確かに、姫乃の処女を奪った直後の礼門は、本懐を成し遂げた達成感よりも、勝利の実感が沸かない飢餓感に焦っていた。姫乃を介抱する耶美に、「あなたの方が無様に見える」とまで言われる始末だ。
「そんな程度で白鷺に勝った気になっている郷里は、お釈迦様の手の上で踊っている孫悟空だな。所詮はお山の大将。白鷺とまともに張り合える器じゃない。第一、男子女子戦争で戦死したのも――」
 プツ、という編集音と共に、そこで急に話が切れた。
 何だ?
 映像が……編集されている?
「では一体、どうしたら魂が壊された事になるんですか?」
 不自然な形で、姫乃のセリフに繋がっていた。
 もしかすると……鮫島は、姫乃が脱衣カードゲームでわざと虹輝に負けた事を見抜いているのかもしれない。男子女子戦争で戦死した事も、姫乃が自分で望んだ事。ストリップもレイプも奴隷生活も、全て承知の上で受け入れた事。だから姫乃はまだ本当の意味で負けたわけではない、と。
 しかしそれをクラスメイト達に知られてしまうと、せっかく女子軍敗北で終結した戦争が、また蒸し返されかねない。それは鮫島にとっても面倒な事なのだろう。だから映像をカットしたのだ。もっとも、敗戦の全責任を姫乃が背負ってきた以上、脱衣カードゲームの真相を知られたところで、今更何がどうなる事もないのだが。
「それだ。先生もそこが悩みどころでなぁ」
 ともあれ、映像の中の会話はどんどん進んでいく。
「何か具体的に、分かりやすい方法で、魂の破壊を目に見える形にできないか……ずっと考えていたんだ。そして一つ妙案が浮かんだ」
「何です?」
「白鷺……お前、ゲーテの『ファウスト』を知っているか?」
 ドイツの文豪、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作の一つだ。一瞬、沈黙した姫乃は、ゆっくりと言葉を返した。
「――『時よ止まれ、お前は如何にも美しい』ですか?」
「さすがだ。説明の必要も無いようだな」
 元々、ゲーテの生まれたドイツには、ファウスト博士の伝説というものがあった。実在した錬金術師らしいのだが、悪魔と契約して黒魔術などを操り、最後には身体を八つ裂きにされて魂を奪われた……という伝承だ。
 ゲーテはこのファウスト老人の伝説を下敷きに、一生をかけて壮大な戯曲『ファウスト』を執筆した。悪魔メフィストフェレスが神に対し、ファウスト老人を悪の道に引きずり込めるかどうか、賭けをするというストーリーである。
「メフィストフェレスは老いたるファウストの前に現れ、自分が召使いとなって、この世のあらゆる快楽や悲哀を体験させてやると持ち掛ける。そしてファウストが満足して、『時よ止まれ、お前は如何にも美しい』と言えば、メフィストはファウストの死後、その魂を自分のものにできる……という契約を交わすのさ。悪魔がファウストの魂を手に入れたなら、神との賭けも悪魔の勝ち。逆にその禁じられた言葉を引き出せなければ、賭けは悪魔の負けだ」
 本来、ファウストは悪魔に敗北してその身体を八つ裂きにされる結末だが、神の慈悲にて救われるファウストという伝承も存在していた。ゲーテもこちらの結末を採用し、ファウストは禁じられた言葉の吐露と共に大往生するものの、最後には神によって魂が救済されるラストになっている。
「どうだ? 悪魔メフィストフェレスを気取るわけじゃないが……俺と賭けをしてみないか?」
「禁じられた言葉を私が言えば、先生の勝ちという事ですか」
「そうだ。俺が勝てば、白鷺は俺専属の性奴隷になってもらう。だがもし白鷺が勝てば……例の脅迫画像は、クラス全員分、全て抹消しよう。元データはもちろん、動画も全て削除する。悪い話じゃないはずだ」            
 元々、脅迫画像がある限り、姫乃は性奴隷になるしかない。しかし賭けに勝ったなら、その脅迫画像を消し去る事ができるのだ。入手した動画まで削除するなら、鮫島は二度と脅迫画像を作れなくなってしまう。もう一度、この悪徳教師に自分たちの恥辱の動画をコピーさせるお人好しは、五年二組には一人もおるまい。
「禁じられた言葉の内容はどうするかなぁ……。絶対に白鷺が言いそうにない言葉が良い。例えば、『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』なんてのはどうだ?」
 鮫島が下品に嗤う。
 だが当の姫乃は落ち着いたものだった。
「……お断りします」
「ほう? 賭けに乗らないと? つまりこういう事だな。白鷺は、ついうっかり『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』なんて口走りそうなので、勝負から逃げると」
「挑発しても無駄です。負けると分かっていて勝負に乗るのは、愚者の選択ですから」
「認めるんだな。びっくりだよ。お前が『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』なんて宣言しかねないと思っているとは」
「私は今から三十時間、鮫島先生に監禁されるんですよ。食事も睡眠も排泄も、そしてセックスに至るまで、全て先生の支配下に置かれるんです。そんな状況で自制心を保つ事ができますか? 人間の集中力はせいぜい九十分程度しか持ちません。どんなに頑張ったところで、精神的にも肉体的にも追い詰められれば、誰だって屈服するでしょう。つまりこの賭けは、一見フェアに見えて、実際は明らかに鮫島先生が勝つ以外の結末が存在しない、非常にアンフェアなものなのです」
 丸一日以上監禁できるのであれば、人間を服従させるのはたやすい。食事や睡眠を与えないだけで、多くの人間はかなりのダメージを負う。思春期の少女が相手ならばなおさらだ。排泄やセックスを管理する事でさらに心をへし折る事ができるだろう。
「確かにな。だがそれは、いつまで監禁されるか分からない状況の話じゃないのか? 俺は三十時間後に必ず解放すると約束している。三十時間さえ耐えればいいとゴールが見えているなら、或いは耐えられるんじゃないか?」
 鮫島の指摘ももっともである。それ以上監禁すれば、姫乃の両親が心配して警察沙汰になるに違いない。耶美や桃香たちも黙ってはいないはずだ。厳格な制限時間があるなら、可能性はゼロではなかった。
 さらに彼は畳みかける。
「これは脅迫画像を抹消できる千載一遇のチャンスなんだぞ? それをみすみす見逃すのか? 残念だよ、白鷺なら万に一つの可能性に欠けて、クラスメイトを救うため、果敢に戦いを挑んでくると思っていたのに」
「電子データなんて簡単に複製できます。クラウドに預けたり、コピーしたメモリを貸金庫に入れたり、隠蔽の方法はデジタル・アナログ問わず、いくらでもあるでしょう」
「そこは信用してもらうしかないなぁ」
「信用なんてできません」
「ハッキリ言ってくれる……」
 言いながらも、鮫島の表情は余裕だった。彼には分かっているのだ。どのみち、姫乃がこの賭けに乗るしかない事を。
「いいかよく考えろ。お前が賭けに乗ろうと乗るまいと、今から監禁される事に違いはない。そして賭けに乗らなかった場合、脅迫画像は消されないし、お前はこれからもずっと俺の性奴隷になる。賭けに乗ったらどうなる? 負ければ性奴隷だが、勝てば解放だ。そして脅迫画像も消される……可能性はある」
 鮫島の言葉に、姫乃が唇を噛む。初めて彼女は、ハンドルを握る悪徳教師の方に顔を向け、鋭い視線をぶつけた。
「あなたという人は、どこまで……」
「親切に教えてやっているだけさ。賭けに乗らなければただの監禁され損。だが賭けに乗って勝てば、利益が得られるかもしれない。賭けに負けても賭けに乗らなかった時と、ダメージは同じなんだぞ? なら迷う必要は無いよな? 優等生の白鷺が、クラスメイトを見捨てるような真似をするはずがない」
 巧妙に仕組まれたロジックだった。賭けに勝ったところで利益が得られる保証はないが、賭けに乗らなければそもそも利益は得られない。そしてその利益には、姫乃自身の利益だけでなく、クラス全員の利益が含まれている。既に姫乃の退路は完全に断たれていた。
「……分かりました」 
 止むを得ず、姫乃が了承の言葉を吐く。
「私は賭けに乗ります」
「それでこそ白鷺だ。ではこれより三十時間、お前が『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』と言えば白鷺の負け。言わなければ、俺の負けだ。どうせ低用量ピルは吞んでいるんだろう? あくまで言葉遊びだ。本当に妊娠させるつもりは無いから安心しろ」
 鮫島にとって肝要なのは、姫乃が賭けに乗る事なのだろう。
 姫乃が負ければ……つまり、自分から『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』と言えば、それが即ち魂の破壊を意味する。そう考えているようだった。
 映像を見ている五年二組の生徒たちは、まだその意味がよく分かっていなかった。会話のシーンが長くて、真面目に見ていない者も多い。ちゃんとスクリーンを見ている人も、いったい何人が鮫島の真意を理解しているか怪しいものだ。『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』と言ったところで、本当に魂を破壊した事になるのか?
 だが少なくとも、一つはっきり分かっている事がある。
 この映像は、過去の記録なのだ。
 土曜日と日曜日に起こった過去の出来事を、記録したビデオに過ぎない。
 つまり姫乃と鮫島の賭けの結末は、既に判明しているのだ。
 ……どっちが勝ったのか?
 それは考えるまでも無かった。
 視聴覚室の前方で椅子に座り、満足気に映像を眺めている鮫島。同じく前方で立ったまま、スクリーンを無表情に見つめている姫乃。二人の様子を見比べれば一目瞭然である。
 賭けは鮫島の勝ちだったのだ。
 姫乃は賭けに負けたのだ。
 それが意味する事はつまり。
「言ったんだ、よね……白鷺さん。鮫島先生の赤ちゃん、産みますって……」
 誰かがポツリと呟いた。
 そう。白鷺姫乃は三十時間の監禁の末、鮫島に屈服し……あろう事か、『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』などと口走ってしまったのだ。たとえ妊娠する可能性がゼロであっても、敗北を受け入れた事に違いは無い。
 映像の中の姫乃は未だ凛とした気品を纏っていた。あの白鷺姫乃が、悪徳教師の前に完全敗北を喫し、『鮫島先生の赤ちゃん、産みます』と叫ぶ……。
 一体どういう状況で、どんな風に追い込まれて、膝を屈して禁じられた言葉を吐き出したのか。クラスメイト達には、想像だにできなかった。
「お、着いたぞ。ここが先生のアパートだ」
 視聴している人間の困惑などお構いなしに、映像は淡々と流れていく。次の瞬間、映像が切り替わり、再びあの……ジャケットに仕込んだボタン型カメラの視点になった。リュックを背負い、階段を上がる姫乃を後ろから撮影している。
「部屋は一番奥だ。ちょっと待ってくれ。鍵を開ける」
 画面から姫乃が消え、玄関のドアがアップになる。意外と新しい雰囲気のアパートだった。ガチャンと開錠されると、ドアが開き、鮫島が身体の向きを変える。画面に再び姫乃が現れた。
「ようこそ二人の愛の巣へ。さ、遠慮せずに入ってくれ」
 鮫島の下らないジョークに、姫乃はクスリとも笑わず、無言で玄関に足を向ける。その時不意に、彼が小さく呟いた。
「……『ここを過ぎて悲しみの街』」
 足を止める姫乃。
「太宰ですか? それともダンテ・アリギエーリ?」
「どちらでも」
 肩をすくめたのだろうか、画面がわずかに上下する。彼女は一瞬眉を歪ませ、しかし躊躇することなく、玄関の敷居を跨いた。後に続いて部屋へと入っていく鮫島が、ドアを閉めながら楽し気に言葉を継ぐ。
「『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』……って事さ」




 イタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリが著した叙事詩『神曲』は、ダンテ自身が主人公となり、古代ローマの詩人ウェルギリウスと共に地獄や煉獄、最終的には天国へと向かう壮大な物語である。
 この地獄篇に登場する、地獄への入り口に存在するのが、『地獄の門』だ。そこには『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』という碑文が刻まれている。彫刻家のオーギュスト・ロダンはこれをモチーフに『地獄の門』という作品を制作した。かの有名な彫像『考える人』も、本来はこの作品の一部である事はよく知られた話だろう。
 また小説家の太宰治も影響を受けており、自身の著作『道化の華』の冒頭は、『ここを過ぎて悲しみの市(まち)』というセリフで始まっていた。
 つまり鮫島はこう言いたかったのだ。
 このアパートの玄関こそ、白鷺姫乃にとって『地獄の門』であると。
 この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ、と。
 ここから絶望の土曜日が始まるのだと。
「……荷物は奥の寝室にでも置いてくれ」
 再び画面が切り替わり、今度は部屋全体を俯瞰するような映像になった。部屋の天井と壁の境目、隅の一角にカメラを設置してあるのだろう。これもバラエティ番組などでおなじみのアングルである。右下に表示されるデジタル数字は、10:27。いよいよ、三十時間に渡る監禁と調教の開始というわけだ。
 鮫島の部屋は1DKと言っていた。
 風呂とトイレに加えて、ダイニングとキッチン、それに寝室が一部屋あるという意味だ。ダイニングが寝室を兼ねるワンルームよりは広いが、ダイニングに加えてリビングもある1LDKよりは一部屋狭い。一人暮らしとしてはそこそこ余裕のある広さと言えるだろう。
 部屋を俯瞰した際、一番に目についたのはダイニングのテーブルだ。
 普段鮫島はここで食事をとっているはずなのだが……なぜかそのテーブルには奇妙な加工が施してあった。
 長方形のテーブルが、アルファベットのUの字になるように、一辺の中央から真ん中にかけて、大きく切り取られている。カメラの映像ではハッキリとは分からないが、元々そういう形というわけではなさそうだ。鮫島が電動のこぎりか何かで切断したらしい。切り口が雑に歪んでいた。
 おかげでテーブルの表面積が大幅に削られており、ほとんどテーブルとしての機能を満たしていなかった。なぜ彼はこんな物を作ったのか? よく見えないが、テーブルにはあちこち、小型カメラまで設置されているようだった。良からぬ目的で仕立て上げた事だけは間違いない。
「さて。早速だが、白鷺にはこいつに着替えてもらおうかな」
 備え付けのクローゼットを開け、鮫島が何かを取り出す。手渡された姫乃が広げると、それは紺色のスクール水着だと分かった。
「髪をアップにまとめてあるのは好都合だな。水泳帽も用意してあるから、ここで着替えてくれ。俺は隣の寝室で待っている」
「着替えるところを見なくていいんですか? どうせ……録画はしているようですが」
 姫乃が上を見上げ、カメラ目線になる。車のダッシュボードのカメラには当然気付いているから、この部屋にもカメラがある事はすぐ予想できたのだろう。
「分かってないな。着替えるところを見てしまったら、脱がす喜びが半減するじゃないか」
「結局セックスするんですね」
「俺はこの瞬間をずっと待ち望んでいたんだぞ。まずは一発抜いて、賢者モードにならないと、落ち着いて調教も進められん」
 鮫島が隣の部屋に移動すると、同時にカメラも切り替わり、寝室を俯瞰した映像になった。シングルベッドが一つあるだけの、殺風景な部屋。だがさっきのテーブルと同じく、ベッドの周囲にもあちこちに小型カメラが仕掛けられている。その上、照度を確保するため、撮影用のライトまで設置されていた。
 他にインテリアらしきものといえば、壁にかかっている額縁くらいなものか。しかし額縁の中に絵などは入っておらず、中身のない額縁だけが飾られている。鮫島の部屋なら、壁一面に姫乃の盗撮写真が山ほど貼り付けられていそうなものだが……そういう画像は全てパソコンの中なのだろう。ベッド脇のサイドテーブルにはノートパソコンが一台、無造作に置かれていた。
 画面右下の時刻は、10:36を示している。時間が少し進んでいるようだ。鮫島は既にトランクス一枚の姿となっており、ベッドに腰かけて今か今かと生贄の登場を待ちわびていた。ノックと共に、水着に着替えた姫乃が、画面の手前から部屋に入って来る。
「お待たせしました」
「おう、サイズはぴったりのようだな。美月先生にスリーサイズを聞いておいて良かった」
 再び画面が切り替わった。例のボタン型カメラの映像のようだが……さっきよりレンズの位置が高いようにも思える。カメラを見つめる姫乃が、怪訝そうに問うた。
「その伊達眼鏡、カメラが仕込んであるんですか?」
「お、よく気付いたな。その通り。ハンディカメラじゃ、片手が塞がってしまうからな」
 どうやら今映っている映像は、鮫島が装着しているカメラ内蔵型の伊達眼鏡で撮影したものらしかった。鮫島が座っているお陰で、レンズの高さがちょうど姫乃の顔の位置になっている。真新しいスクール水着と水泳帽を被った姫乃が、真正面からじっくりと映し出されていた。眩しい程のライトに照らされて、まるで目の前に立っているかのような高画質の映像が、視聴覚室のスクリーンに投影されている。
「さぁ、隣に座りなさい」
 促され、姫乃が無言でベッドに腰かける。
 映像は再び部屋を俯瞰するアングルに戻った。用意していたタオルを広げ、鮫島がなぜか姫乃の手足を拭うような動作を見せる。実際にプールに入ったわけではないのだから、身体が濡れているわけがない。意味不明の行動だった。
 更に彼は、折角被らせた水泳キャップも脱がして、ヘアピンで留められていた長い髪を振り解いていく。艶やかな姫乃の髪を、まるで一本一本愛でるように、指先で執拗にその感触を味わうのだ。
「今日のこの日のために、俺は煙草も止めたんだ。臭いが移る心配は無いから安心してくれ」
 鮫島の息が姫乃の耳元をくすぐる。さしもの姫乃も嫌悪感が表情から滲み出ていた。
「――し、白鷺は好きな男子とか、いるのか?」
 呼吸を荒くする鮫島。
 これも意味不明の発言である。姫乃が虹輝に好意を持っているのは明らかだったし、つい先日の金曜日、公開オナニーの授業でそれを告白させたばかりではないか。まるでそれを忘れてしまったかのような、鮫島の謎の言動であった。
 しかしその言葉に、姫乃がハッと顔を上げる。
「鮫島先生……まさか、あの時の再現をしろと、言ってるんですか?」
 あの時?
 何の話だろう。
 スクリーンを見ているクラスメイト全員が、頭に疑問符を浮かべた。
「さすが白鷺は勘が良いな。あの時確か、お前はこう言ったはずだ。『どうして先生にそんな事を答えなくてはいけないんですか?』ってな。ほら、言ってみろ」
 映像の中の鮫島と姫乃は、お互い話が通じているらしい。俯いた彼女が、小さく命令に従う。
「……どうして先生に、そんな事を答えなくてはいけないんですか?」
 何人かの生徒たちは、おぼろげに事情を把握し始めた。
 恐らくこれは、以前二人が交わした会話の再現なのだ。鮫島は以前から、何かにつけて学級委員の姫乃に仕事を命じたり、作業を手伝わせたりしている。それゆえ彼が姫乃に好意を抱いているであろう事は、ずっと以前から周知の事実であった。
 だが姫乃がスクール水着を着ている状況で、二人っきりで会う事など無かったはずだ。唯一の例外は……プール開きの日、鮫島をプールから引き離すために姫乃が囮になった、あの時くらいだろう。
 そう、姫乃にわざわざスクール水着へ着替えさせた事も『再現』の一環なのだ。そう考えれば、濡れていない身体を拭く動作をしている意味不明さにも納得がいく。
「教え子の事をよく知りたいと思うのは、教師として当然だろう?」
「私には、興味本位で訊いているようにしか思えません」
「心外だなぁ。先生は本当に白鷺の事を心配しているんだぞ? お前ほど可愛らしい外見の女子なら、言い寄ってくる男子は山ほどいるはずだ。変な男に騙されて、傷物にされたら可哀想じゃないか。こんな綺麗な身体をしているんだから……」
 足をくじいた演技をして、鮫島と共に保健室に向かった姫乃が、危うく襲われそうになった……という話は多くの生徒たちに知れ渡っていた。たまたま美月が保健室を留守にしていたために、ベッドに押し倒されたのだという。
 結局、いいタイミングで美月が戻ってきてくれたため、事なきを得たのだが……。鮫島はあの時のシチュエーションを再現して、今度こそ姫乃を凌辱しようと考えたらしかった。セリフまでしっかり暗記しているとは、よほど記憶に鮮烈に残っているのだろう。
 髪を一通り拭き終えた鮫島は、姫乃の白い肩を撫でながら、今度はスクール水着の水気――もちろん実際には濡れていないのだが、それを拭い始めた。まずはお腹の辺りにタオルをあてがう。それからゆっくりと、じっくり感触を味わいながら、徐々に徐々にタオルを胸の方へと押し上げていった。
 そしてとうとう、鮫島の手がタオルと水着越しに、姫乃の胸の膨らみに触れようとしたその時……。
「どうした? ここでお前は、『もう結構です!』と言って立ち上がったはずだぞ?」
 鮫島が不満げに口を尖らせる。
「どうせレイプするんでしょう? だったら早く押し倒せばいいじゃありませんか」
「全く……お前は男のロマンってものが分かってないな」
 言いながら、彼はタオルを投げ捨てて姫乃をベッドに押し倒した。プール開きの日には、もっと違う流れで押し倒されたのだろう。ともあれ、スクール水着姿の姫乃が仰向けにベッドに倒れ、その上から鮫島が正面を向いて覆い被さった格好になった。小さな姫乃の身体は、逞しくもないが中肉中背の大人の男性である、鮫島の大きな身体にすっぽりと隠れてしまっていた。
「懐かしいなぁ白鷺。あの時も保健室で、こんな体勢になったんだったな」
「ほんの二週間前の事ですが」
「あの時の俺は千載一遇のチャンスを前にしてどうかしていたよ。いつ斑鳩先生が帰ってくるかもしれないのに、白鷺をレイプしようとするなんてな。危うく、全てがご破算になる所だった」
 もし鮫島が姫乃を押し倒している所を美月に見られたら、彼は一発で免職、下手をすれば姫乃の両親から訴えられていたかもしれない。聞くところによれば、姫乃が鮫島の股間にキツい膝蹴りを一発お見舞いし、逃げ出した直後に美月と鉢合わせになったのだとか。
 五年生とは思えない姫乃の勇敢な行動力によって危機を脱したわけだ。もっとも、そのまま大人しく鮫島に嬲られていれば、戻ってきた美月によって彼は学校を追放されていたのだが。姫乃の機転が結果的に鮫島を救い、美月が弱みを握られ、今こうして姫乃自身が凌辱の餌食になろうとしているとは……何とも皮肉な話だった。
「し、白鷺……。先生は……先生はなぁ。ずっとお前の事を見ていたんだ」
 あの時の復讐とばかりに、鮫島がノリノリでセリフを紡ぐ。
「四年! 四年以上だ! お前が入学して来た時からずっと、先生はお前だけを見ていたんだぞ! お前が五年生になって、とうとう担任になれて、俺がどれだけ喜んだ事か……」
 姫乃はもはや無視を決め込んでいた。カメラが鮫島の眼鏡に切り替わり、顔を背けている彼女の横顔を鮮明に映し出していく。
「白鷺ぃ! 先生はずっと前からな、お前の事が! お前の事が……。す、好きだったんだ!」
 気持ちの悪い愛の告白を叫んだ。鮫島は欲望の赴くまま、姫乃を我が物にしようと、彼女の唇に自分の唇を近づけていく。画面は姫乃の横顔のドアップだ。
 ……と、そこで動きが止まる。
「おいおい、ノリが悪いなぁ白鷺。ちゃんとロールプレイングしてくれよ。お前はここで俺の股間を蹴飛ばすんだろう?」
 またカメラが切り替わった。今度はベッドの横に備え付けられた小型カメラのアングルだ。横たわる二人を真横から撮影している。鮫島がトランクスを履いたまま、膨れ上がった股間の怒張を姫乃の腰に擦り付けているのがよく分かった。
「ほら、どうした? 蹴ってみろよ? お前、郷里の股間も土足で蹴ったんだってな? あの痛みは男にしか分からんから仕方がないが……そんな事をしているから、男に恨みを買って、思う存分仕返しされるんだぞ?」
 脅迫画像によって抵抗できない事を知りながら、鮫島が居丈高に姫乃を見下し、嘲笑する。
「あの時お前は何て言った? ほら、答えろよ白鷺」
 細かくカメラが切り替わる。再び姫乃の横顔のアップになった。
「……子供だと」
「うん?」
「子供だと思って甘く見ていると、痛い目を見ますよ、先生……。そう言いました」
 無念そうに吐露する姫乃。
 逆に鮫島はご満悦だ。アングルが変わって横からの画像になると、彼が嬉々としてトランクスを脱ぎ去る様子が映し出された。汚らしい剛毛に覆われた股間から、隆々とペニスがそそり立っている。
 瞬間、スクリーンを見ていた女子の間で悲鳴が上がった。鮫島が自分の逸物を露わにしたのはこれが初めてだから、当然の反応かもしれない。しかも彼のペニスは形の醜悪さもさることながら、太さや長さが教え子たちの想像を遥かに超えていた。
 別に彼が特別な巨根の持ち主だったというわけではない。恐らく大人の男性としては平均的なサイズなのだろう。だが組み伏せられた姫乃の小柄な身体と対比すると、そのグロテスクな肉塊は、殺人的なまでに過剰な大きさだったのだ。クラス一の大きさを誇るであろう、礼門のペニスと比べても、その差はまさに大人と子供であった。
「ひっ……!」
 画面の中の姫乃が小さく悲鳴を上げる。鮫島がペニスを露わにした事で、自然と視線を向けてしまったようだ。彼の眼鏡のカメラは、肉の凶器を目の当たりにして顔を引きつらせる、哀れな少女の表情を克明にとらえていた。
「どうした? 大人のペニスを見るのは初めてか? まぁ父親と一緒に風呂に入っても、娘の裸で勃起するわけがないからな」
 鮫島が亀頭をスクール水着に押し当てる。
「む、無理です……そんな大きなもの、入りません……」
 顔面蒼白となった姫乃は、無様にも命乞いを始めた。礼門の肉棒に貫かれた時でさえ耐え難い痛みに苦しんだというのに、その数倍のボリュームはあろうかという肉の剣を突き立てられれば、誰だって白旗を上げるのは当然だろう。
「俺がどうして今まで大人しくしていたと思う? 白鷺の処女を奪おうとしたって、こいつを挿入するのは物理的に不可能だからさ。やるなら、お前を何日も監禁して、少しずつ穴を拡張していくしかない。それじゃリスクが高すぎるからな」
「最初から……クラスの男子たちを利用するつもりで……」
「そういう事だ。礼門の馬鹿がまず穴を貫通させ、雑魚男子どもが毎日使って少しずつ膣穴をほぐしていく。お陰で準備運動はバッチリだ。これでようやく、俺が白鷺にペニスをぶち込めるってわけさ」
 鮫島は身体を起こすと、姫乃の股間に手を伸ばした。スクール水着の股座を掴み、強引に引っ張って全てを露わにする。眼鏡のカメラを通して、既に愛液で性器が濡れそぼっているのが克明に映し出された。
 同じく先端から先走り液を垂らしている鮫島のペニス。女性器と男性器が触れ合い、互いの粘液を交換していく。一度亀頭が離れると、両者の間に透明な糸が幾重にも伸びていった。
「ほらどうした? 子供だと思って甘く見ていると、痛い目を見るんじゃなかったのか? どうした、俺の股間を蹴ってみろよ?」
 いたぶるように、鮫島は自分の肉棒で何度も姫乃の花弁を撫で、表面の粘膜をかき回した。抵抗できない事は分かっているのだ。それなのに、かつて股間を蹴られた復讐とばかりに、鮫島は執拗に姫乃を挑発した。
 そしてついに、彼は右手を自分のペニスに添え、狙いを定め始める。
 亀頭の先端が僅かに膣穴に身を埋めた。
 ――とうとう、白鷺姫乃が悪徳教師にその身を穢される瞬間がやって来たのだ。
「手も足も出ないようだな?」
 左手を姫乃の腰に添え、勝ち誇ったように叫ぶ。
「……大人を甘く見ていると、痛い目を見るぞ、白鷺」
 刹那、腰を力いっぱい突き出していった。ズブズブとめり込んでいく肉塊。たちまち、姫乃の可憐な膣穴が、引き裂かれんばかりに拡張されていく。
「いぎぃぃぃっ!」
 スクリーンにアップで映る姫乃の表情。目を白黒させ、歯を食いしばり、脂汗を垂らしながら必死に痛みに耐えている。逆に余裕綽々なのは鮫島だ。無様に悲鳴を上げる美少女を見下ろし、最高の征服欲に酔いしれていた。
「ハッハッハ、どうした白鷺? まだ半分も入っちゃいないぞ?」
「いだ、いだいぃぃっ!」
 彼女の狂乱ぶりは、映像を見ているクラスメイトたちさえドン引きさせるほどだった。当然の反応だろう。二人の体格差と性器のサイズ差は、このセックスが倫理的のみならず物理的にさえ、本来許されざるものだと如実に訴えているのだから。
「うわっ、エグ……」
「姫乃ちゃん、可哀想……」
「あんなの絶対入らねぇだろ」
 見慣れた同級生同士のセックスとはまるで違う、大人と子供のセックス。女子の中にはショックのあまり目を背けている者さえいる程だ。もちろんそんな彼らの反応など関係なく、スクリーンの中の陵辱劇は淡々と進行していく。
「やめでぇ! ゆるぢ、でぇ!」
 耳を覆わんばかりの姫乃の絶叫が、スピーカーから響き渡った。
「同級生の子供ちんちんを咥えたくらいで大人の女にでもなったつもりでいたか? よく覚えておけ、これが本当のセックスだ。これが本当の処女喪失。本当の破瓜の痛みってやつだよ!」
 あまりの苦痛に長い髪を振り乱し、彼女が錯乱気味にのた打ち回る。だがこの瞬間を待ち望んだ鮫島が腰を止める事は無い。一切の慈悲もなく、どんどん肉の杭で姫乃を貫いていった。
「俺は四年以上も待ち続けたんだ。お前を生まれたままの姿にひん剥き、穴という穴を犯し、身体の奥底に白濁液を注ぎ込む事をな! 一生消えないような雄の刻印を、徹底的に刻み込んでやる!」
 半狂乱に苦しむ姫乃の身体を、鮫島が覆い隠すように抱きつく。カメラは二人の真後ろ……ちょうど、ペニスで蹂躙される結合部をアップで映し始めた。こんな場所にまであらかじめカメラを設置していたのか。
「見せてもらうぞ……芯の強い、潔癖にして利発な白鷺姫乃が、どんな表情で泣き、喚き、痴態を晒して屈服するのか。お前の心と身体を征服できたなら、俺はもうどうなっても良いんだからな!」
 姫乃の下半身を串刺しにしていたペニスの動きが、ついに止まった。まだ肉棒には余裕がある。だがそこまでしか身体の中に入るスペースが無いのだ。奥の奥まで貫かれた証であった。
「おっと、ここで行き止まりか。どうだ白鷺? 子宮の入り口まで犯された気分は? 郷里の素チンじゃここまでは辿り着けなかっただろう? ついに身体の奥の奥まで、完全に征服されてしまったな。これでお前の身体は俺のものだ」
 鮫島は勝ち誇るが、想像を絶する痛みに翻弄された姫乃はもはや気絶寸前だった。シーツを握り締め、歯をガチガチ鳴らしながら、ひたすら苦痛に耐えている。悪徳教師の声など聞こえていないようだった。
「何だ、この程度で情けない。所詮は白鷺姫乃もションベン臭いガキだな」
 もちろん姫乃をいたわる気持ちなど鮫島には微塵もない。彼はオナホで自慰するかの如く、乱暴に抽送を開始した。ペニスがピストンを繰り返す度、粘膜が擦れ、引き裂かれるような痛みが姫乃の脳天を貫く。同時に、鮫島は最高の快楽を楽しめるのだ。
「俺のモノに慣れれば、もう同級生の子供ちんちんなんかじゃ満足できなくなるぞ。明日の夕方までにはガバガバにしてやるから、覚悟しておけ」
 そう言って彼はスクール水着の肩紐をはだけさせた。汗まみれになったあどけない膨らみが露わになる。二つの乳首は痛々しい程に尖っていた。
 鮫島はおっぱいを乱暴に鷲掴みにし、乳首を指で撥ね、無造作に舌でついばんだ。成長期の乳房をそんな風に扱われれば、かなりの苦痛が伴うはずだが、もはや茫然自失の姫乃はほとんど反応を見せなかった。
「やっと一つになれた記念に、先生とキスしような、白鷺」
 鮫島が彼女の頭を乱暴に押さえつけ、腰を屈めて唇を近づけていく。カメラは横からのアングルでその瞬間を克明に記録していった。半開きの可憐な唇が、下劣な中年男の舌で征服される。唇と唇とが、無残にも重ね合って溶け合っていく。鮫島が姫乃の唾液を吸い、姫乃が鮫島の唾液を嚥下していった。もはや何の抵抗もできず、姫乃は人形のように蹂躙される一方である。
 あらかじめ用意してあったのだろう、鮫島は枕の下から鋏を取り出し、スクール水着の股布を躊躇なく切断した。下半身を覆っていた生地が弾け飛び、生えかけの陰毛が露わになる。
「とりあえず一発出しておくぞ。俺の精液をたっぷり受け取れ」
 障害物が無くなった事で鮫島のピストンはさらに激しさを増した。麻痺状態に陥ったのか、姫乃は悲鳴を上げる事さえ無くなり、濁った瞳でされるがままになっている。彼女に覆いかぶさったまま、鮫島は激しく腰を振り、スパートをかけていった。
「ひひひひ……ついに! ついに白鷺姫乃をモノにしてやったぞ! ざまぁみろ!」
 瞬間。
 鮫島の腰が一際強く打ち付けられ、そしてその動きを止めた。
 ほんの数秒……しかし、間違いなく生涯最高の快楽を味わい、鮫島が最後の一滴まで精液を絞り出していく。その全ては、姫乃の可憐な膣内に注ぎ込まれていた。既に一度、礼門の精液で穢されたとはいえ、雑魚男子とのセックスではコンドームを使用していた。鮫島は、姫乃の聖域を征服した二人目の男という事になる。まるで礼門が穢した痕跡を塗り潰すかのように、圧倒的な量の白濁液が、姫乃の膣内に満たされていった。
「……いやぁ出した出した。最高の締まり具合だったよ」
 満足気に独り言ちて、鮫島が身体を起こす。眼鏡カメラの視点になると、彼に押し潰されていた姫乃が既に虫の息である事がよく分かった。両手を肘から万歳のように上げ、脇を締め、汗と涎と鼻水で顔をドロドロにしている。みぞおちまで水着を脱がされたために、おっぱいも丸出しになっていた。
 そして鮫島の視線が下半身の結合部に向けられる。
 未だ硬度を失っていないペニスがゆっくり引き抜かれると……ぽっかり空いた膣穴から、ドロリと白濁液が零れ落ちていった。あまりに拡張されたために膣穴は元に戻らず、撮影用ライトに照らされた性器は奥の奥まで、そのピンクの粘膜を露わにしている。粘膜が擦り切れたのだろうか、精液に微かに血が滲んで、肛門まで垂れていくのが分かった。
 鮫島がベッドの上に立つと、カメラは彼女の全身を捉える。がに股に開いた足は、まるで潰れたカエルだ。とても年頃の女の子が人前で見せていいポーズとは思えなかった。
「まだまだこんなもんじゃないぞ、白鷺。これからたっぷり可愛がってやるからな。何せ、時間はいくらでもあるんだ」
 鮫島の言う通りである。
 画面に表示されるデジタル数字は10:54。死の三十時間が始まって、まだ三十分も経ってはいなかった。
 姫乃の地獄は始まったばかりなのだ。




 カメラが切り替わると、時間は10:58まで進んでいた。ベッドに腰かけた鮫島の前に、呆然自失となった姫乃が立っている。既にスクール水着は脱がされ、すっぽんぽんの丸裸で、直立不動の姿勢を取らされていた。中出しされた精液が内腿をゆっくりと伝わり落ちていく。
「どうだ? 初めての大人とのセックスは?」
 勝ち誇ったように鮫島が問うが、姫乃は立っているのがやっとの有様だった。むしろ下半身の激痛のために、気絶せずにいられるくらいである。「別に……」と呟くだけで精一杯のようだ。
「別に、じゃないだろう。気持ちよかったか? それとも痛かったか?」
 分かり切った質問をわざわざぶつけてくる。姫乃は諦めて降参した。
「痛かった……です」
「ふん。今に気持ち良くて病みつきになるさ」
 そう言うと、自分の股間を指さし、
「お前を大人の女にしてやったこいつを、しゃぶって綺麗にしろ。尿道に残った精液も吸い出すんだぞ」
 と命令する。いわゆるお掃除フェラというやつだ。礼門も姫乃を凌辱した際、同じ事をやらせていた。自分の性器を蹂躙した憎いペニスの掃除をさせる事で、姫乃に徹底的な敗北感を味わわせてやろうという悪意の表れだろう。
「……はい」
 性奴隷となった姫乃に拒否権などあるはずもなく、彼女は大人しく膝をつき、鮫島の毛むくじゃらの股間に顔を埋めていった。舌を出して、血と精液と愛液で濡れそぼった肉棒に唾液をまぶしていく。その肉の凶器は未だに硬度を失っていなかった。
 桁違いの太さのペニスを清めるため、はしたなく大口を開け、姫乃は懸命に亀頭を吞み込んでいく。必死の形相で口をすぼめて、精液を吸い出す様は滑稽ですらあった。眼鏡カメラはそんな姫乃の落ちぶれた様を克明に記録している。
「もういいぞ。顔を上げろ」
 指示を受け、姫乃がペニスから唇を離す。幾重にも糸を引いた粘液が彼女の顎を汚していった。鮫島はベッドの下に手を伸ばすと、そこから赤い首輪を引っ張り出す。リードが金属の鎖になった、かなり本格的なものだ。
「奴隷は奴隷らしくしないとな」
 自然教室の時にも、桃香が戦死した姫乃に使おうと、首輪を用意していた。結局敗北したのは桃香の方だったので、皮肉にも自分がその首輪を使う羽目になったのだが……今度こそ本当に、白鷺姫乃が赤い首輪をつけられる番だった。
 本革のベルトが細い首に巻き付けられ、金具で留められていく。しかもご丁寧に自分で取り外せないように、南京錠でロックまでかけられてしまった。小さな鍵を掌で転がし、鮫島が得意げに嗤う。
「もし俺がこの鍵を無くしたら、白鷺はずっと首輪をつけたままだな。どうだ? 月曜日にその格好で登校してみるか? その前にご両親がびっくりするだろうなぁ。お泊り会から帰ってきたら、愛娘が赤い首輪をつけてるんだから」
 本気で言っているわけではないだろう。もし本当にそんな事をすれば、あっという間に男子女子戦争の秘密が知れ渡ってしまう。現に姫乃は月曜日、ちゃんと首輪を外して登校していたではないか。
 それでも鮫島が言うと、本当にそんな馬鹿げたことをしかねない……そんな危うさが感じられた。失うものが何もない人間は、何をしでかすか全く予想がつかないのだ。
「首輪の具合を確かめてみるか。白鷺、お前は今からこの家では四つん這いで行動しろ。俺が命令しない限り、二本足で歩くんじゃないぞ」
「……はい」
 ベッドから立ち上がった鮫島は、自分の教え子であるはずの五年生の少女を、鎖で部屋中引き回した。姫乃は飼い犬のように、大人しく四つん這いで後についていく。ベッドの周りを一周し、ダイニングに移動して、再び寝室に戻っていった。
 それはまるで、桃香が自然教室の時に強制された深夜の散歩を彷彿とさせる。
「上出来だ。もう一つ、先生からプレゼントをしてやろう」
 鮫島はクローゼットを開け、中から何やら赤い物体を取り出してきた。部屋を俯瞰する映像からでは最初何かよく分からなかったが……。よく見るとそれは、ランドセルであった。古びた赤いランドセルを、姫乃の脇に置いたのだ。
「白鷺のランドセルは確かすみれ色だったな。それも悪くないが、先生はやっぱり女子は赤いランドセルを使うべきだと思うんだ。ぜひ白鷺には、裸で赤いランドセルを背負ってもらいたくてな。中に通学帽も入っている。立ち上がって身に着けてみろ」
 恐らくネットのオークションか何かで入手したのだろう。誰が使ったかもわからないランドセルや通学帽を、素肌に直接身に着けるのは抵抗があるはずだった。しかし姫乃はヨロヨロと立ち上がり、言われるままに帽子を被り、ランドセルを背負っていった。リアリティを出すためか、わざわざ防犯ブザーまで付けられている。
 眼鏡カメラが正面から姫乃を撮影する。素っ裸のオールヌードに黄色いチューリップハットの通学帽、そして赤い首輪と赤いランドセルだけを身にまとった少女。首輪は新品だが、通学帽やランドセルはちゃんと五年くらい使い込んだ痕跡があった。その質感の違いがストーリーを感じさせる。まるで下校中に誘拐された少女が、素っ裸に引ん剝かれた上に首輪を嵌められ、さっきまで背負っていたランドセルをもう一度身につけさせられたような……異常な背徳感がそこにはあった。
「うんうん、やっぱり女子のランドセルは赤だよな。その場でゆっくり一周してみろ」
「はい」
 防犯ブザーを揺らしながら、姫乃が横を向き、そして後ろを向いていく。黒髪は背中とランドセルの間に挟まっているので、背後から見るとランドセルの赤が鮮烈に目立っていた。可愛らしい小ぶりな白いお尻との対比が美しい。
 もう一度正面を向く。桜色の乳首と赤い肩ベルトが華やかに競演し、股間の陰毛が風にそよいだ。持ち主がすっぽんぽんに引ん剝かれているのに、ピンも抜かれずに佇んでいる防犯ブザーが、滑稽なアクセサリーになっていた。それもまた、防犯ブザーさえあれば安心と思っていた五年生が、そんな物何の役にも立たなかったと思い知らされているようで、実にゾクゾクする。
「よく似合うぞ白鷺。うちの学校では通学帽は使っていないが、美少女は何を着ても様になるな」
「褒められても……嬉しくありませんが」
「ふん、まだそんな生意気な口を利けるとはな。まぁいい。少し早いが、昼飯にするか」
 画面隅のデジタル数字を見ると、11:15とあった。姫乃が驚いたような表情を見せる。
「どうした? 昼飯を食うのがそんなに意外かね?」
「いえ……」
「そうそう、その前にもう一つ、やっておくことがあるんだった。白鷺、ベッドに手をついて足を肩幅に開け」
「何を……するんですか?」
「お前に座薬を入れておこうと思ってな」
 座薬。
 それは座って飲む薬ではなく、肛門に直接挿入する薬の事だ。解熱や鎮痛薬、吐き気止め、下剤、痔の治療薬などで用いられる。鮫島がわざわざ鎮痛薬や吐き気止めを姫乃に与えようとするはずがない。その目的は言うまでもなく、下剤を使うためだろう。
 冷蔵庫から鮫島が下剤を一つ、取り出してくる。座薬は直腸内の体温で溶けるようになっているため、冷蔵庫で保管する必要があった。
「こいつは炭酸水素ナトリウムの下剤だ。直腸の中で徐々に炭酸ガスを発生して、ぜん動運動を促して生理的な排便作用を生じさせる。浣腸でもいいが、どうしても液状の便になってしまうからな。そっちは自然教室の時に見せてもらったし、今度はより自然な、普段通りのウンコ姿を見せてもらおう」
 三十時間も監禁されるなら、当然排泄も鮫島の支配下に置かれることになる。おしっこやウンチを垂れ流す姿を見られるのは、姫乃にとっても想定内だろうが……こんなに早く、しかも大きい方を見せる羽目になるとは。彼女も予想していなかったらしい。
「排便はストレスですぐにリズムが乱れるからな。俺に監禁される事が分かっている以上、そのストレスで今朝はウンコしていないんじゃないか? いやひょっとすると昨日から出ていないか?」
 中出し陵辱のショックも醒めやらぬ姫乃は、思わず狼狽が顔に浮かんでしまっていた。
「図星か。なら丁度いい。早く尻を向けるんだ」
 鮫島は三十時間に渡る監禁調教計画を、ずっと以前から綿密に計算し、何度もシミュレーションし、完璧に準備を整えていたようだ。さしもの白鷺姫乃も、この狂気染みた熱意の前には翻弄されるしかない。彼女は諦めてベッドに手を付き、言われたように尻を突き出して足を肩幅に開いていった。鮫島がその背後に回り込む。
 眼鏡のカメラが冷徹に捉える……小ぶりで真っ白な臀部。ライトに照らされた谷間は一切の影も落とさず、すみれ色の肛門の皺を浮かび上がらせていた。その下の花弁からは未だに白濁液が滴り落ちている。
 鮫島の左手が、さらに肛門を左右に広げる。直腸の粘膜までもが残酷に暴かれていった。
「尻の穴の力を抜きなさい」
 言いながら、彼は右手でつまんだ座薬を姫乃の肛門にあてがう。
「んぁ……」
 ピストルの弾のような異物が、ピンク色の粘膜を押し広げ、ズブリと埋め込まれていった。さらに鮫島は容赦なく指を突き刺していく。座薬が抜け落ちないように、直腸の奥で溶けて早く効果が出るように、そして何より姫乃を辱めるために……人差し指を肛門にねじ込んでいくのだ。
「――これでよし。後は十五分から三十分で便意が出てくるだろう」
 根本まで指を突き刺した後、ようやく彼は姫乃の肛門から手を引き抜いていった。その人差し指が、眼鏡カメラの眼前にまで近づいてくる。茶色い便塊がわずかに纏わり付いていた。
「おやおや。だいぶ腹の中でウンコが溜まっているみたいだな。先生の指が汚れてしまったぞ?」
「いやぁ……」
「白鷺姫乃といえども、ウンコの匂いはやっぱり臭いなぁ」
 後ろを向いている姫乃の耳が真っ赤に染まるのがカメラ越しにもよく分かった。自分のウンチの匂いを嗅がれるなど、年頃の女の子にとっては耐え難い屈辱だろう。それが分かっているからこそ、鮫島は殊更にクンクンと鼻を鳴らすのだ。思う存分人差し指の悪臭を堪能した後で、「さぁ飯にするか」と、彼は事も無げに言い放った。
 貴重な三十時間を一秒でも無駄にしたくない。
 そう思っているのか、鮫島の用意した昼食は簡素なインスタント食品ばかりだった。
 冷凍のチャーハンに、カップラーメン。それと菓子パンが一つだけ。∪字型に加工された、例の奇妙な食卓の上に並べられている。あちこちにカメラまで仕掛けられているから、かなり窮屈そうだった。しかも何故か一人前しか昼食は用意されていなかった。箸やレンゲも一膳しか見当たらない。
 その食卓に座るのは、もちろん鮫島である。
 姫乃は素っ裸にチューリップハットとランドセル姿のまま、首輪の鎖を食卓のフックに固定され、彼の足元で四つん這いのまま放置されていた。
「腹が減っては調教もできぬと言うからな。頂くとするか」
 まるで姫乃の姿など視界に入っていないかのように、鮫島はトランクス一枚のまま、一人で食事を摂り始める。時刻は11:39。昼食には少し早いが、だからといって放置されて横で食事をされては心中穏やかではいられないだろう。映像では分からないけれども、美味しそうな匂いは確実に彼女の食欲を刺激しているはずだった。
「どうして食事が一人分しか無いか、分かるか?」
 ラーメンを啜りながら鮫島が問う。
「……私を極限状態に追い込むためですね」
 姫乃は極めて冷静に答えた。
「例えば、カルト宗教団体などでは、信者をマインドコントロールするために極限状態に陥らせるのは定番のやり口です。人間をギリギリの状況に追い込む最も簡単な手法は、睡眠を取らせない事と、食事を与えない事。だから昼食を摂ろうと鮫島先生が言い出した時は意外な気がしました。むしろ一人分しか食事が無い事で納得した気分です」
 さっきの中出し強姦から一時間弱ほど経過しているためか、彼女の口調には落ち着きが戻っていた。なるほど、単に暴力的なセックス程度では白鷺姫乃の魂を破壊する事など到底不可能。だからこそ飢餓状態に追い込もうという企みなのか。
「さすが白鷺だ。しかし先生はそこまで鬼じゃないぞ? ちゃんとお前にも食事を摂らせてやるさ」
 そう言うと、鮫島はカップラーメンに入っていた、申し訳程度の薄いチャーシューを箸でつまんだ。そのまま姫乃の眼前まで運び、口元へと運んでいく。彼と同じものを分け合って食べろというのか。おぞましい発想に身震いしながらも、渋々姫乃は口を開けた。どうせもう唇も重ねた間柄だ。食事を支配されるなら、諦めて早々に屈するしか無いだろう。
 けれども。
 鮫島の悪意は彼女の予想を遥かに超えていた。姫乃がチャーシューを口に含もうと顎を伸ばした瞬間、それは箸の間を滑り落ち、フローリングの床へと儚く落下していったのだ。べちゃりと音を立ててチャーシューが跳ねる様子が、カメラ越しにもはっきりと確認できた。
 困惑する姫乃が鮫島を見上げ、そして表情を強張らせる。うっかり落としたわけではない……という事か?
「何だ白鷺? 先生に食べさせてもらうつもりだったのか? 自分の立場が分かっていないようだな。お前は俺の性奴隷なんだよ。お前の餌なんざ床の上で十分だ」
 一瞬、画面が乱れる。鮫島が伊達眼鏡を外し、床の上に置いたようだ。画面が落ち着くと、カメラの目の前にチャーシューが横たわり、床面スレスレのアングルで全裸の姫乃の姿が捉えられていた。
「ほらどうした、遠慮せずに食え。もちろん手なんか使うなよ。お前は犬畜生にも劣る存在なんだ。口だけで食わないと後でお仕置きだからな」
 もはや人間としての尊厳すら与えない……そんな冷徹な意思がありありと窺える言動である。対する姫乃が見せた躊躇はほんの一瞬だった。唇を噛みしめると、腰をかがめ、這いつくばるようにして口を伸ばしていく。眼鏡カメラはその様子をアップで正確に撮影していた。端正な顔立ちの美少女が、床に落ちたチャーシューを歯でつまみ上げ、口に含み、咀嚼して嚥下していく一部始終を。長い髪は乱れ、口元は油で汚れ、頬は埃にまみれていた。
「美味いか?」
「……はい」
「ならもっとくれてやろう。感謝しろよ?」
 鮫島はさらにラーメンの麺をつまみ上げ、同じ場所に落下させる。もはや姫乃に選択権は無かった。同じように口で麺を咥え、顔を上げてから啜り込む。長いラーメンを口だけで引っ張り上げる姫乃の姿は、無惨としか言いようがなかった。
 次いで投下されるのは冷凍のチャーハン。あちこちに散らばった米粒と具材を、丹念に口だけでついばんでいく。口の周りにそれらが貼り付いても、拭うことさえできなかった。まさに犬畜生以下だ。
 最後の菓子パンに至っては、鮫島は小さく千切ったそれを、部屋の隅めがけて放り投げる有様だった。鎖のリードを机から外し、事も無げに言い放つ。
「そら、どうした。拾ってこい。ここまで拾ってきたら食ってもいいぞ」
 遠くに木の棒を投げて、飼い犬に拾ってくるよう命令する口調そのものだった。姫乃はもう躊躇う事もない。四つん這いになってフローリングの上を駆け、パンのかけらを口で咥えると、再び鮫島の元へと駆け寄ってくる。彼の顔に戻された眼鏡カメラを通して、その目も覆いたくなるような醜態がスクリーンに映し出されていた。
「なかなか賢い犬だな。……食え」
 黄色いチューリップハットと赤いランドセル、そして赤い首輪だけを身に着けた裸の犬は、飼い主の許可を得てパンのかけらを飲み込んでいった。
 この屈辱的な昼食は、実に十五分もの時間をかけて行われた。
 といっても食事の大半は鮫島が平らげてしまい、姫乃が口にできた食糧はほんの僅か……三口か四口で食べ終わってしまう程度でしかなかった。これでは満腹どころか、かえって空腹が増してしまうだろう。いや、それこそが鮫島の狙いだったのか?
 視聴覚室でスクリーンを見ている鮫島が、得意げに解説を挟んでくる。
「――人間は食事を一切取らないと、飢餓状態と認識して自動的に空腹を抑えるようになるんだ。ほら、よく聞くだろう? 船が沈没してボートで漂流する羽目になったら、たとえ非常食があっても、まずは二十四時間飲まず食わずで身体を飢餓状態に慣れさせないといけないってな」
 いつ助けが来るかわからない状態で、普段通りに食事を摂れば、非常食などあっという間に無くなってしまう。だが飢餓状態なら身体は蓄えた脂肪を分解してエネルギーを維持しようとするのだ。そのため普段より遥かに少ない食糧でも、空腹を感じることは無くなる。
「栄養状態の良い人間なら、数日は飲まず食わずでも生きていけるさ。たかが三十時間程度なら、絶食すればそれほど苦痛は感じない」
 姫乃が指摘した、カルト宗教団体などの洗脳で食事を与えない手法は、いつまでその状態が続くか分からないから効果があるとも言える。今回の監禁は、三十時間で全てが終わると最初から分かっていた。三十時間さえ我慢すれば、また確実に普段の生活に戻る事ができる。
 このような場合、食事を一切与えない事はむしろ逆効果だろう。早々に身体が飢餓状態に順応してしまい、空腹を感じなくなってしまうのだから。
「俺が姫乃に少しだけ食事を与えたのはそのためだ。身体を飢餓状態にさせず、かといって満腹にもさせない。最もストレスの溜まる状態に追い込むためにな。犬の真似事をさせたのは、それに比べれば単なる余興だ」
 そしてもう一つの目的は、直腸蠕動運動の促進。
 肛門近くの直腸に便が送られると、直腸の内圧が上がって便意が起こる。すると排便の反射が起きて肛門の内側にある筋肉が緩むのだ。これによって直腸の蠕動運動が起こり、今度は肛門の外側にある筋肉が緩む。排便は、こうやって腹圧が自然と高まる事によって発生するメカニズムになっていた。
 食事をする事、腹筋を使う軽い運動をする事、水分を取る事……これらは全て直腸蠕動運動を促進させる効果があった。下剤の効果に加えて、食事を摂らせて犬のような運動をさせる事で、鮫島はより確実に、より早く、姫乃にウンコさせようと企んだのだろう。
「どうだ? そろそろ腹の具合が良くなってきたんじゃないか?」
 時刻は12:03。下剤が効いてくる頃合いだった。
 スクリーンの中で響く、勝ち誇ったような鮫島の声に、姫乃は黙って首肯する。
「このままだとフローリングの上に派手にぶち撒ける事になるだろうな」
「お……お願いです。トイレに行かせて下さい」
 普段通りのウンコ姿を見せてもらう、とは言っていたが、鮫島はトイレを使わせるとは言っていない。このままダイニングでお漏らししろ……そんな残酷な命令をする可能性も大いにあるのだ。便意と恐怖で姫乃は青ざめていた。
「ハッハッハ、安心しろ白鷺。俺だって自分の部屋をウンコまみれにされたくはないさ」
 言いながら、鮫島はキッチンペーパーでフローリングの汚れを拭い始める。さっきチャーシューやラーメンを落とした所だ。さすがに最低限、人が住める環境に掃除しておくくらいの良識はあるらしい。
「だったら……」
「まぁそう焦るな」
 次いで鮫島は、新しいキッチンペーパーで、姫乃の口元も拭っていった。まるで幼児のように汚れていた彼女の口元は、油や埃、米粒が清められ、元の清廉な顔を取り戻していく。
 彼にも一欠片の良心が存在したのだろうか?
 いやそんな事はない。
 鮫島は単に、次の陵辱のステップのために、姫乃の外見をリセットしたに過ぎないのだ。人前でウンチをするという最低最悪の恥辱を与えるには、姫乃の外見はあくまで見目麗しい美少女でなければならない。その証拠に、顔を隠しかねないチューリップハットや、排便の邪魔になりそうなランドセルも、彼は姫乃から取り上げていった。赤い首輪さえも一時的に解錠し、取り除いていく。
 そして最後の止めとばかりに、彼は残酷にも言い放つのだ。
「――トイレはもう用意してある」
 ダイニングの、∪の字に切り取られた不思議なテーブル。
 さっきまで鮫島が食卓にしていたそれを、トントンと指で小突きながら、彼は付け加えた。
「白鷺姫乃……。お前のトイレは、ここだ」




 物の形とは不思議なものだ。
 テーブルをあくまでテーブルとして認識した場合、意味不明な形状をしていたとしても、それがトイレだと認識を改変した途端、意味不明だった形状が全て明確な意味を持って認識されていく。ダイニングのテーブルは、テーブルではなくトイレなのだ。白鷺姫乃を公開処刑するための、恥辱の断頭台だったのだ。
 そう考えれば、なぜ鮫島が電動ノコギリでこんな加工をしたのか。なぜあちこちにカメラが設置されていたのか。全ての疑問は一瞬にして氷解されていった。
 時刻は12:09。
 カメラが切り替わると、既に姫乃は全裸のままテーブルの上に立っていた。
 ∪の字に切り取られた、その中央のスペースをまたぐように、両足を肩幅に開いて直立不動している。テーブルの上の食器は綺麗に片付けられ、代わりに大きな洗面器が、テーブルの下に設置されていた。そう、姫乃の身体の、ちょうど真下の位置である。つまりこのまま彼女が膝を折って排便の姿勢を取り、肛門からウンチをひり出せば、テーブルの真ん中に開けられたスペースを通って便塊が落下。真下の洗面器にダイビングするというシステムだった。紛う事なき『トイレ』である。
 さらに鮫島は、姫乃の周囲のあちこちにカメラを設置し、撮影用の照明までセッティングしていた。保健室のデータから、身長や座高などの数値は把握できる。それでも細かな微調整は必要になってくるため、彼は姫乃に何度もしゃがませたり立たせたりして、各カメラの高さや角度をミリ単位で調節していた。
 全ては、白鷺姫乃の排便の一部始終を記録するため。
 美少女の普段通りのウンコ姿を、高画質で永久保存するため。
 その映像をクラスメイト全員に公開して晒し者にするため。
 鮫島は、莫大な費用と手間ひまを掛けて、今日のために『トイレ』の準備を整えてきたのだ。狂気にも似た悪魔の所業であった。
「せ、先生……」
 脂汗を浮かべて、姫乃が苦悶の表情で呟く。
 下剤の効果で便意は最高潮に達してるのだ。それなのに排便が許されず、カメラの調整のために立ったりしゃがんだりしていれば、お腹が苦しくなるのは当然だった。
「も、もう……そろそろ……」
「おう、すまんすまん。つい完璧主義になってしまってな。ウンチがしたいのか?」
 悪徳教師の意地悪な質問にも、戸惑う余裕など一切残っていない。
「はい、ウンチしたいです……ウンチさせて下さい」
「ククク……あの白鷺姫乃がウンチさせて下さい、と言うなんてねぇ。おっと、あんまりからかって漏らされてもかなわんか。いいぞ白鷺。カメラは全て録画状態にしてある。遠慮なくひり出せ」
 最後に彼はトイレットペーパーをテーブルの上に置き、ゴーサインを出した。撮影の邪魔にならないよう、自身も照明の後ろまで退避する。
 こうして絶世の美少女による、汚らしい排便ショーが幕を開けた。
 既に限界だった姫乃は、一瞬の躊躇もなくウンコ座りの姿勢を取る。カメラの映像は、まず部屋全体を俯瞰するアングルで始まった。
「ん……んっ」
 微かな、しかし確実にマイクに拾われてしまう、姫乃の息み声。数秒の後、ブリリッ! という下品な音と共に、茶色い便塊が洗面器へと落下していく。更に数秒経つと、今度はシャァァァ……という放尿音が木霊していった。
 姫乃がウンチをする一部始終が記録されているわけだが、部屋全体を俯瞰しているため、かなりのロングショットだ。細かな所はよく見えなかった。
「なんだコレ? 全身しか映ってないじゃん」
「上からじゃよく分からないし……」
「もっとアップの映像、無いの?」
 スクリーンを見ていた男子たちが口々に文句を漏らしていく。ウンチをしているのが姫乃本人であるとハッキリ分かるのは良いが、肝心の部分がよく見えないのでは不満を覚えるのも当然だった。
 もちろん、鮫島にそんな手抜かりはない。
「まぁ落ち着け。ちゃんと続きはある」
 視聴覚室にいる彼がフォローを入れるのと、スクリーンの映像が切り替わるのは同時だった。
 今度は姫乃の真後ろに設置されたカメラの映像。しかもかなりアップで撮影するためのものだ。最初は何も映っていなかったが、姫乃が腰を下ろした瞬間、画面いっぱいに真っ白いお尻が映し出される。ピンボケ映像は瞬く間に自動補正され、姫乃の肛門にぴったりとピントが合わせられていく。
「ん……んっ」
 彼女が息むと、肛門がめくれ上がり、ピンクの粘膜が露わになった。限界まで便意が高まっていたものの、便塊の先端はかなり水分を吸収されて固くなっているようだ。それが栓の役割をして、なかなか排出されないらしい。ほんの数秒ではあったが、それは永遠にも感じられる時間であった。
 やがて少しずつ少しずつ、茶色いウンチが肛門から顔を見せ始める。
 高解像度の映像は、大便の表面のディティールや色合いすら克明に映し出し、記録していった。水分の少ないウンチは表面がひび割れたようになっており、色は濃い茶色だ。食べ物の繊維のカスまでもはっきりと視認することができた。
 硬い部分さえひり出せば、後は一瞬。
 ブリリッ!
 下品な排便音をかき鳴らし、茶色い便塊が落下していく。とても白鷺姫乃のお腹の中に入っていたとは思えない、極太の一本糞が勢いよく直腸を駆け抜けていった。全てを吐き出した肛門は、一瞬ポッカリと穴を開け、すぐに収縮してピンクの粘膜を引っ込めていく。その皺の周囲に纏わり付いているのは、茶色いウンチカスだ。
 続いて第二弾のウンチが肛門から発射される。最初のウンチに比べれば細く短く、色も柔らかめの黄土色。水分を多く含んだ大便が排泄されたことで、肛門周りの汚れは更に酷くなっていった。
 二度に渡る脱糞でようやく便意が収まったのか、安堵した姫乃は尿道を緩ませ、最後に黄色いおしっこを垂れ流していく。
「本当なら画面を分割して同時に見せたかったんだが、編集の時間が無くてな。まぁ画面が小さくなるのもつまらないだろう?」
 シャァァァ……という放尿音をバックに鮫島が解説を加えた。
「この後面白いものが見られるぞ。男子は特に注目だ」
 面白いもの?
 視聴覚室にいた全員がスクリーンに注目する。
 姫乃のおしっこが止まった後……ヒクヒクと収縮する肛門の向こうから、透明な粘液がダラリと垂れ落ちていったのだ。あれが面白いもの? 後方からのカメラの映像で、肛門の向こうという事は……性器から垂れてきた粘液か? 膣内射精された精液の残り、ではなさそうだが?
「うわ、何だあれ! 鼻水みてぇ!」
「もしかしてあれじゃない? おりものとかいう奴」
「汚ったねぇ、女子ってションベンの時にあんなの垂れ流すのかよ!」
 おりものとは、膣や子宮内部から排出される酸性の分泌物の事だ。下着を付けていればクロッチやおりものシートに吸収されるが、トイレの時に性器から漏れ出すと、そのまま便器の中にに垂れ落ちていく。まさか排便の際におりものが垂れる様子を撮影されてしまうとは、何ともタイミングの悪い話だった。いや鮫島にとっては最高のタイミングだったわけだが。
 本来ならトイレの個室の中で、誰にも見られるはずのない秘密の醜態……その一部始終をつまびらかにされ、永久に記録されてしまうのはどんな気持ちだろうか。虹輝は思わず視聴覚室の前に立つ姫乃に視線を向けてしまった。
 彼女はただじっと、腰の前で手を組み、俯きながら佇んでいるだけだった。羞恥に耐え忍んでいるのか? それとも心を押し殺しているのか? 或いは――?
 ともあれ、スクリーンの映像はお構いなしにどんどん進んでいく。
 次は斜め前方からのアップの映像だった。
 しゃがみ込んだ姫乃の股間がこれでもかと接写で記録されている。生えかけの陰毛。その下に息づくスリットと粘膜の綻び。更にその下でひくつく肛門の皺。普通のトイレ盗撮なら暗くてよく見えないようなアングルでも、眩いほどのライトに照らされた特製の『トイレ』では、憎らしいほどに明るく、ハッキリとその形を隅々まで浮かび上がらせていた。
「ん……んっ」
 三度繰り返される息み声。
 性器の下で収縮していた肛門がぱっくりと広がり、内側の粘膜を露出していく。他人がウンチをする瞬間をここまで克明に観察する機会など、これが最初で最後かもしれない。上から下からライトで照らされ、皮膚の質感から陰毛一本一本の角度まで分かるほどの超高画質映像で記録される、白鷺姫乃のウンチ姿。肛門からひり出される大便は、無慈悲なほどピントが合わされ、目の前で見ているかのように色も形もしっかりと把握する事ができた。
 ブリリッ! という排泄音とともにウンチが落下していく。さっきの後方からの映像は肛門を真横から見たようなアングルだったが、今度は斜め前からの撮影だ。肛門を俯瞰するかの如く、股間全体を視界に収めながら鑑賞できた。排便とタイミングを合わせるように、ぱっくりと開いたピンクの直腸壁が収縮し、すみれ色の窄まりへと閉じていく様子がよく分かる。
 次いで第二弾のウンチが排泄された。肛門の動きに連動して性器も僅かに震え、慎ましやかな陰毛が釣られて揺れ動く。
 そんな陰毛を濡らさんばかりの勢いで、さらにシャァァァ……とおしっこが飛び散る様は圧巻だった。スクリーンから飛び出してこちらに跳ねてきそうな勢いだ。後方からの映像でも映っていたが、おしっこの一部は大陰唇から臀部へと軌跡を描いて流れ、尻たぶで雫となってポタポタと洗面器に落下している。男子のおちんちんのような便利な放尿ツールを持たない女子は、どうしてもお尻の方へおしっこが流れていってしまうのだ。これが女の子の現実だった。
「うわっ、おしっこ垂れてる……」
「幻滅するよなぁ……女子のケツってションベンまみれじゃん」
 男子のヒソヒソ声が、おしっこの水音に混じってあちらこちらから聞こえてくる。たとえ白鷺姫乃ほどの美少女であっても、排泄姿は見るも無様で汚らしい。だからこそ本来は、トイレの個室の中で誰の目にも触れる事なく、秘め事として覆い隠されなければならないのだ。異性はもちろん、同性にすら決して、こんな醜態を見せてはいけなかった。
 放尿が収まった後、姫乃の性器から透明な粘液が垂れ落ちていくと、女子でさえ内緒話を抑えようとしなくなる。
「やだぁ、おりものの出る瞬間なんて初めて見たわ」
「あんな姿まで見られちゃうなんて、最悪よね」
 素っ裸でウンチする惨めな全貌をカメラに記録され、三回も立て続けにリプレイされてしまった。年頃の女の子にとって、これほどの屈辱があろうか。しかも観客は普段同じ教室で勉強しているクラスメイトたちなのだ。
 そもそもなぜ姫乃はこんな恥辱を強いられているのか? それは、五年二組全員が鮫島に脅迫される中、彼女が身を挺して鮫島のおもちゃになる事で、級友たちを守っているからだ。そんな自分たちの立場も忘れて、雑魚男子や雑魚女子たちの一部は、未だに姫乃を蔑み、躊躇なく嘲笑の言葉を浴びせている。理不尽極まる仕打ちであった。
 あまつさえ。
 映像はこれで終わりではないのだ。
 なんと今度は、姫乃の全身を真横から撮影したアングルで、四回目の排便ショーが始まったのである。
「ん……んっ」
 一糸まとわぬ生まれたままの姿で、文字通りウンコ座りをしている白鷺姫乃。長く美しい黒髪を除けば、ほぼ全身肌色の姿で、みっともなく肛門に力を入れている。すると小ぶりで愛らしいお尻から、茶色く細長い物体が、徐々に徐々に姿を見せ始めた。
 股間のアップを十分堪能した後で、再び姫乃の全身図を見ると、間違いなくあの股間の持ち主は白鷺姫乃だったんだな……と否が応でも思い知らされるわけだ。便塊はかなりひり出され、姫乃のお尻からプラプラと垂れている。思わず二度見したくなるような可憐な美少女が、お尻からウンチをぶら下げているのは、滑稽以外の何物でもなかった。二目と見られない醜態だ。
 ブリリッ! とウンチの音をかき鳴らして、茶色い排泄物が画面から消えていく。次いでカメラの前を落下する第二弾の便塊。飛び散るおしっこ。横からだと足に隠れて殆ど見えないが、シャァァァ……という水音だけはしっかりと耳にこびりついていった。当然、おりものも股間から垂れ落ちていったのだろう。
 さすがにこれで排便ショーも終わりか?
 スクリーンを見ていたほとんどの級友たちがそう思った瞬間。
 画面は唐突に姫乃の顔のアップに切り替わった。しゃがみ込んだ彼女の表情を正面から捉えるアングルだ。微かに眉をひそませ、苦悶の色を浮かべている。
「ん……んっ」
 そう、これはウンチしている最中の白鷺姫乃の表情だった。
 鮫島は排便中の姫乃の顔つきがどのように変わっていくのかさえも執拗に記録し、その映像を排便ショーの大トリとして編集したのである。いかに見目麗しい美少女であっても、硬いウンチをひり出す際は、息み顔を晒す。その残酷な事実を、白鷺姫乃という最高の素材を用いて、彼は証明してみせたのだ。
 ケツの穴に力を入れてウンチしようと苦悶する表情。
 年頃の女の子……いや、正常な人間であれば絶対に人前では見せないその表情が、大アップでカメラに記録され、公開処刑される。姫乃の可憐なイメージを粉々に砕くには十分過ぎる映像だった。この映像自体には、姫乃の裸もウンチも一切映っていないというのに。
 そしてブリリッ! というお馴染みの排泄音が響くと、眉間に皺を寄せていた彼女の表情が、一瞬明らかに和らいだ。
 五年生とは思えないほど理知的で大人びた姫乃も、ウンチをひり出せば開放感に安堵の息を漏らす。息み顔からの放心顔。間抜けにも口を半開きにしたその表情からは、理性も教養も一切感じられなかった。ただ単に、溜まっていたウンチをブリブリ排泄して、ホッとしている下品な少女がいるだけだ。
 シャァァァ……。
 そんな放心顔のBGMとして、おしっこを垂れ流す品のない水音が重なっていった。




 白鷺姫乃の公開脱糞ショーは、こうして幕を閉じた。
 いや正確には、前半が終わったと言うべきか。鮫島は言っていたではないか。普段通りのウンコ姿を見せてもらおう、と。
 普段通りの排泄を見せるのであれば、ウンチをしてお終いではないはずだ。お尻を汚したまま下着を身に着け、服装を整えてトイレから出ていく人などまずいない。肛門から大便をひり出した後、その後始末をしてようやく排泄が終わったと言えるだろう。つまり、トイレットペーパーで尿道口や肛門を拭って、初めて普段通りのウンコ姿が完結するのだ。そのためにわざわざ、鮫島はテーブルの上に……いや『トイレ』の上に、トイレットペーパーを一つ、置いておいたのである。これを使っておしっこやウンチの後始末をする、姫乃の更なる醜態を記録するために。
 もはや鮫島の命令を受けるまでもなく、その意図を察していたのか、スクリーンの中の姫乃は黙ってトイレットペーパーを手に取った。手に巻きつけるように数十センチ引き出し、一度ペーパーを引きちぎる。それからゆっくりと立ち上がっていった。
「この映像を見ても分かる通り、姫乃は普段、トイレットペーパーを使う時は立ち上がるようだな」
 視聴覚室の鮫島が解説を加える。
「座ったまま後始末をする人もいるだろうし、こうやって立っておしっこを拭う人もいる。姫乃の秘密をまた一つ暴く事ができて、先生は満足だよ。洋式トイレを使う時も立って拭くのか?」
 鮫島の不躾な質問にも、スクリーンの横に立つ姫乃は、恥じらいつつ素直に首を縦に振った。彼女はトイレでおしっこをした時、しゃがんだまま……或いは便座に腰掛けたまま後始末をするのではなく、立ち上がってからペーパーを使う派だったのだ。決して他人に知られるはずのない秘密を、またしてもクラスメイト全員の前で公開されてしまった姫乃。今からスクリーンの映像で、ペーパーの具体的な使い方さえも暴かれてしまうとは、さすがに同情を禁じえない。
『トイレ』の上に立ち上がった姫乃は、意外にも足を大きくガニ股に開き、股間を覗き込むようにして性器を拭い始めた。立ち上がって後始末する女性は珍しくないだろうが、ここまで大きくガニ股になるのは少数派かもしれない。確かにこの方が手っ取り早く綺麗に拭えるはずだ。トイレの個室の中なら誰にも見られないのだから、人目を気にせずやりやすい姿勢を取ったほうが良い。いかにも姫乃らしい合理的な行動とも言えた。
 あくまでも、誰にも見られない、という前提があってこその話ではあるが……。
「うわ、姫乃ってああやってションベン拭いてるのか」
「ヤダ、普通あんなに足開かないわよ?」
「さすがにちょっとコレは引くわ……」
 高嶺の花の美少女が、トイレに行く度に実は個室の中でこんなカッコ悪いポーズを取っていた。姫乃のガニ股おしっこ拭いポーズを目に焼き付けながら、できれば知りたくなかった秘密を、級友たちは突きつけられる羽目になった。
 しかも一糸まとわぬすっぽんぽんであるため、スカートや上着で大事な所が隠れることもない。普段通りのウンコ姿と言いながら、鮫島が素っ裸で排便を強要したのは、これが狙いだったのだ。当然性器はトイレットペーパーで隠れるが、それを上下させておしっこを拭う動きや、足の開き具合、みっともなく前かがみになる腰、振動で震える太ももとお尻の筋肉……それらが全て、明るい照明に照らされ、斜め前方のカメラに正確に記録されていった。
 そう、鮫島は姫乃が立ち上がってペーパーを使う場合に備えて、ちゃんと位置を調節したカメラを設置していたのだ。しかも彼女の全身が入るロングショット用と、股間のアップを狙うズーム用の二台。もちろん、しゃがんだままペーパーを使う場合に備えたカメラとは別の物だ。
 姫乃がペーパーを使い終え、足元の洗面器に落下させると、カメラはアップ用に切り替わった。もう一度、おしっこの後始末が繰り返し映し出される。ペーパーを押し付けられて形が歪む陰唇や、毛先の向きを変える陰毛の一本一本までもが、スクリーンからはみ出すほどの接写で大公開されていった。
 おしっこの後始末が終われば、今度はウンチの後始末だ。
 姫乃は再びペーパーを手に取った。
「若い女性の中には、手が汚れそうとか何とか言って、一回拭くだけなのに何メートルもペーパーを巻き取る連中もいるらしいな。その点、姫乃は節度を持った使い方で大変よろしい。地球に優しいウンコの拭き方だ」
 視聴覚室で、小馬鹿にした褒め言葉をかける鮫島。とはいえ映像の中の姫乃に聞こえるはずもない。カメラが再びロングショットに切り替わる中、彼女は腰を回して尻の中央の谷間、肛門の窄まりへとトイレットペーパーを押し当てていった。前かがみの姿勢から一転、今度はのけぞり気味にお尻を拭いていく。
 カメラは前方からの撮影のままなので、肝心な場所はよく見えなかったが、その代わり突き出された股間は陰毛のみならず性器までも丸出しにしていた。カメラがもう一度アップに戻ると、それが更によく分かる。
 腰を突き出した格好のため、画面の左端ギリギリになってしまったものの、生えかけの陰毛が鮮明に映し出されていた。その若草の茂みに彩られた性器は、ついさっきペーパーで拭われたにもかかわらず、もう湿り気を帯びてライトの光を反射している。おしっことは別の液体で濡れているのだろう。姫乃が肛門を拭く度、陰唇が歪み陰毛がそよいだ。
 前方からの映像をロングとアップで執拗に記録した後、今度は後方に設置されたカメラの映像にスイッチする。
 姫乃の全身が映るアングルで、斜め後方から撮影されていた。手にしたトイレットペーパーを尻の谷間に押し付け、グリグリと懸命に汚れを拭っていく。生まれたままの姿でケツの穴を拭くというシチュエーションのおかげで、腰のひねりや腕の動き、自分のお尻を肩越しに確認する姫乃の表情までもが克明に捉えられていた。
 一度ペーパーを足元の洗面器に落下させ、姫乃が二枚目のペーパーを手で巻き取り始める。すると彼女は今度は、もう一度前屈みの姿勢になり、左手で自分の尻たぶを自分から開いていった。一枚目のペーパーで尻の谷間全体の汚れを拭ったから、二枚目は肛門周辺のウンチを拭い去る。そのため、肛門をつまびらかにしてペーパーを押し当てる必要があるのだ。姫乃らしい効率的な作業方法である。もちろんこれも、個室の中で誰にも見られない事が前提なのだが……。
 前屈みの姿勢でお尻を突き出し、自ら尻たぶを開陳して肛門を丸出しにした上、ウンチ汚れをペーパーで拭う白鷺姫乃。普段の彼女から、こんな醜態をイメージできる者がいったい何人いるだろう? いやきっと一人もいるまい。それほど、日常の可憐な姿と、今のウンチ拭いの姿にはギャップがあった。
 だがこれが現実なのだ。
 白鷺姫乃ほどの美少女であっても、確実にウンチはしているし、ひり出した後はトイレットペーパーで肛門を掃除しなければならない。彼女はウンチをする度に、トイレの個室の中でこんなみっともない姿勢をとり、丹念にケツの穴を拭いていたのだ。
 そして個室から出た途端、私はウンチなんてしません――みたいなお澄まし顔でクラスメイトたちと顔を合わせていたのである。
 そんな姫乃に対して清純だとか高嶺の花だとか、憧れていた男子たちが馬鹿みたいだった。
 白鷺姫乃もウンチをする。
 白鷺姫乃もケツの穴を拭く。
 白鷺姫乃も、所詮はただの人間である。
 分かりきった事ではあるが、改めてその現実を、男子も女子も、クラスメイトたちは嫌というほど思い知らされた。
 そしてカメラは別の映像に切り替わる。
 固定カメラから、鮫島が手に持ったハンディカメラの映像にスイッチしていた。或いはスマホか何かだろうか? お尻を拭き終わった後、『トイレ』の上で所在無げに佇んでいる姫乃を尻目に、彼はカメラのレンズを洗面器へと向けていった。
 白い洗面器には、ついさっき姫乃がひり出したウンチとおしっこ、それに落下させたトイレットペーパーが収められている。黄色いおしっこの海に横たわる、とぐろを巻いた一本糞。その上から黄土色の細い便塊が折り重なるように配置され、脇には肛門を拭ったペーパーが、付け合わせのように添えられていた。一見すれば創作フランス料理の一皿にも見えるだろうか?
「いやぁ、ブリブリ景気よくひり出したなぁ白鷺」
 楽しくて仕方ないといった口調で、鮫島がカメラを更に近づけていく。明るいライトに照らされた一本糞が、臭いまで漂ってきそうなほど高画質で記録されていった。よく見ると途中から色が変わっているのも観察できる。茶色から黄土色にハッキリ境界線ができていて、二本目のウンチとお腹の中で繋がっていたのがよく分かった。
「可愛い顔して腹の中にこんなものを溜め込んでいたとはなぁ」
「言わないで……下さい」
「カメラじゃ臭いを記録できないのが残念で仕方ないよ。とても白鷺が出したとは思えないほど酷い臭いだからな。きっと白鷺はオナラも臭いんだろう」
 スクリーンいっぱいに映し出された一本糞に、鮫島の嬉しそうな声がオーバーラップする。
 最後に、カメラが切り替わった。
 いや映像は殆ど変わっていない。相変わらず洗面器に入ったウンチを映し出していた。少し角度が変わったくらいだろうか。
 するとカメラが引き始め、洗面器が床の上ではなく、手で持ち上げられているのが分かった。素っ裸の人物が両手で洗面器を支え、お腹の前で保持しているのだ。
 そう、姫乃が自分で自分のウンチ入り洗面器を持ち、カメラに向けていたのである。もちろん鮫島の命令だろう。引きつった笑顔で、彼女が屈辱の言葉を吐く。
「これが……白鷺姫乃のウンチです。清純そうな顔をして、こんな汚くて臭いものをいつもお腹の中に溜め込んでいます。毎日、ぶっといウンチをブリブリひり出しています……」
 おっぱい丸出しの素っ裸で、自分の一本糞を自慢げに見せびらかしながら、笑顔を向ける白鷺姫乃。そんなシュールな映像と共に、彼女の公開脱糞ショーは、今度こそ本当に全て……終わりを告げたのだった。




 時刻は12:19になった。
 映像は、何故か姫乃が服を着ているシーンに切り替わっている。白いブラジャーの上からTシャツを被り、パーカーを着込んでいた。鮫島のアパートへ来る時、最初に彼女が着ていた服だ。下半身はまだ丸裸だったが、まるで三十時間の監禁が終わり、今から帰る支度を整えているかのようだった。
 もちろん監禁はまだ始まったばかりである。
 そして姫乃のこの行動も、鮫島の命令によるものだった。その証拠に、彼は着替える姫乃のすぐ隣で、彼女のスポーツバッグを勝手に漁っている。
「ほう、これが替えの下着と明日着る服か。わざわざ味気ないのを選んで持ってきているようだな」
「人の荷物を……勝手に見ないでもらえますか」
「いいじゃないか? 俺とお前の仲だろう?」
 念の為に入れてあるナプキンまで確認して、鮫島は満足気にバッグから顔を上げた。眼鏡カメラが姫乃の姿を捉える。下半身丸出しのまま、彼女はじっと悪徳教師を見据えていた。
「もう上は着替えましたが……いつまでこうしていればいいんですか? 外に出かけるから服を着ろと言ったのは先生ですよ」
「おお、悪い悪い。探しものが見つかるまでの間に、上だけでも着替えておいてもらおうと思ったんだが……。戻ってきたら白鷺のスポーツバッグが目に留まったんでな。思わず荷物チェックをしてしまったというわけだ」
 外に出かける?
 姫乃の言葉に、視聴覚室の級友たちは色めき立った。
 三十時間監禁すると言うから、てっきりずっと鮫島のアパートに閉じ込めておくものだと、みんな思い込んでいたのだ。
 しかし冷静に考えればおかしな話ではない。暴力的な手段で……例えば、誘拐や拉致などでアパートに連れ込んだ場合なら、外に連れ出すのは自殺行為だった。ほんの一瞬の隙を突かれて逃げられる可能性が高い。けれども鮫島はクラス全員の恥辱の画像を使って姫乃を脅迫し、監禁したのだ。しかも三十時間経てば必ず解放すると約束している。
 ならば外に出たとしても、姫乃が無理に逃げ出す理由はどこにも無かった。そんな事をしなくても、三十時間後には家に帰れるのだし、逆に自分を含めたクラス全員の恥ずかしい写真と個人情報が、報復としてインターネットに流される事になる。百害あって一利なしだ。
 そして姫乃が逃げ出す危険がゼロなら、鮫島が無理にアパートに閉じ込める理由も無くなる。むしろ、人目のある外の空間で羞恥の調教を行えるというメリットの方が大きいと言えた。広い外の世界で、姫乃に生き恥を晒させてやろうと企んでいるに違いない。
「……探しものは見つかったんですか?」
 醒めた視線で鮫島を見据えつつ、姫乃はカーゴパンツを手に取った。こんな状況でも、衣服を身につけられるというのはありがたいようだ。
「ああ、見つかったとも」
 だが鮫島の邪悪な陰謀は、彼女の想像を遥かに超えていた。
 屋外で衆人環視の中、恥辱を与え調教する。それだけに留まらず……いや、それをより効率良く行うため、姫乃が服を着る前に、彼は苛烈な辱めを与えようとしていた。
 鮫島が、手にした『探しもの』を姫乃の鼻先に突きつける。蛍光ピンクの樹脂製で、丸いボールが連なった、縦に細長い不思議な形状をした物体。それが何なのか分からず、彼女は目を瞬かせる。
「何だ、優等生なのにコレを知らないのか? こいつはな、アナルバイブという大人のおもちゃだ」
「アナ……」
 名前から用途が分かったのか、姫乃は顔を真っ赤にして俯いた。
 アナルバイブ。
 つまり、肛門に挿入するためのバイブだ。鮫島が持っているのは、その中でもサイズが小さめの、細く短い物だった。初心者向けと言うべきか。
 いや……。
 それよりも、なぜ今鮫島がアナルバイブを持ち出してきたのかを考えるべきだろう。彼は、今から外に出かけるから服を着ろと、姫乃に命令したのだ。しかも上半身だけ。外出するのになぜかアナルバイブを用意し、下半身はまだ服を着るなと姫乃に命ずる……その意図するものは、一つしか考えられなかった。
 真っ赤になっていた姫乃の顔が、今度は見る見る青褪めていく。
「白鷺、尻をこっちに向けろ。今からコレをお前のケツの穴に入れてやる」
「そのために……下剤を、仕込んだんですか……」
「当然だ。溜め込んでいたウンコをひり出して、やっと綺麗になったからな。アナルバイブでケツ穴を開発しようってわけさ。もちろんバイブを入れたまま、外に出かけるんだぞ? アナルにバイブを突っ込んだまま、先生とラブラブなデートを洒落込もうじゃないか」
 下剤で姫乃にウンチをさせたのは、公開脱糞ショーで生き恥を晒させるため。そしてアナルバイブを挿入するための準備として、肛門の中を綺麗に掃除するため。全ては鮫島の計画通りであった。姫乃は最初から彼の手のひらで踊らされていたのだ。
 時刻は12:22。
 死の三十時間が終わるまで、あと約二十八時間。

――『ここを過ぎて悲しみの街』。

「『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』……って事さ」。
 そんな鮫島の言葉が、スクリーンを見ている全員の脳裏によぎっていた。


 
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