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概要

2037-08-21

『男子女子戦争』は、五年二組の男子と女子が、互いに性的イタズラの応酬を繰り返す物語です。男子が女子を辱める事もあれば、女子が男子を辱める事もあります。一度敗北した児童も、そのまま泣き寝入りする事はなく、仲間と協力して復讐する事もあります。

 敵軍の児童全員の恥ずかしい写真を撮影する事で戦争は終結します。現在、まだ生存中(性的イタズラの被害に遭っていない)児童は、男子軍が四人。女子軍が五人。そこに主人公である男子転校生がやってくるのです。

 果たして主人公はどちらの軍につくのか? そして男子女子戦争の行く末は? ……という小説です。更新は不定期。ロリ・ショタ・羞恥などがメインですが、話が進むにつれ、激しい描写も増えていくかもしれません。スカやショタ同士などもあるかもしれません。読みたい小説がなければ自分で書くしかない、という目的のために作られたブログなので、コメント機能はありません。


2014年1月10日追記

申し訳ありません、恥ずかしながら私、ブログ拍手の機能について全く理解しておりませんでした。
ボタンを押すと数字が増えるのかなーくらいの認識で、初期設定のまま放置していたので、コメントを送信できる仕組みになっているとは夢にも思っていなかったのです。
今頃になって、何件かコメントを頂いている事に気付きました。
大変ありがとうございます、励みになります。

ブログのコメント機能を無効にしたのは、更新頻度が不定期で遅く、コメントを頂いても逆に恐縮だなぁと思ったのが理由です。
特にリクエストなどを頂いて、仮にそれが活用できたとしても、その頃には恐ろしく長い時間が経ってるだろうなと思うと何とも……。

しかし折角ですのでブログ拍手のコメント機能はこのまま残す事にしました。
投稿時に『公開する』を選択すると、こちらからも返信できるようです。
コメント付きのブログ拍手が投稿された場合、当方に連絡が来るようにも設定しました。
もちろん、すぐに返信できるとは限りませんし、リクエストなどにも応えられる保証は全く無いです。
まぁ気が向いた時にでもご利用いただければ幸いです。

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テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

目次

2036-10-27

簡単なあらすじ付きの目次です。
登場人物紹介が『前回までのあらすじ』を兼ねていたのですが、ストーリーが進んで分かりにくくなってきたので、別記事で設けました。
タイトルをクリックすると、当該ページにジャンプします。
ショタ、スカ等のやや特殊なエピソードは、タイトル横に注釈があります。
ただしあくまで目安なので、注釈なしのエピソードにもそのような描写が存在する場合があります。


第一話 『罠に堕ちた男子』 (ショタ)
……転校生の犬飼虹輝は、否応なしに五年二組の男子女子戦争に巻き込まれていく。虹輝を助けるため、士郎が女子軍に辱めを受ける。

第二話 『茶色いクマさんパンツ』 (スカ)
 ……報復のため、男子軍は祢々子に罠を仕掛ける。虹輝たちが立案したその作戦は、男子の目の前で大便をお漏らしさせるという凄惨なものだった。

第三話 『策謀のプールサイド』 (ショタ同士)
 ……プールの授業中、清司は桃香を戦死させようと更衣室に突入する。だがそれは男子軍内部で暗躍していたスパイを利用した、桃香の罠だった。

第四話 『牙剥く担任教師』
 ……作戦のために担任教師を陽動していた姫乃に危機が迫る。一方男子軍は、孤立したみどりを戦死させ、さらに過酷な凌辱を加えるのだった。

第五話 『解剖授業(前編)』 (エロ無し)
 ……桃香は担任教師の鮫島を仲間に引き入れ、二面作戦で姫乃派の瓦解を狙う。姫乃は礼門に襲われ、耶美は解剖授業のモデルにさせられようとしていた。

第六話 『解剖授業(中編)』
 ……脅迫に屈した耶美は、クラスメイトの目の前でストリップを強要される。身体の秘密を徹底的に暴かれ、彼女の矜持は粉々に打ち砕かれていく。

第七話 『解剖授業(後編)』
 ……全てを晒した耶美に対し、桃香は尚も執拗な恥辱刑を加える。果たして彼女の真の目的とは何か。一方、虹輝は過激化する戦争に疑問を感じ始めていた。

第八話 『裏切り者は誰だ?』 (ショタ同士)
 ……祢々子を味方につけるべく、士郎と清司は彼女の前で愛し合う姿を見せる。そして桃香の前に現れた耶美は、意外な申し出をするのだった。

第九話 『明かされる開戦の秘密』 (ややスカ)
 ……美月の協力を取り付けるため、姫乃は男子女子戦争の経緯を話して聞かせる。同じ頃、耶美は桃香の飼い犬として数々の屈辱的な行動をとらされていた。

第十話 『最終決戦・自然教室』 (微エロ)
 ……ついに自然教室が始まる。熾烈な切り崩し工作の応酬。桃香は虹輝を誘惑し、礼門は士郎との共闘を申し出た。そして星空観察の時間、士郎が動く――。

第十一話 『スタンガン争奪戦』 (ショタ?)
 ……夜這い作戦を通して展開する騙し合いの応酬、そしてスタンガンの奪い合い。さらに桃香は悪辣な交換条件を突きつけようとする。

第十二話 『愛する人のために』 
 ……スタンガンと耶美の処女という交換条件は、様々な思惑が交錯する中、破綻する。姫乃のために、耶美はその純潔を犠牲にするのだった。

第十三話 『たった一つの誤算』 (微エロ)
 ……桃香の提案で、姫乃と虹輝を交えた和平会談が開かれる。白鷺姫乃暗殺計画は最終段階。桃香はついに宿敵の少女を追い詰めるが――。

第十四話 『魔女狩り』
 ……逆転負けを喫した桃香は、自らの失言で完全敗北に追い込まれる。傲岸に振る舞っていた彼女に対する、級友たちの仕返しが始まった。

第十五話 『犬と便器と』 (ややスカ)
 ……男子のおしっこまで呑まされ、桃香は便器へと成り下がる。そしてついに迎える破瓜の瞬間。その頃姫乃は最終決戦の準備を進めていた。

第十六話 『深夜の散歩』
 ……男子全員から復讐された桃香は、汚れた身体を清めるため、トイレまで四つん這いで散歩させられる事に。屈辱の犬の首輪が嵌められる。

第十七話 『さよなら、桃香』 (ややスカ)
 ……桃香の身体を清めるためにトイレで待っていたのは、士郎だった。二人の間にあった深い軋轢が、ようやく氷解していく。

第十八話 『脱衣カードゲーム』 (エロ無し)
 ……最後の決闘に臨む虹輝と姫乃。だが未だ戦いに迷いを見せる虹輝は、知略を駆使する姫乃の前に成す術もなく翻弄されていく。

第十九話 『激突! 虹輝VS姫乃』 (エロ無し)
 ……覚悟を決めた虹輝は全力で姫乃に戦いを挑む。熾烈な頭脳戦の中、戦局は一進一退を繰り返していた。果たして、勝つのはどちらなのか?

第二十話 『我、無条件降伏セリ』 (エロ無し)
 ……長かった脱衣カードゲームの死闘がついに終わろうとしていた。敗北した姫乃は、女子軍の無条件降伏を宣言する。

第二十一話 『天使の少女』
 …… 敗北のペナルティとして、姫乃はクラス全員の目の前でストリップショーを行う。無敵の少女がついに全てを晒す時が来た。

第二十二話 『失楽園』 (スカ)
 ……性器の中まで晒してなお、気品を失わない姫乃。そんな彼女に止めを刺すべく、鮫島が魔の手を伸ばす。

第二十三話 『散花』
 ……最新話。





 
 
 
 

登場人物

2036-08-21

最新話までの時点での、登場人物紹介です。
最新話更新の際、必要に応じて改訂していきます。
よって最新話以前を未読の場合、ネタバレとなる場合があります。


男子軍

《士郎派》
・犬飼虹輝(いぬかい・こうき)……転校生。明石から男子軍リーダーに推薦される。聡明な一面もあるのだが、気が弱く、周囲に流されやすい。最終決戦の脱衣カードゲームに臨み、ついに姫乃を打倒して男子軍を勝利に導く。
・明石士郎(あかし・しろう)……男子軍リーダー。熱血漢な性格。虹輝をかばって戦死してしまう。姫乃派と同盟を結んだらしいが、その真意は不明。戦死した桃香を最大限庇おうと考えている。
・鷲尾清司(わしお・せいじ)……明石の親友。物静かな二枚目男子だが、実は同性愛者で、明石に好意を抱いている。女子軍の罠で戦死。

《礼門派》
・郷里礼門(ごうり・れいもん)……大柄で好戦的なタカ派男子。明石とは仲が良くない。父親は産婦人科医で、様々な道具や薬品を入手できる。本人の弁によれば、レイプの常習犯。
・根墨忠一(ねすみ・ちゅういち)……桃香に惚れて奴隷になった女子軍のスパイ。清司を戦死させた際にその正体を現した。現在は完全に桃香派の奴隷となっている。


女子軍

《姫乃派》
・白鷺姫乃(しらさぎ・ひめの)……冷静沈着で知略に優れる少女。桃香の策略で失脚し、女子軍を追放されるも、桃香の戦死に伴いリーダーに復帰。自ら率先して『脱衣カードゲーム』による最終決戦に挑む。しかしその結果は自身の敗北と戦死であった。
・甲守耶美(こうもり・やみ)……無表情・無感動な女子。実は同性愛者で、姫乃に恋愛感情を持っていたが、その恋心を桃香に見抜かれ戦死する。さらに姫乃失脚の片棒も担がされた。復讐のために桃香の奴隷となるが、後に裏切って姫乃の元に戻る。

《桃香派》
・羽生桃香(はぶ・ももか)……強気で好戦的な性格で、鋭い観察眼と洞察力の持ち主。白鷺姫乃暗殺計画を立案し、あと一歩の所まで追い詰めるも、逆に戦死させられる。その後は姫乃に対しても一目置くようになる。
・宇崎みどり(うざき・みどり)……背が高く、プロポーションのいい女子。桃香の取り巻きの一人。桃香に捨て駒にされ、戦死。その後は姫乃に強い友情を感じるようになる。
・暮井祢々子(くれい・ねねこ)……低学年にしか見えない女子。ボーイズラブ愛好家。戦死した後、桃香を裏切り男子軍の味方につく。天真爛漫かつサディスティックな一面も併せ持つ。


教師

・鮫島郡丈(さめじま・ぐんじょう)……五年二組担任。姫乃だけに異常な欲望を抱いている変質者。男子女子戦争の秘密を知り、これを利用して姫乃を我がものにしようと企んだ。しかし実際に姫乃が戦死すると、なぜか不気味な沈黙を続けて事態を静観している。
・斑鳩美月(いかるが・みづき)……養護教諭、つまり保健の先生。物怖じしない、サバサバした性格。姫乃から男子女子戦争の秘密を打ち明けられ、鮫島を牽制する役割を引き受ける。しかし鮫島に何らかの弱みを握られ、戦線離脱を余儀なくされる。


???

・村咲まのみ(むらさく・まのみ)……五年一組に所属する少女。美月と深い関係にあるらしく、よく行動を共にしている。男子女子戦争の秘密を知っていて、姫乃の真意までも見抜いているような言動をとる。なお、本作では一切エロシーンを担当しないので注意して頂きたい。

  

テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

『演出的クローズド・サークル』について

2017-05-19

 駄文その14です。
 今回は『演出的クローズド・サークル』について語ろうと思います。

 クローズド・サークルというのは、ミステリー小説などで使われる俗語で、「吹雪の山荘もの」「嵐の孤島もの」とも呼ばれるジャンルです。言わば広い意味での密室ものであり、何らかの事情で外部との連絡や往来が絶たれた『閉じた環(クローズド・サークル)』を舞台とする作品を指します。
 クローズド・サークルの利点は、登場人物を絞り込む事で、より純粋に犯人が誰かを推理できる事。警察の介入や科学的捜査を排除して、トリック解明に集中できる事。要するに、リアリティのために必要な夾雑物を排し、推理のみにテーマを集約した作品を描ける事にあります。

 そしてこれは推理ものに限った事ではありません。作品の舞台を限定する事で、より作品のテーマを浮き彫りにする……これを私は『演出的クローズド・サークル』と呼んでいるのです。分かりやすい例としては、有名な特撮ヒーロー番組『仮面ライダー』が挙げられるでしょう。
 仮面ライダーは大雑把に言って、昭和期に作られた昭和仮面ライダーと、平成期に作られた平成仮面ライダーの二種類に大別できます。両者の作風には色々と違いがありますが、その中の一つに、「昭和仮面ライダーは世界征服を企む悪の組織と戦うが、平成仮面ライダーの敵は必ずしも世界征服を企んでいない」というものがあるのです。平成仮面ライダーの敵は少人数で構成された組織も珍しくありません。またその目的も「殺人ゲームで仲間内の階級を決める」「超能力者の資質を持った人間を殺す」といった限定的なものであるパターンが多いです。
 作品の舞台も同様で、昭和仮面ライダーでは、ヨーロッパを守るために旅立った仮面ライダー1号の代わりに仮面ライダー2号が日本防衛についたり、逆に南米に逃げた敵幹部を追って2号が日本を離れ、1号が舞い戻るという展開が見られたりしました。……まぁこれには撮影中の事故という大人の事情があるのですが、有名な話なので割愛します。

 対して平成仮面ライダーでは、敵が殺人ゲームのためにわざわざ人口の多い東京に集まってきたりして、戦いの舞台が主人公の住む東京近辺のみに限定される展開に説得力を与えています。やはり平成の世にあってはたとえ子供向け番組であっても、「世界征服を企む悪の組織が、律儀に一週間に一体ずつしか怪人を送り込まないのはおかしい」「たった一人で大規模なテロ活動を阻止できるわけがない」「そもそも世界征服のために怪人を作る意味が分からない」などといったツッコミを無視できないのでしょう。
 特撮ヒーロー番組のテーマは、かっこいいヒーローと悪の怪人の派手なバトルであり、そのテーマを浮き彫りにするために敵の目的や舞台をあえて矮小化して、作品のリアリティを保っていると言えるかもしれません。

 その最たる例が、イケメン俳優・福士蒼汰さんの初主演作としても知られる『仮面ライダーフォーゼ』です。この作品では学園ドラマのエッセンスが採用され、主人公たちは全員同じ学園に通う高校生、敵はその学園の教師陣、悪のボスは学園の理事長という実に箱庭的な世界観となっていました。
 では世界的規模で話が展開する昭和仮面ライダーに比べて、舞台が矮小化された平成仮面ライダーがつまらないかと言えば、もちろんそんな事は無いのです。個人の好みはあるでしょうが、前述の通り、特撮ヒーロー番組のテーマは「かっこいいヒーローと悪の怪人の派手なバトル」なのですから。そこさえ守られていれば、番組の魅力が損なわれる事はありません。それに舞台が東京に限定されようと、学園に限定されようと、そこがその作品にとっての『世界』であるならば、やはり仮面ライダーが『世界の平和を守っている』事に変わりはないのです。

 当然ながら、この『演出的クローズド・サークル』の手法は、エロ作品においても通用します。というかまさに男子女子戦争が、それを最大限活用した作品なのであります。男子女子戦争は、多くの人が子供時代に大なり小なり経験した「男子と女子の抗争」「男子の暴力による支配と服従」「女子の派閥争い」といったものを描いています。また「思春期の身体の変化」「性に対する好奇心」「身体の秘密を暴かれる羞恥心」も重要なテーマです。
 ただし多くの場合、現実世界においては、前者のテーマと後者のテーマは結び付けられることはありません。男子と女子の抗争や、女子の派閥争いにおいて、エロ小説まがいの強烈なエロティシズムが絡んでくる例はほとんど無いと言っていいでしょう。『男子女子戦争』で描かれているような事が現実に起これば、どうしても大人の知る所となり、事が大きくなり過ぎる前に事態が鎮静化させられてしまうからです。現実世界という大き過ぎる舞台では、男子女子戦争のテーマは描く事が難しいのです。

 それゆえ、本作では舞台をあえて五年二組のクラス内部にのみ限定し、演出的なクローズド・サークルを創り出す事で、作品のテーマを浮き彫りにしています。登場人物は基本的に五年二組のメンバーのみ。もっと言えば、男子五人・女子五人の十人のみで、他のクラスメイトは雑魚男子・雑魚女子として背景キャラ扱いとなっています。登場する大人も必要最低限度……しかも舞台をクローズド・サークルの外に広げる事はしません。撮影された恥ずかしい映像などは、あくまでクラス内部でのみ共有され、閉じた環の外には流出しないのです。これによって作品の舞台を完全なる子供社会とし、「男子と女子の抗争」と「過激なエロティシズム」という相反する要素を融合させているのです。
 では作品の舞台をクラス内部に限定したことで、作品のエロスもまた矮小化されてしまったでしょうか? 答えは否、だと私は思っています。確かに、ヒロインの恥ずかしい映像がクラス内部でのみ共有されるのと、全世界に拡散されるのでは、後者の方が遥かにダメージは大きいでしょう。クラスメイトだけに恥をさらすのよりも、世界中の人に恥をさらす方が、羞恥という意味ではより深刻であり、ひいては読者の興奮を誘うものであります。ですが世界中に拡散されたのでは作品のリアリティが保てない。クローズド・サークルの外に物語を広げるわけにはいかないのです。いやむしろ、演出的クローズド・サークルの作品においては、クローズド・サークルの中こそが『世界』そのものと言えるでしょう。
 男子女子戦争の作品世界では、五年二組の中こそが世界の全て。自分の恥ずかしい映像がクラス内部で共有されるという事は、彼らにとっては世界中に拡散される事と何ら変わりは無いのです。実際、人生経験の浅い子供にとっては学校のクラスというのは世界の全てと錯覚しやすく、いじめなどで孤立すると容易に自殺を選んでしまうのもそれが原因の一つと言われています。
 従って男子女子戦争で戦死し、クラス全員の前で恥をさらすことは、世界中の人に恥をさらすのと全く同じ。人生の破滅を意味するのです。読者が作品世界に入り込んで読んでいてくれれば、登場人物たちと同じ気持ちになるだろうと私は思っています。「たかがクラスメイトに見られただけじゃないか」「世界中の人に見られたわけじゃあるまいし」などと冷めた目で見るのではなく、人生が破滅するほどの羞恥に打ち震える絶望感に共感してくれるはずだろうと。
 それが上手くいけば、たとえ舞台を五年二組のクラス内部のみに矮小化したとしても、決してエロティシズムまで矮小化はされないと確信しております。

 これはキャラクター設定にも言える事で、実は『男子女子戦争』の登場人物には、詳しい裏設定がほとんど存在しません。劇中に登場した設定でそれっぽいのは……。

・礼門の父親は産婦人科医である。
・桃香と士郎は幼馴染み。
・桃香には幼稚園児の弟がいて、父親は議員である。
・祢々子は未だに父親と一緒に入浴している。


 これくらいでしょうか。虹輝を始めとして、ほとんどの登場人物に家族構成や趣味、食べ物の好みなどの裏設定が存在しないのです。またその言動も、小学生としてはやや大人っぽい感じになっています。最初期の頃は、J・さいろー先生の真似をして、リアルな小学生の会話っぽく仕立てようと努力もしていたのですが、結果的にはかなりキャラクターが変化してしまいました。士郎は今よりかなりヤンチャな感じですし、祢々子はもっと幼い感じですよね。
 男子女子戦争はクローズド・サークルの中でのみ展開する物語ですので、登場人物が小学生とはいえ、それはリアルな世界観における小学生とは異なり、あくまで記号的な小学生という事になります。ぶっちゃけて言えば、ちょうど第二次性徴真っ只中の年齢が一番羞恥を感じやすいからその年齢設定になっているだけで、現実世界におけるリアルな小学生を描くつもりはあまりないという事です。リアルな小学生を求める読者には不満でしょうが、これも作品のテーマを浮き彫りにする上では必要な事だと思っております。

 というわけで次回からはいよいよ自然教室編のクライマックス・軍事裁判編が始まります。ひとまず姫乃凌辱は一旦休憩で、続きは自然教室編が終わってからになるでしょう。代わりに久々に他の四人にも脱いでもらいます(当然姫乃も、ですが)。法廷ドラマのような体裁で、基本的におさわり一切無し、徹底して精神的に辱めを与えていく予定です。もちろん汚パンツ暴きもやる事になるかと。法廷ものとエロは意外と相性がいいので、今から書くのが楽しみです。
 本番シーンも悪くはないですが、やはり本番無しの方が羞恥ものとしては真骨頂なのかもしれませんね。あんなの飾りです。エロい人にはそれが分からんのですよ……って事ですか。



第二十三話 『散花』

2017-05-19

 犬飼虹輝にとって、白鷺姫乃は憧れの少女であった。
 羽生桃香にとって、白鷺姫乃は好敵手の少女であった。

 郷里礼門にとって、白鷺姫乃は宿敵の少女であった。
 宇崎みどりにとって、白鷺姫乃は尊敬する少女であった。

 甲守耶美にとって、白鷺姫乃は想い人の少女であった。
 鮫島郡丈にとって、白鷺姫乃は人生の全てを賭す少女であった。

 白鷺姫乃は、五年二組を中心とする多くの人々にとって、憧れであり、好敵手であり、宿敵であり、尊敬の対象であり、そして想い人でもある……人生の全てを賭す価値のある少女であった。
 その白鷺姫乃がこれから処女を喪うのだ。
 しかも、衆人環視の中、日中の野外にて、好きな男子の目の前で好きでもない男子に処女を捧げる。その全てをビデオカメラに記録される。
 これは果たして本当に現実の事なのだろうか? 誰もが夢か妄想かと自分を疑い、白昼夢から覚めるために己の頬をつねった。しかし目の前の光景は何も変化しない。ただ頬に痛みが走っただけだった。
 当然だ。これは夢でもなければ妄想でもない。
 れっきとした現実なのだから。
 あの白鷺姫乃が、ついに男子に敗北し、凌辱される。レイプされる。犯される。
 それがこれから始まる、まぎれもない現実だった。




 礼門は自分のベルトを緩めると、ズボンとトランクスを乱暴に脱ぎ捨てた。クラスメイト全員の目の前で、あっさりと下半身裸になる。
 何も恥ずかしがることはない。ズボンに染みが付いていようと、トランクスに精液がこびり付いていようと、隆々と勃起したペニスを見られようと……それ以上の生き恥を、ついさっき白鷺姫乃は晒したのだ。完全に立場は礼門の方が上だった。クラスメイト全員の目の前で、ストリップショーを披露した挙句、脱糞まで見られた少女に以前のような気迫はもう残っていなかった。
「よし、じゃあ処女喪失ショーの開演といこうか。ウンコ女とセックスなんて本当はしたくないんだけどな、お情けでお前の処女をもらってやるよ。ありがたいと思え」
 切り株の上に腰かけた礼門は、そう言って仰向けに寝転がった。股間の怒張がそそり立ち、文字通り天を衝く。
「跨って上に乗れ、ウンコ女。お前が自分で入れるんだよ」
 本当なら今すぐにでも姫乃を押し倒し、乱暴に挿入してガンガン腰を振りたいところだった。だが礼門は強靭な精神力でその欲望を抑え込んだ。力任せに凌辱したのでは面白くもなんともない。姫乃に自分から、この屈辱的な状況を受け入れさせる事で、より一層心の傷を深く刻み付ける。一生苦しみ続けるような取り返しのつかないダメージを与える。それでこそ、礼門は無上の快楽を得る事ができるのだ。
「はい……礼門様」
 姫乃は力なく頷き、礼門の元へと歩み寄った。大きく息を吐いて片足を掲げる。切り株の周囲には隈なくクラスメイト達が腰を下ろしていた。場所によっては死角になるだろうが、しゃがみ込んでいるほとんどの級友たちには、露わになった姫乃の股間が丸見えになっていた。さっき至近距離から観察されたとはいえ、それでも姫乃にとっては耐え難い恥辱だろう。
 そのまま、掲げた片足を切り株の上に乗せ、踏み台を上るようにして足に力を籠める。ストリップショーを行った時のように、再び切り株の上に立った。先程との違いは、服を着ているか否か。だがそれは天と地ほどの違いでもあった。
 姫乃は一糸纏わぬ素っ裸のまま、礼門の身体を跨ぎ、膝を折って姿勢を落とした。勝ち誇った顔で見上げる仇敵と視線が絡み合う。気丈にも彼女は目を逸らそうとはしなかった。しかし敗者の立場に何ら変わりは無い。ニヤニヤと笑う礼門に、姫乃は唇を嚙む事しかできないのだ。
 一呼吸おいて、彼女は静かに腰を下ろしていった。
 淡々と挿入を済ませようというのだろう。だがいくら礼門の肉棒がはちきれんばかりに硬直していたとしても……いや、そこまで硬直しているからこそ尚の事、単に腰を下ろすだけではセックスは成功しなかった。礼門のペニスも、姫乃のスリットも、どちらも湿り気は十分だったが、彼の怒張は割れ目の上をなぞるだけで、右に左に方向がずれてしまう。
 当たり前だろう。処女の姫乃の膣口は、どれだけ愛液に濡れそぼっていたとしても、その入り口は固く狭い。手でペニスを支え、慎重に狙いを定めて少しずつ割り開いていかなければ入るわけがないのだ。
 しかしまさに処女であるが故に、姫乃にはそれが分からない。実体験がない以上、この情報化社会であっても得られる知識には限界があるのだ。いかに白鷺姫乃といえども……彼女ほど聡明で知的な少女であっても、やはり性的な情報、つまりセックスのノウハウには疎いのである。
 姫乃は間違いなく処女だ。礼門は余裕の笑みを浮かべた。数多くの少女をその毒牙にかけ、処女膜を食い破ってきた彼にとっては至極当たり前の事が、姫乃には分からない。彼女に何度も煮え湯を飲まされ、敗北の屈辱に甘んじてきた自分が、まさかこんな事で優越感に浸れるとは。何とも愉快極まりない話ではないか。
「おい、ウンコ女」
 礼門が嘲笑の笑みをぶつける。
「お前セックスのやり方も知らねぇのかよ。賢そうに振舞ってても、所詮はお子ちゃまだな。小便くせぇガキのくせして男子に逆らおうなんて、百年早ぇぜ」
 自分の無知を嘲笑われ、彼女の頬が悔しさに紅潮していった。普段なら相手にしないこんなあからさまな挑発にも、今の姫乃では適当にあしらう事はできなかったのだ。
「ちゃんと俺様のモノを手でつかんで穴に誘導するんだよ。当然、もう片方の手でマンコもおっぴろげてな」
「わかり……ました……」
 言われた通り、姫乃は素直に両手を股間に伸ばした。右手で礼門のペニスを握り締め、左手で自分の小陰唇を左右に割り開く。狙いを定めるために背を曲げ、股間を覗き込む格好は、実に浅ましく惨めであった。これではまるで痴女の逆レイプではないか。
 二度の射精で、既に礼門の肉棒は精液まみれになっている。本来であれば挿入しただけで妊娠の危険があった。ゴムも付けずに女性器に宛がうなど、自殺行為以外の何物でもないだろう。まぁ姫乃の事だ。どうせピルか何かを服用して、万が一自分が戦死して凌辱されても妊娠だけは避けられるよう、とっくに手は打っていると思うが。
 それでもあの白鷺姫乃が、自分の処女を捧げるために、率先して礼門のペニスを膣口に捻じ込もうとしている様子は見ていて爽快だった。何度敗北の苦汁を舐めても、諦めずに彼女に執着し続けてきた甲斐があるというものだ。
 一昨日など、礼門は姫乃にスタンガンを押し付けられ、ちんぐり返しの格好をさせられた上に、大事な男性器を土足で蹴飛ばされている。それが今はどうだ。姫乃はかつて土足で踏みつけたペニスを、あろう事か自分の処女膜を破るために必死になって誘導しているではないか。礼門にとっては無上の快感であった。これほどの征服欲が他にあろうか。その勝利の美酒をじっくりと味わうため、彼は姫乃の悪戦苦闘をあえて放置し、寝転がったままで高みの見物と洒落込むことにした。
 その時間は五分だっただろうか。
 それとも十分か。
 どれだけ頑張ったところで、男性経験の無い姫乃が自分でペニスを挿入する事はほぼ不可能だった。それが分かっているからこそ、礼門はあえて彼女を放置したのだ。衆人環視の中、無駄な努力を強制され、姫乃は汗ばみながら必死に腰を振っている。抽送の危機を察した肉体は、本人の意思に関係なく、女性器を守るために愛液を分泌するものだ。しどしどに濡れた彼女のクレヴァスと擦り合わされ、精液と先走り液に塗れた礼門の肉棒は、今や愛液に包まれてキラキラと光り輝いていた。
 あたかも礼門のペニスを使ってオナニーをしているかのようだ。そんな彼女の、見るに堪えない醜態を存分に楽しんだ後、頃合いとみて彼は口を開いた。
「おいウンコ女。どうだ? つい一昨日にゃ足で踏みつけてたチンポに処女を捧げる気分はよ? 言っただろ? 何十倍にもして仕返ししてやるってな。宣言通り、二度と男子に逆らえなくなるくらい、徹底的にいたぶって屈服させてやるぜ」
 確かにあの時礼門は宣言した。自然教室が終わる時に笑っているのは男子軍だと。明日か明後日かには、必ず姫乃の処女膜をぶち抜いてやると。ついでに桃香や耶美の初物も頂いてやると。
 その宣言は全て現実のものとなった。男子女子戦争は男子軍の勝利に終わったし、姫乃の処女はあと数分もしないうちに礼門の手に堕ちる。桃香と耶美に至っては既に凌辱済みだ。男子女子戦争を隠れ蓑にして、五年二組の美少女たちをレイプするという、礼門の卑劣極まる外道な野望は、もう後ちょっとで完全に成就しようとしていた。一点の曇りもない完璧な勝利である。悪が勝つ瞬間は目の前なのだ。
「俺に負けて悔しいか? 惨めだよなぁ、幾度となく叩き潰してきた相手に、完全敗北して屈服するんだからよ」
 勝ち誇りながら、礼門は両手を伸ばして、姫乃の腰を左右から押さえつけた。いよいよその瞬間が訪れるのだ……察した姫乃は、肩を震わせて恐怖に慄いた。いくら抵抗したところで、しょせん彼女もそこらの雑魚女子と同じ。礼門に負けて屈服するしかない、ただのか弱い女に過ぎないのだ。
 既にペニスの先端は膣口を捉えている。後は力任せに突き上げてやれば、姫乃の処女膜をズタズタに引き裂く事は造作も無かった。彼女の怯えを見て取り、礼門は上機嫌にまくし立てていく。
「俺のモノに貫かれた女は、結局俺の前に這いつくばる事になる。ウンコ女、敗北の味をたっぷり思い知りやがれ!」
 いよいよ、最期の瞬間だ。
 白鷺姫乃が全てを喪い、二度と立ち直れなくなる傷を負わされる。
 郷里礼門の完全勝利だった。
 ――その、刹那。
「いぎぎぃぃぃっ!」
 両手で押さえ込んだ腰を引き寄せると同時に、礼門が腰を突き上げる。林の中に響き渡る悲鳴。最後の最後で、都合よく助けが入って、かろうじてヒロインの処女が守られる……そんなご都合主義の展開は、決して起こる事は無かった。
 礼門の宿願を託された肉棒は、姫乃の膣口を押し広げ、何者の侵入も許してこなかった肉のヒダを力任せに引き裂いていった。穢れ無き聖域は無残にも礼門のペニスの形に押し広げられ、滅茶苦茶に踏み荒らされていく。鮮血が愛液と混じり合い、結合部から溢れ出して内腿を赤く染め上げていった。
 ついに姫乃の処女は陥落した。
 彼女が純潔を捧げた相手は、よりによってあの郷里礼門となったのだ。
 卑劣で粗野な人間のクズに、聡明で高潔な少女が敗北し、見るも無残に蹂躙されてしまった。誰からも好かれる偉大な女子軍リーダーは、低能な筋肉馬鹿に屈服し、二度と取り返しのつかない傷を負わされた。正義が負け、悪が勝った。強く賢く気高い、高嶺の花の無敵の美少女は、乱暴に手折られ、地に堕ちて泥に塗れた。もはや二度とその花を咲かせる事は無いだろう。
 白鷺姫乃は凌辱された。
 白鷺姫乃はレイプされた。
 白鷺姫乃は負けた。
 股間をペニスで貫かれ、カエルが潰れたような無様な悲鳴を上げて、男子の軍門に下った事をクラスメイト全員に宣言したのだ。
「いだっ……だ……いいぃ……」
 眉間にしわを寄せ、歯を食いしばって激痛に耐える姫乃の醜態は、彼女の清らかなイメージを粉々に打ち砕くには十分過ぎた。あの白鷺姫乃であれば、破瓜の痛みにも毅然と耐え忍ぶのではないか……そんな男子たちの幻想は跡形もなく崩れ去る。結局姫乃もただの雑魚女子の一人。男子には勝てないのだ。涙をこぼしていないのはさすがだったが、耳を塞ぎたくなるような不格好な悲鳴は隠しようがなかった。
「ひぎっ、ひぐぅ!」
「ハッハッハ、何だよウンコ女。情けねぇな。みっともない悲鳴出してんじゃねぇよ」
「あぎゃぁっ!」
 面白がって礼門が腰を揺らし始める。貫かれただけでも耐え難い痛みに苦しんでいるのだ。その上動かされてしまったら、さしもの姫乃もひとたまりもなかった。少しでも苦痛から逃れようと膝に力を込めるしかない。ビデオカメラを構えた忠一は、切り株の周囲を回りながら、そんな姫乃ののたうち回る滑稽な様子を逐一記録していった。彼女の背後に回ると、レンズを近づけて結合部を執拗に撮影していく。
「おう、馬鹿ネズミ。ちゃんと撮れてるか?」
 彼の動きに気付いた礼門が声をかける。
「もちろんですよ。二人がつながってる所もバッチリです」
「へへ……こうすりゃもっとバッチリになるぜぇ?」
「や……やべでぇ……」
 もはや呂律も回らなくなってきた姫乃をよそに、礼門は彼女の臀部に手を回した。尻たぶを乱暴につかみ、力任せに左右に割り開いていく。当然、屈辱の結合部だけでなく、隠されていた姫乃の肛門までもが太陽に照らされてしまった。破瓜の出血の鮮やかな赤色でさえ、デジタルハイビジョンで永久に記録されていくのだ。
「ざまぁみろ! とうとう白鷺姫乃をモノにしてやったぜ! 俺の勝ちだ!」
 ここぞとばかりに、姫乃の腰を鷲掴みにして激しく上下に揺さぶる礼門。激痛に耐えかねた彼女は、もはや姿勢を保つことも叶わず、糸の切れた人形のように突っ伏していった。そのまま礼門の胸に顔をうずめていく。その様子だけ見ていれば、まるで仲睦まじい恋人同士のセックスのようだ。
「へへへ……どうしたウンコ女? そんなに俺とイチャつきてぇのか?」
「ぎぐぅ……」
「しょうがねぇなぁ。んじゃとりあえず、恋人みてぇにキスでもしてみるか?」
 腹筋を使って礼門が軽々と上半身を起こす。押し戻されるように、姫乃の上半身も再び垂直になった。男女が座った状態で向かい合ってセックスする体勢……いわゆる対面座位の格好である。
「ほら、ウンコ女。首を伸ばして吸い付いてみろ。お前の処女をもらってやった愛しの男に、ファーストキスを捧げるんだよ」
 礼門が見下したような視線で舌を出した。姫乃に自分から、彼の舌や唇に触れさせようというのだ。もちろん彼女自身の舌や唇を使わせて。好きでもない相手に唇を許す事は、人によってはセックスよりも嫌悪感を抱く行為だろう。それが分かっているからこその、礼門の理不尽な要求だった。
 それでも姫乃は健気にも、下半身の激痛に耐えながら、おずおずと舌を出して礼門に顔を近づけていった。周囲の野次馬たちに動揺が走る。
 無理もない。彼ら五年二組の生徒たちにとって、唇と唇を重ねるキスは、愛情表現の一環に他ならなかった。好き合っている男女がより親密になる行為。好きでもない相手と唇を重ねるなど、常識では考えられないのだ。
 現に男子女子戦争では、相手を辱める手段としてキスを強要した事は今まで一度も無かった。士郎と清司が祢々子の眼前で愛し合った際、唇を重ねた事はあったが……相手に屈辱を与えるためにキスするというのは、まさにコペルニクス的発想の転換であろう。
 目一杯に伸ばした姫乃の舌が、ゆっくりとゆっくりと、礼門の舌に近づいていく。クラスメイトたちが固唾を吞んで見守る中……ついにその先端同士が触れ合った。にちゃり、と唾液と唾液が触れ合う音が微かに響き渡る。
 次いで姫乃は淡々と、まるでそうするのが当然であるかのように、舌を絡めたまま唇を重ねていった。二人の唇と唇が隙間なく密接し、唾液が混じり合っていく。
 あの白鷺姫乃が、郷里礼門とキスをした。
 観客のボルテージが最高潮に達する。礼門が彼女の背中に手を回せば、所在なげだった姫乃の両腕もまた、おずおずと彼の背中を這っていくのだ。向かい合って抱き合いながら、下半身で繋がったままディープキスを交わす二人。どこをどう見てもそれは、深い愛情で結びついたカップルが、お互いを労わりながら行う……ラブラブセックスそのものだった。
「初めてのキスの味はどうだ?」
「別に……」
 二人は一旦唇を離し、至近距離で言葉を交わす。
「処女を奪われた挙句、ファーストキスの喪失まで公開させられるなんて悔しいよなぁ?」
「別に……」
「いいのか? 俺みたいな奴が相手で。もうお前の身体で処女を保ってるのは、かろうじてケツの穴くらいなもんだぜ?」
「別に……」
「可哀そうだよなぁ、お前の彼氏になる男は。せっかく相思相愛になったって、もうキスもセックスも経験済み。自慢の彼女が使い古しの中古女なんだからよ」
「別……に……」
 礼門の眉がピクリと跳ねる。いくら平静を装っていても、下半身を串刺しにされた状態では、心の乱れを隠し通す事は難しい。自分の言葉責めで姫乃が隙を見せたと見るや、彼はすかさずその傷口に容赦なく塩を塗り込んでいった。
 手を伸ばし、姫乃の前髪を乱暴に鷲掴みにする。完全無欠の無敵の美少女が持つ、たった一つの弱点。それが恐らくこれだろう。姫乃がどれほど強く賢く気高かろうと、『恋心』などという非論理的で理不尽な感情に心をかき乱されれば、いくらでも付け入る隙は出てくるというものだ。髪の毛を引っ張って彼女の顔の向きを変えさせる。動かされたその視線にあるものは――。
「あ……こ……。虹……輝く……ん」
 しゃがみ込んだ姿勢でじっと姫乃を見上げる、犬飼虹輝であった。
 そうだ。
 犬飼虹輝に対する恋心。それが姫乃の唯一にして最大の弱点である。彼女を屈服させるためにこれを利用しない手はなかった。なぜ今まで気づかなかったのか……いくら姫乃のストリップに見とれていたとはいえ、実に間の抜けた話だ。桃香や鮫島ならもっと早くこうしていたに違いない。
「姫乃さん……」
 その虹輝の眼には一筋の涙が零れていた。
 何の涙だろうか? 後悔か? 怒りか? 悲しみか?
 いずれにせよ、礼門にとってはどうでもいい話だった。ストリップの最中に姫乃に言われた通り、虹輝は律儀に特等席で全てを見届けている。そんな彼をダシにして、仇敵の少女を辱める事ができればそれで良いのだ。
「人前でストリップして素っ裸になっただけでも自殺モンだろうが、その上マンコの中まで公開して、ケツ穴からウンコひり出したんだもんな。俺だったらそんな汚ねぇウンコ女を彼女にするなんて、死んでも御免だぜ」
「う……」
 姫乃は目を閉じた。虹輝の視線から逃れるように顔をそむける。そこにはもう、「敗者としての責務を果たす」と言い放った、あの凛とした少女の姿はどこにもなかった。ただ恥辱と屈辱に打ちひしがれる、哀れな力なき少女がいるだけだ。
 効果覿面だ。
 まさかこれほどあからさまに態度が変わるとは。
 姫乃の心を支えていた、最期の砦が、とうとう限界を迎えようとしていた。
「も……もう」
 うなだれた姫乃が言葉を紡ぐ。
「もう……許し……て」
 その一言に礼門の瞳が爛々と輝いた。同時にざわめき出す観衆のクラスメイトたち。戸惑うのも当然だろう。ついにあの、強く気高かった白鷺姫乃の口から、あろう事か命乞いの嘆願が飛び出したのだから。
「うん? 何だって? 聞こえねぇなぁ、言いたい事があるならもっと大声で言えよ。クラスの連中全員に聞こえるようにな!」
 ここぞとばかりに畳みかける礼門の言葉にも、もはや姫乃が抵抗する事は無かった。
「許して……下さい。お願いします……。女子が男子に勝てない事は……よく分かりました。もう二度と男子には逆らいません。これからは男子の奴隷として服従します。だから……お願い、もう……許して……」
 ――これが、名実ともに白鷺姫乃が完全敗北を認めた瞬間だった。
 誰に強制されたわけでもなく、自分から自発的に、姫乃は敗北宣言を行った。郷里礼門を始めとするクラスの男子たちに負けを認めた。ついに姫乃は、心身ともに、完膚なきまでに叩きのめされ、奴隷としての服従を誓ったのだ。
 甲守耶美が羽生桃香に屈服した時と同じだった。恋心という弱点を持った人間は、そこを突かれると意外なほど脆い。クールビューティの耶美が、姫乃への恋心という弱点のために桃香に敗北し、最期は泣きながら土下座して上履きを舐めさせられたように……。姫乃もまた、虹輝への恋心のために心をへし折られた。
 ストリップさせられようと、性器を公開させられようと、衆人環視の中で脱糞させられようと……かろうじて保たれていた矜持が、心の強さが、強靭な精神力が、とうとう粉々に打ち砕かれてしまったのだ。
 礼門がその弱点を突いたのはほとんど偶然だったが、結果として姫乃に引導を渡せたのだから構わないだろう。過程はどうあれ、姫乃を打ち負かしたのは揺るぎない事実だった。
「ようやく自分の立場を思い知ったか。女子が男子に歯向かおうなんて生意気だったんだよ。これからは奴隷として飼ってやるからな、二度と俺様に逆らうんじゃねぇぞ」
 威丈高に言い放つ礼門の言葉に、姫乃は唯々諾々と屈従した。
「はい……礼門様」
 ここまでくればもう遠慮はいらない。後は思いっきり腰を突き上げて、膣内に白濁液をぶちまけてやるだけだ。雄の刻印を身体の中に彫り込み、奴隷としての烙印を押してやろう。男子に絶対服従する悦びを身体に教え込んでやるのだ。礼門は姫乃の腰を再び両手でつかみ、一気に抽送を加速させた。
「あひっ、駄目っ……いだ、いだいぃぃ……」
 再び身体を蝕み始めた下腹部の痛みに、姫乃が歯を食いしばって耐えていく。三度目の射精だというのに、情けなくも礼門のペニスは早々に限界を迎えようとしていた。
 ほんの数十秒。
 それだけのピストンで、彼は絶頂の瞬間を迎える。
「行くぞ、受け取れウンコ女!」
「あぢ、あづいぃぃ……!」
 ウッ! と小さく唸り、礼門は姫乃の身体の最深部で、思う存分欲望の丈を吐き出していった。生まれてからまだ一度も穢されたことのなかった姫乃の聖域は、卑劣な筋肉馬鹿の白濁液によって染め上げられ、その全てを塗り潰されていく。一瞬、二人の身体が硬直し、動きがピタリと止まった。
 ついに宿願を果たした礼門が、最高の笑みを浮かべながらのけ反っていく。下半身がつながったままの姫乃もその動きに合わせるしかない。再び、彼の胸に身を預けるように突っ伏していった。
「やった……やったぞ……。とうとう白鷺姫乃に俺の精液をぶちまけてやった……」
 うわ言のように呟きながら、礼門は姫乃の尻を左右から乱暴に開いた。再び露わになる結合部と肛門。その繋がった場所からは、血と愛液と精液が混じり合って溢れ出している。背後に回った忠一のカメラに、全てが記録されていった。
 礼門が貪るように舌を伸ばす。
 完全に屈服した姫乃に抵抗する気力は無かった。求められるままに自分も舌を出すと、彼の唇に吸い付き、盛りのついた猫のように濃厚なキスを交わしていく。その有様は、誰がどう見ても、アツアツのラブラブカップルそのものだった。
 ――これが、白鷺姫乃の成れの果てだ。




 全てが終わった後、礼門は姫乃に離れるよう命令した。彼女は下腹部の痛みに耐えつつ、懸命に身体を起こし、股間から凶悪な肉棒を引き抜いていく。
「い……ぎぃ……」
 ペニスが抜けた瞬間、ぽっかりと空いた膣口から血に染まった白濁液がドロリと流れ出していった。クラスメイト全員の眼と忠一のカメラに、その一部始終が焼き付いていく。姫乃は気丈にも自らの足で切り株から降りていった。だがそのへっぴり腰は滑稽で、がに股に開いた足はとても美少女のとるポーズとは思えなかった。そんな無様な醜態の一部始終さえ、冷徹に映像に残され、また級友たちに観察されるのだから惨めなものだ。
「ウンコ女。お前とセックスしたせいで、俺の大事な一物が汚れちまったじゃねーか。奇麗にしてもらおうか」
 身を起こしながら言い放つ礼門。
「き……れいに?」
「知らねぇのか。お掃除フェラだよ」
 礼門が耶美をレイプした時、彼は言っていた。「本当ならお掃除フェラとかやらせたいところだが、本命のために残しておくとするか」、と。「何もこんな前座女相手にあれこれやっちまう事もねぇ」などと暴言も吐いていた。その言葉さえもが現実のものとなる時が来た。本命の白鷺姫乃にお掃除フェラをやらせるのだ。
「は……い」
 姫乃とて今時の五年生である。それくらいの知識は頭では知っているだろう。まさか実際に自分が……ましてや礼門相手に行う事になるとは思ってもみなかったろうが。
 切り株にどっかりと腰かけた礼門が、居丈高に顎で命令する。姫乃は一切逆らう事なく、彼の両足の間に跪き、憎むべき相手の股間へと唇を近づけていった。自らの血と愛液と、仇敵の精液に彩られたペニスに舌を這わせる。大きく口を開け、エラの張った肉傘を懸命に呑み込んでいくのだ。それはフェラチオと言うよりは、口と喉を犯されているに等しい苦行であった。下の口を犯された姫乃が、今度は上の口を犯されたのである。
「もっと口をすぼめて吸い出すんだよ、下手くそめ!」
 礼門に指図されるまま、姫乃が頬をへこませて精液を吸い出していく。自分の処女を奪った凌辱者の性器を口に含み、その尿道を奇麗にするなど、想像を絶する汚辱だろう。見目麗しい可憐な美少女が、おちょぼ口になって必死にペニスから精液を吸い出している様は、とても正視に耐えられるものではなかった。
「よし、まぁ初フェラならこんなもんだろ。そのうちタップリと仕込んでやるからな」
 勝ち誇った顔で言い放ち、礼門は姫乃の頭を引き離した。桜色の唇とどす黒い肉棒の間に、何重にも唾液が糸を引いていく。
「そろそろスポーツレクの時間も終わりだな。最後の仕上げと行くか」
「最後の……?」
 礼門は切り株から立ち上がると、トランクスとズボンを身に着けた。そして素っ裸のまま跪いている姫乃の目の前で、腕を組んで仁王立ちになる。
「丸裸のまま土下座して詫びてもらおうか、今まで俺にさんざん煮え湯を呑ませてきた事をな。女子の分際で男子に楯突いた過ちを認めて、心を入れ替えて男子の奴隷になるって、クラスの奴ら全員の前で宣言するんだよ」
 既に姫乃が屈服して敗北宣言をした事を分かった上で、なお恥の上塗りをさせようという執拗なまでの執念だった。
 礼門の復讐は、姫乃をストリップさせた程度では終わらなかった。
 脱糞ショーをさせてもまだ満足しなかった。
 自らの手で処女を捧げさせても溜飲は下がらなかった。
 跪かせてお掃除フェラを強制してもなお晴れなかった。
 それだけの恥辱を与えた上で、さらに土下座を強要してようやく僅かばかり、一時の満足が得られるのだ。彼の姫乃に対する執着はそれほどまでに膨れ上がっていたのである。
 姫乃はもう抵抗しなかった。
 切り株の前に立ち、自分を見下す憎むべき男の前で膝を折る。両手を地面に付き、頭を垂れ、深々と腰を曲げていった。土を被せたとはいえ、そこは姫乃が排便をした場所である。鼻を近づければまだかなりの異臭がするだろう。自分の汚物の上で土下座するようなものだ。それでも姫乃は言われるまま、地面に額をこすりつけ、完全に屈服した哀れな姿を晒していった。
 それは気丈な少女の姿というよりは、もはや自分で考える事さえできなくなった、無残な敗北者の末路でしかなかった。
「私は……女子の分際で生意気にも男子に逆らった、馬鹿な女です。礼門様に対する数々の無礼、心からお詫びいたします。女子ごときが男子に勝てない事はよく分かりました。これからは心を入れ替え、男子の奴隷として精一杯ご奉仕します。男子の命令にはどんな事でも従います。もう二度と逆らいません。どうかこの無様な姿に免じて、私を奴隷として飼って下さい。お願いします、礼門様……」
 とてもあの聡明な姫乃の口から発せられたとは思えない、惨めで情けない敗北宣言である。ギャラリーの女子たちの中には、顔を覆って泣いている者さえいた。あるいはその男子への媚びた姿に失望し、蔑みの視線を向ける者もいる。
 一方男子たちの反応は、総じて満足気であった。高嶺の花だった美少女を、これからは奴隷として好きにできるのだ。これほど征服欲が満たされる瞬間は他にないだろう。
 そしてその征服欲を最も滾らせていた男――礼門は、宿敵を陥落させた快感に浸っていた。右足を掲げ、自分の足元で這いつくばる哀れな美少女の頭を踏みつける。艶やかな黒髪が泥に汚れ、端正な顔が地面にこすりつけられていった。しかもただの地面ではない。自分の排泄物を埋めた地面の上に、だ。
「仕方がねぇ、そこまで言うなら奴隷として飼ってやるよ」
「ありがとう……ございます」
「これからは俺の命令にはどんな事でも従うんだよな?」
「はい」
「へへへ、その言葉、忘れるんじゃねぇぞ」
 勝利の快感に酔い、礼門が高笑いして右足に力を籠める。姫乃は抵抗もできず、ただ這いつくばった姿勢のまま、異臭のする地面に顔面を塗れされるしかなかった。
 男子が勝ち、女子が負けた。
 その事実をこれほど如実に表した光景もない。
 忠一が全てをカメラに収めていく。背後に回ると、剥き出しになった姫乃の肛門と、その下で精液を垂れ流す女性器が丸出しだった。そんな滑稽な姿勢で秘部を隠すこともできず、頭を土足で踏みにじられてのたうち回る姫乃の姿……。それが余すところなく映像として記録されていくのだ。もはや言い逃れのできない、完全敗北の姿と言えよう。
 男子が勝ち、女子が負けた。
 男子女子戦争は、こうしてついに終戦の時を迎えたのである。




「よーし、十二時だ。スポーツレクはこれにて終了。各自、食堂へ移動して昼食をとるように」
 パンパン、と手を叩いて、鮫島が教師らしく号令をかけた。まるでドッジボールやバレーでもして汗を流した後のような、何の屈託もない普通の号令である。切り株の前で土下座の姿勢のまま突っ伏している少女の姿など、視界に入っていないかのようだった。
「ほらほら、どうした、さっさと行かないと昼休みが終わってしまうぞ? 一時からは自然教室の反省会をするからな。遅れずに第二視聴覚室に集まるんだぞ」
 しかし、そこは腐っても担任の教師である。鮫島が促すと、生徒たちは一人また一人と、食堂の方へと足を向けていった。彼らもまた、地面で這いつくばる姫乃には気づかないふりをしている。夢遊病のごとく、ぼんやりとした様子で林を後にしていった。
 姫乃の事を無視しているわけではない。
 いや、中には女子軍を勝利に導けなかった彼女に失望し、憤慨している女子もいるだろうが……大半のクラスメイトたちは、あまりの凄惨な凌辱ショーに言葉を失い、どう彼女に接していいのか計りかねているのだ。
 姫乃を気にかけたのはたった一人だけだった。言うまでもなく、甲守耶美である。切り株の周囲に散らかった衣服をかき集め、彼女に寄り添って身体を起こしてやっている。自分のハンカチが汚れるのも厭わず、髪や顔に付いた泥を丁寧に拭い取っていた。
 そんな献身的な介助の様子をニヤニヤと見下ろしている礼門。馬鹿にしたような口調で耶美を嘲笑った。
「ふん、泣かせるねぇ。愛しの想い人を奇麗にしてあげたいってか? どんなにハンカチで拭ったところで、穢された身体は二度と元には戻らねぇがな」
 耶美はあくまで無表情に、淡々と作業を進めている。礼門の挑発にも眉一つ動かさず、小声で姫乃を労わりながら、彼女に下着を付けさせていった。
「お笑いだよな。お前も白鷺も、結局両方とも俺に処女を奪われたんだからよ。そのウンコ女のためにお前は純潔を犠牲にしたみたいだが、最後はこのザマさ。無駄な努力ご苦労さん? しょせん女の浅知恵なんてその程度ってこった」
 ショーツを穿かせる時も、自分のハンカチで躊躇なく精液を拭い、生理用のナプキンをあてがっている。まるで事前に準備していたかのような周到な手つきだった。
「女子軍が負けたんだから、これからはお前も男子の奴隷だぞ。いつまでそんなおすまし顔をしていられるかな? 二人そろってヒイヒイ泣かせてやるから覚悟しておけ」
 礼門の煽りを完全に無視して、耶美は白の丸襟ブラウスを姫乃に着せていく。そして薄いピンクのキュロットスカートに足を通させて、彼女の下着を周囲の視線からガードしていった。たとえ全てを晒した後であっても、愛する人の裸や下着が露わになっているのは我慢できないのだろう。
 だがあまりにも徹底したその礼門無視の態度は、彼を激昂させるには十分だった。
「おいふざけんなよ甲守! シカトしてんじゃねぇ!」
 突然の罵声に、まだ林に残っていたクラスメイト達の視線が一斉に集まる。それでもなお、耶美は黙々と姫乃の足の泥を拭い、粛々とソックスを履かせていた。
「無視してプライドを保ってるつもりか? そんな事したってお前ら女子軍が負けた事実は変わらねぇんだよ! 負け犬は負け犬らしく無様に屈服してりゃそれで……」
「――何を」
 そこでようやく、耶美が口を開いた。姫乃の靴を手に取り、彼女の足にそれぞれ被せながら、言葉だけ礼門に向けて放っている。
「何をそんなに焦っているの?」
「焦って……いる? 俺が?」
 仕上げにウェストポーチを手に取り、姫乃の細い腰に巻き付けていった。
「だってそうでしょう? あなたの言う通り、あなたは私や姫乃に勝ったのよ。男子軍が女子軍に勝ったのよ。だったら勝者らしく悠然と振舞っていたらいいじゃない。それなのに、今のあなたの態度はまるで敗者のそれね。自分が負けたわけじゃないって自分に言い聞かせるために、焦って必死になってその証拠を探しているみたい」
 姫乃の腕を自分の肩に回して、耶美はゆっくりと立ち上がった。彼女の腰に手を回して身体を支える。そして最後に、そばで狼狽している礼門を冷たく一瞥した。
「そんなに、自分が姫乃に勝ったっていう確証が欲しいの? そんなに、自分が姫乃に勝った実感が湧かないの? 私には、あなたの方が無様に見えるわね」
「て、てめぇ……」
 男子女子戦争を隠れ蓑にして、耶美や姫乃の純潔を奪い、男子軍を勝利させて彼女らを奴隷にする――。礼門の野望は完全に成功した。誰がどう見ても礼門の勝利であり、男子軍の勝利であった。それなのに今はなぜか、両者の立場は逆転しているように思えてならない。女子である耶美が毅然と振舞い、男子である礼門が情けなく狼狽えていた。
 いや考えてみれば、礼門が執拗に姫乃に敗北宣言を迫ったのも、耶美の言う『焦り』が原因だったのかもしれない。姫乃をストリップさせても、脱糞ショーをさせても、自らの手で処女を捧げさせても、跪かせてお掃除フェラを強制しても、それでも心のどこかで姫乃に負けている気がしていた。だからこそ最後に土下座まで強要して敗北宣言させたのだ。
 いや、そこまでしても果たして勝利の実感が湧いたかどうかは……今の礼門を見る限り、怪しいものであったが。
「こいつ、言わせておけば……ッ!」
 逆上した礼門が拳を振り上げる。結局最後は暴力に頼らざるを得ない。それが彼の器の限界でもあった。
「おい、よせよ」
 しかしその拳が振り下ろされる事は無かった。背後から伸びた手が彼の腕をつかみ、押し止めたからだ。
「男子女子戦争のルールじゃ、暴力は禁止だろ? ましてやもう戦争は終わったんだ。勝敗が決したのに矛を収めないなんて、みっともないぜ?」
 声の主はかつての男子軍リーダー、明石士郎であった。いけ好かない相手に諫められて、さらに礼門が不機嫌になる。
「何だよ明石、てめぇには関係ねぇだろ!」
「関係はあるさ。戦争が終わった以上、これからは戦後処理を考えてかなきゃいけない。戦争中より無秩序な暴力世界になるのは御免だからな」
「女子どもをどうしようが俺の勝手だろうが!」
「お前の勝手にできるわけじゃない。俺たち男子の勝手にできるだけだ。そこを履き違えるなよ」
 姫乃は敗北宣言で礼門の奴隷になると言っていたが、あんなものはその場のノリで出た言葉に過ぎない。姫乃が服従するのはあくまでスポーツレクの間だけ。今後の学校生活の中で、五年二組が解散するまで、どう女子を奴隷にしていくのかは男子の間で話し合う必要があった。直接姫乃を倒した最大の功労者が虹輝である以上、礼門の発言権もそこまで大きくは無いのだ。それは本人も自覚している事だろう。
「ふん、勝手にしやがれ!」
 それに教師である鮫島もまだ残っているのに、これ以上騒ぎを大きくして暴力沙汰を起こすほど彼も馬鹿ではなかった。覚えてろ、と乱暴に舌打ちして、肩を怒らせながら食堂の方に立ち去って行った。耶美が蔑むような視線でその背中を射抜いている。
「お礼を言う必要があるかしら?」
「いいや。それより昼からの反省会は頼むぜ。打ち合わせ通りな」
「もちろん」
 短く返事をすると、彼女も姫乃を連れて林を立ち去って行った。徹頭徹尾、最後まで無表情である。さすがクールビューティといったところか。もっとも、女子軍が敗北した以上、礼門が言う通りあの鉄仮面がいつまで持つかは怪しいものだったが……。
 そうやって、やれやれと士郎が息をついた、次の瞬間。
「……何が打ち合わせ通りですって?」
「うわっ、びっくりした!」
 突然の背後からの声に、士郎が飛び跳ねて振り返った。
「何だ桃香か。ビビらせんなよ」
 腕を組んで仁王立ちしていたのは、羽生桃香である。姫乃と激しい鍔迫り合いを何度も繰り返し、ギリギリまで彼女を追いこんでおきながら、あと一歩というところで逆転負けを喫した少女。姫乃に対する恨みも人一倍かと思われたが、意外にも彼女が凌辱されている間、桃香はあまり感情を表に出していなかった。喜んでいるのか悲しんでいるのか全く分からない。ただじっと腰を据えて、姫乃の様子を観察しているだけだった。まるで彼女の真意を探っているかのように。
 だが今はあからさまに、不機嫌そうな顔でまっすぐ士郎を睨んでいた。
「何だじゃないわ。約束、守ってもらうわよ」
「約束ぅ? 何の話だよ?」
「とぼけないで。脱衣カードゲームが終わったら、姫乃と結んだ同盟の内容を教えてくれる約束だったでしょ」
 士郎はプール開きの日に、姫乃の命を受けた耶美と同盟を結んでいる。それは礼門派と桃香派の連合軍に対する士郎派と姫乃派の軍事同盟という意味合いもあった。今となっては遠い過去の話のようだ。
「よく覚えてるなぁ、そんな昔の約束」
「ほんの二、三時間前に言われた事、忘れるわけないでしょ!」
 その同盟には三つの条件があった。一つ目は、桃香と礼門が手を結んでいる間、士郎と姫乃が協力してこれに対抗するというもの。二つ目は、桃香を倒すまでの間、姫乃が男子軍に力を貸すというもの。そして三つ目が……戦争が終わった後の統治について、士郎が姫乃に出来る限り協力するというものだ。
「三つ目の内容……戦後統治であんたが姫乃に協力する、その具体的な内容について教えてもらうわ」
 一つ目と二つ目の条件は、姫乃が桃香に勝つつもりで結んだ事は想像できる。だが三つ目の真意がよく分からなかった。戦争中に結んだ同盟でありながら、既に戦後について何らかの合意を結んでいるのだ。いったい姫乃は何の目的でそんな同盟を持ち掛けたのか?
「俺が教えなくても、大体の予想はついているって感じじゃないか?」
「これ以上、はぐらかすのは無しよ」
「分かった分かった、ちゃんと教えるよ。俺が白鷺と結んだ同盟の三つ目の条件。それはな……」
 一度言葉を切った後、士郎がハッキリと言い放った。
「戦争が終わった後、もし女子軍が敗北したのなら。その時は、全ての戦争責任を、白鷺姫乃一人に背負わせる――、って内容だ」
 その言葉に、桃香は静かに目を閉じる。
「やっぱり……そういう事か」
 女子軍の敗北を前提としている事も奇異だが、戦争責任を姫乃一人が背負い込むのもまた異常であった。男子女子戦争の引き金となったのは、桃香と士郎の対立がそもそもの原因。姫乃は途中から渋々参加したに過ぎない。それなのになぜ彼女一人だけが泥を被ろうとしているのか? 桃香を全力で叩き潰し、地獄に突き落としたのは姫乃本人だ。彼女が優しい性格だから……というだけで説明できる事ではなかった。
「あんまり驚いてないな?」
「想像はついたわよ。私を倒した後、男子たちに徹底的に辱めさせたのは、まぁ耶美の一件もあるから不思議じゃなかったけど……その後の姫乃の行動は、おかしな所だらけだったわ」
 桃香でなくても、五年二組の生徒ならば誰でも疑問に思う事だ。なぜ姫乃は脱衣カードゲームなどという破廉恥な決闘方法を自ら提案したのか? なぜスカーフやリストバンドを使って、一枚ずつ脱いでいく姿を期待していた男子たちを挑発するような真似をしたのか? なぜ自分が負けたら礼門の自由になるなどという破滅的な宣言をしてみせたのか? そしてなぜ、好戦的な態度と高度な戦略で情け容赦なく虹輝を追い詰めていったのか?
 もし――、もしも、だ。
 もしも、姫乃が女子軍最後の一人になって、虹輝が男子軍最後の一人になるのが、彼女の想定通りの展開だったとしたら? そして二人で一騎打ちをして、姫乃が負けて、女子軍が敗北するのがシナリオに沿ったものだとしたら? 全てが、女子軍を敗北させ、その戦争責任を姫乃一人で背負い込む目的のためだとしたら?
 彼女の行動の一切合切が、一本の線で繋がることになる。
 姫乃は自分が全ての責任を被った上で、女子軍を敗北させるつもりで、最初から……遅くともプール開きの時点から、行動していた。
「自分が責任を負うには、自分が女子軍最後の一人に残らなくちゃいけない。犬飼に一騎打ちを持ち掛けたのは、集団戦だと不測の事態で女子軍が『勝ってしまう』危険があったから。そして女子軍が負けた後、男子たちの好奇の目が自分に集中するように、あえて脱衣カードゲームなんて勝負を仕掛けて、馬鹿男子たちのエロ心を煽った。馬鹿ゴリラの命令を何でもきくなんて言い出したのも、そうすれば他の男子たちはお預けを喰らう事になるから……。さすが姫乃ね。完璧だわ。完璧なシナリオだわ。これなら放っておいても、女子たちは姫乃を恨むし、男子たちは姫乃の身体を弄びたくてウズウズする。他の女子なんてどうでもよくなる、か」
 何の事は無い。姫乃が桃香を地獄に突き落としたのは、自分がそれ以上の無間地獄へと身を投じる覚悟を決めていたからだ。そうでなければ、あの聡明で理知的な姫乃が、桃香に対して「地獄に堕ちればいいんだわ」などと言い放つわけがなかった。自分だけがのうのうと安全圏に身を潜め、他人の苦しむ様を高みの見物と洒落込めるほど、姫乃は卑劣な人間ではない。たとえ相手が憎むべき仇敵の少女であったとしても、常に労わりと優しさの心で接する天使の少女。それが白鷺姫乃という存在なのだから。
 しかも驚くべきは、この同盟を直接士郎に持ち掛けたのが甲守耶美という事実だろう。つまり耶美はこの同盟の内容を知っている。知った上で姫乃に協力していたのだ。
「最初から、白鷺の奴は負けて辱められるつもりで行動していた。だから甲守の奴も冷静に見ていられたんだろうな。覚悟は決まっていたっつーか」
「姫乃が女子軍最後の一人になるという事は、それまでの間に耶美も戦死しなければいけないって事よ。耶美自身も、自分が負けて男子のおもちゃになる事は覚悟してたってわけね。まぁ男子じゃなくてあたしに散々弄ばれるとは予想してなかったでしょうけど」
 そこまでして姫乃が成し遂げようとしている事は何なのだろうか? 彼女の指示で耶美がプールから離れたために、宇崎みどりは礼門にレイプされ、男子女子戦争で初めての強姦被害者となってしまった。礼門の暴走が原因とはいえ、姫乃がその事を悔いているのは間違いないだろう。だがその贖罪というだけでは、こんな馬鹿げた同盟の説明はつけられなかった。
 緻密で周到な台本を用意し、数々の修羅場を潜り抜け、強靭な精神力と卓越した頭脳で見事に敗北を演じきる。それだけでも舌を巻く偉業だが、彼女はそれだけではなく、なおも士郎の協力を得て自分一人が戦争責任を背負い込もうとしていた。単なるみどりへの同情という理由だけで納得できる話ではない。
「どうして姫乃はこんな馬鹿な真似を……」
「そんなの俺が知るわけないだろ。ただ自分に有利な同盟だったから受けただけさ。女子軍が負けてもお前を守れるんなら願ったり叶ったりだ」
 ポーカーフェイスで返す士郎だったが、実は彼は同盟を結ぶ際、耶美からそれを聞かされていた。姫乃が何を思ってこの男子女子戦争を戦っているのかを。だが今はそれを言うべき時ではない。そう思って口をつぐんでいるのだ。幸いにも、視線を落として思案している桃香に、それを悟られる事は無かった。
「とりあえず昼からの反省会で、同盟の内容を実行するだけだな。……あ、先生!」
 立ち去ろうとしている鮫島を目に留め、士郎が手を挙げて呼び止める。
「おう明石か。どうした?」
「反省会は俺たちが仕切っていいんだろ?」
「ああ、もちろん。言われた通り、場所だけ用意してあるから後は好きに進めるといい。ただし終了時間は守れよ」
「サンキュー、それだけ確認したかったんだ」
 鮫島が手を振って食堂に向かっていく。もう林の中に残っている生徒もほとんどいなかった。そろそろ士郎たちも昼食をとらないと、いかにセルフサービスの食堂とはいえ、食いっぱぐれることになりかねない。
「反省会って……何をするつもりよ?」
 桃香が怪訝な視線を向けた。
「決まってるだろ? もう男子女子戦争は終わったんだ。戦争が終わったら、戦後処理の一環として、敗戦国の指導者の戦争責任を追及するのは当たり前。そのための軍事裁判を開くのさ」
「軍事……裁判ですって?」
「女子軍を指揮して、戦争を推し進めていった五人の女子たちを裁判にかける。そして有罪か無罪か、有罪ならその罪の重さも決めなきゃならない。当然、裁判を取り仕切るのは俺たち男子軍だけどな」
 戦勝国が敗戦国を裁くというのか。まるで極東国際軍事裁判ではないか。いや、大人たちの裁判と違って、子供たちの裁判はあくまで裁判ごっこである。裁くのが男子軍だというのなら、公明正大な裁判など望むべくもない。それは裁判の形を借りた、男子軍の女子軍に対する陰湿な報復に他ならなかった。無罪などという判決の可能性は最初からゼロなのだ。
「もちろん桃香、お前も被告人の一人だぜ? けど安心しろ。例の同盟がある以上、お前の罪はそう重くならないように俺が手を回しておくさ。全ての罪を被って戦争犯罪者になるのは――」
 青ざめる桃香をよそに、士郎は平然と言ってのけた。
「白鷺姫乃、一人だけだ」




 その頃、林の中を疾走している一つの影があった。虹輝だ。犬飼虹輝が、たった一人で林の中を駆け抜けているのだ。
 他のクラスメイトたちが全員食堂の方へと向かっている中で、一人だけ全く別の方向へと一心不乱に突き進んでいた。言うまでもなく、林の中はかけっこをするような場所ではない。現に足場の悪さゆえ、彼は何度も転びそうになりながら、必死の形相で道なき道を進んでいた。
 別に明確な目的地があるわけではなさそうだった。単に人気のない場所を探しているだけらしい。ハァハァと荒い息を継ぎながら、適当な大木を見つけると、素早くその影に隠れてじっと身を潜めた。ようやく落ち着いたとばかりに呼吸を整えていく。周囲を見回して他に人の気配がない事を確認すると、ゆっくりとズボンのポケットに手を入れていった。
 虹輝はついさっき、林の中で士郎と桃香の会話を偶然にも小耳に挟んだのである。立ち聞きするつもりはなかったが、聞こえてきたのだから仕方ない。そしてそこで耳を疑うような情報を知らされたのである。
 白鷺姫乃がわざと自分に負けた、と。
 本当だろうか?
 有り得ない。最初はそう思った。男子女子戦争で負けるという事は、素っ裸にひん剥かれて、身体をおもちゃにされるという事なのだ。自らそんな事を望む女子がいるはずがない。現に、脱衣カードゲームで負けた後、辱められた姫乃は、本当に苦しそうだったし辛そうだった。だから虹輝ももう見ていられないと思ったのだ。それが彼女自身の望んだ事などとは、どうしても思えなかった。
 もちろん世の中には露出願望やレイプ願望の女性もいるなんて話は聞くが、あくまで願望に過ぎない場合がほとんどだろう。嫌悪する男にクラス全員の前で実際に凌辱され、それを撮影までされる事を望む女性がいるとは……まぁ少なくとも、姫乃がそんなタイプでない事だけは間違いなかった。
 もっとも、世の中には絶対という事は無い。どれだけ低い可能性であっても、確かに姫乃がわざと負けた可能性はゼロではなかった。姫乃がそんなタイプじゃないなどという、自分の勝手な思い込みだけで断言する事は論理的ではないだろう。
 何か明確な証拠でもあれば話は別だが……。
 ――いや、ある。
 虹輝の頭の中で何かが弾けた。
 一つだけ……一つだけ、確たる証拠があるではないか。
 姫乃がわざと負けたかどうかを確かめる、唯一にして絶対の方法が。
 それに気付いた時、虹輝は駆け出していた。誰にも邪魔されない場所で、しっかりとはっきりと、この目で確かめなければならないと思ったからだ。
 彼がズボンのポケットから取り出したもの。それはトランプのケースだった。中には、姫乃と虹輝が激闘を繰り広げた、あの脱衣カードゲームで使われたトランプが入っている。確か姫乃は言っていた。「これは虹輝くんにあげるわ。今日の記念に、ね。大切に持っていて」と。あの時は何とも思っていなかったが、実はあの言葉と行動には深い意味があったのではないか。そうでなければ姫乃がわざわざ、「あなたはこのトランプを受け取る義務がある」などと言ったりしないだろう。
 そう。脱衣カードゲームの勝敗が決した時、彼女は呑気にトランプを片付けていた。山札の上に、新・四回戦で二人が切ったトランプを重ねて、それから自分の手札の束を上に乗せた。そして最後に虹輝の手札を被せて紙製のケースに戻したはずだ。
 だとすれば、ケースから取り出して一枚ずつカードをめくっていけば、姫乃が最後に持っていた手札の内容が分かる事になる。彼女が持っていたジョーカーの正体が分かるのだ。
 普通に考えれば、姫乃のジョーカーはダイヤのAのはずだ。
 だからこそ最後の勝負……お互い四敗ずつで臨んだ最後の決戦で、彼女はダイヤのAのカードを切れなかった。ダイヤの8と10を出し、クラブの6とAを出した虹輝に負けた。
 四敗ずつで臨む最後の勝負に駆け引きは存在しない。二枚ずつカードを切るという追加ルールがあったのだから、手札の中から機械的に二枚、数字の大きいカードを選んで出せば良いだけだ。しかしもし、最後に残った姫乃の手札の中に、万が一にもダイヤのAが残っていたとすれば……。それはつまり、姫乃がわざと負けたという、言い逃れのできない揺るぎない証拠になるはずだった。
 虹輝が手の震えを必死に抑えながら、トランプをケースから取り出していく。もし手が滑って足元に落としてしまったりしたら、何もかも台無しだ。大木の根っこの間に腰を下ろし、ゆっくりゆっくり、地面の上にカードの束を乗せていった。
 大きく深呼吸してから、まず一番上のカード五枚を手に取った。これが虹輝の持っていた手札。裏返すと、クラブの2、3、4、5、それにジョーカーのカードが姿を現した。虹輝の手札のうち、クラブの7がジョーカーと交換されたのだから、これは当たり前である。問題は次だ。次の五枚が、姫乃が最後に持っていた手札の内容となる。掌に滲んだ汗を拭い、虹輝は山札の上から五枚、カードを取り分けた。
 一枚目のカードをめくる。絵柄はダイヤの4。姫乃の手札の中では一番数字の小さいカードだ。二枚目はダイヤの5、三枚目がダイヤの6。そして四枚目に登場したのは、ジョーカーのカードだった。ここまでは予想通りだ。問題のカードが、奇しくも最後に残った形である。
 姫乃の持っていた手札のうち、五枚目のカード。これが、ダイヤの7ならば、何の問題もないだろう。彼女の持っていたダイヤのAのカードがジョーカーと交換された事になり、彼女は自分の手札の中から最も数字の大きいダイヤの8とダイヤの10を出した事になるのだから。姫乃は全力で虹輝と戦い、惜しくも敗れ去った。そういう事になる。
 だが、もしもこの五枚目のカードがダイヤのAだったとしたら……。
 姫乃のジョーカーの正体は、ダイヤの7だった事になるのだ。彼女はダイヤの7をジョーカーと交換し、手札の中にダイヤのAを温存していた。そして駆け引き無しの最後の勝負において、みすみすダイヤのAを出さずに、あえて数字の小さなダイヤの8とダイヤの10を出した。姫乃には虹輝のジョーカーの位置は分からなかったが、最終決戦での虹輝の手札の内容は、クラブの2、3、4、5。クラブの7と交換したジョーカー。それに手札に選んだクラブの6とクラブのAの七枚である。
 もし虹輝のジョーカーがもっと小さな数字のカードだったとしても、彼が出せる最大の組み合わせは、クラブの7とクラブのAである事は、姫乃にも予想できたはずである。合計は21。対して姫乃がダイヤのAを持っていたとするなら、彼女の出せる最大の組み合わせは、ダイヤの10とダイヤのAとなる。合計は24。姫乃の圧勝だ。
 けれども実際に彼女が最後に出したカードの組み合わせは、ダイヤの10とダイヤの8だった。ダイヤのAを隠し持っていたのなら、わざと負けたと言われても言い訳はできまい。
 そんなはずはない。
 そんはなずはないんだ。
 虹輝は必死に自分に言い聞かせながら、五枚目のカードを裏返していった。ダイヤの7が出てくる。ダイヤの7が出てくる。そう願いながら。
 されども、現実は非情だった。
 五枚目のカードには、ダイヤのマークが七つも並んではいなかった。たった一つ、小さなダイヤのマークが、中央に描かれているだけだ。
 ダイヤのA。
 それが、五枚目のカード。
 姫乃のジョーカーの正体は、ダイヤのAではなく、ダイヤの7だったのだ。姫乃は、自分の手札にダイヤのAという最大の武器があるのを知りながら、みすみすそれを使わずにダイヤの8を使った。もし虹輝のジョーカーがクラブのAだったなら、その組み合わせでも勝てただろう。しかし四敗同士で迎えた最終決戦である以上、それはダイヤのAを温存する理由にはならない。
 いやもしかすると姫乃は、虹輝のジョーカーがクラブの7だと知っていたのかもしれなかった。彼のジョーカーを指定したのは姫乃だ。虹輝が危惧したように、姫乃には自然教室が始まるまでの間、トランプに細工する時間的余裕はタップリとあった。男子と女子の対決なら、男子がスペードやクラブを使い、女子がハートやダイヤを使うのはごく自然な流れである。いやそもそも最初にスペードとハートを使うように言ったのは姫乃の方ではないか。そしてカード全切りで手札を使い切り、後半からはクラブとダイヤのカードを使う流れを見切っていたとするならば……クラブのカードの裏側に何か目印を付けるだけで目的は達せられる。
 もちろん姫乃のジョーカーを選ぶのは虹輝だから、虹輝のジョーカーを自由に指定できたとしても、それだけでは勝つためのイカサマとしては弱い。自分のジョーカーも自由に選べなければ確実な勝利はおぼつかなかった。だがもしこれが勝つためのイカサマではなく、負けるためのイカサマだったとしたら?
 自分のジョーカーの位置は手札を見れば分かる。それに加えて虹輝のジョーカーの正体が分かっていれば、姫乃はゲームの流れを完全に把握する事ができた。そう、姫乃の目的は勝つ事ではない。負ける事だ。しかもできるだけ自然な流れで――、できれば「最後のギリギリの局面で、惜しくも負けてしまった」形が一番望ましい。万が一、わざと負けた事がバレれば、女子たちの間でブーイングが起こり、脱衣カードゲームの結果が無効だと騒ぎ立てられかねないからだ。
 そう考えれば、勝敗が決した後、なぜ姫乃が呑気にトランプを片付けていたのかもすぐに理解できるだろう。あれはトランプを片付けていたのではなかった。自分がわざと負けた事を証明する、唯一絶対の物証を隠滅していたのだ。さすがに山札に戻したトランプをわざわざシャッフルしたりすれば行動の不自然さが目立ってしまう。けれどもトランプを虹輝に渡してしまえば、その時点でトランプの証拠能力は半減する。虹輝がカードの順番を入れ替える可能性が生じるからだ。
 もし誰かが姫乃の行動に疑問を感じ、彼女の手札を確認しようとすれば、惜敗という形でわざと負けるという姫乃の計画が台無しになる危険があった。虹輝にトランプを渡した直後に、これを調べられても同様だ。
 しかしあの時はクラスメイトの誰もが、姫乃の敗北に驚愕し、これから始まるであろうストリップに興奮していた。誰一人として、姫乃がわざと負けたなどとは考えてもいなかった。ましてや手札を確認しようとする者など出てくるはずもない。そんな中、姫乃はほんのわずかな可能性も危惧し、冷静かつ沈着に、唯一の物証を隠滅したのだ。そして虹輝の手に渡ったトランプの証拠能力を完全に消し去るため……つまり時間稼ぎをするため、クラスメイト全員の目の前でストリップショーを演じだ。
 トランプを手にしてからかなりの時間が経過してしまった今となっては、もはや証拠能力はゼロになったと言わざるを得ない。虹輝がこのトランプを証拠に、姫乃がわざと負けたなどと言ったところで、誰もそれを信じたりはしないだろう。何もかもが、姫乃の想定通りに進んでいたのだ。
「そんな……そんな……」
 最初から最後まで、虹輝は一貫して彼女の掌の上で踊らされていたに過ぎない。
「姫乃さんは……わざと」
 やはり二人の関係は象と蟻だった。巨大な象が、わざと自分から倒れてくれた。ちっぽけな蟻が、それを自分が倒したと勘違いしていただけなのだ。
「わざと、負けた……?」
 頭が真っ白になる。
 どうして?
 なぜ?
 疑問符だけがどんどん増えていった。
 さらにそんな彼に追い打ちをかけるかのように――。
「へぇ、勝ったのは犬飼くんの方かぁ」
 頭上から降ってきた突然の声に、虹輝がビクンと飛び跳ねた。まさか近くに人がいたとは。顔を上げると、そこには野暮ったい黒縁眼鏡におさげ髪の、一人の少女が立っていた。
「え、な……?」
「じゃあ犬飼くんがカムパネルラになるんだね?」
 少女は腰を折って虹輝の顔を覗き込んでいる。
 見た事もない少女の突然の登場は、ただでさえこんがらがっていた虹輝の頭の中を、完全なパニック状態に追い込むには十分過ぎた。困惑する彼が発する事ができた言葉はただ一つ……。
「だ、誰……?」
 という、間の抜けたものだけだった。
 その言葉に、まず少女はきょとんとした表情で返し、次に泡がはじけたようにクスクス笑い始めた。
「あははは、そうかぁ、転校生くんはまだ他のクラスの子の顔なんて覚えてないかな? じゃあ初めまして。私は村咲まのみ。君と同じ学校の、五年一組よ」
「あ、そ、そう……。一組の……」
 どうして一組の生徒がこんな所にいるのか? 同じ自然教室に参加しているとはいえ、もう昼休みだ。体育館でスポーツレクを楽しんでいた一組の生徒たちは、とっくに食堂に移動しているだろう。それにどうして虹輝の名前を知っているのか? まぁ同じ学年なら知っていても不思議ではないが、彼女は他にも気になる事を言っていた。
 勝ったのは虹輝の方、だって? まるで男子女子戦争や、さらには脱衣カードゲームの事を知っているかのような口ぶりではないか。それに虹輝の事を、何とか……になると言っていた。確かカムパ……何とかだと……。
「もしかするとこれからも顔を合わせる事があるかもね」
「それってどういう……」
 彼の質問には答えず、まのみは姿勢を直すと、くるりと踵を返した。
「白鷺さんはこれから大変だなぁ。頑張ってね、カムパネルラの犬飼虹輝くん?」
「カム……パネルラ? 僕……が?」
 いたずらっぽく笑って、彼女はスキップのような軽い足取りで立ち去って行った。いや、少し進んで立ち止まると、言い忘れたかのように言葉を付け足す。
「――終わってないよ」
 気のせいか、その口調は今までとは違って、なぜだか少し重い感じがした。背中を見せているために表情を垣間見る事はできなかったが。
「終わってないって、いったい何が? 何の話なの?」
「だから、終わってないんだってば。……男子女子戦争は、さ」
 思いもかけない単語が飛び出し、虹輝は目を白黒させた。男子女子戦争? どうして、一組の生徒がそんな言葉を知っている? いったい誰が喋ったんだ? 男子女子戦争の事は二組だけの秘密だったはずなのに……。
 しかし問い詰めようにも、既にまのみは軽快なスキップで虹輝の元を立ち去った後だった。あっという間にその背中が小さくなっていく。目の前のトランプを気にして立ち上がるのが遅れた虹輝に、追いつく術があるはずもなかった。
 わけが分からない。
 いったい……自分の知らない所で何が始まっているのか。
 呆然と、虹輝は手元に残ったトランプに視線を落とした。そこにあるのはダイヤのAのカード。姫乃がわざと虹輝に負けたという証拠であり、そして理由はどうあれ、女子軍を敗北させたという何よりの証であった。
 わざとであろうとなかろうと、姫乃が負けた事実は動かない。彼女はこれから軍事法廷で裁かれ、男子の命令に逆らえない奴隷となり、五年二組解散の時まで嬲り者にされる。
 それが、現実。
 それが、事実。
 現実は、どこまでも非情だった。
 
 
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